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作曲・編曲・プロデュース
1982年2月11日生まれ。愛媛県今治市出身。血液型O型
1960年代~70年代の洋楽ロックに大きな影響を受け、大学時代Superflyを結成。2007年、Superflyのギタリストとしてデビューを果たした後、作家活動に専念するため、作・編曲家/プロデューサーへと転向。2013年までSuperflyのメインコンポーザーとして精力的に活動。現在は一青窈、坂本真綾、シャリース、chay、大原櫻子、家入レオ、有安杏果など、さまざまなアーティストへの楽曲提供やプロデュースを行いながら、2017年、遂にソロプロジェクトの活動をスタートさせる。
多保氏の音楽センスを反映するプライベート空間
Rock oN : インテリアや置かれている小物にも多保さんのこだわりがありそうで、音楽的な雰囲気がする居心地いいスタジオですね! ここではどういった作業をされていますか?
多保孝一 氏 : 基本的には曲作りとアレンジを行います。ギターをリアンプ想定でライン録りしたり、コーラスを録りもやっています。ギターは、アンプシミュレーターで音作りしたものを本番でも活かす時もありますよ。ここは2代目のプライベートルームですが、前の部屋も同じような雰囲気でした。自分のテンションが上がる部屋にしたいと思っていて、家具や配色は自分の好きなテイストにしています。家具はミッドセンチュリー系が好きなんですが、インダストリアル系もミックスして普通の居住空間じゃない感じを出しています。
Rock oN : お好きなのはブリティッシュ系ですか?
多保孝一 氏 : ファッションに関してはブリテュッシュが好きですね。でも、アメリカの音楽も大好きですし、ミッドセンチュリーデザインものもあるので、ブリテュッシュオンリーというわけではないです。
Rock oN : ビンテージ系のギターが何本か置いてありますね!
多保孝一 氏 : 以前はフェンダー・テレキャスター・カスタム を使うことが多かったんですが、最近はギブソン ES-335を多く使ってます。作曲する時もES-335を使うことが多いんですが、セミアコなのでアンプにつながなくてもアコギっぽく鳴らせますし。
Rock oN : アーティストもここに来られることがあるんですか?
多保孝一 氏 : はい、プリプロ作業にいらっしゃいますよ。僕が横でディレクションしながら、仮歌録りを行ったり。商業レコーディング・スタジオだと窓がなかったりするじゃないですか。レコーディングの時は問題ないのですが、作曲するとなると僕はリラックスできる空間が必要なので、長時間いても居心地の良い空間にしたかったんです。
現在の多保流作曲法は?
Rock oN : 作曲について伺います。多保さんはどこから取り掛かることが多いですか?
多保孝一 氏 : 2年前くらい前までは、あえて「楽器を持って作るのはやめよう」という自分の取り決めを作り、小さな五線譜ノートに音符を書いてメロディーを作るスタイルでやってました。自分のコード進行の手グセみたいなものにつられて出てくるメロディでは、もう新しいものは生み出せないと考えたんです。そのやり方を一通りやってみて落ち着いた後、現在は、まずリズムループを組み、コードの白玉を流しながらマイクに向かって歌うんです。瞬発力でメロディーを作っていく、という感じですね。
Rock oN : リズムを意識しながらメロディを構築するのは、アメリカのヒットチューン的なスタイルに近いんでしょうか? 作り方を変えると、曲は変化するんですか?
多保孝一 氏 : 最近の海外のヒットチューンはすごくループ感があり、コードが展開しない中でもメロディーとアレンジの妙で起伏を作ることでどれだけ聞かせられるか、という手法なんですが、そういう作り方を意識するようになって、自分の曲もそんなフィーリングを取り入れた感じになってきました。
Rock oN : 日本のポップスは、そういった方向で作る感じは少ないじゃないですか? 多保さんはそこを狙っていきたいと考えてるということですか?
