
“日本プロ音楽録音賞”は、優れた録音作品を手掛けたエンジニアを顕彰することで、エンジニアの技術向上と次世代エンジニアの発掘を図るために設立された顕彰制度。第1回は1994年に開催され、今年で第32回を迎えます。そこで今回は、第31回日本プロ音楽録音賞において受賞された若手エンジニアの丸山武蔵氏、NNZN(ナンゼン)氏それぞれにエンジニアになったきっかけや受賞作品に関すること、日本プロ音楽録音賞に対する思い、そして音楽業界主要5団体が主催するMusic Awards Japan 2026と連携したグランプリエンジニア賞について、日本プロ音楽録音賞運営委員長 高田英男氏の司会によりお二方からそれぞれお話を伺いました。
最初に第31回日本プロ音楽録音賞 Best Master Sound部門(ポップス、歌謡曲)にて最優秀賞、そして「Music Awards Japan 2026 / グランプリエンジニア賞」を授賞された丸山武蔵氏へのインタビューについてご紹介いたします。
インタビュー本編
司会 : 高田 : レコーディングというものに出会ったきっかけは何だったのですか?
丸山 : 高校1年生の頃、バンドで学園祭に出ようとした際にオーディションがあったのですが、それが音源審査だったんです。実際の演奏力では3年生には勝てないと思い、「編集してごまかせば勝てるんじゃないか…!」と、ちょっと小賢しいことを考えたのがきっかけでレコーディングに出会いました。今思うとだいぶ不純な動機です(笑)。
高田 : バンドでの担当楽器は何だったのですか?
丸山 : その時はギターでしたが、ベースや歌をやっていたこともあります。小さい頃はピアノもやっていました。
高田 : 曲も作ったりしていたのですか?
丸山 : 作っていました。他の人のために曲を作ってあげたりもしていましたね。
高田 :音楽の理論を学んだりもしていたのですか?
丸山 : 小さい頃にピアノは習っていましたが、理論を体系的に学んだことはなかったです。ただ、高校時代にミスチルが好きすぎて当時あった200曲近くを全部弾き語りできるようになってしまいまして、そんなことをしていくうちにコードなども相対音で聞き取れるようになっていきました。

高田 :そうして音楽への興味を深めていったわけですね。
丸山 : そうですね。曲を作ったり、他の人のバンド活動を手伝ったり、自分でも演奏したりする中で、レコーディングしてミックスする過程が自分としては一番楽しいし得意だなと感じて、レコーディングエンジニアに興味を持つようになりました。
高田 : そして音響系の専門学校に入る選択をされたわけですね。
丸山 : はい、東京スクールオブミュージック専門学校渋谷に入学しました。
高田 : そこを卒業してビクタースタジオに入られたということですが、割と早くフリーの道を選ばれていますよね。
丸山 : 在籍した期間は3年くらいで、まだアシスタント仕事が主だったかと思います。今思うとよく踏み切ったなと思いますが、若さと勢いで飛び込んでいった形ですね。
高田 : 割と思い切った決断だったんですね。何かきっかけがあったのですか?
