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六本木ラフォーレミュージアムにて12日,13日と開催されたThink MIDIへ潜入!
お邪魔したのは1日目MIDI’s LEGEND DAYと題されたMIDI策定から今に至るまでのヒストリーを辿りこれからを考えるといった内容となっている。
早速ロビーに入ると目につくのが往年の名機といわれるシンセサイザーたち。手前に見えるMini Moogを始め多くのシンセサイザーがソフトウェアとして形を変え今も多くの人の憧れとして君臨していますが、やはり実機の存在感は凄まじいものがあります。
このロビーの展示はMIDI Historyと銘打たれた展示スペース。MIDI誕生の瞬間とも言える1983年のNAMMショーにおけるSEQUENTIAL CIRCUITS(Dave Smith Instruments)とRoland JUPITER-6が当時の写真と共に展示されている。
MIDIアウトが実装されていないシーケンサー「MC-4」。音階や長さを数値で打ち込み、CV-GATEによってアナログシンセサイザーを自動演奏させることが可能で、YMOをはじめとするアーティスト・マニピュレーターに愛用された。
テクノサウンドの一時代を築いたヤオヤの相性で今もなお愛されている「TR-808」。今となっては動作する個体も少なく中古市場でプレミアが付くほどの人気を誇っている。
世界初のサンプラー「Fairlight CMI」。今でこそ5万も出せば購入できるものでしたが、当時としては1000万円を超える大型システム。さながらスーパーコンピューターといった代物でした。
今年refaceシリーズの発売で再び話題となったFM音源搭載のシンセサイザ「FM7」。従来のシンセサイザーとは異なり複雑な倍音の表現を得意としているため、当時としてはそのリアルなサウンドに全世界が驚愕しました。
デジタル機器の演算能力の向上により、仮想的に楽器の構造を計算で再現することで豊かな表現力とリアリティを実現した物理モデリングシンセサイザー「VL1」。ブレスコントローラーによるリードサウンドはフュージョンミュージックを中心に多くのアーティストの心を掴みました。
館内の一角には1921のテルミンから始まるシンセサイザーの歴史を掲示。加算合成による楽器の再現を目論んだハモンドオルガンや、鍵盤一つ一つにテーププレイヤーを内蔵したメロトロンといった試行錯誤が今のシンセサイザーの礎となっている。
YMO展示コーナーでは実際にライブをする際のセットを展示。いくらお金を積んでも買う事のできない代物ばかりで、実際に使用した傷やヤケがより一層の存在感を醸しています。ここまで間近で見る事のできる機会は滅多にありません。
メインステージではライブや講演が行われました。今回お邪魔したのは「パネルディスカッション MIDI Legend」と題されたトークセッションで、シンセを使った音楽制作の始まりから現代までを語り、今後のMIDIを考えるといった内容。ゲストは冨田勲氏・服部克久氏・千住明氏、ナビゲーターは松武秀樹氏とシンセ文化を日本に広めた錚々たる面々で会場からは登壇の度に盛大な拍手が送られました。
先ず最初に登壇されたのは千住明氏。慶応義塾大学工学部を経て東京藝術大学作曲科へ就学した過去を持ち、音楽業界に大きな衝撃を与えたWalter Carlos(現Wendy Carlos)制作の「Switched on Bach」の影響を強く受け藝術大在学中にはシンセサイザーによる音楽制作を始めたそうです。展示にもあったRoland MC-8,MC-4やYAMAHA QX1といったシーケンサーを駆使し、修了作品としてはJupitar 8やサンプラーを駆使し全て打ち込みで「EDEN」を制作。「冨田氏をならいマルチトラック録音を行い、それぞれに微妙な波形やボリュームの変化を与えることによってリアルなストリングスを再現した。」と、制作に対するこだわりや労力を語っていただきました。
次に登壇されたのは服部克久氏。開口一番、当初シンセに対して特段興味を持っている訳ではなかったといった意外な発言。Roland SHの発売を機に購入したもののしばらくの間は使わず、ジングル制作の依頼を切っ掛けに使用するようになったとの事。今でこそ日常に溢れている音ではありますが当初はシンセに対する理解が広まっておらず、クライアントから生音への差し替えの依頼もあったそうです。
最後に登壇されたのは冨田勲氏。日本で初めてモーグシンセサイザーを導入した「シンセの伝道師」とも言える存在ですが、初めてを開拓するのは非常に苦労したそうです。「説明書も何もないから本当に手探りだった」と目の前のパッチシンセサイザーに唖然としたというエピソードや、いい音ができた度に服部氏に夜な夜な電話を掛け、電話越しに音を聞かせたといった豪華メンバーならではのトークを聞かせてくれました。
そして話はMIDIにフォーカスし、現在ではDAWを使用したシーケンスを始め、機器の操作情報を送受信したり照明の操作といったところにも使用されているMIDIは汎用性に優れ素晴らしいと口を揃える4人。「今後のMIDIについて」といった問いには「プロジェクションマッピングなど音楽と音楽以外のコラボレーションといった場面にも広まって欲しい」と千住氏。オープンでシンプルな規格ならではの今後あらゆる場面への応用が期待されます。
最後にMIDI規格開発者である梯氏のメッセージVTRが場内に移し出されました。当時Rolandがシンセメーカー各所にMIDI規格の打診を行ったところ一番最初に名乗りを上げたのがSEQUENTIAL CIRCUITSのDave Smith氏で、先ほどの展示にもあったように1983年NAMM Showにおいて行われたRoland JUPITER-6とSEQUENTIAL CIRCUITS Prophet-600のMIDI接続展示が実現しました。このMIDI(Musical Instrument Digital Interface)という言葉は他でもなくDave Smith氏により生み出されました。そして現在に渡り多くの人が使用し、殆ど意識する事も無くなってきた現代においてこれからのMIDIについて開発者梯氏自身がこう語りました。
「MIDI自体は規格として変えないということが数多くのユーザーの為であると思います。また今年の大きいニュースとしてYAMAHAがSEQUENTIAL CIRCUITSのブランド名を返還したという出来事がありました。このことはMIDI開発初期当時のようなメーカーの壁を越えた素晴らしい出来事だと思います。”企業やプロといった特定の人の為ではなく、誰のものではない。それがMIDIのあるべき姿である”」こう締めくくりトークセッションは終わりました。
今となっては音楽にとってMIDIは切っても離せないものとなりました。今後より広い分野での応用が期待されますが、それは皆さんのアイディアやインスピレーションによって果たされるのかもしれません。
【Think MIDI 関連サイト】
・Think MIDI 特設ページ
・公益財団法人かけはし芸術文化振興財団
記事内に掲載されている価格は 2015年12月18日 時点での価格となります。
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