多保孝一 氏 : それもちょっとあります。日本でも、ダンス系トラックメーカーには、そういう手法で作られている方が大勢いると思いますが、いわゆるシンガーソングライター系だと、そういう作り方は導入しないと思うんです。そこに僕が持ち込んでみたいという思いもあるんです。色々聞いて研究しましたし、いいなと思う作品にもたくさん出会いました。去年~一昨年はジャスティン・ビーバーの「Purpose」をめちゃめちゃ聞いてました。あとカルヴィン・ハリスも。人からは「結構意外ですね」と言われるんですが。
Rock oN : あのスタイルのサウンドに日本語歌詞が乗ってうまく合致するような曲ができれば、これまでと違った流れが出来るかもしれないですね。
多保孝一 氏 : そうですね。ダンス系の人達とバックグラウンドを共有し、コラボ出来るんじゃないかって思います。日本だとジャンルに垣根が少なからずあり、それは勿体ないなと思うんです。海外だと、ロックとダンスの間にそういった垣根はない気がします。最近一緒にやっている10歳くらい年下で、Yaffleというペンネームで 活動している小島くんという人がいるんですが、彼は最先端の洋楽にすごく詳しく、一緒にいて刺激を受けるんですよ。
多保氏のプリプロを支える使用音源を公開
Rock oN : DAWはCubaseをお使いなんですね?
多保孝一 氏 : はい、Cubaseを立ち上げたら、さっき言ったように、まずリズムトラックを組むところから作り始めます。リズム音源は生ドラム系を使う時もあれば、キックやスネアを単発で持ってくる場合もあります。生ドラム系はビンテージサウンドの音が好きなこともあり、Native InstrumentsのAbbey Road 60s DRUMMERをよく使っていた時期もありました。最近は同じシリーズのAbbey Road Modern Drummerが気に入ってます。キック、スネアといったパーツごとにトラックを分け、個別にコンプ、EQ処理をしてグルーブが出るように調整するんですが、歌いながらメロディー作りをする時に、メロディーが乗りやすくなるんです。ベースはSpectrasonics Trilianを使って打ち込みます。以前はTrilianの中のウッドベースをよく使ってました。最近はフェンダー・ジャズベース系の音が多く、フィンガー/ピック弾きを曲に合わせて使い分けています。パーカッションが楽曲のメイン要素になる曲だと、この時点で入れておいてイメージを作っておきます。グルーブが大きく変わりますからね。
Rock oN : 最終的に生ドラムに置き換わるかと思いますが、ここで打ち込んだリズムパターンやフィルは本番まで活きたりするんですか?
多保孝一 氏 : リズムパターンは、基本、そのまま演奏してもらい、フィルはドラマーにお任せすることが多いですね。一旦リズムが出来ると、ピアノやパッドでコード感を足し、ある程度、曲のカラーが分かるところまで作ります。 ピアノはNative InstrumentsのNEWYORK CONCERT GRANDをよく使います。エレピはVINTAGE KEYSが多いですね。鍵盤系は最終的に生に差し替えるのが前提なので、リフ以外は白玉しか打ち込まないです。現場でプレイヤーの人に膨らましてもらうという感じですね。
Rock oN : そして、歌いながらメロディーを作るという流れですね?
多保孝一 氏 : そうです。デタラメ英語で歌いながら、Aパターン、Bパターン、、、という感じで、いいと思えるメロディーが出来たら残していきプールしていくんです。ある程度出揃ったら、聞き比べてセレクトします。僕だけかもしれませんが、メロディーに関しては1日に出るアイディアの量が決まっていると思うんですよ。そうなったら切り上げてその日は終了にします。
Rock oN : ストリングス音源は何を使われていますか?
多保孝一 氏 : IK Multimedia Miroslav Philharmonik 2をよく使います。あとはSteinberg HALionですね。サックスやトランペットといったブラス系は音の立ち上がりがよく、使い勝手がいいんです。
Rock oN : 次にシンセ関連の話をお伺いしたいのですが、アレンジの中で使われることは多いですか?
