本日はDolby Theatreのテクニカルツアーに参加してまいりました。30人限定のツアーでしたが、初日でチケットは売り切れてしまうほどの人気でした。
Dolby Theatreはハリウッドの中心にあり、2002年から毎年アカデミー賞の授賞式が行われることでも有名な劇場です。毎年、シアター前のレッドカーペットを優雅に歩く、数多くの著名な俳優や監督などの映画関係者に注目が集まる場所でもありますね。その他にも敷地に併設されるショッピングモールのロータリーからはハリウッドサインが見えるなど、観光地としても非常に有名な場所で、ご存知の方も多いはず。
Dolby TheatreのJay Tomas氏の案内のもと、館内の見学がスタートしました。建物は5フロアから構成され、1階にはDolby Loungeが設けられています。中にはバーカウンターと、ショーケースに入ったオスカー像が。この建物のディレクターであるDavid Rockwell氏は、この建物をデザインするにあたり特にアカデミー賞を開催することを念頭にデザインされたそうです。Dolby Theatreエントランスの両脇には歴代作品賞を讃えるサインがあしらわれています。
そして、驚くことに2035年までのスペースがすでに設けられていること!あと20年近くはこの劇場での授賞式を予告しているということでしょうか。
いよいよ中に突入ですが、ここで3階へ移動。客席2階からの見学となります。会場に入ると、写真や映像でしか見たことのない空間が広がっておりました。
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両サイドにバルコニー席を設けた会場はまさにエンターテイメントを最大限楽しむための設計といえるのではないでしょうか?いままでに何人のV.I.Pがこの席を利用したことでしょう。
会場は翌日のLATIN AMERICAN MUSIC AWARDのための舞台の仕込みの真っ最中で、まさにこれからラインアレイをリフトであげる直前でした。こちらの番組はテレムンドにて放送されるようで、街中でも盛んに宣伝されていました。
アカデミー賞のためにデザインされた建物ではありますが、1000人規模でスタッフを抱えている劇場ということで、連日このように、テレビショーだけでなく、ブロードウェイミュージカルやコンサートなど、様々なエンターテイメントに対応したホールとなっています。
客席アリーナの中央奥にはPAやカメラ用のスペースが広く用意されています。日本では少しでも客席を確保する傾向にあるので、ここまで広いのは新鮮ですね。当然、ここはPAや照明卓が並びますが、テレビプログラムの場合にはカメラも当然登場します。なお、この劇場では24台のカメラがあり、それらの機材を使用してアカデミー賞の中継も行うそうです。
気になるSRコンソールはDiGiCoを使用しているとのこと。客席の音響システムは5.1
7.1、Dolby Atmosに対応しているそう。なお、フロントスピーカーは一箇所ですが、リアスピーカーは各フロアの壁面に仕込まれており、視界の邪魔にならないようになっています。
場内両脇にはレーザープロジェクターが設置されており、フォーマットはDCVデジタルシネマに対応しているとのこと。なお、プロジェクターは非常にセキュアなサーバーに接続されており、FOX、JBL、VerTech、TenMarksなどが参加するMovieコミュニティーが利用しているそうです。
なお、アカデミー賞の際には、ステージに3つのサークル状のセットが組まれ、大きなオスカー像がお目見えするそうです。
次は5階へ移動。下から見上げていた素晴らしい天井のセットが目の前に見えるのは驚きでした。目の前にキャットウォークが見えるのはとても新鮮ですね。
当然5階ともなれば、フロントからの音も届きにくいので補助のラインアレイが設置されています。
こういった施設の場合、どうしても映像などの目から入ってくる情報、すなわち視覚情報に注目が集まりがちですが、もっと重要なのは音だそうで、特にルームアコースティックの調整に一番時間を費やしたそうです。舞台や講演などは特にそうで、音が悪かったらどうしようもない、とまで表現しておりました。演者や監督など重要人物みんなが音を機にするとのことです。彼らとはパートナーシップを結んでいることから、常にフィードバックを受けて、日々改善に努めているそうです。全てのフロアに配置されたスピーカーも、改善の証とのことでした。
Dolby は映画芸術科学アカデミーと非常に深い関係にあり、2012に年に初めてオスカーのショーを開催したそうです。当時、観客からハウスミキサーまで、ありとあらゆる人たちからの一番のクレームはSlap音だったそうです。しかも、そのノイズはどのフロアにいてもどこからかノイズが聞こえて来るとのことで、音響を調節するために、壁面にグラスウールが張られたパネルを取り付けることで調整したそうです。この対策のおかげか、ツアー中に変な反響がきになることは一切ありませんでした。
6000人のメンバーがいて、3000を超える座席がある。シアターの中にはたくさんのゾーンがあるけれども、全ての人が等しく大切。だからどこかの席だけが音が悪いなんてことがあってはならない。それがオスカーともなれば特にだ。というのがDolby Theatreのポリシーだそうです。リハーサル時にはほとんど全ての席に座って音響を確認しながら歩き回ったそうです。
さて、いよいよこのテクニカルツアーの最大の目玉である、バックヤードへと移動していきます。
実は、一番最初に訪れたラウンジの扉の向こうはすぐにバックヤードにつながっています。バックヤードの廊下一面に設けられたケーブル用のラダー(棚)をみて、日本武道館を彷彿としてしまいました。なお、このバックヤードはありとあらゆる裏方スタッフが使用し、Wi-Fiが完備されているそうです。様々な設備を案内してくれました。
バックヤードの一角に小部屋がもうけられており、天井に直径15cmくらいの穴が2箇所空いていました。この部屋ではケーブルを上のフロアへと送るための部屋だそうです。
そしてステージの中央あたりでしょうか、Cable Termination Roolと書かれた部屋へ案内されました。
入り口の天井には大きく開けられたケーブル口が。一歩中に入ってさらに驚きました。
壁一面に設けられたパッチベイの数々。アナログIN/OUTからデジタル、スピーカーコネクタやEtherなどが一面に配置され、ありとあらゆるものがここでパッチ可能になるそうです。
そして、Termination Roomを出ると、そこにはステージ奥方向につながるラダーが。ステージ奥には大道具搬入口があり、電源車や音中車などが何台も駐車できるスペースへとつながっているそうでう。Termination Roomで回線を分岐して、音中車へと分岐する、なんてことも簡単にできるそうです。この設計も、大きなプログラムをこなすために設計されているということですね。この日は電源車が中車されていました。
このオケピットは60人のオケが入れるくらい規模の大きなものとなっています。奈落は油圧の昇降台ではなく、スクリューで上がっていく仕組みのようです。
舞台装置は他にも昇降マイクなどが仕込まれており、ボタン一つでステージ下から登場するようです。
また、ステージ両脇にあたる部分にはDress Roomが14部屋設置されていました。ここで数々のスターたちがお化粧していたんですねー。
我々にはは、日々様々なハプニングがリアルタイムに起こる巨大なショーをオペレートできる設備とスタッフがいる。最後に、改めて案内をしてくださったJay Tomas氏は改めて、熱く語ってくださいましたが、世界中で放送されるグラミー賞をはじめとしたジャンルを問わないエンタテインメントを開催できるDolby Theatreのエンターテインメントへの情熱を肌で感じられたセミナーでした。
Writer. Akao
Dolby Theatre
https://www.dolbytheatre.com/
記事内に掲載されている価格は 2016年10月1日 時点での価格となります。
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