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コンパクトなストンプボックス1台に多彩なエフェクトを凝縮し、“マルチなストンプボックス”として発売以来世界中のギタリストに愛用されているMultiStompシリーズ。昨年7月に「コスパ最強エフェクターペダル」として記事としてもご紹介した話題のZoomのマルチエフェクターMultiStompシリーズですが、さらにそのあと発売されて話題を呼んでいるMS-80IR+、MS-90LP+の2製品を、今回は徹底レビュー!
「マルチレイヤーIR」を採用し、23種類のギターアンプ/キャビネットモデルを搭載して人気のMS-80IR+(これまでいくつかZOOMのMultiStompシリーズに収録されていた「アンプシミュレーター」機能とどう違うのか、大変気になっていました)、そしてZOOM初となるコンパクトで多機能なルーパーペダルとして話題のMS-90LP+、この2機種の基本的機能や使い勝手、実機を使ってみた印象などをご紹介します。
MS-80IR+
★3つの音量で収録された「マルチレイヤーIR」採用!23種類のギターアンプ/キャビネットモデルを搭載
MS-80IR+は演奏の強弱に応じた動的な音色変化を再現する「マルチレイヤーIR」を採用した23種類のギターアンプ/キャビネットモデルを搭載したコンパクトペダルです。それだけでなくエフェクトやヘッドフォン出力端子、さらにUSBオーディオI/F機能なども搭載しているのも特徴です。
23種類の中にはMarshallやFender、Mesa BoogieやMatchlessといった代表的なアンプサウンドのモデリングが収録されていて、これらをヘッドフォンに接続して気軽にギターサウンドが楽しめます。
そこでこの製品の大きな特徴である「マルチレイヤーIR」から解説していきます。
●マルチレイヤーIRとは
ギター用アンプシミュレーターの特徴でよく聞く「IR(Impulse Response)」ですが、これは「空間の音響特性をキャプチャしてデータ化したもの」です。スピーカーキャビネットから出力されるギターの音をマイクで収録した際の音響特性をキャプチャすることで、様々なスピーカーキャビネットの特徴がデータ化され、エフェクトとして使用することができます。キャビネットのシミュレーションをしてくれているので、これによって「その場で空気を振動させる、生の臨場感」がプラスされ、(スピーカーキャビネットから出力しなくても)リアルなギターサウンドを再現することができます。
ここまでは従来のIRの解説ですが、MS-80IR+で採用されているマルチレイヤーIRというのは、「LOUD / MEDIUM / SOFTの異なる音量で取り込まれた3つのインパルス応答を採用している」というものです。この3つのIRが楽器の音量や演奏の強弱に応じて動的にブレンドされ、現実のキャビネット同様の反応が得られるというもので、つまり弱く優しいタッチの演奏ではスピーカーコーンが微かに震える程度のクリーントーンが、激しくラウドな演奏ではキャビネット全体の共振・共鳴によって生み出される箱鳴りを含んだサウンドを忠実に再現します。これにより従来のIRでは不可能だった、有機的な響きとリアルな演奏フィールを提供することを実現しています。
●空間5種類のアンビエンスを再現
さらにMS-80IR+にはStudio Ambience機能を搭載しているのも特徴です。これは従来のリバーブエフェクトの代用というより、「アンプがどの部屋で鳴っているか」を設定する機能で、レコーディングスタジオ、ライブハウス、コンサートホール、教会など、実在する5種類の空間の自然な残響をキャプチャし、これを設定することによってギターアンプを設置した場所のアンビエンス(空気感)を再現してます。
●ノイズゲートやディレイといった12エフェクトも搭載
さらにアンプサウンドの質感を整える12エフェクトを内蔵されているのも特徴です。ノイズゲートやノイズリダクション、4種類のディレイ、さらにEQもステレオ7バンドやパラメトリックEQ、低域/高域専用など5種類が収録されていてバンドアンサンブルに応じた最終調整を行うことができます。
●定番セッティングを収めた50種類のプリセット
こうしてアンプ/キャビネットモデル、Studio Ambience、エフェクトとを設定できるので(他にペダルを接続しなくても)一台でエフェクト込みの作り込んだサウンドをセッティングすることができます。激しい歪みのサウンドにはノイズゲートやノイズリダクションを、ギターソロなどにはロングディレイなどを組み合わせたりすることでライブやレコーディングで使えるオリジナルセッティングを最大80種類までパッチメモリーに保存することが可能です。ヘッドホンで練習したりするのにも最適ですね。
定番セッティングを収めた50種類のプリセットも内蔵しています。ビギナーの方はそれらのパッチを元にギターサウンド作りの参考になるのではないでしょうか。
●最大80個のIRをロード可能!
