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リハーサル・スタジオで何気にマイクに向かう時、必ず対面するのはSM58かSM57のどちらかだ。「SHURE」というブランドは、バンドマンにとって他のブランドと違う存在感を長年に渡り保ち続けている。
~ ザ・バンドマン ~ 私がアイゴンこと會田茂一氏さんに抱くイメージを一言でいうとこんな感じだ。ご自身も幾つかのSHURE製品を所有されているという會田茂一氏さんがこのブランドに抱くイメージ、そして距離感は? 會田さんとのそんな切り口からの会話から、SHUREが音楽業界の中で保ってきた存在感の大きさが浮き上がってくるかもしれません。
1968年生まれ。大学在学中よりギタリストとしての活動をスタート。
佐藤研二(bass)& 小松正宏 from bloodthirstybutchers(ds)とのバンド“FOE”を中心とし、中村達也率いる“LOSALIOS”、高桑圭(GREAT3)とのユニット“HONESTY”、近年では髭(HiGE)に電撃加入する等、様々なアーティストと共にバンド活動を行っている。
また、映画・CM音楽の制作や、木村カエラをはじめとする数多くのアーティストへの楽曲提供やプロデュースを手がけており、幅広い音楽活動を展開中である。
バンド少年 會田茂一氏とSHUREの出会いは?
Rock oN : いきなりですが、會田さんがSHUREの製品に初めて出会った時の記憶などあったりしますか?
會田茂一 氏 : 中学生の頃からずっとバンドをやってましたが、当初はギターにしか興味が行かなかったので、マイクはどれも同じに見えました。でも「これなんだ?」と思ったのが、ロカビリーをやってる人たちが使うようなガイコツマイクSHURE 55(55SH SERIES II)でした。高校生だった頃、新宿歌舞伎町にロカビリーを演奏するバーがあったんですよ。日曜日だけアマチュアバンドが出てたんですが、そこにガイコツマイクが置いてあったんです。僕は使わせてもらえなかったですけど。
Rock oN : その頃、SHUREというブランドに対し、何かイメージみたいなのはありましたか?
會田茂一 氏 : 自分の中では、例えばFenderやGibsonなどと並ぶような「海外の本物ブランド」という感じですね。リハーサル・スタジオに置いてるマイクは、ほとんどがSHUREのSM58だということは、自然と見て知るわけですが、音楽友達の中でもプロを目指すボーカリストの子は、自分のマイクとして持っていたのがSM58でしたし。
Rock oN : 會田さんがバンドを始められたのは80年代前半の頃ですよね。その頃、東京の中学、高校のバンドってどんな感じだったんですか?
會田茂一 氏 : 僕は中学の時にヘヴィ・メタルの洗礼の受けました。ちょうどラウドネスやアースシェイカーといったジャパメタの時代だったし。テレビではMTVを紹介する番組「ベストヒットUSA」が開始し、僕はギターをやってたからオジー・オズボーンの姿をMTVで追いかけたり。でも、高校になるとパンクに行っちゃうんです。学校のクラスの何人かは一緒に音楽の話をしたり、バンドをやりたいというような友達がいました。そうやって知り合った友達と高校1年からバンドを組み始めました。メンバーはクラッシュやセックス・ピストルズといったパンクが好きでした。高校2年になると新宿ロフトでライブをやるようになりましたが、高校生なのでクラスの友達にまとめてチケットを売れるから、普通のバンドよりも集客力があったんです(笑)。それで、ロフトには定期的に出させてもらってました。
カッコよさにやられた、ウィルコ・ジョンソンのギターアンプ・マイキングとは、、
會田茂一 氏 : その後、大学にちゃんと入学したという免罪符的な意味合いで(笑)、19歳の時に1人でロンドンに行ったんです。アルバイトで費用を稼ぎ、冬休みを使って1ヶ月くらい滞在しました。1989年のイギリスは景気が良くなく、街の空気はなんとなく塞いでる感じでしたけど、逆に音楽はマッドチェスターシーンが盛り上がっていたし、元気があって面白かったんです。僕はレゲエやスカに興味が行ってた時期でもあったので、フィッシュボーンや2トーンシーンも好きでした。それで滞在中に、ウィルコ・ジョンソンのライブを、あるパブで見たんですよ。彼は、ギター・アンプにマイク・スタンドを立てることなく上からマイクを垂らしてただけなんです。それがカッコよくて、「これは絶対真似しよう!」と思い、帰国後、自分のライブで同じことをやろうとしたんですが、ライブハウスの人に「これじゃ音を拾わないよ。」ということで却下されたんです(笑)。
Rock oN : マイキングとか機材的なことについては、まだ、そんなに興味がなかった頃なんですよね?
