
ワタクシ「あの澤田」とゲストで一つのテーマを「しっかり」かつ「サクッ」と掘り下げる「あのラボ」シリーズスタートです。
初回である今回は、現役ギタリスト兼バンドマンである渋谷店スタッフ「クーパー天野」と、一緒にチーム「Amanon Prime」を結成し、自宅でもサクッと高音質でできるアコースティックギターの録音アイテムとそのメリットをご紹介させて頂きます。

INDEX
(※紫色の各タイトルをクリックするとジャンプします)
1:マイク比較準備
2:いよいよ本編スタート!
3:レコーディング開始〜レコーディング終了
4:試聴を終えて〜まとめ
5:関連動画〜今回紹介した製品〜関連製品
1:マイク比較準備
突然ですが、いろんな楽器のレコーディングがある中で、アコースティック楽器ってなんかハードル高そうに感じませんか?
性質上、マイクが必須になるのでマイクスタンド、マイクの狙う位置、部屋の環境などなど、接続すればサクッと録音できるライン録音よりはいろいろ大変そうだし、何だかんだでやったことないかもって人も多いと思いんじゃないでしょうか?
もちろんその通りで、なかなか奥の深い世界であることは間違いないのですが、実はもう少し簡単かつ高音質で録音できる方法があったりします!
その方法は「楽器用クリップマイク」です。

言葉通り楽器に固定する系のマイクになりまして、ピンマイクサイズのマイクと各楽器に適したマウントが各種発売されています。
専用のマウントでアコギのボディを挟む感じで固定、さらにグースネックでベストな場所を狙える機構になっています。
代表的な以下の3製品を使って、実際に録音していこうと思います。
・AUDIO TECHNICA:ATM355VF (新製品)
・DPA Microphone:4099Aシリーズ
・Neumann:MCM114シリーズ
さらに、比較としてNeumann U87 AIも立ててみました。
プレイヤーからみるとこんな感じです。

インターフェイスは同レベルのマイクプリを複数揃える必要がありましたので、SSLの待望の新作インターフェースSSL18とProtools(32bit/96khz)を用いて、演奏のムラを避けるためにワンテイクで収録しました。