さらにサードパーティのIRデータも、アプリを介して最大80個まで読み込ませることが可能です。ZOOM、Jensen SpeakersとOverloudの協力により作成されたカスタムIRデータコレクションも利用可能で、合計30個のJensen IRが無料でダウンロードできます。
※IRを選択中はアンプモデリングのキャビネットはバイパスされます。
※アプリはiPhone/iPad用「Handy Guitar Lab for MS-80IR+」またはWindows/Mac用アプリ「IR Loader for MS-80IR+」となります。
このJensen IRデータの評判が良かったので、下記のリンクから「IR Lorder for MS-80IR+」と「Jansen IRコレクション」をダウンロードし、PC経由でMS-80IR+に追加してみました。IRファイルをアプリケーションにドラッグ&ドロップするだけで、Jensen IRサウンドを活用することができます。
※IRかStudio Ambienceのどちらかを、1つのパッチメモリー中に1つだけ選択できます。
※以下の形式のインパルス・レスポンスデータが読み込み可能です。
• 形式:WAV
• サンプリング周波数:44.1 kHz ~ 192 kHz
●「R OUT POSITION」機能で、PAとアンプに適した音を別々に出力!
ステレオ入出力が搭載されているのもMS-80IR+の特徴ですが、さらにもう一つお伝えしたい機能が「R OUT POSITION」という機能で、これはRチャンネル出力信号の取り出し位置をパッチメモリーごとに設定できる機能です。
例えばライブステージなどでMS-80IR+を使用する際、PAシステムとギターアンプに適した音を別々に出力できます。PAシステムには、キャビネットシミュレーターやエフェクト処理された音を出力端子(L)から出力して、ギターアンプには、アンプヘッドのモデリングのみ処理した音を出力端子(R)から出力することができます。これはMS-80IR+のサウンドをライブでも使いたいという方には嬉しい機能です。
★動画で機能を紹介
実機を使って、代表的なアンプモデリングをStudio Ambience→Jensen IRの順番で切り替え、最後にはプリセットのサウンドをいくつか試奏してみました(アンプやエフェクターを接続せず、ステレオでオーディオインターフェイスに接続しました)
●INDEX
0:00〜 FD TWIN-R(Fender Twin Reverbのモデリング)
0:34〜 MS 1959(Marshall 1959のモデリング)
1:16〜 RECTI DUAL(Mesa Boogie Dual Rectifierのモデリング)
1:49〜 WHITE CANVAS(オリジナルアンプ)
2:23〜 プリセット試奏(028:Psycho Circus)
2:47〜 プリセット試奏(029:SPARKLE)
3:19〜 プリセット試奏(033:Vicarious)
MS-90LP+
★ZOOM初となるコンパクトで多機能なルーパーペダル
MS-90LP+はギター/ベースなど楽器の演奏フレーズをリアルタイムに重ね録りして、複数のループを次々とレイヤーしていくライブパフォーマンスが行えるZOOM初の多機能ルーパーペダルです。コンパクトな筐体ながら5つの専用フットスイッチを装備。フラットな位相特性のアナログ入出力回路とデュアルAD&32bitフロート処理による高品位なサウンドで、1ループあたり最大90分間のステレオ録音、最大100個のフレーズを記録可能です。
●68種類のリズムに合わせてフレーズ録音が可能!