丸山 :きっかけとしては学生の頃について回らせていただいていたエンジニアさんが自分のスタジオを構えていたのも大きかったですし、決定的だったのはビクタースタジオ時代に出会ったフリーランスのエンジニアの方が作られたスタジオの音に衝撃を受けたことでした。「これは自分でしっかり調整した環境の中で、とことん音と向き合う時間を作らないと、到底敵わないな…」と痛感してしまって。それで事業計画書を提出して日本政策金融公庫から融資を頂き、ドカ借金をして24歳で自分のスタジオを作るに至りました。

高田 : それでは日本プロ音楽録音賞の受賞作品についてお話を伺っていきますが、プロ録は知っていましたか。
丸山 : ビクタースタジオの先輩方が受賞されていたので存在は知っていました。自身が応募したのは今回が初めてです。
高田 : 今回のプロ録受賞コメントに「天才ジャン海渡と、鬼才中村佳紀と、猫好き丸山武蔵の作る音楽が1人でも多くの人に聴かれる機会を作るべく、こちらに応募させていただきました。」とありましたが、そのお二方と組んで作品作りをするきっかけは何だったのですか。
丸山 : 中村佳紀さんは、自分が専門学校1年生の時に作曲コース3年生の先輩でした。実は僕が入った頃の学校はエンジニアコースの2〜3年生がほとんど辞めてしまっていて、その中で僕は勝手に3年生の授業まで受けていたんです。それで「意気のいい1年生がいるらしいな!」と目に留まって、すぐに卒業制作に関わることになり、それからずっと良くしていただいています。
高田 : では、ジャン海渡さんとの出会いはどんな感じだったのですか。
丸山 : ジャン君は結構前からSoundCloudに自分の曲を上げていたのですが、その活動を中村さんも所属するGeek Kids Clubというグループのクルーが手伝っているうちに本人も本格的なソロ活動ができるようになってきました。そのタイミングで一緒にやろうと僕を紹介してくれたんです。
高田 : この楽曲は丸山さんがエンジニアとしての立場にとどまらず、エフェクトやコーラスを含めたアレンジにも関わられているように感じますが。
丸山 : 歌録りは主にジャン君と二人で行っていて、ディレクションについても結構踏み込んでやっていますし、歌録りの段階で大体のエフェクトも一緒に作りながら進めています。
高田 : すごいですね、そこまで踏み込んで。
丸山 : 録りの段階からがっつり踏み込むと共通のビジョンがしっかりできて目指したい方向に行きやすいと思っています。
高田 : プリプロの段階からもう関わられている感じですか。
丸山 : プリプロはジャン君が一人で宅録して持ってくるのですが、そこから方向性を読み取って、本人と相談しながらエフェクトを試して進めていきます。ミックスの際には中村さんからもアイデアをもらってさらにエフェクトを加えたりしています。
高田 : この楽曲のヴォーカルはセクションごとに細かく組み立てられていて、何声も重ねたり、音色感を変えたり、エフェクトをかけたりと、メインヴォーカルと一体になったその処理がすごいなと感じたのですが。
丸山 : ジャン君自身もちゃんとイメージを持っているので、そこは踏襲しつつ、最終的なミックスでのハモやコーラスに関しては、自分がアレンジしているくらいの気持ちで思い切ってやっています。そうすることで、エフェクトやディレイを思い切り使って遊ぶ曲と、あえてストレートに聴かせる曲というメリハリが見えるようにしたり、展開がマンネリ化しないよう引き算をしたりしながら、作品全体を通してブレないようコントロールしています。
高田 : パッと曲が始まった瞬間に印象的なシンセの早いフレーズがあったり、イントロにリバーブで広がる水滴の音があったりしますが、あの辺りはアレンジされた音として入っていたのですか。
丸山 : 水滴の音は最初からあのリバーブがかかっていたかと思います。すでにイメージが固まっているものについては「Wetの音でください」とお願いすることも多いです。もう10年以上の付き合いなので、お互いのイメージ共有はスムーズにできていると思います。
高田 : 曲のポイントポイントで印象的で刺激的な強い音が入っていますが、あれも最初からそのイメージで入っていたのですか。
丸山 : そのイメージかなと読み取って、あの音は攻撃性のある歪みだったり、飛び出すような広がりを持たせています。
高田 : それから、ある種カオスのようにヴォーカルが入っているのですが、ちゃんと全てが見えるように整理されていて、緻密だなと感じました。
丸山 : ありがとうございます。
高田 : そして途中からリズムパターンが変わって静かになる部分があるのですが、サウンドの風景が変わっていいなと。あの部分は音の質感も変えているのですか。
丸山 : そうですね、ハイパーポップのようなところから一段変化をつけています。ヴォーカルを含めて基本的にほぼ全ての音を歪ませているのですが、あの部分だけはだいぶ薄くした記憶がありますね。あそこのアレンジ自体も素晴らしいと思います。
