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収録について
★ボーカル・レコーディング比較
★バイオリン・レコーディング比較
アーティスト・インプレッション
音楽専門学校中退後、3つのバンド(マダム・キラー/ラピスラズリ(ガウスエンタテインメントよりリリース)/the baked Potato)を経てソロに転向。ソロ転向後、アーティストの後ろでコーラスをする事に興味を持ち2003年中川敦教のライブコーラスを皮切りにバックコーラスとしてミュージシャン業をスタート。数々のアーティストのバックコーラスとしてコンサート、ライブに出演。FNS歌謡祭、Music Fair、NHKうたコンなどの音楽番組にも多数出演。2016年よりbankbandにコーラスとして正式に加入。制作でもコーラスやボーカルディレクター、歌唱指導などで多くのアーティストをサポート。作曲家としても今まで嵐、KinKiKids、chemistryなどへ楽曲提供。
近年はフレデリック・フースラーの発声の考え方をもとに、長年に渡って歌っていく為の発声法を自らがサンプルとなり再現性の高いことだけをまとめ、プロアマ問わず沢山の方に知ってもらう為にトレーナーとしても活動中。
Rock oN : 本日はボーカルでのご協力、大変ありがとうございました! 小田原さんは、普段から数多くのプロの現場でボーカルレコーディングを経験され、さまざまなマイクを使用されて来た経験があるかと思いますのが、今回のM 49 Vはいかがでしたか?
小田原 氏 : M 49 Vは、解像度が高く、新しさを感じるサウンドでした。歌い手がパフォーマンスする上で、自分の声の「この部分を聞きながら歌いたい」という希望がある場合、M 49 Vの解像度の高さは、ディテールまでよく拾うので十分に希望に応えてくれるマイクですね。僕は普段、モニターヘッドフォンを片耳外した状態で歌うんですが、こうやって収録後のプレイバックを聞いた音と、歌入れ時の音の印象が変わらないんです。今日はサウンドチェックということで、モニターにリバーブを送らないで歌ったんですが、リバーブを加えると、さらに歌いやすいサウンドになるでしょうね。これは歌い手にとって、とてもありがたいことだと思います。今回、同じ製品ながらも、M 49 V ~ M 49 c ~ M 49 bといくにつれて、いい意味で音が丸くなっていく印象でした。
国内代理店 ゼンハイザージャパン 真野氏 : M 49 bは1958年、M 49 cは1964年に発売されている製品で、状態、パーツ等の経年変化が大きいでしょうね。
Rock oN : 今回歌っていただいたメロディーの一部に音階が下がる部分があったかと思いますが、M 49 V の、高い音と低い音でのレスポンスに差があったりしませんでしたか?
小田原 氏 : そこの部分も確認したかったので、音階が下がる箇所をメロディーの中に組み込んでみたんですが、極端な変化はなく、歌いづらいということは全くなかったです。声の中域の「コツッ」と言う部分が、M 49 bとM 49 cではいい意味で削がれる印象があったんですが、M 49 Vではそれがなく、かなりクリアに聞こえました。まあ、個人的には、少しナローになったM 49 bの音が好みなんですが(笑)。
Rock oN : スタジオでは、よくU 87 Aiが使われる印象がありますが、M 49 Vとの違いはどうでしたか?
小田原 氏 : どのマイクを使うかは、現場次第で変わったくるので特に決まってはないのですが、自分の場合、コーラスをレコーディングする機会が多いので、U 87 Aiでコーラスを重ねていくと、どうしても飽和感が出てきつくなってくる印象があります。U 87 Aiはスタンダードと言われいるし、聞き慣れた音だとは思いますが、個人的にはU 87 Aiを個性的な音のマイクだと捉えているんですよ。
ビクタースタジオ 八反田 氏 : M 49は高域が派手なマイクではないので、個人的に、アコースティック系のジャンルのボーカルに使うことが多いです。リボンマイクと方向性が似ていて、太く、柔らかく録りたい時に選びたいマイクですね。
ビクタースタジオ 高桑 氏 : 私の場合は、女性ボーカルで太みの部分を出したい時にM 49を使うことが多いです。そういった部分に、さらにM 49 Vの解像度の高さを加えることで、オケに埋もれずに存在できるボーカルを録れるマイクだと感じました。
アーティスト・インプレッション
桐朋学園大学音楽学部器楽科を卒業後に渡独。トロッシンゲン国立音楽大学器楽科、室内楽科、古楽科それぞれの修士課程を最優秀の成績で卒業。ザルツブルグ・モーツァルテウム大学古楽科ポストグラデュエイト課程修了。
学生時代よりプロオーケストラへの客演、室内楽グループ等で演奏活動を開始し、南西ドイツフィルハーモニー・コンスタンツの研修生、契約団員を経てフリーランス奏者となる。
カルテットや室内アンサンブルのメンバーとして、WDR(西ドイツ放送)、SWR(南ドイツ放送)にて演奏会の模様が度々放送されている他、バロックヴァイオリンでは
Deutschland Radio Kultur、SWRシュヴェッツィンガ―音楽祭、バッハフェスト・ザルツブルグ、ザルツブルグ音楽祭などに出演。
主にドイツ・オーストリア・スイスにて演奏活動を行う一方、2008年からはドイツにて指導活動を開始。個人指導の他、室内楽やアンサンブルの指導にも力を入れ、ドイツ最大の学生音楽コンクールJugend musiziertにて2009年より毎年、ソロ・室内楽部門において多くの一位入賞者を輩出。
2019年より活動拠点を日本に移し、在京オーケストラ及び古楽団体での演奏等、首都圏を中心に活動している。
Rock oN : 今日は、バロックとモダンの二つのバイオリンをお持ちいただき、演奏していただきましたが、楽器によって大きく音色に違いが出て、大変興味深いレコーディングになりました。ありがとうございます! M 49 Vでレコーディングしてみていかがですか?
