2023年から69年遡ること1954年、電子音楽の巨匠カールハインツ・シュトックハウゼンが、数式による音楽作品 Studie II を発表。この作品は現代音楽、電子音楽マニアは絶対に知っておかないといけない、現代DAWの礎となる重要な作品です。
優れた図形譜面
Studie IIでは曲に使用する音の周波数と、それらをグループにした「混合音」の発音する時間軸が数式で導き出され、ボリューム・オートメーションまで含めた全情報が図形譜面にまとめられています。
「図形なのだから結構アバウトな譜面なのでしょ?」と疑ってしまう方も多いかと思います。ワタクシも最初はその一人でした。しかし、図形譜面の基本が理解できると、そのうがった気持ちが驚愕を経由して、畏敬の思いへと昇華します。実は完全な正確性を備えた、誰でも再現できる図形譜面だということが解るのです。
Studie II を再現!!
図形譜面が正確ということであれば、DAWで完全再現できる!ということで、1年の制作期間を経てStudie II を再現しました。
図形譜面から得られた情報を上の表のようにまとめ、混合音の元となるサイン波を iZotope RX 10で81個ジェネレートし、それらを組み合わせた混合音を377個作成しました。図形譜面のテープ長を1拍480ticの分解能に計算変換、Digital Performer のマーカーでテープ長を555箇所打ち込み、音の鳴り始めと止まる位置を図形譜面で確認して、デシベル指定をボリュームオートメーションで書きました。
Studie II原曲はモノラルです。まずはモノラルで再現版を作り、左耳に原曲、右耳に再現版というパンニングで、譜面と合っているか確認しながら制作。原曲と再現版を同時に聞くと、譜面がどれほど正確かが分かり、シュトックハウゼンによる正確緻密な作業が証明されました。
360 Reality Audio バージョンが完成
私はシュトックハウゼンが来日した際、多チャンネルスピーカーの立体音響ライブに足を運んだことがあります。シュトックハウゼンであれば、間違いなく360 Reality Audioに興味を持ったことでしょう。ということで、360度全天球に音を配置可能な 360 Reality Audioバージョンを作成しました! 頭外定位の広大なスペースに音が散りばめられた、現代版 Studie II の完成です。バイノーラル・フォーマットですので、ヘッドホンやイヤホンでお楽しみください。
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記事内に掲載されている価格は 2023年7月11日 時点での価格となります。
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