高田 : アコースティックな楽器を録音している場合は、ドラムやピアノなど楽器別のバランスがあって、それらを組み立てていくわけですが、打ち込みであれだけの音源の数を組み立てていく場合はどんな風にイメージするのですか。
丸山 : 中村さんも自身でゲーム音楽を作る際はMixまで手がけることもあるので、ラフの時点でちゃんと意図が見えるバランスをくれるんです。だから僕の方は、逆に変に細かく整理しすぎないように意識しています。「意志がなく綺麗にまとまったバランスだけには絶対にしない」というこだわりがあって、基本的には爆発力で攻めるタイプです。
高田 : そんな感じが伝わるミックスだと思います。アーティスト感覚と言いますか。
丸山 : そう感じていただけたなら嬉しいです。いわゆる「バランスが良い」というのとは少し違うのですが、アーティスト自身がミックスしたものが結構好きなんです。楽曲の美味しいところがグッと引き出されている感じがして。そういうことをエンジニアの目線でもやりたいと考えています。
高田 : それでは、丸山さんにとって魅力のあるサウンドとはどんなものですか。
丸山 : 「意志のある音」と言うのでしょうか。上手くまとまっているかどうかではなく、楽曲の中から「こうしたい」という思いが伝わってくる音に魅力を感じます。もちろん、綺麗にまとめようという意志があったとしたらそれはそれで好きです。
高田 : ありがとうございます。プロ録では若手エンジニアの作品に対する審査評価をチャートにしてフィードバックしてお送りしているのですが、あれは参考になりましたか。
丸山 : 普段エンジニアさんの目線でフィードバックをいただけることは少ないのでありがたかったです。ただ、チャートの各審査ポイントに凹凸があまりなく平坦で、よく分からなかったかもしれないです(すみません)。一言とかでもいいので、作品に対しての評価コメントがあるととても嬉しいなと思いました。
高田 : なるほど。審査委員全員の評価を総合すると、たしかに平均的になってしまう傾向はありますね。その辺りは検討します。ところで第30回のプロ録からは「Music Awards Japan」と連携して「グランプリエンジニア賞」を選出していて、2回目となる「Music Awards Japan 2026」では丸山さんが選出されましたが、あのステージに立ってみて如何でしたか。
丸山 : いつもスタジオに籠っている身なので、たくさんの人が集まって生中継もされる状況にはびっくりしました。Music Awards Japanのように多くの人に注目される賞の中で名前が知られるというのは、これからエンジニアを目指す若手にとって、「頑張っていくぞ」という気持ちにつながる、勇気になる出来事でもあると思います。そもそもプロ録が30年以上続いていること自体がまず素晴らしいことだと思っているので、ぜひ続けていただいて「グランプリエンジニア賞」の知名度がもっと上がっていくといいですね。
高田 : 何か若手エンジニアやプロ録に向けて伝えたいことなどはありますか。
丸山 : もっと「プロ録を受賞するメリット」が感じられるといいなと思います。エンジニアは表に出ることがあまり好まれないイメージもあって、こういう賞にエントリーしづらい空気は少しあると思うんです。でも賞金や副賞があるとそれを口実にエントリーしやすくなる気もします。プロ録はどちらかというとエンジニア個人の名誉賞のような印象がありましたが、その辺りはMusic Awards Japanとの連携で変わってきてはいるのかなと感じます。
高田 : そうですね。エンジニアが受賞したことでアーティストが喜んでくれて、それが広報に繋がるケースもあるんですよね。
丸山 : 今回のMusic Awards Japanの受賞はアーティスト本人やレーベルの方にもすごく喜んでもらえました。Music Awards Japan受賞作品のプレイリストに載ったこともあって、サブスクの再生回数も相当伸びているんです。プロ録へのエントリーは、まだ世に知られていないアーティストにとってもMusic Awards Japanへ繋がる道で多くの人に知られる機会になり得ますし、しかも広告費用などもかかりません。この点を制作のA&Rの方にももっと伝えていくとより広がっていくかと思います。
高田 : 他に何かありますか。
丸山 : プロ録は今、少し厳格でクローズドな賞だという印象を持たれがちな気がするので、もっと年齢層やそれぞれの得意ジャンルも幅広く審査員の方をお呼びできればより多くの人の目標になると思います。
高田 : その点は前々回から、各スタジオのエンジニアに一次審査員として参加してもらうなど、オープンにすることを意識しています。参考にさせていただきますね。
丸山 : そうですね、その空気が業界全体に伝わっていくといいなと思います。
高田 : お忙しい中、今日はありがとうございました。
高田 : レコーディングエンジニアという仕事を知るきっかけは何だったのですか?
