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IBC2026 速報③|Audio新製品まとめ 〜小型一体型のST2110コンソール、Neumann新3ウェイモニター、Pro Toolsのステム分離

文:前田洋介(ROCK ON PRO

本稿はWeb上の一次情報(各社公式リリース、EBU・IBC公式)および業界メディアの報道をもとに構成した速報です。現地取材に基づくものではないため、展示内容・仕様については各社の公式発表をあわせてご確認ください。

IBC2026速報 Index

1. IBC2026 速報①「MXL」が概念から実装へ 〜ソフトウェア定義制作の共通言語を各社が製品搭載へ〜

2. IBC2026 速報②|併走するもう一つの標準化:NMOS BCP-008

3. (本記事)IBC2026 速報③|Audio新製品まとめ 〜小型一体型のST2110コンソール、Neumann新3ウェイモニター、Pro Toolsのステム分離

随時、追加公開予定です。

今年のオーディオは「小さく、一体型で、ST2110ネイティブ」

IBC2026のオーディオ関連を俯瞰すると、コンソールは「小型・一体型・ST2110ネイティブ」という方向にはっきりと収斂してきた模様である。CalrecのType RTはその象徴で、ArgoとType Rという2つの系統を一つの卓上筐体にまとめ、ST2110をネイティブで喋る。DHDのMX3もPoE+のケーブル1本でモジュールを繋ぐという大胆な構成だ(こちらは国内での展開が限られるため本稿では割愛する)。モニタースピーカーではNeumannがKH 310の後継と新型KH 350を投入し、DAWではAvidがPro Toolsにステム分離機能を持ち込んできた。

そしてもう一つ、製品ではないが見逃せないのが業界再編の動きである。2月に発表されたAudiotonixによるAustrian Audio、DPA Microphones、Wisycomの3社買収合意。IBCでは、その3社がどのように「Audiotonixファミリー」として並んでいたのかも気になるところだ。

本稿では新製品を中心に、放送・ポストプロダクション・ライブの現場に関係の深いものをピックアップして紹介していきたい。

Calrec Type RT/Apex M6 ── 卓上サイズの統合型コンソールと512×512対応1Uコアルーター

会期中の新発表として最も注目を集めていた模様なのが、CalrecのType RTである。公式リリースによれば、Type RTは同社のフラッグシップ系であるArgoとラジオ向けType Rの機能を統合した、ファンレスの卓上一体型コンソールとのこと。6/12/18のモーターフェーダー構成が用意され、最大138のアサイナブルボタン、24のロータリーエンコーダーを備える。ST2110はMedium Capacity Cardによりネイティブ対応、Danteはオプション、MADIはライセンスで追加でき、USBオーディオも内蔵している。処理系はImPulseVおよびTrue Control 2.0に対応する。

これまでのCalrecのラインナップで言えば、Type Rはラジオ向けのコンパクト卓、Argoはその上の中〜大型卓という棲み分けであった。Type RTは、Type Rのサーフェスサイズ感にArgo系のエンジンを組み合わせたようなイメージと理解している。サブ、OB、MA室といった中小規模の現場で「ST2110ネイティブの卓が欲しいが、Argoは大きすぎる」というニーズにちょうどはまる製品ではないだろうか。

同時に発表されたApex M6は、1Uに6スロットを持つモジュラーI/Oプラットフォーム。MADIを2系統内蔵し、512×512の内部ルーターを持つ。ST2110-30/AES67/Dante/MADI/Waves SoundGridに対応し、NMOSをネイティブで喋るという。個人的には、こちらの方がType RT以上に「効く」製品だと見ている。1Uで512×512のルーターというのは、ImPulse系のエンジンをI/O筐体に持ち込んだからこそ実現できたサイズ感であり、コンソール抜きでAoIPの集線・変換・ルーティングを担う箱として、かなり応用範囲が広い。

価格・出荷時期はいずれも未公表。なお、Type RTのフェーダー構成について、一部メディアでは「2レイヤー×32=最大64フェーダー」と報じられており、公式の6/12/18フェーダーという記載と食い違いがある。本稿では公式ページの記載を正としているが、レイヤー構成の解釈については国内窓口への確認をお勧めしたい。