2:いよいよ本編スタート!
S:ということで、本編スタートなのですが、天野くんはアコギの録音ってどうしてますか?
A:今はLewitt LCT540S一本でやってます!S/Nが凄くいいので気に入っているのですが、部屋の広さ的にセッティングはあまり追い込めないので、出た音勝負というか、特に変な音じゃなければいいや…みたいな感じです。
S:LCT540いいよね。コンデンサーの中でもしっかり目の中低域はあって歌もアコギも厚みがある音が録れるから、Lewwitの中でも個人的に一番おすすめですね。コスパ最高というか。ちなみにそういう時って、マイクスタンドってどうしてます?普段から立ててる感じ?
A:そうですね…部屋もあまり広くないですし、位置関係に気を使うんですが「せせこましい〜!」と思いながら録ってます。ちなみに録音時にのみスタンド立ててます。
S:だよね。自分の狙いたい位置にマイクを持っていこうとすると、横の棚にゴン、、、とか、なんか取ろうとしてスタンドに当たって角度変わったりとか、、、、限られたスペースでの取り回しが意外と難しいよね。
A:ですです。。
S:この方式だとスタンドが要らないことはもちろんなんだけど、楽器自体にマイクを固定するので録りたい音の位置とマイクの距離や角度が変わらないのがポイントなんだよね。
マイクでの位置や角度で音が変わるのは皆様がご存知の通りで、逆にそれを利用して音作りを行うわけですが、これって録音対象がほぼ動かないことが前提だなと。
自分がギタリストでもあり、エンジニアリングもやるのでよくわかるのですが、スタンドでマイクを立てるとアコギとマイクの距離感や角度などを保とうとして、自然な姿勢で演奏できなかったりするよね。
演奏中に体が動いてマイクに近づけば音も大きくなっちゃうし、上下に動くと周波数特性変わっちゃうし。マイクとの位置関係に意識が取られて、なんか体のどこかに力入ってたりとか。。
(※本格的なレコーディングの場合、複数立てることも多いですが、今回は自分たちの作業場でサクッとがテーマなので、立てるマイクが1本のみの想定です。)
A:確かに!!個人的には試行錯誤しながらフレーズを固めていきたい人なので、常に安定した距離で取れるのはとても大きなメリットを感じますね。音質も揃いますし。
S:そこがポイントで、何の為にアコギ録るかって制作のためじゃない?本番テイクはもちろんなんだけど、アレンジを考える為にも使ってるから、弾いてPC触って、弾いての繰り返しだし。
これ系で最初に流行ったのはDPAなんだよね。「あのスティングがステージのアコギで使ってます!」みたいな謳い文句で出てきてて、なんでも試して買えそうなクラスの人達が選んでるなら間違いないから試してみるかといった単純な動機で試してみたらびっくり。
スポンジで覆われるから大きく見える(既に小さいですが)んだけど、触ってみると小指の爪くらいのサイズのマイクなんです。
解像度は高いは近距離でもクリップも飽和もしないわで気に入って、管楽器や弦楽器、ピアノ、ドラムまでこのシリーズを使う機会増えたんですよね。
まずとにかく演奏に邪魔にならない。スタンドいらないから設置が楽とかも。現行品はさらに歪み感がなくなって、とにかくクリアなのと、低音の処理が上手いのかマイクの位置決めが意外とシビアじゃないのが特徴な気がします。
A:それまでってこういうタイプって無かったんですか?
S:もちろんなくは無かったんだけど、TVとかタレントさんがピンマイクを装着してるのを見たことあると思うんだけど、音声用中心というかここまで楽器でしっかり使えます!みたいな製品で認知が高いのはほぼほぼ無かったと思います。
次に出たのはNeumann MCM114シリーズだったかな。遂に王者Neumannがこのカテゴリーに来たなと(笑)みんながイメージするNeumannの煌びやかな感じがしっかりあったのはもちろんなんだけどマウントの機構に工夫があって、他者がグースネックで位置を決めるのに対して、グースネックの根本自体が45度ずつカチって変えられるので、位置決めの守備範囲が圧倒的に広くて簡単なのがポイントですね。
このまま話しちゃうと、正確にはどっちが先かは覚えてないのですが、Neumannと同時期に出てきたのがAUDIO TECHNICAのATM350シリーズでとにかく大音量に強いなって印象がありました。管楽器とかって実際かなり音が大きいじゃない?それにビクともしない感じが好印象でした。
ちょっと他の2社にくらべて値段が安価(定価ベースでNeumannの半額くらい)だったのもあってか、そこまで認知度が上がらなかったところに、、今回の新作で一気に来ましたね(笑)
前は予算に合わせてって感じだったのですが、これはもう「音の好みだけで選んでください」ってうタイミングが来た感じでして、この企画になった次第です。前置きが長くなってきたので、そろそろ録音してそれぞれのキャラクターを聞いてみましょう!
A:よろしくお願いします。
レコーディング開始!

