Pioneer DJ RM-07 meets TINYVOICE PRODUCTION 〜抜群に良いのは同軸構造ならではの定位感〜
Pioneer DJ株式会社から、モニタースピーカー RM-07、RM-05が発売されました。ここしばらく、音楽クリエーターの皆さんにとってパイオニアのブランドイメージは、CDJプレーヤー、ミキサーといったDJツールのイメージが大きいはず。しかし、パイオニア株式会社が1938年にスピーカーメーカーとしてスタートし、スピーカー開発に長い歴史と実績を持つという事実は、若い世代のクリエーターにあまり知られていないのではないでしょうか? 今回、現在のシーンを支える若い世代のクリエーターの皆様に、RM-07、RM-05の持つポテンシャルを認識してもらうべく、日本のR&B、HIPHOPシーンの先頭を走るクリエーター集団「TINYVOICE PRODUCTION」の皆様にRM-07のサウンドをチェックして頂く機会を得ました!
取材日:2015年11月12日
取材場所:TINYVOICE PRODUCTION 「Studio Vision」
まずは、RM-07、RM-05の開発経緯、特徴について、Pioneer DJ 事業企画部 菊池 望氏から説明して頂きました。
まず、パイオニア株式会社が手がけたブランド「TAD」(Technical Audio Devices)は、1975年に開発をスタートし、1978年にブランドの代表作であるユニットスピーカーTL-1601、ウーファー、コンプレッションドライバーであるTD-2001、TD-4001を発売し、数々の名盤を生んできたロンドンのAir Studiosに採用されるなど、多くのプロの現場で高い評価を勝ち得てきた、高度な技術開発の歴史があります。
そこで、2000年後半に開発したハイエンドモニターReference Oneの同軸構造による高解像度トゥイーター技術の優位性を土台にし、現代のプライベートスタジオやホームスタジオにおける音楽制作に最適なモニタースピーカーを産み出すべく開発したのがRM-07、RM-05になります。ですので、パイオニアからスタジオモニターが突然出てきたイメージを抱かれる若い世代の方もいらっしゃるかと思いますが、この製品を支えるバックグラウンドには、弊社の高い技術開発の歴史があります。
現在、同軸ドライバーを採用したモニタースピーカーが、幾つかのメーカー様から発売されており、一定の人気を得ていることはみなさんご存知かと思います。同軸ドライバーの優位点として、ウーファーとトゥイーターの音源位置が同軸上に揃うことで、ニアフィールド環境でも位相のずれを発生させず、音像定位を確認しやすいということがあります。指向性を正確に制御してユニット間の干渉を抑制するとともに、近くに壁などがある場合の反射影響を低減します。設置環境としてプライベートスタジオやホームスタジオをメインに想定しており、狭い環境でも反射の影響を少なくすることを考慮し設計しています。
アルミニウム素材を採用した独自開発の「HSDOMトゥイーター」を搭載しています。理想的なピストンモーションと分割振動がバランスよく組み合わさることにより、50kHzまでの高域再生に対応し、高い解像度のマスター音源やハイレゾ音源をクリアに再生することができます。
筐体には高い剛性のアルミニウムダイキャスト筐体を採用しました。また、筐体形状も曲面のみで構成し、一切、平行面を持たない構造とすることで、内部で生まれる定在波や外部で発生する回折を低減することができました。
弊社特許技術「AFAST(Acoustic Filter Assisted System Tuning)テクノロジー」を採用しています。これは、逆位相波形を発生させる音響管を筐体内部とポート部に持たせることで、スピーカー内部での共振により生まれる定在波を効果的に抑制し、クリアな再生を実現します。
フロントバスレフポート部に小さな溝をつける「Grooveテクノロジー」を採用し、小さな空気の渦を発生させ空気の抵抗を減らすことで、低域音を前面にスムーズに放射し、レスポンスのよいクリアな低域音再生を実現します。
プラオベートスタジオやホームスタジオでの環境を想定すると、壁からの反射を始め、スペースの狭さに起因する様々なサウンドへの影響が考えられます。RMシリーズはそのような影響をできるだけ減らすために、様々な工夫あるテクノロジーを内包した設計思想で作られているようです。
ではTINYVOICE PRODUCTION様のStudio VisionにRM-07をセッティングし、皆様が聞き慣れた音源を再生しながら、サウンドの感想をお伺いしました。
今井了介氏(TINYVOICE PRODUCTION 代表):
「同軸構造ということで、位相は抜群にいいですね。定位感がいいと、パンを動かし始めた時点の微細な動きが分かるんですが、この製品はクイックに反応できてるなという印象を持ちました。中には定位が甘く滲んで聞こえるモニターがあるんですが、RM-07は同軸の強みを活かし、定位がしっかりしていていいですね。また、100Hz~200Hz付近に少し膨らみを感じましたが、楽曲によっては気持ち良く聞こえる時もあり、制作用には向いてるのかも...と感じました。ベースなど楽器を弾いてる時や打ち込んでる時は楽しく作業できそうですね。」