會田茂一 氏 : はい。当時はマイクの種類や構造などよく分かってなかったですし。ギターにしても、いわゆる王道のいいギターというよりも、僕は「見た目重視」なんです。ちょっと変わったものに憧れるんです。スィッチがいっぱい付いたギターとか(笑)。機材やセッティングについての知識を持つようになったのは、20歳の頃にミュートビートの朝本浩文さんに引っ張り上げてもらい、ギターを弾く仕事をやるようになるんですが、その現場で、エンジニアの人に色々教えてもらうようになってからです。その後、1993年にEL-MALOでメジャーデビューしアルバムを制作するんですが、フリーダムスタジオを根城にして色んな実験をやりました。エンジニアの南石聡巳さんに、僕の好きなレコードを聞いてもらい「こんな音にしたいんです!」と言いながらビンテージ・マイクを色々試させてもらったり。
「音楽的な音」がするか? 會田氏の機材の選び方。
Rock oN : EL-MALOは、いわゆる「綺麗な音」で録るというような音楽性とは違いますよね? 南石聡巳さんという理解あるエンジニアさんと巡り合ったという感じですか?
會田茂一 氏 : そうですね。トイズファクトリーに所属してましたが、あの時期は本当にどうかしてたなって思うくらい、色んなことをやらせてもらいました(笑)。僕らEL-MALOの二人は、サンプラーやシーケンサーも使ってましたが、フリーダムスタジオに行ってから曲の構成を決め始める、みたいなタイム感で作業してたんですよ。今みたいにスタジオの終わり時間を気にしながらキリキリする、みたいなことはなかった時代でした。
Rock oN : 會田さんはSHUREのマイク、520D(現行モデルは520DX)をお持ちですよね? ブルースハープ用のマイクとして有名ですが、どういうところが気に入ったんですか?
會田茂一 氏 : マイクについても、自分で持つなら変わったのがいいなあと思い、EL-MALOの頃に520Dを買いました。ブルースハープの他にも歌を録ってみたり。自分にとって「好きなレコードと同じ音がする」というのが大事なんですよ。周波数特性がどうのというより、「音楽的な音」がするかどうか、ということで選びます。
Rock oN : SHUREは歴史が長いブランドなので、それこそ世界中の沢山の曲で使われてきてますしね。昨年、メンフィスのサン・スタジオに行きましたが、もちろんエルビス・プレスリーということで、ばっちりSHURE 55(55SH SERIES Ⅱ)が置いてありました。
會田茂一 氏 : ギターでも最近、エイジングされた製品が発売されていて、最初からオールドっぽく加工されてるものがありますよね。そういう面構えに惹かれてしまうんです。やっぱり見た目重視で、特に最近はZZ TOPのビリー・ギボンズが持っているギターが僕の理想形で、いつもお手本にしているほどで好きなんです。「Billy F Gibbons Rock Roll Gearhead」という写真集は、ビリーのギターと車のコレクション満載ですごいんですよ!(笑)
GarageBandでスピーディーに!