MS-90LP+にはルーパーと同期録音&再生が可能なリズム機能が搭載されているので、ループ録音前にここを設定します(どんなリズムに合わせて弾くかでループのフレーズも大きく変わりますよね)。ロック、ラテン、ダンス系など、多様なジャンルに対応する68種類のリズムパターンが用意されていて、テンポ調整も簡単にできます。
●5つのフットスイッチで簡単ループREC!
ルーパーは操作が難しい印象があり、思い通り録音するのに案外時間がかかったりしますが、MS-90LP+はルーパーの停止(STOP)や、直前に録音したフレーズの取り消しまたは復活(UNDO/REDO)が、専用フットスイッチのひと踏みで確実に実行できます。
さらに録音中のフレーズをリアルタイムに波形表示する高解像度LCDを搭載し、ルーパーのステータス(REC/PLAY/LOOP FX)もバックライト色の変化(赤/緑/青)で一目瞭然なのも便利です。
●8種類のLOOP FXを搭載!
8種類のLOOP FXを搭載していて、録音済みのループに様々なエフェクトをかけることができます。REVERSEやHALF SPEEDといった定番エフェクトはもちろん、HOLDやTAPE STOP、スイッチを踏んでいる間のみエフェクトがかかるUNLATCH操作対応のユニークなエフェクトも利用可能。多彩な表現が可能です。
動画では効果のわかりやすいエフェクトをいくつか試してみました。
●WAVファイルのインポートも可能!
パソコンからUSB経由でバッキングトラックなどのWAVファイルをインポートしておけば、その伴奏に合わせてギターのリフやリードソロを弾くことも可能です。動画ではPCからソフトウェア音源で作成したSE的な音をインポート。それにMS-90LP+のLOOP FXをかけて効果を試してみました。
★動画で機能を紹介
●INDEX
0:00〜 RHYTHM SELECT
0:59〜 LOOP REC START
1:43〜 LOOP FX
2:25〜 WAV FILE IMPORT
感想
今回MS-80IR+、MS-90LP+とを使ってみて感じたのは、この「+シリーズ」になってから5つのフットスイッチが搭載されたことで操作性が抜群に良くなったという印象です。MS-90LP+にしてもルーパーはとにかくセッティングやループの録音/再生などにも時間がかかるというイメージでしたが、簡単に音を取り込んだりFX効果を楽しむことができました。
そしてMS-80IR+について言うと、これまでZOOMエフェクターに搭載されていたアンプシミュレーターのサウンドとかなり違う印象を受けました。私は個人的にこれまでZOOMのエフェクターペダルをいくつか(MS-50G、MS-100BTなど)好きで使ってきましたが、マルチなエフェクターとして使うことが大半で、アンプシミュレーターの機能は(臨場感であったり音のニュアンスが自分のイメージしているアンプサウンドと違う印象があって)そこまで積極的に使う機会はありませんでした。ですがMS-80IR+を今回試してみて、アンプ・キャビネットのモデリングに特化したペダルだけあって、マルチレイヤーIRのモデリングサウンドによってここまで迫力と臨場感が出るのかと正直驚きました。
さらにStudio Ambience機能で空気感を調整したり、Jensen IRといったカスタムIRデータを追加できるなど、「コンパクトペダルでどこまでアンプ/キャビネットのサウンドをモデリングできるか」ということに、かなり本気で追求した製品だという風に感じました。(あくまで私個人の印象ですが)モデリングされたアンプも相当近いニュアンスが出ているように感じましたし、搭載されているZOOMオリジナルアンプもどれも魅力的で、多彩な用途に使える音になっていた印象です。これらを時間をかけて作り込めば、理想のギターサウンドを追求できる要素が十分にあるペダルだと思います。
最近ではアンプサウンドをキャプチャーしたり、PCでDAWのプラグインとして使うアンプシミュレーターなどが主流ですが、コンパクトペダルで簡単にヘッドホンに挿してギターの練習ができるという点でもMS-80IR+は魅力的で、自分のギターに最適なアンプサウンドを手元で気軽に作り込めるという点においても「プライス以上の」楽しめるペダルだと思います
ぜひ一度、店頭などで試してみてはいかがでしょうか。
★前回の記事はこちら
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製品情報
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記事内に掲載されている価格は 2025年4月30日 時点での価格となります。
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