NNZN : 高校時代にバンド活動をしていて、ライブに出たりしていました。その中で自分達の曲を作ってCDにして売ろうかということで、地元のリハスタでレコーディングをしたのですが、それがレコーディングエンジニアと言う仕事を見る初めての機会でした。もちろん以前からレコーディングエンジニアを認識はしていました。
高田 : バンドでの担当楽器は何だったのですか?
NNZN : その時はベースを担当していました。メンバーの中に作曲が得意な人がいて、アレンジなどメンバーで進める中、音楽を作り上げることに興味を深めて行きました。
高田 : なるほど、ミュージシャン、そしてベーシストと言う下地もあるんですね。レコーディングエンジニアを目指そうとしたのはなぜですか。
NNZN : 元々音楽に関わる仕事をしたいと考えていましたが、自分が表に出るのは性に合っていないので、レコーディングやPAのエンジニアに興味を持って、その道に進もうかと考えていました。
高田 : そしてレコーディングスタジオへの就職を目指されたと言うことですね。
NNZN : そうですね、結構いろんなスタジオを受けたのですが、最終選考まで進んでも落ちるというのを繰り返しました。そしてようやく、卒業式の直後位に受けたスタジオでの採用が決まったという感じです。大阪の専門学校に通っていたものですから、バイトで稼いだお金を就活のための交通費に注ぎ込んで大変でした。
高田 : そしてスタジオでのキャリアがスタートしたわけですね。
NNZN : はい、最初はひたすら準備と掃除がメインで、初期段階では機材には触れずに、アシスタントエンジニアの後ろでセッションを見学して、いろんなことをひたすら吸収していました。
高田 : そしてスタジオでのアシスタントエンジニアを経験して、メインのエンジニアとなるわけですが、そこまでは結構時間が掛かりましたか。
NNZN : 多分、自分は早い方だったと思います。スタジオに所属しながら、アーティスト活動している知人の楽曲の録音やミックスをさせてもらったり、経験をたくさん積む機会に恵まれたこともあると思います。
高田 : そして最初に働いていたスタジオから別のスタジオに入り、フリーランスとなったわけですよね。
NNZN : はい、フリーランスには昨年の春になりました。
高田 : 最初スタジオに入ったことは、ご自身のキャリアの中でどう生きていますか。
NNZN : 自分があまり聴いてこなかった音楽カルチャーに、いい意味で強制的に触れられる環境だったので、それが若いうちに経験出来たことはプラスとなりました。
高田 : エンジニアをやる上で心掛けていることは何ですか。
NNZN : 今はアーティスト自身がDAWを操作してミックスも出来る時代なので、それを上回るものが無いといけないと言う課題は持っています。

高田 : では、第31回日本プロ音楽録音賞でニュー・プロミネント賞を受賞された楽曲「星街すいせい/ビビデバ」について伺いたいと思いますが、この楽曲に関わるきっかけはボカロPツミキさんからだったのですか?
