Zyliaは2012年に設立された、音楽収録後の音声処理や3Dオーディオ、バーチャルリアリティについての技術開発を行っている会社です。 これまでは主に他社への技術提供を行ってきたZylia社ですが、この度初の自社ブランド製品をリリースしました。
ZM-1
球体型のこのZM-1ですが、実は内部で19個ものマイクが組み合わされた、360度収録マイクなのです! マイクの一つ一つはスマートフォンなどで採用されているものと同様の小型のデジタルマイクが使われており、内部でA/Dされるため、USBケーブルでパソコンに直接接続して使用できます。
スマートフォンのマイクと同じと言ってしまうとその音質を疑う方もいらっしゃるかもしれませんが、技術的に同じというだけで、メーカー曰く「全く次世代のマイク」とのことです。実際にメーカーHPでスペックも公開されていますが、その特性は通常のレコーディングマイクと比べても遜色ない性能となっています。
19個のマイクカプセルは全て同一のものが使用されており、製造メーカーと直接やり取りを行ってその個体差まで調整されているそうです。
マイクはUSBバスパワーで動作するため、パソコンにUSBを繋ぐだけで収録準備完了です。 付属のUSBケーブルの長さは3mとなっていますが、将来的には専用の延長ケーブルを用意して、20mくらいまで伸ばせるようにしたいとのことです。
Zylia Studio
Zylia StudioはZM-1の音声を録音・再生・記録するための専用スタンドアローン・ソフトウェアです。
Zylia Studio上でSessionとして収録された音声は、後から音源ごとに分離したり、ボリュームやパンニング、広がりなどを個別に調整することができます。 調整後の音声をWAVファイルとして書き出すことが可能なので、バンドセッションやクラシック・アンサンブルなどの一発録り・デモ音源なら、Zyliaだけで完結させることもできてしまいます。
Zylia Studio PRO
こちらはDAWインサートとして使用するVST/AU対応のプラグインで、ZM-1収録の19ch音声をリアルタイムで分離して、それぞれを別のトラックに流すことができます。 19ch以上のマルチチャンネルトラックが作成できるDAWに限られてはしまうものの、ワンポイント・マイクの音声を音源ごとに分けてRECできるなんて、なんだか魔法のような話ですね…
ただ単に分離するだけではなく、個別に指向性や音源の高さを変えたりといった調整までできてしまいます!
Zylia Ambisonics Converter / Zylia Ambisonics Converter Plugin
ZM-1収録音声を1次〜3次までのアンビソニックス音声(B-Format)に変換する専用ソフトウェアとそのプラグインバージョンです。 3次アンビソニックスまで対応し、かつUSB一本で接続できる手軽さが受け、映画のサウンドエフェクト収録用途でも高評価を得ているようです。
なんでもこの製品のプロトタイプを発表したところサウンド・デザイン分野からも多数の問い合わせがあり、その要望からこのアンビソニックス変換ソフトが用意されたのだとか。
せっかくの360度収録マイクですし、アンビソニックス対応は嬉しい機能追加ですよね。
会場で実際にデモを体験しましたが、楽器ごとの分離精度は想像以上のものでした。音源ごとの分離は独自のアイソレーション技術が駆使されており、音源の方向と楽器の種類を指定することでそれに合わせた最適な処理が行われるそうです。実際に特定の楽器をソロにして聞いてみるとわかるのですが、その他の楽器の音も単純に音量が小さくなるだけではなく、しっかりとキャンセルされているという印象でした。
さすがに狙った音源だけを完璧に抽出するなんてことはできませんが、マルチマイク収録でもカブりが入ることを考えれば、当然といえば当然ですよね。 なにより複雑なセッティングも機材も必要なしに、ワンポイントでそれが実現してしまうということに驚きです!
元々はクラウドファンディングからスタートした本製品ですが、すでに当初の予想を超える展開を見せています。 新しいコンセプトを打ち出すその発想力もさることながら、それを実現させてしまう技術力。今後、要注目のメーカーになるかもしれませんね!
バンドルについて
Standardバンドルは上記のZM-1と「Zylia Studio」が付属して、価格は$599です。
もう一つがPROバンドルで、Standardバンドルに「Zylia Studio PRO」「Zylia Ambisonics Converter」「Zylia Ambisonics Converter Plugin」を追加したフルバンドルです。価格は$949で販売されています。
残念ながらまだ日本での販売価格・時期については未定ですが、今から発売が待ち遠しい製品です!
Zylia sp. z o.o.
http://www.zylia.co/
Writer.竹内
記事内に掲載されている価格は 2018年10月18日 時点での価格となります。
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