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伝説的エンジニアでプロデューサーでもあったアル・シュミット氏が、2021年4月26日、91歳で逝去されたことが報じられました。
➡️追悼:Al Schmitt ~伝説のエンジニア、91歳で逝去
ここに謹んで哀悼の意を表するとともに、アル・シュミット氏が完全監修した「AL SCHMITT」プラグインをご紹介したいと思います。プラグインを実際に使った動画を作成しましたので、そのアーティスティックな音色変化をぜひご覧下さい。
LEAPWING AUDIO AL SCHMITT
アル・シュミット氏は、1949年からレコーディング・ビジネスに携わっています。彼のレコーディング・テクニックは、マルチ・トラック・レコーダーやスケールの大きいミキシング・コンソール、また、EQすら発明されていない頃に築き上げられたものです。Frank SinatraやNatalie Coleから、Jefferson Airplane、Hot Tuna、Boz Scaggs、Jackson Browne、Paul McCartney、Bob Dylan、TOTOのレコーディングまでもを、彼自身が行いました。
LEAPWING AUDIOは、アル・シュミット氏の技術やツールを分析し、微妙なハーモニック特性からエコー、コンプレッション、EQに至るまで、過去数十年間のアル・シュミット氏のワークフロー、ハードウェア・プロセスを本製品に落とし込みました。このプラグインは、氏のサウンドを定義する独自のプロセッサーとして、ボーカル、ピアノ、ベース、ブラス、ストリングス、ミックス(バス)の6つの異なるプロファイルを持っています。それぞれが、氏のワークフローと各楽器の知覚に基づいて異なるサウンド特性とパラメーターを持つ、ミックスとマスタリングに特化した革新的なオーディオプロセッサーです。
AL SCHMITT は、アル・シュミット氏による独自の技術と設備をプラグインに落とし込んだ、ミックスとマスタリングに特化した革新的なオーディオプロセッサーです。本製品には、6つのプロファイル(ボーカル/ピアノ/ベース/ブラス/ストリングス/ミックスバス)が収録されています。アル・シュミット氏の手により各楽器パートに対して最適化されたプロファイルですが、類似するパートでも使用できるようになっています。いくつかのプロファイルには3つのエコータイプ(A/B/C)が収録されています。アル・シュミット氏が実際に使用し、現在でも多くのプロスタジオが使用しているエコーチェンバーとアウトボードを再現しました。本製品のプロファイルは、マスターを除くミックスバス及び個別のトラックに対して使うことを想定して設計されています。
主な特徴
6つのプロファイル
6つのプロファイルを実際に試してみました
AL SCHMITT の各プロファイルには独自のコントロールセットが含まれています。それらは アル・シュミット氏が実際に使用している複数の機材をモデリングし、シンプルなパラメーターに集約されています。プロファイルごとに異なるエフェクトチェーンをモデリングしているため、EQ/コンプレッサー/エコー(リバーブ)などは同じ名称でも、各楽器に合わせてそれぞれ効果が異なります。また、いくつかのプロファイルではTotal Harmonic Distortion (全高調波歪み)が作用し、入力信号のレベルによって効果が変化します。
BODY LEVELは500Hz∼1kHzをブーストまたはカットします。このパラメーターを上げると、ボーカルがマイクに近づいたように声の低音が増して太くなります。AIR LEVELは3つの周波数(5kHz、8kHz、16kHz)における最大+6dBのピーキングフィルターとして動作し、マイナス値の設定ではローパスフィルターとして機能します。AIR LEVELを上げると声の明瞭度が増して聞き取りやすくなり、MAXにしても歯擦音が気になりませんでした。エフェクトはボーカル用にチューニングされたエコーチェンバーとアウトボードの3つの組み合わせかのほか、コンプレッサーを搭載。コンプは声が潰れすぎず、音楽的なダイナミクスを失わないレシオ設定(1:1から約3:1まで)となっています。入力レベルを上げ気味に攻めると、高レベルのサチュレーションによってボーカルが際立つ効果も得られます。