NNZN : いえ、ツミキさんとは今回が初めででした。1stアルバムの頃から星街すいせいさんチームに呼んでいただく機会が多かったので、それで今回も声がかかった感じですね。ツミキさん自身、自分でミックスまで出来てしまう方なのでそこを超えた表現が出来るサウンド創りを目指しました。
高田 : 受賞コメントに「全体を通して”今っぽさ”に繋がるトランジェント感を意識しつつ」とありましたが、この楽曲で拘った部分はどんなところですか。
NNZN : こういう音の要素がたくさんある楽曲は、一歩間違えると平坦でノレないものになりやすいのですが、そうならないように、どんな再生環境でもキックとベースのグルーヴが聴こえて歌が主役であることを意識して作っていました。最近は特にトランジェント感を自分のサウンドの特徴として評価いただくことが多いのですが、ちょうどその意識が強くなったのがこの曲をやっていたくらいの時期で。トランジェント感と、サビのベースのうねりやグルーヴ、踊りたくなるような感じを意識しました。
高田 : このビビデバと言う楽曲を聴くと、パート毎でヴォーカルも含めて音創りを変えていますが、これはサウンドイメージを事前に作ってからミックスに入られたのですか。
NNZN : この作品はヴォーカルダビングもしていますので、歌入れの時に全体的なサウンドイメージが創れましたし、いただいたトラックには既にそのようなイメージを感じさせる部分がありましたので、それを如何にサウンドとして音楽を表現して行くかと言うことに努めました。パッと聴いていただいたよりもヴォーカルのトラック数も多く、セクション毎での処理を沢山やった記憶があります。
高田 : それは、全体を作ってからセクション毎に調整をして行くのか、それともセクション毎に処理したものを組み立てて行くのか、どちらなんでしょうか。
NNZN : 全体での調整は最初にやりますが、細かくセクション毎での調整は必須ですね。アレンジも展開によってガンガン変わり、抜けさせたい帯域も変わって来るので、セクション毎に細かく調整して仕上げて行きました。
高田 : このミックスは超低域から超高域まで各帯域の処理が素晴らしいのですが、その辺りはどんなことに気を付けていますか。特に低域の処理が素晴らしいと感じますが、その辺りはベースを弾いて来たことに由来する部分はありますか
NNZN : もちろんあるとは思いますが、そもそもこの楽曲自体、低音域サウンド創りが最も重要な楽曲だと思うのでそこは拘りました。低域のサウンド創りとして、キックとベースの帯域整理、キックに対してどこでベースを鳴らすか、どこで抜けさせるかを考えています。とはいえあくまでも主役は”歌”なので、そこのフォーカスがブレないような意識は常にあります。
高田 : この曲ではヴォーカルを歪ませている部分がありますが、これはアーティスト側からの要望ですか。
NNZN : はっきりとは覚えてないですが、思いつきでやったような記憶があります(笑)、展開的にも何か欲しかったのでそういうアプローチになりましたね。
高田 : ヴォーカルのパンニング処理について教えて頂きたいのですが。
NNZN : メインヴォーカルはセンター定位ですが、コーラスパートなどは左右に広げ、更にエフェクト処理でオクターブ上とか下など薄いバランスで創り、コーラスの壁みたいなサウンドにもしていると思います。
高田 : アレンジ意図をくみ取り、音場空間を拡げたり狭くしたりと言うように感じましたが。
NNZN : リバーブとか空間系のエフェクトもセクション毎で変えていますね。こうして自分の感性・技術を駆使して楽曲の魅力を少しでも膨らませられないか思考錯誤することは、エンジニアとして凄くやりがいのある部分です。
高田 : こう言ったジャンルの音楽はイメージとして帯域が狭いとかあるんですが、オーディオ的にも帯域バランスが良くクリアで、サウンドが整理されている感じがするのですが、その辺りは意識されていますか。
NNZN : 特にオーディオ的な意識はしていませんが、この作品のツミキさん音源そのものがオーディオ的にも心地良い音源でしたので、結果的にオーディオ的にも心地よいサウンドになったのではと思います。