レコーディング終了:どのマイクを使用しているか予想してみてください。
S:早速レコーディングも終わったので、順番に聴いていこうと思います。メーカー名とかで脳内補正掛かっちゃいそうなので、あえて製品名をふせていこうと思います!
A:わかりました!
★あのラボ Vol.1:簡単&高音質!クリップマイクでサクッとアコギREC内緒編
試聴を終えて
S:ということで順番に聞いてみたわけですが、それぞれの感想を頂けますか?
A:個人的には、1番目が「ザ・アコギのいい音感」みたいなのがマシマシで好印象でした!リッチで適度に派手な感じありますね〜。「アルペジオがこう綺麗に録れてると、ストロークだと却って飽和感出ちゃうかな?」と思ったのですが、特にそんな感じも無く。
2番目はちょっと硬めなテンションのフォスファーブロンズ弦特有の煌びやかさとと小ぶりなボディの本体の音をありのまま再現していた感じですね。楽器と演奏に拘れ!!と言う熱いメッセージを受信したような気がしました。
3番目は距離感が如実に再現されてるなと。これもDPAとはまた違う「ありのまま系」ですね!安定した音色というメリットを享受しつつも、マイクをどこにセットするか?と追い込む余地もちゃんとあってGoodです。
4番目、なんか聴き慣れた安心感がありますね。空間の広さも感じるけど所々にちょっとミドルにクセを感じますね。
S:お、答えを知ってたかの様な模範解答ですね(笑)流石です。
正解はこちら!
1番目:Neumann/MCM114
2番目:DPA/4099
3番目:AudioTechnica/ATM355VF
4番目:スタンドで立てたNeumann/U87 AI
★あのラボ Vol.1:簡単&高音質!クリップマイクでサクッとアコギREC正解編
S:以下のポイントを意識しながら再度聞いてみて欲しいのですが、MCM114はやはりU87 AIと同じ方向の煌びやかかつパワーのあるキャラクターを持ってるよね。
今回の87の様にスタンドに立てた場合って、部屋の大きさや壁までの距離とかによるけど、反射の問題でなんか真ん中の周波数がモコつくというか変な癖が生まれることがあって、今回まさに狙ったかの様にその現象がが出ましたね。
A:録音時の横幅狭かったですもんね。そう聞くとなんかモコつく帯域があるというか。確かになんかスッキリしてないですね。で、だいたいみんな同じくらいのスペースでやってるんじゃないでしょうか?
S:自宅だとそうなりやすいかもね、で、ここで問題なのがまあこの癖がEQとかでもなかなか解消できないんですよね。昨今の倍音整理系のプラグインだとかかり過ぎちゃって変にパワー感なくなるし、、、
A:何やってもしっくりこない時の原因ってこれだったりするんですね。
S:さて続きましてDPAの4099Aですが、距離とか位置で変に籠ったり歪んだりしないのでとにかく位置決めが簡単ってのがポイント。あと、高域に向かっての解像度がダントツですね。変な低音が入らず耳で聴いてる音に近いと思います。
ただ一つだけ次回に期待したいのは、マウントの固定の強さが他に比べてやや弱いかなと。もちろん使用上全く問題ないのですが、他社のマウンントの固定具合のしっかりさを知るともう少しだけで強くなってもいいのかな。
この流れでAudio-Technica/ATM355VFの話にすると、すごい最近のテクニカのマイクの音がする。同社ダイナミックマイクのATS99が店頭での比較試聴でかなり評判いいでしょ?派手さはないんだけど、嫌なところが全くなくで全体帯域のバランスがいいっていうあの感じ。だからこそ「位置こそ全て」なタイプかもね。
今回の位置だとしっかりと低音が入ってるので、他のマイクよりもう少し1弦寄りに向けてもよかったかもしれない。ここまでちゃんと入ってるとEQでの微調整のしがいがあるね。マウントがしっかり目なのは、こうやって位置を色々探る為なのかなって思いました。
A:なるほど〜〜!今回はU87Aiを立ててたので、通常のマイクアレンジとの差が良く分かりました。個人的に、これまではここまで超オンベタなセッティングって、「息苦しいサウンドになっちゃわない?」みたいなイメージもあったのですが、特に宅録ではクリップマイクのオンマイクのセッティングもメリットが沢山あるんだなと勉強になりました。
個人的に一個だけ選ぶとしたら NEUMANN MCM114ですね。リッチだけどギスギスしない、みたいなキャラクターって後処理でも中々得難いので。。僕はロックが好きなのでそう感じるかもですが、他のジャンルや楽器ではまた変わってくる気もします。僕もいつか買ってみようかなぁ。。。
S:欲しくなるよね〜(笑)俺はずっとDPAユーザーなんだけど、今回のATM355VFの音に燻っていた職人魂に火が付いたから、このシリーズを研究したいと思いました!
まとめ
S:ということで、いかがだったでしょうか?意外と馴染みの少ないクリップマイクも実はいろんな可能性があるし、宅録やアレンジにを考えてる時にサクサク使えるってことが伝わってれば幸いです!
なお今回ご紹介した3製品の展示が渋谷店に常設されているので、自分の楽器や環境で試していただくことも可能ですので、是非是非ご相談くださいませ。
次回はサクッとアコースティックピアノを録音してみようと思います!
関連動画
★The Neumann MCM System
★4099 Instrument Mic を使用してアコースティック ギターをマイキングする方法
今回紹介した製品はこちら!
audio-technicaATM355VF
¥76,230
NEUMANNMCM 114 SET GUITAR
¥86,400
DPA4099-DC-1-199-G
¥83,600
関連製品
Solid State LogicSSL18
¥178,750
NEUMANNU87Ai studio set(専用木箱・サスペンション付き)
¥471,059
NEUMANNU87Ai mt (ブラック)
¥485,100