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アコースティック楽器のレコーディングにおいて、マイクロフォンをどのように設置して録音するかは悩みどころかと思いますが、Neumannから発売されたミニチュア・クリップマイクロフォンMiniature Clip Mic Systemは、小型ながらカプセルはMCM用に開発された低ノイズ・高耐音圧を実現し、さらに簡単かつ確実にマイクロフォンを装着できる豊富なマウントオプションで様々な楽器に接続できるマイクロフォンとして、いま話題を呼んでいます。
今回は現役レコーディングエンジニアとして活躍する加納 洋一郎氏に実際にMiniature Clip Mic Systemをアコースティック楽器のレコーディングに使用して頂き、その効果や使い勝手を確かめて頂きました。
今回はNeumann MCM(Miniature Clip Mic)Systemのレビューをしたいと思います。
2022年に幕張メッセで開催されたInterBEEの、ゼンハイザージャパンのブースで見かけた方も多かったのではないでしょうか。国内では2022年9月より販売が開始されており、既に使用されている方もいることと思います。手元に届いた製品はMCM 114 SET BRASS/SAX/UNIで、様々なシーンや楽器用に作られたクリップで、主に管楽器用のセットでした。
筆者はレコーディングエンジニアなので普段スタジオレコーディングではラージダイアフラムのマイクを主に使い楽器を録音する場合が多いですが、クリップマイクというのもライブ収録やテレビ撮影と場合によっては必要になることがあるので興味深く試すことができました。
スペックについて
まず、スペックから考察してみたいと思います。
カプセルにはMCM用に開発された低ノイズ・高耐音圧を実現したKK 14エレクトレット・コンデンサーマイク・カプセルで指向性はカーディオイド(単一指向性)、耐音圧153dB SPL、等価雑音レベル23dB-Aという低ノイズ性能、スタジオスタンダードマイクとして有名な同社のU87Aiの耐音圧127dB SPL、等価雑音レベル12dB-Aと比べてみても分かるとおり、耐音圧が高く打楽器でも歪むことなく安心して使用できそうです。
マイク使用者への配慮を伺わせる様々な音響機器へのアウトプット形状、3.5mmプラグ/Lemo/4極ミニXLR/MicroDotコネクタの4種類と、XLRオス出力用と豊富なオプションが用意されていて主にライブなどワイヤレスで使用することも当然ながら考えられています。周波数特性は20Hz〜20kHz、グラフ上では400Hz辺りからなだらかに低域が絞られ、高域は12〜13kHz辺りでピークがあるようです。
では実際に今回はピアノ、バイオリン、アコースティックギターに向けて設置し録音試聴してみることにします。MCM用には楽器ごと設置やすいようにMCシリーズという名前のマイクを楽器に直接取り付ける様のクリップが9つ用意されているので用途によって使い分けができます。
ピアノに設置
ピアノにはMC 8を使用、クリップエンドがマグネットになっているおりピアノ本体へ容易に取り付けることができるのとグースネックになっているのでハンマーを狙ったり、低弦へのアプローチも簡単、クリップマイクの優位性で設置してから蓋をしめることも出来ました。
筆者はスタジオレコーディングではAKG414やSCHOEPS CMC-55Uを使う機会が多くその音を聴き慣れていますが、Neumann MCMで聴いたところ、非常に明るくヨーロッパ的な雰囲気がする音がして正直驚きました。あんな小さなダイアフラムで繊細なピアニッシモからダイナミックなフォルテッシモまで響きがちゃんとキャプチャーできているからで、更に同じ様な他社のメジャーなクリップマイクと比較しても抜けの良いさは際立っていました。
バイオリンに設置
次にクリップをMC1に交換してバイオリンを録音してみます。バイオリン本体をクリップで挟むように設置しグースネックで角度や向きを調節。
当然ながらスタジオの様な空気感は多少損ねるものの弦の音はリアルに捉えられ、弓が弦を擦る感じや、ピッチカートの様な弱音の奏法でもスタンドマイクと違いクリップマイクの楽器に取り付ける良さが出て音を良く捉えています。
それと同時にノイズの少なさ、ルックスも目障りなこともないのでライブなどでは凄く重宝されそうです。
アコースティックギターに設置
最後にアコースティックギターではクリップはMC 9に変更。ボディにクリップを挟み下からマイクを向けてみます。
演奏には問題なく音にアプローチできそうです。マイクの性能が良いのでバイオリンに比べて演者のタッチノイズや、ボディノイズも大きめに聴こえますがグースネックの角度で回避できるので、ラインのみになりがちなライブでのマイク集音にも活躍しそうな場面が今後増えるに違いないでしょう。
総評
実際に各楽器に設置して音を聴いてみたところクリップマイクとは思えない音の生々しさと抜け感を両立させているのが良く分かりました。
クリップホルダーも様々あるので、今回試した楽器以外にも管楽器、チェロやコントラバス用もあるのでそちらも機会があれば是非聴いてみたいですね。
マイクはスタジオやライブハウスでエンジニア任せになっていることが多いとは思いますが、今回使って見てこのクオリティが毎回のライブで出せるのであれば演奏者が自分自身で購入しマイマイクとしてライブに持ち込んでも良いのではないでしょうか。
メーカーHP
NEUMANN
https://ja-jp.neumann.com/
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記事内に掲載されている価格は 2023年1月31日 時点での価格となります。
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