高田 : 迫力のある音創りとなっていますが、低域のダンピング感がちゃんとありますよね。迫力出すためにコンプを掛けるのですが、そのダンピング感が損なわれているサウンドも多くありますが、その辺りについてもかなり意識されていますか。
NNZN : これはいつもそうなんですが、ミックス途中の時点でマスタリング想定のレベル感に音を突っ込んだ状態をモニターしながら作り込んでいます。なので、その時点で全体が潰れすぎてしまわないか、ダイナミクスを意識していますね。
高田 : 最終的なリファレンスのモニターはいつももどうされていますか。
NNZN : このスピーカーでこんな風に聞こえたら大丈夫とか、スマホに音源を入れてイヤホンで歩きながら、いつも聴いている曲と比べて確認する等しています。そうして気になった部分を戻って直すなどしています。
高田 : 1曲のミックス時間はどれ位掛かりますか。
NNZN : ミックスの時間としては1日で終わってしまうのですが、出来れば一旦寝かせて次の日に確認するなど、2~3日かけてミックスしていると思います。レコーディングやエディットに関わっている楽曲は、その作業の中でイメージ作りも出来るので、ミックスも早いし迷いも少ないという感じはします。

高田 : それでは日本プロ音楽録音賞が連携している「Music Awards Japan」について伺いたいと思います。Music Awards Japanの設立を受けエンジニアを顕彰する賞について打合せを重ねた中で、プロ録受賞作品の中から更に「グランプリエンジニア賞」を絞り込むことを昨年から始めましたが、このことについてどう思われますか。
NNZN : まだ2年目ですよね。これが長く続いて行くことで、この価値が高まると思います。10年後、この賞がどんな価値を持っているのか凄く楽しみです。自分も授賞式に参加して、「華やかで良いなあ」と感じたので、どんどん広がって欲しいと思います。
高田 : この連携によってエンジニアという職業が認知される、そしてエンジニア自身が紹介されることが大事なことだと考えているので、そう感じていただけるのは嬉しいです。
NNZN : ようやくスタッフのクレジットがサブスク側でも見られるようになったりしてきましたが、自分達の名前が残る賞があることは本当に良いと思います。
高田 : 私たちの時代はアレンジャー、ミュージシャン、ディレクターがいて、エンジニアの役割りというのも概ね決まっていましたが、NNZNさん含めて今の時代はエンジニアはクリエーターでエンジニアプロデューサーとして、もっと表に出来るべきと考えています。誰がアレンジしているのかと同じ位の価値観があるのではないかと。
NNZN : そうですね、先程も話しましたが作家やボカロPさんとかも、自分で良い音が創れる・ミックスが出来る時代になって来たので、そこに対して自分が存在することのメリットを示せるような立ち位置になりたいですね。
高田 : 若いエンジニアがプロ録へ応募がしやすくなるような取り組みは何かありますでしょうか。
NNZN : 自分自身は推薦によるエントリーだったのですが、参加することでエンジニアの横の繋がりが広がるきっかけとなったので、どんどん参加して欲しいですね。そうすることで、あの人もこの人も参加していると言う連鎖が生まれると思います。
高田 : プロ録の審査はBest Master Sound部門の一次審査委員(約50名)など、多くの人が関われるオープンなものに変わって来ています。
NNZN : そういうことも含めて、どんどん言って行くべきだなと思います。
高田 : 前回のプロ録から若手エンジニアの応募作品について本審査の採点結果を集計してチャートに記してお送りしていますが、それについては参考になりましたか。
NNZN : 難しいのかも知れませんが、他の人のチャートが見られたりしたら良いなあと。また、もっと細かく色んな意見や時にはダメ出しがあってもと良いのにと思いました。ただ、普通に仕事をしていると相対的な音の評価をされることがないので面白かったです。また、審査員の職業による評価の傾向や自分が手掛けた色んな曲の評価も見たいなあと。
高田 : 最後にお伺いしますが、NNZNさんにとって魅力のあるサウンド(良い音)とは何でしょうか。
