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09
May.2024
HOW TO

BUILD UP YOUR STUDIO 2024!宮川 麿 (Miyakawa Maro)プライベートスタジオ・インタビュー

20240509-buys

ーーー 簡単な自己紹介をお願い致します。

コンポーザーの宮川麿です。普段はフリーの作曲、編曲家として楽曲提供を中心に活動しております。
またミキシングエンジニア、サウンドプロデュース、ディレクション業務等も行なっております。
以前はGANJINという自身のバンドの活動も行なっておりましたが現在活動休止中です。

よく鍵盤の方と間違われるのですが、生粋のギタリストです 笑

ーーー スタジオのこだわっているポイントを教えてください。

DIYで作るスタジオ空間

スタジオ全貌_2_w1400

このスタジオは賃貸マンションの最上階角部屋の一室をスタジオとして使用しております。元々はフローリングの洋室でしたが数年かけてDIYで吸音等の施工をしております。壁面が石膏ボードの中空構造と全面窓という部屋でして、非常に音響的に悪条件で響きも多く大分苦労しました。

主に使用しているのはVicousticというポルトガルのメーカーのもので、施工に使用したのは「VicStudio Box」x2、「Cinema Round」「Super Bass Extreme Ultra」を設置しています。また、部屋の角面には低音が溜まるので、AuralexのBassTrapを角裏に仕込んでいます。

右側の壁は中空構造の石膏ボードで太鼓なりが酷かったので、対策として通常よりも重く密度の高いグラスウールに鉛が仕込んである吸音ボードを埋めて共振対策をしています。

床は防音のタイルカーペットを敷き詰めて、反射とフローリングの傷対策をしてあります。

少しずつ買い足して進めていったのですが、余計な響きが取れて中低域~高域は大分クリアになりミックスも楽になりましたね。プラグインの効果も明瞭に分かるようになり、今までいかにリバーブやコンプをかけ過ぎてたのかよく分かるようになりました。

スタジオ全貌_3_w1400

低域は定在波の影響を強く受けてしまうので対策にも限界があり、SPの音響補正で補っております。

左側は前面窓なので以前は吸音カーテンを全面に引いてましたが、現在は撤去して日当たりを優先しています。やはり日光があるのと無いとでは身体のバランスや精神面にも影響があるので。。。

賃貸物件は現状回復が必須なので、基本的な施工は2X4材を突っ張らせ、マジックテープを使用して吸音材は接着してあります。マジテのおかげで着脱が自由に出来るので微調整が容易に出来るようになっています。賃貸住みのDTMユーザーの方にはおすすめです。

ウォークインクローゼットを改造したヴォーカルブース

スタジオ後方_w1400

ブース_キューボックス_w1400
ブース_w1400

部屋の後方に1.5畳程度のウォークインクローゼットが併設されておりまして、この部屋をレコーディング用ブースとしても使っています。こちらは小規模なプロジェクトや仮歌、アコギ等の収録に使っております。

床に静床ライトという防音のタイルカーペットを敷き詰めてあり、こちらの部屋も音溜まりが出来る部分を中心に吸音材を設置しています。こういった狭い部屋では短い残響(ルーム音)が乗りやすいので吸音処理は特に必須ですね。

あと、中の照明はLEDテープを使っており、明るさ目の優しさを確保しつつリラックスしやすいような空間作りにも配慮しています。

ーーー 自分にとって欠かせない機材たちとその理由を教えてください。

DAW

デスク_1_w1400

メインのDAWはStudio OneでPCはMac Studioです。元々10代の時からProToolsを10年以上使っていたのですが、作家仕事が増えソフト音源を多用するようになった際に、作編曲家の田辺恵二さんに相談して頂きStudioOneを導入しました。かれこれもう10年以上使っています。安定感もありますし、なによりワークフローのシンプルさが使いやすく気に入っている理由です。

アウトボード右_w1400

モニタースピーカー

8341AW_w1400

GENELEC 8341AW

GENELEC 8341AW7360Aが現在のメインスピーカーとサブウーウァーになります。以前は8220、8330等も使用しておりまして、部屋での鳴り方とレンジ感等最適な方向を探っていきましたら8340に落ち着きました。

GENELECは10数年ずっと使っていまして、特にGLMの音響補正機能は出始めくらいから使用しておりまして、これが無ければ仕事にならない。。。というくらい愛用しております。解像度も高く、室内音響が不十分な点を補えるので満足しています。

7360A_w1400

GENELEC 7360A

オーディオIF

AURORA n_w1400

Lynx AURORA n

業務クオリティで使えるIFを探していた時に出会ったのがAUROLAです。解像度が高いクリアさを持ち合わせつつ音楽的なシルキーさや柔らかさがあり導入しました。AD部も素晴らしく、導入してから録音のクオリティも大幅にあがりました。

アウトボード

アウトボード左2_w1400
アウトボード左_w1400
画像クリックで拡大

Avalon VT-737SP
AMEK 9098
PURPLE AUDIO MC77
Summit Audio TLA-100A
SSL Fusion

MC77_w1400

アウトボードは少しずつ集めているのですが、中でもMC77はお気に入りです。これはいつもお世話になっているスタジオからの放出品で、Rock oNさんに引き取られる寸前で引き留めて譲ってもらいました 笑

76系と思えない自然なコンプレッションをしてくれるので歌録りの際に出番が多いです。

Fusion_w1400

プリは歌のカラーに合わせて使い分けていますが、ファーストチョイスはAMEKです。年代的に一番聞き馴染みがあるからかもなのですが、明るくクリアなキャラクターが使いやすいです。