多保孝一 氏 : 頻度が高いわけでないですけど、MOOGやProphet-5といったサウンドは使います。最近はARTURIAのソフトシンセが多いですね。去年、Solina String Ensembleにハマったんですよ。ARTURIAのソフトシンセも使いましたが、とある現場で実機をレンタルしレコーディングで使いました。レンタル業者と知り合いからそれぞれ借りたんですが、なんと偶然にも2台のシリアルナンバーが1番違いだったんですよ! 音にわずかな個体差があって、そこが面白かったです(笑)。
続いて、エフェクタープラグインについて
Rock oN : 続いてエフェクターの話をお伺いしたいんですが、先ほど、リズムトラック作りの時点でも、パーツ毎にEQ/コンプ処理をされると言われましたが、コンプレッサーは何を使われていますか?
多保孝一 氏 : Cubaseに付属するMaximizerとPSP Vintage Warmerを併用します。アナログっぽくて音にパンチが出る感じです。エンジニアさんみたいに細かく追い込んで設定するというよりは、楽曲サウンドのトータルイメージを作るために使うという感じです。
Rock oN : リバーブ、ディレイといった空間系は何を使われますか?
多保孝一 氏 : リバーブはCubaseに付いているRoomWorks、ディレイもCubase付属のものです。ピンポンディレイが好きで、ボーカルに使うことが多いです。質感が気に入っているんですよ。
自分の個性を追求する大切さ
Rock oN : 多保さんがデモを作る上で気をつけることは何でしょうか?
多保孝一 氏 : コンペの場合、参考曲が送られてくる時が多いんですが、僕の場合、あえてそれを参考にしないことです。参考曲を意識して似せようとすると、ディレクターさんのイメージを超えるものが作れないと思うんです。どういう方向性の曲を求めているか、という情報さえあれば十分で、自分のサウンドやメロディーの個性を突き詰めることが大切だと思うんです。そのためには日々たくさんの音楽を聞いたり、色々なところへ行って感動したり、他の人にはない自分の個性や感性を磨く作業の方が大事だと思うんです。
Rock oN : DAWで色んなことができてしまう時代になっていますが、最近の機材の進化についてどう思われますか?
多保孝一 氏 : 僕らが音楽を始めた頃はカセットMTRの時代で、音を再現する手段も今と比べたらそんなに無い時代でした。でも今は、みんなが同じパレットを使って絵を描いてるような状況で、確かに恵まれていて羨ましい反面、もっと楽器自体のことを知って作って欲しいなと思います。例えば、今だとシタールの音もソフトシンセで出すことができますが、その楽器の歴史や発音原理を知っているのかと言うと、ほとんどの人が知らなかったりかしますよね。そこから自分の個性を出すためには、楽器の事を知るのも大事かなと思います。自分はクラシックロックが好きだったので、そこを切り口にして、どんな楽器が使われているかを、たくさんのレコードを聞いて覚えていったことで蓄積した知識と養った感性が、自分の作ってきた作品に自然に出ていたと思いますが、それが自分の個性を形作ってきたと思ってます。
想を支えるリスニング環境にSteinberg UR22を使用
Rock oN : メインの制作システムと別に、オーディオインターフェースのSteinberg UR22をお使いになられていますね。どういう用途でお使いですか?
多保孝一 氏 : 制作用とは別のPCに接続して参考音源のリスニング用に特化して使っています。曲のアイデアを喚起するための大事な部分とも言えますね。また、自分のデモを聞き返したりする時にも使います。長年Cubaseを使っているので、同じSteinbergということで信頼して使っているというのも大きいですね。デザインがシンプルで、音の感じもナチュラルで聞きやすく、今ではすっかり耳に馴染んでいる感じです。
Rock oN : 最後に、プロを目指しているみなさんにメッセージをお願いします!
多保孝一 氏 : さ僕の持論なんですけど、ポップスにとって大切な三要素は、「歌唱」、「歌詞」「メロディー」だと思います。その三要素を10代の若い頃から、ちゃんと意識して聞く耳をもつことが大事だと思います。サウンドは服と一緒で、時代によって変わっていくものだけど、歌詞、メロディーは普遍的なもので、たとえアレンジを変えても世の中に継がれていくと思うんです。表層だけでなく、普遍的な要素を意識しながら、自分なりのサウンドを追求していって欲しいですね。
Rock oN : 今日はありがとうございました!
製品紹介
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メーカーHP
Steinberg
https://japan.steinberg.net/jp/
記事内に掲載されている価格は 2017年10月31日 時点での価格となります。
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