NNZN : 音というポイントだと、時代やイメージしたものによって変わると思いますが、エンジニアとして関わって行く上での「良い音」だとすると、創っている人・自分の曲として出して行く人たちに対して、自分の価値を示すことが出来るかってことだと思います。逆に言うと「良い音」であると言うのは大前提で、それに自分自身が関わった価値をどのように付けて行けるかが大切だと考えます。
高田 : 今日はありがとうございました。
第32回日本プロ音楽録音賞
1. 実施目的
本賞は音楽文化と産業の発展の一翼を担う録音エンジニアが制作し応募した音楽録音作品について、エンジニアが有する音楽に対する感性、技術力等を評価することにより、各授賞区分の対象となる優秀作品および最優秀作品、並びに応募作品の中からベストパフォーマー賞を選定し、これに携わり制作を担ったエンジニアおよびベストパフォーマーのアーティストを顕彰することでエンジニアの技術向上と次世代エンジニアの発掘を図ることを目的とし、表彰を行うもの。
なお、優秀賞に選定された作品を音楽業界主要5団体が設立したCEIPAが開催する「Music Awards Japan 2027」の「グランプリエンジニア賞 in association with 日本プロ音楽録音賞」ノミネート対象作品として、顕彰区分を超えた審査・評価により1作品を選定し顕彰する(予定)。
2. 審査対象
国内において企画され、2025年9月1日から2026年8月31日までの間に初めて国内で発売(2026年9月30日までにサンプル盤が配布されているものを含む)、または公に放送・配信された(2026年9月30日までの放送・配信が決定しているものを含む)音楽録音作品を審査の対象とする。
尚、旧譜の音源が新たにミキシングもしくはカッティングされた作品は応募が可能。但し、全ての作業を国外で行った作品を除く。
3. 応募資格者
(1)自薦:応募作品の制作に主要な役割を担ったエンジニア(Best Master Sound部門、アナログディスク部門はマスタリング・エンジニアを含む)とする。
(2)推薦:レコード会社・音楽出版社・番組制作会社等のディレクター、プロダクションの担当者、ミュージシャン等を含めた制作関係者、および運営委員会が推薦を依頼した関連各社とする。
4. 受賞資格者
最優秀作品および優秀作品の制作に主要な役割を担ったエンジニアとし、Best Master Sound部門、アナログディスク部門は1作品当り3名以内、Immersive部門については1作品当り2名以内とする。
5. 応募作品の分類および授賞区分
応募作品部門の分類および授賞区分は次の通り。
■Best Master Sound部門
クラシック、ジャズ、フュージョン(2ch)(CD、SACD、DVD、BD & 配信)
ポップス、歌謡曲(2ch)(CD、SACD、DVD、BD & 配信)
■Immersive部門
サラウンド作品全般、ジャンルを問わず
■アナログディスク部門
2chステレオ、33 1/3・45回転、ジャンルを問わず
■放送部門
2chステレオ/ラジオ番組:AM、FM、衛星放送、有線放送|テレビ番組:地上波、衛星放送
マルチchサラウンド/テレビ番組:地上波、衛星放送
■ベストパフォーマー賞
Best Master Sound部門、Immersive部門、アナログディスク部門の全応募作品よりベストパフォーマーを選定。
■ニュープロミネント賞
次世代を担うエンジニアの顕彰を目的として、30歳代までのエンジニアが担当した応募作品(Best Master Sound部門、Immersive部門、アナログディスク部門)よりニュー・プロミネント賞を選定。
6. 応募作品のメディア
■Best Master Sound部門
Best Master Sound部門パッケージ作品は今年度より市販商品のみならず同等なフォーマットの商品マスターデータでの応募を受付けます。また、ノンパッケージ作品および各種配信されている商品については納品マスターと同等なフォーマットのデータによる応募を基本とします。(WAV、FLACおよびDSDIFF、DSF等)
■Immersive部門