VT737_w1400

最近また一周回ってVT-737SPの良さが分かってきましてお気に入りです。

SSLのFusionはミックスの際に際立たせたいパートや、バス等に使用しています。これはプラグインもあってお気に入りなのですが、やはり実機の方が良いですね 笑 
特にサチュレーション部分は実機の方が音楽的なかかり方をしてくれる雰囲気を感じます。個人的にはつまみが少なく直感的な操作が出来るので扱いやすいですね。

電源は家庭内用の100vですが、ProCableの昇圧トランスを使用して、100vと120Vを分けて各機材に送っています。PC周りも120Vで動かしています。

その他

STREAM DECK_w1400

最近のお気に入りは左手デバイスとしてStreamDeckを使用しています。正直左手デバイスなんて。。。と思っていたのですが、使用してみたら歴然、圧倒的に作業効率が上がりました。本当ごめんなさい 笑 

僕は主にGLMソフトウェアのショートカットを割り当てており、いわゆるモニターコントローラーとしてメインに使っています。GLMはボリュームをプリセットしたり、サブのon/offが出来たりと多機能なのですが、StreamDeckのおかげでストレスなく操作できるようになりました。

あとはStudioOneのマクロと組み合わせて、「ソフトシンセを立ち上げ」→「フェーダーを10db下げる」→「トラック名をリネーム」みたいな事をボタン一つで出来るようになったので、ワークフローの無駄が減ってインスピレーションを消さずに作業できるようになりましたね。これは本当おすすめです 笑 

ーーー スタジオでの普段のワークフローを教えてください。

ギター_w1400

基本的なワークフローはStudioOneを立ち上げて進めていきます。作曲の際にはKeyscapeを立ち上げてコードを組み立てながらメロディを一緒に考える事が多いです。ベーシックなコードとメロディを作ってからリズムやベースなんかのアレンジのベーシックを組み立てていく流れですね。

アレンジ作業時は並行でベーシックミックスの作業もしていく形が多いですがなるべくEQではなくボイシングだったり音色のバランス等で縦横のバランスは整えていきます。

ギター単体_1_w1400
ギター単体_2_w1400
ギター単体_3_w1400
画像クリックで拡大

ある程度固まってきた段階でギターもダビングしていきますが、基本的にはラインで録音してDAWのアンプシュミレーターで作業しております。

ギター録音用ボード_プリ_w1400

一時期アンプ等も使っていましたがトータルリコールやKey変更等の観点から今はライン録音にしています。なるべく作業効率を高める為ギターは近場に置いておくようにしており、アウトボードはスイッチ一つ立ち上げれば録音が出来るようにしてあります。

マイク_w1400

歌は仮歌、プリプロ程度の使用がメインですが、コーラスやハモ等は仮収録のものが本チャンで採用される機会も多いので、仮歌の段階でもアウトボードやマイクは丁寧に選んで録音するようにしています。特にノイズチェックや歪み等はシビアにチェックするようにしております。

WA8000_w1400

ーーー 創作意欲を高める工夫や煮詰まった時の対処法などを教えてください。

モニターのリスニングレベルは計測して固定

適切なラウドネス内でミックス出来るようモニターのリスニングレベルは統一して作業するようにしています。昔は自分も適当だったのですが 笑

どうしても人間音が大きいと良く聞こえてしまうので、ミックスが破綻していてる事に気づかない事があり、仕上がりにムラがあるのが悩みでした。リスニングレベルを固定する事によってミックス時の適切な音のジャッジもしやすくなり、自分の癖なんかも把握出来るようになりました。

具体的には、iPhoneのアナライザーアプリ等を使って視聴位置で-73db程度の音量になるようにしています。GLMはレベルをプリセット出来るので常に同じ音量に一発で出来るので助かっています。

あとは何より耳にも優しくなるので、長時間の疲労感なんかも変わってきますね。

新しいアイデアが欲しい時や煮詰まった時には、お風呂に入ったり、掃除をしたり、散歩してみたり。。。一度音楽から離れてリセットするようにすると思考がまとまりやすくなりますね。あとはアレンジやミックスが終わったら一晩寝かせて翌日リフレッシュした状態でチェックしたりします。

やはり悩んだ時は数十分でも机から離れるのが一番だなと思いました。

ヘッドフォン_w1400

ーーー スタジオの現在の課題、将来的にグレードアップしたい事や導入したい機材などがあれば教えてください。

いま新しく家を建てておりまして、そこの1F部分にプライベートスタジオとブースを作る予定です。まだ設計段階ですが、なるべく部屋の音響面や電源面等、予算が許す限り拘ろうと思っています。なるべくお客様やアーティストの方も呼べるようなクリエイティブな空間が作れたらと思っていますので、スタジオが完成しましたら改めて紹介させてください 笑

ーーー 最後に、告知などあれば教えてください。

MaroSoundDesignではプロアマ問わず音楽制作の仕事は常に募集中です 笑

X等のSNSもやっておりますので是非気軽にご相談頂ければ幸いです。これを機に新しい出会いがあると嬉しいです。最後までお読み頂きありがとうございました。

宮川 麿 (Miyakawa Maro)

・作曲家
・編曲家
・サウンドプロデュース、ディレクション
・サウンド、ミキシングエンジニア


  • 1984.9.16 東京都出身
  • 10代より独学でギター、作曲、DTMを学ぶ
  • 20代よりバンド活動に専念。
  • コロンビアからのメジャーリリース等の実績も残しつつ解散。
  • 20代後半より作曲家としての活動を開始。
  • テレビ東京系アニメ「マジンボーン」のEDテーマでデビュー。
  • アイドル、声優、アーティスト多方面に楽曲提供を行うと同時に、企業案件BGM、ゲーム、劇版等の音楽制作等幅広く手がける。
  • MaroSoundDesignとしてフリーランスで活動中。現在12年目

HP:https://www.marosounddesign.com/

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