保坂さん : M 49 Vですが「こんなに拾うのか!」と言う驚きがありました。柔らかい演奏の空気感を作れば、その雰囲気までも収録されると言うことでしょうから、それはすごいことだと思います。このマイクで録るのが前提なら弾き方も変わりますね。U 87の無指向で録った経験が一番多いので、U 87 Aiの音は「そうそう、いつものこの音だ」と言う親近感がありましたが、U 87 Aiは、いい意味で丸くなっている感じで、コンサート会場でオーディエンスが聞いている音に近いのかもしれません。一方、M 49 Vは、例えば、1弓の毛一本が触れるか触れないかというような、ギリギリの音も収録される感じですね。
Rock oN : M 49についてはM 49 V、M 49 c、M 49 bの3種類をレコーディングをしましたが、違いはありましたか?
保坂さん : 違いましたね。やはり、M 49 Vが一番繊細で、全てを拾っている感じです。あえて表現すると「触ると壊れる」かのような感じですね。M 49 bとM 49 cは似ていると感じました。
Rock oN : バイオリンの音域範囲に対するマイクのレスポンスで、感じる部分はありましたか?
保坂さん : 今回、U 67とU 87 Aiもレコーディングしましたが、M 49の方が、弦の色合いの変化が鮮やかで、明るい色彩のサウンドでですね。M 49の3種類の中だと、M 49 Vは、壊れる寸前のガラスような繊細な音に聞こえる気がします。M 49 bとM 49 cは、同じガラスでも口吹きガラスのような温かみと丸みがある感じですね。
Rock oN : 今日のラインナップで、アーティスト(=表現者)として、一番自分の演奏を忠実に再現していると感じるのはM 49 Vになりますか?
保坂さん : そうですね。演奏者の好みによるかもしれませんが、1音1音を作り込み、自分の演奏を全部拾ってレコーディングしたいならば、M 49 Vがいいですね。一方、ライブ感を大事にしたい方は、丸い音にしてくれるマイクを選ぶ方が合ってるので、M 49 bやM 49 cが候補になると思います。
サウンドエンジニア・インプレッション
●エンジニア紹介
“紳士”という言葉が似合うエンジニアである。物腰柔らかく、相手に安心感をもたらす人柄は、ビクター内外から重宝されてきた。人から見えない仕事をいかに丁寧に行うかという、細かいところまで誠実に向き合う姿勢は、ずっと変わらない。このことが、関係者が作業しやすい環境をつくっていくことになると、よく理解しているのである。生楽器の扱いは得意とするところで、バンド、クラシック、劇伴、Pops、Rockなど、長年にわたり様々なジャンルに携わってきたなかで、クリア且つブレない力強さを有する彼のサウンドが確立された。豊かで上質との評もある。息抜きはドライブや旅行。思いつきで各地を訪れることが多い。餃子を食べに宇都宮、うなぎを食べに浜松へ車を走らせるなど、行動派の一面がある。
落ち着いた雰囲気のなかに、知性と根性がのぞく人である。制約のある作業も多いなかで、効率とのバランスを考えながら、PCやソフトウェア、周辺機器の知識も豊富になっていった。デジタルへの強さも持ちつつ、アナログ機材へのこだわりも強い。得意ジャンルはロック、ポップス、バンドもので、実績も数多い。密度を高め、低音域を効果的に引き出した音は、胸にせまる情熱的なものを帯びて、作品を完成へと導いている。歌の魅せかたも高い評価を受け、UVERworldや清木場俊介をはじめ、長年にわたって作業を共にし、全面的な信頼を寄せるアーティストも多い。創作活動の限界値を押し上げたいという思いは、人一倍強い。趣味はドライブだが洗車も好きだといい、車への愛が溢れる。お酒は日本酒を好む。
Rock oN : 本日は、レコーディングにご協力いただき大変ありがとうございました! ビクタースタジオさんには、設立当初からの歴史的経緯もあり、オリジナルのM 49が約30本ほどあるそうですね! 恐らく、日本で一番、M 49を所有されているスタジオかと思いますが、そんな環境の中、お二方はM 49をどういう楽器に使われることが多いですか?
