ビッグアーティスト達の作品に数多く携わってきたプロデューサー、Jens Bogren 氏が中心となって2020年に設立されたBOGREN DIGITAL。アンプシミュレーター・プラグインやギター用キャビネットIRをリリースする同社から、アンプシミュレーターに新たな命を吹き込むプラグイン「IRDX CORE」がリリースされました。本記事では、IRDX COREの動画試聴レビューをお届けします!
BOGREN DIGITALはスウェーデン発ということで、筆者はスウェーデンにますます関心を寄せています。スウェーデンにはどれだけDTMに馴染み深いメーカーが存在するのか、思いつくだけ挙げてみましょう。
・BOGREN DIGITAL
・TOONTRACK
・SONIC CHARGE
・Klevgrand
・teenage engineering
・Clavia
・Elektron
・XLN Audio
・SOFTUBE
・Reason Studios(旧:Propellerhead)
・ISOVOX
スウェーデンすごくないですか!? ちなみにSpotifyもスウェーデン発です。
IRDX COREとは
愛用のアンプシミュレーターで 本物のダイナミクスを表現させるプラグイン
IRDX COREは、あらゆるアンプシミュレーターのダイナミクス表現を強化するプラグインです。
使い方はDAW上でいつものようにお気に入りのアンプシミュレーターやIRローダーを使用し、その後段にインサートするだけ。BOGREN DIGITALが開発したIRDX テクノロジーによって、ギタリストの演奏に沿ったキャビネットの挙動をサウンドに加えます。
BOGREN DIGITALのアンプシミュレーターに搭載されているIRDXテクノロジーを、単品プラグインとして独立させたものがIRDX COREです。
既存のアンプシミュレーターに対して「後掛け」で効果を適用するため、お使いのプラグインやIRの設定はそのままに、より自然なギターサウンドに仕上がります。実際にギターキャビネットを大音量で鳴らしてマイク録音することでしか得られなかった、スピーカーが空気を動かすことで生じるギタートーンのエッジやハリ、立体感があるサウンドは、演奏感も向上させます。
使い方はとてもシンプル
IRDX COREの動作は入力信号に左右されるため、最も自然なパフォーマンスを発揮させたい場合は、入力レベルの自動キャリブレーションを行います。音源を鳴らしながら [ CARIBRATE ] ボタンを押して待つだけの簡単設定です。
今回の試聴動画では IRDX CORE による周波数的な変化を視覚化するため、FLUX:: Analyzer Essentialのスペクトラムアナライザーを背景に置きました。
IRDX COREを頻繁にバイパスしながら、その音の違いを確認していきましょう!
Ample Guitar SC + Guitar Rig 6 + IRDX CORE
ギター音源は Ample Guitar SC(内蔵アンプシミュレーターOFF)、アンプシミュレーターは Native Instruments Guitar Rig 6、その後に IRDX CORE を使用しています。
キャリブレーションが終わってから、大きなつまみ(IRDX Amount:)を上げていくと効果が適用されます。スピーカーの自然な動きを表現するにはデフォルトの “100%” が理想的な設定ですが、つまみMAX(150%)にしてバイパス比較すると IRDX CORE の効き具合がよく分かるので、基本的に150%で試聴しました。
効果を強めたければつまみを上げ、強すぎると感じたら下げる、とてもシンプルで使いやすいプラグインです。
インプットに対してキャビネットの挙動を加える効果には、2つのモードを用意。Normalモードは繊細で自然なスピーカーの動き、コンプレッション、歪みを加えます。Intenseモードは、それらの効果をNormalモードとは少し異なるテイストで、効果をより際立たせます。
上の動画ではNormalモードで中低域が太くなり、Intenseモードでは飽和感と高域のジャキジャキした歪み感が加わりました。Intenseモードを実際のスピーカーの挙動に例えると、スピーカー駆動ボリュームを上げて、少しだけドライブさせたサウンドに近くなる印象です。
Ample Guitar PF + BIAS AMP2 + IRDX CORE
ギター音源は Ample Guitar PF(内蔵アンプシミュレーターOFF)、アンプシミュレーターは Positive Grid BIAS AMP2、その後に IRDX CORE を使用。
Normalモードでは、もう一本ディストーションギターを重ねたかのような密度の濃いサウンドが得られました。Intenseモードでは高域の歪みがはっきりと感じられ、ギターの輪郭がはっきりと前に出てくるサウンドです。
Ample Guitar PF + AmpliTube5 + IRDX CORE
ギター音源は Ample Guitar PF(内蔵アンプシミュレーターOFF)、アンプシミュレーターは IK Multimedia AmpliTube5、その後に IRDX CORE を使用。
Normalモードでは、ディストーションギターの美味しい帯域がとても自然に前に出ることが分かります。そしてIntenseモードでは鼻の詰まったサウンドから抜けの良いサウンドになるという、劇的な変化が得られました!ナローレンジからワイドレンジに生まれ変わり、音源によってはリアンプ的にも活用できるのではないでしょうか。
生ギター + BIAS AMP2 + IRDX CORE
生ギター使用、アンプシミュレーターは Positive Grid BIAS AMP2、その後に IRDX CORE を使用。
Normalモード、Intenseモード共に中低域が豊かになり、スピーカーキャビネットの「箱鳴り」が感じられるサウンドになりました。
生ギターとギターソフト音源いずれの場合も、IRDX COREを使用するとサブベースのようなローエンドが生まれ、それがサウンドキャラクターに大きく影響しています。特にNormalモードではローエンドが豊かになり、Intenseモードではローエンドは控え目で、高域の煌びやかさや歪み感を生み出します。
生ギター + UAD Marshall JMP 2203 + IRDX CORE
生ギター使用、アンプシミュレーターは UAD Marshall JMP 2203、その後に IRDX CORE を使用。
定番のダイナミックマイクのようなナローレンジでタイトなサウンドが、ラージダイヤフラム・コンデンサーマイクで集音したような、ワイドレンジで奥行きのあるサウンドに生まれ変わりました。ギターアンプのマイキングは非常に奥が深く、それを再現するアンプシミュレーターも同様に、集音するマイクのセレクトやスピーカーを狙う位置、そしてスピーカーとの距離がサウンドに大きく影響します。IRDX COREは豊かな倍音でサウンドを明るく、時には歪ませるだけでなく、サブハーモニクス的な低音で音の芯を太くするのにも有効です。単純に倍音とサブハーモニクスを生成するプラグインではなく、スピーカーの挙動を再現した結果得られるサウンドというのが特徴です。
スピーカーを実際に鳴らして集音し直すという手法は、古くからスタジオで行われて来ました。次の動画では、そんな「スピーカー出し」をイメージして試してみました。
シンセ音源 Avenger 2 + IRDX CORE
アタックの張り出し感、1オクターブ下の低音、そして高域の歪みが得られました。IRDX COREはDAWミックスの新しい手法として、ギター、シンセ、ドラムなど、さまざまな音源に応用することが可能です。
Normalモードではサウンドの粒が際立ち、Intenseモードでパワー炸裂! サチュレーションのような熱い飽和サウンドが得られました。Intenseモードでアタックを潰して、トラックに馴染みやすくするのにも使えます。
試聴を終えて
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記事内に掲載されている価格は 2024年2月20日 時点での価格となります。
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