Rock oN : 會田さんはご自身のバンド以外にも、アーティストのプロデュースもやられてますが、今お邪魔してるこの空間で作業されてるわけですか?
會田茂一 氏 : はい、DAWはGarageBandを使っています。結構前から使っていて、CMやサントラ制作でも、GarageBandで作ったものを納品してるものもありますよ。
Rock oN : へ~、驚きですね!
會田茂一 氏 : あまり細かいことまでやらないからかもしれません。僕はGarageBandはかなり万能だと思って使ってます。作業するにあたってスピードを大事にしていて、曲が思い浮かんだらパッとiPhoneのボイスメモにメロディーなんかを録っておき、このスタジオに戻ってGarageBandを立ち上げ、リズムを打ち込みしてギターを入れて、、、という感じでスピーディーに曲作りするんです。それこそ、木村カエラちゃんの「リルラリルハ」を書いた時は、GarageBandを使い出す前だったので自分で録る手段がなく、持ち歩いてるICレコーダーにメロディーを入れて、現在Curly Giraffeとして活躍している高桑圭君に「こういう曲を作りたいんだけど一緒にやって」とお願いしてデモを作ったんですよ(笑)。
Rock oN : 會田さんは、「この曲のギターはこんなサウンドで」みたいなこだわりが強くありそうですが、、、
會田茂一 氏 : EL-MALOの頃に、贅沢にも色んなビンテージ・アンプやエフェクターを試した経験があり、自分がどんな音を求めてるのが分かっているので、音作りにはぜんぜん時間がかからないんです。もちろんアンプの良さを知っているので、アンプで鳴らせる時はアンプを鳴らして録りますが、GarageBandのアンプ・シミュレーターでもサウンドに妥協することなく、ちゃんと自分で欲しい最終音が見えてるので問題ないんですよ。
オールマイティーに活躍中のSHURE SM7B
Rock oN : パソコンの横に、ダイナミック・マイクのSHURE SM7Bをセッティングされてますが、用途は?
會田茂一 氏 : ボーカル、アコースティックギターとオールマイティーに使っています。
Rock oN : SM7Bを選ばれた理由は?
會田茂一 氏 : フリーダムスタジオではSM57をよく使っていたんですが、「こういうのもありますよ」という感じで南石さんがSM7Bを持ってきてくれたんです。SM57を愛用してたからっていうのもあるんですが、マイクアンプのゲインをぐっと上げると、自分の狙いどころにフッと入るような、音楽的で好みの音になるんですよ。自分の声はガッツあって張り上げる感じではなく「ヘニャ」ってした感じなので(笑)、エンジニアの人によっては、チューブやリボンマイクのような繊細に録れるマイクが合うんじゃないって言われることもあるんですが、SM7Bを持ち込んで使うことも多くあります。初めて仕事するエンジニアさんの時に、ギターの音がちょっと遠いかなと感じる時は迷わずSM57に替えます。そこからマイクとアンプの距離や位置を調整していけば、自分のイメージに近く追い込むことができるんです。
SHURE SE535はライブ用イヤモニとして活躍中
Rock oN : 他のSHUREプロダクトですが、イヤホンのSE535をお使いになっているそうですね。
會田茂一 氏 : 基本はコロガシを使ってモニターする主義なんですが、ステージ上のミュージシャンが、みんなイヤモニを使ってる状況なのに、僕一人だけ使ってないのもなんか頑固オヤジみたいなんで、そういう時は使います(笑)。機種を選ぶにあたって、まず3つに機種を絞り会場で試してみたんですが、一番バンド感があったのがSE535でした。ステージ上でコーラスをするにあたり、違和感なく、しっくりきてモニター出来ています。また、SE535をステージモニター以外でも使ってみたんですが、改めて「こんないい音だったんだ」って気付き、愛用しています。
製品情報
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メーカーHP
SHURE
https://www.shure.co.jp/
記事内に掲載されている価格は 2017年6月22日 時点での価格となります。
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