Cutting Edge 2020 : AUDIAIRE / ZENITHでジャズからニューエイジまで自動演奏してみた!実践動画あり

超強力なステップシーケンサーとモジュレーターを備えた「AUDIAIRE / ZENITH」
アーティストとして活動するSharooz氏を中心としたメーカー AUDIAIREは、サウンドデザイナーやプロデューサーによる協力開発などにより、ユーザビリティと高機能を両立した製品を英国から送り出しています。2018年の8月に同社からリリースされたソフトウェアシンセサイザー「ZONE」は革命的なパラメーターシーケンサーを搭載し、そのシーケンサー部分を単体で発売して欲しいという声がありましたが、ZONEのシーケンサーとモジュレーター部分を抜き出しさらに機能強化した「ZENITH」がリリースされました。
ZONEのレビュー記事はこちら
ZONEはランダマイズで生成されたパターンでシンセサイザーを制御するというコンセプトでしたが、
今作の ZENITH 最大のトピックは、音程スケール機能が搭載され ランダマイズで作られた無機質なフレーズに”音階”という神の手を入れられるようになった事です。これはもう作曲に使わない手はありません。この記事では早速、ジャズのクロスオーバーとニューエイジミュージックをZENITHに演奏させてみました!!
AUDIAIRE / ZENITH

▶︎実践動画あり!
この記事の中では、ZENITH を使用した実践動画が4つ用意されています。フレーズ生成やシンセサイザーをMIDIコントロールチェンジ制御するご参考にしてください。
ZENITHの主な特徴
ステップシーケンサー、4つのLFO、3つのエンベロープからコントロールチェンジデータを生み出し、最大24個までコントロールチェンジデータをMIDI出力可能。DAW内のソフトシンセだけでなく、MIDIインターフェースを介してハードウェアシンセのコントロールも可能!!

ランダマイズ機能でパターンを創出

ピッチ、ベロシティといったMIDIノートがステップシーケンサーで扱え、ランダマイズ機能でパターンを生成する事が可能で、これがかなり使えます。ノートONに合わせてステップシーケンサーを頭にリセットする事ができるので、非常に高機能なアルペジエイターとしても使えます。右上に見える「CHANCE」というパラメーターが大変重要で、こちらについては後述します。
無機質に生成されたパターンをこれで整える!

CHORD GENERATOR

SCALER
生み出されたノート情報は22種類のコード・ジェネレーターで和音化したり、13種類のスケーラー機能で指定したキーに音程の自動修正が可能。コード・ジェネレーターは簡単にカスタマイズもできます。

ソフトウェアシンセ、ハードウェアシンセに対応したプリセット
ソフトウェア/ハードウェアシンセ/ドラムマシン/その他MIDI受信デバイスに対応する、100種類以上のプリセットマップを搭載
実践動画① 使い方の基本編
ZENITHで UVI CS-Mをコントロール
1:まずは16分音符に音程を付けて、スケーラー機能で音程をスケールに合わせたりコード・ジェネレーターで和音化します。
2:CS-Mの自動で動かしたいパラメーターにMIDIコントロールチェンジ番号を割り当てます。
3:ZENITHにスライダーを作成し、CS-Mで割り当てたMIDIコントロールチェンジ番号をアサイン。
4:ZENITHスライダーをステップシーケンサーのレーンにドラッグし、スライダーの値をシーケンサーで制御します。
5:LFOを使うのも効果的です。LFO波形は多数用意され、今回はリバーブMIXにサンプル&ホールドのLFOを適用してでランダム感を出しました。
実践動画② シンセ語を喋らせてみた
スクエア・プッシャーみたいな前衛的なパターンも得意で、現代版フリー・ジャズを創り出します。
実践動画③ ジャズ・クロスオーバーを演奏
シーケンサー発音の再生確率を設定する「チャンス機能」
ステップシーケンサーに搭載された「チャンス機能」でステップをランダムに再生する即興的なフレーズと、LFOの周期的な変化で演奏がリアルタイムに、オーガニックに生成されています。自動でリアルタイムに音楽が作り出される様子を眺めるのはけっこう興奮します。ドラムは UVI Beatbox anthology2、ベースはujam Virtual bassist(自動演奏ではなく音源として使用)、シンセは UVI CAMEO。ベースはジャコ・パストリアスみたいな演奏になって感動です。
実践動画④ ヒーリング音楽を演奏

ニューエイジ系ソフト音源「NADA」
『NADA』は、聴く者を深い瞑想へと誘うニューエイジ/リラクゼーション・ミュージックなどの制作に特化した素晴らしいサウンドコレクションです。サンスクリット語で「音」の意味を持つ『NADA』をタイトルに冠した本製品は、『ERA II』『FOREST KINGDOM II』などの傑作ライブラリを生み出してきたプロデューサーEduardo Tarilonte の根幹にある音楽「ニューエイジ・ミュージック」に焦点を当てて開発されました。
ライブラリには、ストリングス、ウインズ、パーカッション、ピアノ、エターナル・サウンディング・ボウル、グラス、ベルのほか、琴、尺八といったサウンドが揃っており、魅惑的な倍音をもつオーバートーン・シンギング・ボイスや、魅力的な女性ボーカルのソロ・ボイスを収録。そして、深く穏やかで暖かなシンセパッド、シンセボイスも多数収録しています。
各インストゥルメントは、リアル・レガートをレコーディングした本物の美しさ、無限とも感じるサステインを実現するループ処理など、シンプルさと使いやすさを考慮してサンプリング/構築されています。一部のインストゥルメントには最大6レイヤーのパッドが重ねられており、オートメーションを駆使することで動きのある複雑な響きを操ることが可能です。
今年2月に発売されたばかりの、聴く者を深い瞑想へと誘うニューエイジ系ソフト音源「NADA」。涙を誘うそのサウンドをZENITHが演奏し、心洗われるヒーリング音楽を作り出しています。
次にどんな音程が出てくるかワクワクするチャンス機能は、フレーズにランダム性を加えていつまでも聞いていられる恍惚の天国サウンドを作り出します。もう気分はニューエイジ界の大御所、喜多郎さんですね。「幻想的な」というキーワードでクライアントからオーダーを受けた際にはぜひこの音源を思い出して下さい。北欧系もオリエンタル系も両方こなせる最高のファンタジー音源です。
ZENITHにはAI自動作曲とはまた違った、人為的にランダム性をコントロールする創造性への満足感があります。人間のクリエイティブな志しを汲んで楽曲表現してくれる、クリエイターの強い味方なのではないでしょうか。AI作曲に対峙するアーティストにとってヒントを掴めるソフトだと思いますので、気になった方は是非お試しください!!