ビクタースタジオ 高桑 氏 : 僕にとってM 49は基準になっているマイクなのですが、ピアノ、ストリングス、ウッドベースで使うことが多いです。高域が派手なマイクではないのですが、中低域に特徴があり、ふくよかな楽器の「身の部分」を録りたい時にセレクトします。ボーカルの場合は、倍音が強いシンガーに対して使うと有効なマイクだと思います。倍音が多めで、かつ、細く感じられる女性ボーカルに使うと、ふくよかなローエンドが録れます。
ビクタースタジオ 八反田 氏 : 僕もピアノが多く、あとはドラムのアンビエンスにも使います。
Rock oN : 今日は、比較対象としてU 67とU 87 Aiも使ってみたわけですが、M 49と比較して聞いてみると、「あれ、U 87 Aiはこんなに明るかった?」と言う印象を受けたのですが、、、
ビクタースタジオ 八反田 氏 : そうですね。U 67もU 87 Aiも、M 49と比較すると、派手目な音に聞こえますね。U 87 Aiは中高域が張っていて固めになる印象がありますが、オケの中で使うと、その部分が前に出てくるという良さがあるので、多くのスタジオで基準になっているマイクだというのはよくわかります。実用的に優れているマイクですね。
Rock oN : 今日初めて使ったM 49 Vの印象はどうでしたか?
ビクタースタジオ 八反田 氏 : 最近、色んなメーカーからマイクが発売され、高域が強調されたりと、特徴を感じるマイクが多い中、このM 49 Vは扱いやすいマイクだと感じました。最近では、なかなか出会わないタイプのマイクです。
ビクタースタジオ 高桑 氏 : どちらかというと、ナチュラル系というかアコースティック寄りなマイクですよね。そういった意味で、M 49 Vはオールラウンドでいけると思います。EQの引っかかりも良さそうですし、U 67やU 87 Aiが持つ中高域のピーキーな部分と比べると、M 49 Vは、なだらかなのでエンジニアとして使いやすいと思います。今日のアカペラボーカルやソロバイオリンのような素材ですと、マイクの性能が活きてくるので、M 49 Vを選びたいという気になりました。
ビクタースタジオ 八反田 氏 : M 49 c、M 49 bと比較すると、バイオリンの保坂さんが、M 49 Vは「とても色彩豊か」と言う風におっしゃってましたけど、僕もそう思いました。新品だということが大きいからだと思いますが、ナチュラルな太さに加え、演奏の表情が見えやすい繊細さも持っていますね。
Rock oN : これから、M 49 Vをどういう楽器に使ってみたいですか?
ビクタースタジオ 八反田 氏 : 僕はやはりピアノかな。ビンテージ M 49をよくピアノに使っているので、このM 49 Vも合うんじゃないかと思います。ドラムのトップにステレオで使ってみるのも良さそうだし、あとはギターアンプのオフマイクとして使うのもいいかもしれません。太い部分の音の空気感やリアリティーを録りたい時に使ってみたいです。
ビクタースタジオ 高桑 氏 : 僕は最近、ピアノをリボンマイクで録ることが多いのですが、リボンマイクは高域がなだらかに落ちるので、高域が足りないと感じる時に、それを補う形でM 49 Vを使ってみたいです。
Rock oN : やはり、M 49 Vは「太さ」がキーワードの一つになりますか?
ビクタースタジオ 八反田 氏 : 他のNEUMANNのマイクの中で比較するとそうですね。例えば、ピアノはミッドローの部分も大事なので、そういう部分をしっかり集音したい時にM 49 Vを選びたいです。
ビクタースタジオ 高桑 氏 : ナチュラルでモコモコしない「自然な太さ」を録ることができ、かなり好感触ですね。
Rock oN : 他社からもオリジナルを模した製品が登場してますが、本家のNEUMANN社から再発製品が登場したわけで、エンジニアさん的に、どう言うふうに受け止めていますか?
ビクタースタジオ 高桑 氏 : 他社から、色々といいマイクも出ていますが、「どこか違うなあ」と思うことが多かったんです。やはり、NEUMANN本家が作っているのは大きいですね。
ビクタースタジオ 八反田 氏 : 当然、経年変化等で、ビンテージモデルとM 49 Vでは音が違うのは当たり前ですが、ビンテージのM 49も、発売当時はこういう音だったのかもしれませんね。
Rock oN : 最後に、M 49 Vをどういう方に薦めたいですか?
ビクタースタジオ 高桑 氏 : M 49 Vが選択肢の一つとして選べると、録れる音の幅が広がるので、やはりスタジオの方にお勧めしたいですね。ピアノ、ボーカル、ドラムなどに加え、トランペットをはじめとするブラス系にもM 49をよく使うんです。ゲインが若干小さめな部分も、収録時に音が歪まないというところが利点として働き、扱いやすいんです。ぜひ、ブラス系の人たちにも試してもらいたいです。
ビクタースタジオ 八反田 氏 : 特に、アコースティック系のジャンルの人だと、M 49 V のポテンシャルを活かしたレコーディングができると思います。
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記事内に掲載されている価格は 2022年11月16日 時点での価格となります。
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