Immersive部門のパッケージ作品は市販商品での応募とし、ノンパッケージ作品はマルチチャンネル音源でのミックスマスターとして、ファイル・フォーマットはWAV、およびADM BWF、DSDIFF、DSF等とする。360 Reality Audio音源につきましては、360 WalkMix CreatorなどでExportされたMaster ADM、もしくは非プリレンダリング(Unprocessed)Exportなど360 WalkMix Playerで再生できるフォーマットでご応募を基本とし、48kHz 24bit LPCM(MPEG-H圧縮後にWAVに変換された24オブジェクト音源)のご応募でも可能とします。その他のデータについては事務局へご相談ください(※ご応募いただいた音源につきましては審査のみの再生となりますが、納品マスターを応募作品とする場合は必ず制作ご担当者の許諾を得て下さい)。
■放送部門
放送部門の2chステレオは、 ビデオ(XDCAM、P2)およびWAVファイル、マルチchサラウンドは、ビデオ(XDCAM、P2)でご応募下さい。(映像圧縮フォーマットについては、応募用紙の記載をご確認下さい)。
4K放送作品につきましては、審査の都合上2Kにダウンコンバートしてご応募下さい。尚、最大ch数は5.1chとし、22.2chで放送されている作品は、ダウンミックスされた作品での応募とします。
7. 応募作品数
応募作品の制作に主要な役割を担ったエンジニア1名1作品の応募を原則とします。但し、Immersive部門、アナログディスク部門、および応募作品を共同制作したエンジニア等及び推薦作品についてはこの限りではありません。
8. 応募方法
応募要項巻末の応募項目を確認いただき、一般社団法人日本音楽スタジオ協会ホームページ“第32回日本プロ音楽録音賞”ご案内ページ内リンク先にある各部門のエントリーフォームから必要項目をご入力いただくか、各部門の応募用紙をダウンロードいただき必要項目をご入力のうえ、運営事務局(japrs@japrs.or.jp)までメール添付にてお送りください。
パッケージ作品につきましては市販商品をお送りいただき、その他音源ファイル等につきましては、各種メディアにコピーもしくはアップロード等にてお送りください。
※応募作品の返却を希望される方は、送料をご負担いただくこととご了承下さい。
9. 応募受付期間
2026年9月1日(火)から9月30日(水)までの必着
10. 応募作品送付先
一般社団法人 日本音楽スタジオ協会
事務局長 内藤 重利
〒162-0041 東京都新宿区早稲田鶴巻町565-10 ビルデンスナイキ302
E-mail:japrs@japrs.or.jp
TEL :03-3200-3650
※第32回日本プロ音楽録音賞は、一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)の共通目的基金の助成を受け運営されています。

情報リンク先
日本プロ音楽録音賞
https://www.japrs.or.jp/pro_rec/
日本プロ音楽録音賞は音楽文化と産業の発展の一翼を担う録音エンジニアが制作し応募した音楽録音作品について、エンジニアが有する音楽に対する感性、技術力等を評価することにより、授賞対象優秀作品および最優秀作品並びにベストパフォーマー賞を選定し、これに携わり制作を担ったエンジニアおよびベストパフォーマーのアーティストを顕彰することでエンジニアの技術の向上と次世代エンジニアの発掘を図ることを目的とし、表彰を行うものです。
「第32回 日本プロ音楽録音賞」は、9月1日(火)から9月30日(水)まで作品の応募を行い、12月4日(金)「音の日」(※本来は12月6日ですが、日曜日につき2日前倒し)に授賞式の開催を予定しております。
一般社団法人 授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)
https://sartras.or.jp/
ICTを活用した教育の未来と、ICTを活用した教育で用いられる著作物の著作権者、著作隣接権者を支える団体です。
記事内に掲載されている価格は 2026年9月10日 時点での価格となります。
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