「同軸の場合、どうしてもリスニングポイントに適する角度が制限されてしまうんですが、最近、制作の現場ではco-writeや共同プロデュースといったスタイルが増えてきてるので、複数のクリエーターで作業することもあります。指向性が強い分、その角度の中に入って聞いていれば、みんながほぼ同じ印象で聞けるという強みもあります。そこで、ユーザーに向けて、セッティングのアドバイスみたいな説明書が付いてくるといいかもしれませんね。」
MANABOON氏(Producer/Composer/Track Maker/Arranger):
「このStudio VisionでTDすることも多いんですが、いつもの印象と変わることなく自然に耳に入ってきました。解像度の再現性はすごく高いですね。」
「低域に関して、自分がトラックを制作している時に大事にしているポイントに、キックのアタックのスピード感と薄っすらながらも存在感あるディケイの音作りの部分がありますがその両方において、非常に繊細な再現性を感じました。楽曲制作時にもとても使いやすいスピーカーだなと思いました。」
村田亮(a.k.a.Tetra Gear)氏(Producer/Composer/Track Maker/Arranger):
「今井さんと同様に、楽器を弾く時は楽しく制作が出来そうだと感じました。」
「普段はトラックに耳が行く事が多いのですが、RM-07を漠然と視聴して自然と耳に入ってきたパートはボーカルで、クリアな高域が印象的でした。例えば自宅スタジオで、ボーカルトラックの細かい追い込み作業をする時には相性が良さそうだと感じました。」
ここまで、今井氏、MANABOON氏、村田氏からクリエーターの視点から感想をお伺いしました。続いて、エンジニアであるお二人に感想をお伺いしますが、クリエーターとは違ったエンジニアならではの視点で、細かな意見が出てきました。
西川友絵氏(Recording & Mixing Engineer):「付属のゴム脚をつけない状態では、特徴的にある低域が出てる部分を感じましたが、付属のゴム脚を付けることで大幅に改善され良くなりましたので、ゴム脚の取り付けは絶対必要ですね。」「本体イコラザーのMID EQですが、「MID」という表記ですが、マニュアルを読んだら140Hzと表記されていました。この部分に関してカット方向のEQしかないですが、これは何か意図があるのでしょうか?」
Pioneer DJ 菊池 望氏:「はい、本モデルをコンソールやデスクトップに設置したとき、反射により増加する帯域が140Hzになります。今回の設置でもコンソールでの反射影響が多少あるのかもしれません。反射で増加する中低域音を調整するためのMID EQですので、カット方向のみ調整できるようにしております。」
西川友絵氏:「なるほど、想定環境を念頭に置いた帯域設定なんですね。MID EQを-2dBしてみたら、癖があった低域がすっきりして聞きやすくなりました。あと、6KHz付近の盛り上がりですが、最初は分離して聞こえたんですが、最近のトレンドの派手な音作りですと、歌のこの帯域付近が立っていないといけないポイントなので、実際のシーンにあった使いやすい部分なのかなと感じました。」
鎌田 匡人氏(Recording & Mixing Engineer):
「私も、付属のゴム脚をつける前と後では全然印象が変わり、無駄なダブつきがなくなるので、ゴム脚の取り付けは必ず必要ですね。」
「さらに、エンジニアとして細かな部分について言及しますが、西川さんも言ってましたが、私も100Hz付近に少し膨らんだ印象を持ちましたが、MID EQの調整で対応できそうですね。上の帯域の9〜10KHzが伸びてる感じがするので、そのすぐ下の高域が少し物足りなく感じてしまい、その辺をEQしてしまいがちになりそうだなと感じました。マスタリングされた音源を聞いてる感じはすごく気持ちいいので、確かにホームスタジオでの制作には向いてるなと感じました。」
Pioneer DJ 菊池 望氏:「今日セッティングした個体はまだ十分なエージングを施してないのですが、エージングすることで高域の硬さが取れ滑らかになり、加えて低域の方も伸びてくると思います。」
一通り、皆さんそれぞれの好みの音源での試聴が終わり、談笑が続く中、最後に、今井氏に総合的な感想を伺ってみました。
今井了介氏:「Pioneer DJということで、最初はクラブミュージックの再生に特化した、低域がブンブン鳴るようなスピーカーなのかなと思ってましたが、そうじゃなくて、いい意味で裏切りがありました。恐らく、もっとエージングを重ねることで、ローエンドもさらに伸びて、今日感じた中低域の膨らみも解消されるんじゃないかなと思います。」
「やはり抜群に良いのは同軸構造ならではの定位感、位相の良さですね。この部分は、価格帯が上になる他のブランドの同軸製品にも引けを取らないと思います。同軸ならではの定位感の良さを味わいながら制作作業したいというのであれば、他ブランドの同軸構造製品よりも、価格的に見てチョイスしやすいのでオススメですね。」
最後に同社から発売されているヘッドフォン HRM-7もチェックしていただきました。RM-07と同じ傾向のサウンドと、ベロア素材を採用したイヤーパッドの装着感の良さで皆さん好印象。今後、Pioneer DJはプロオーディオ/スタジオ向けの製品に力を入れていくということで期待できます。
★Pioneer DJ RMシリーズ & HRM-7
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