COMPRESSIONは複数のコンプレッサーパラメーターに影響を与えるコントロールです。入力信号のレベルが高いほど一般的に高いレシオが得られますが、この設定のエフェクトは複雑で、COMPRESSION設定を高くするとスレッショルドが下がると同時にレシオも変化します。試聴した音源ではアタックが丸くなり、音圧が揃ってフレーズが聞き取りやすくなりました。BODY LEVELではベースの一番重要な帯域となる 0Hz∼200Hzが約 +4/-3 dBで調整できるので、ベースの存在感をコントロールするのに便利です。AIR LEVELは 5kHzを約 +5/-3dB 調整でき、倍音やフレットノイズが際立つエッジーなサウンドに。BODY LEVELとAIR LEVELは相互に影響し合うため、一方の設定によってEQカーブが変化します。
他のプロファイルと同様にコンプレッサーのスレッショルドとレシオは、COMPRESSIONコントロールの設定と入力信号レベルの両方によって決定されます。ゲインリダクションが開始されるとスライダーの左側にドットが表示され、リダクションが強くなると表示がさらに明るくなります。コンプレッサーを使用するとピアノ強弱の音色変化はそのままに、ボリュームが均一に揃って押し出し感の強いサウンドになりました。エコーは、ピアノ用にチューニングされたエコーチェンバーとアウトボードの3つの組み合わせが用意されており、明るいリバーブサウンド、暗いリバーブサウンドを使い分ける事が可能です。
このプロファイルは シンフォニーやビッグバンドなどのストリングス・セクションを対象としており、ハーモニクス・ディストーションは非常に弱いものになっています。ストリングス用にチューニングされたエコーチェンバーとアウトボードが3タイプ用意され、他のプロファイルと同様に アル・シュミット氏がストリングスの処理用に最適化した調整を行うように設計されています。楽曲に馴染むリバーブの明るさや広がりを3択で選ぶのは、ある意味「迷わない良さ」があります。
ブラスプロファイルにコンプレッサーは存在せず、入力ゲインを上げてもサチュレーションは付与されません。 エコーチェンバーとアウトボードの組み合わせをECHO TYPEで選択して、ECHO LEVELでドライシグナルにミックスされるリバーブのレベルを調整します。ブラスに最適化されたプロファイルは60年代を意識したトラック制作に重宝しそうですが、ブラス以外の楽器にも積極的に使ってみるのが面白いと思います。
このプロファイルはミックスバスでの使用を想定していますが、単体のチャンネルやグループにに使用するのも効果的だと思います。特にドラムに使用するとシンバル類が素晴らしいサウンドになりました。
SUB BOOSTは約25 Hzを中心に最大+5dBのベルカーブを適用し、LOW / MID / HIGH LEVEL では各バンドのメイクアップゲインを行います。AIR BOOSTが特に素晴らしくて 3kHz以上の周波数でゲインが増え始め、10kHzでは約3dBのブーストになります。今回の試聴音源では後ろに埋もれていたドラムが前に出て、曲全体のレンジも上が大きく広がりました。
コンプレッサーは帯域ごとに用意され、LOW COMPは約500 Hzまで、MID COMP は500 Hzから5 kHz、HIGH COMPは5 kHz 以上のスレッショルドとレシオを調整します。レシオは最大約2:1程度で、ファーストアタック、スローリリース設定です。このプロファイルのハーモニクス・ディストーション・レベルは、入力レベルが高い場合でも非常に弱く設定されています。音を突っ込み気味にしてもサチュレーション効果はなくクリアーな音質が保たれるため、マスタリング用途にも活用できます。動画でプラグインをON/OFFしているので、AL SCHMITTの実力がお分かり頂けるかと思います。
Writer:SCFED IBE
アル・シュミット氏関連製品
記事内に掲載されている価格は 2021年6月16日 時点での価格となります。
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