Neumann KH 310 II/KH 350 ── 3ウェイ・ニアフィールドが刷新、密閉型とバスレフ型の2本立てに

NeumannはIBC開幕前日の9月10日に、3ウェイモニターの新製品KH 310 IIKH 350を正式発表した。Sennheiser Groupのブース(8.D50)で「新世代スタジオモニターの初公開・試聴デモ」が案内されていたことから、IBCに合わせた発表と見られる(Neumannの公式リリース自体にはIBCへの言及がなく、ブースでの展示型番は公式資料では確認できていない)。

両機の共通仕様は、8.25インチウーファー(300W)+3インチソフトドームミッド(160W)+1インチツイーター(125W)の3ウェイで合計585W、クロスオーバーは700Hz/1.7kHz、32bit DSP搭載、入力はXLRアナログとAES3id、そして同社の自動音場補正MA 1に対応する。

KH 310 IIは密閉型で、従来のKH 310 Aと同じ寸法を維持しながら最大SPLが+5dBの121.4dBへ向上したとのこと(29Hz〜21kHz ±6dB、13.0kg)。既存のKH 310ユーザーがそのまま置き換えられるサイズ感を保った、正統な後継機という位置付けだ。

KH 350はバスレフ型の新モデルで、低域は27Hz(−6dB)まで伸び、32Hz〜20kHz ±1.25dB、最大SPL 122.6dB、寸法545×280×363mm、重量20.0kg。ツイーター周りにはMMDウェーブガイドを採用しているという。密閉型のタイトさを取るか、バスレフ型の量感を取るか。同じ3ウェイでキャラクターの異なる2機種を並べてきたところにNeumannの意図を感じる。

価格と出荷時期はNeumannの公式リリースには記載がないが、海外の販売店ではKH 310 IIが€2,979/$2,999、KH 350が€3,579/$3,599で予約受付が始まっている模様だ。国内価格・発売時期は今後の案内を待ちたい。

なお同ブースでは、Neumannの新カプセルヘッドKK 104 A/KK 105 A(KK 204/205の後継、ハンドリングノイズ低減)も展示されていた模様だ。

Solid State Logic Net I/O ST 2110 Bridge ── ST2110とDanteを256/512chで橋渡し

IBC前に発表済みの製品ではあるが、AoIP移行の観点から改めて取り上げておきたいのがSSLのNet I/O ST 2110 Bridgeである。1RUの筐体で、ST2110とDanteの間を最大512chで相互変換する(256ch構成も用意される)。両ネットワークに対して独立したクロックを持てること、NMOSに対応すること、SRCがオプションで用意されることが実運用上のポイントだ。ST2110側とDante側でPTPのドメインやグランドマスターの事情が異なる、というのは現場では珍しくない話であり、ブリッジ製品でクロックが独立しているかどうかは選定の分かれ目になる。

SSLは同時に、System TのTempest Engineに最大2,048chのST2110-30を直接取り込み、NMOSで自動ディスカバリーするSystem T ST 2110 Card、そしてSystem T V4.3(OSC統合、メーターブリッジ強化、Permanent Path Linking、SolidPitchボーカル処理)も発表している。処理エンジンをCOTSサーバーに載せるVirtual Tempest EngineとMXL統合のプレビューについては、IP編の記事を参照いただきたい。既存のDante資産を残しながらST2110へ段階的に移行する、という構成を組む上で、SSLの製品群はかなり現実的な選択肢になってきた。

Avid Pro Tools「Stem Separator Extension」 ── 音楽とポストの両方を狙うステム分離

Avidブース(7.B59)では、Pro Toolsにステレオミックスをステムに分解する機能を内蔵するStem Separator Extensionがテックプレビューとして披露されていた模様。Production Expertの報道によれば、Avidは用途として音楽(リミックス)とポストプロダクション(ダイアログ分離)の両方を挙げているとのことだ。

ステム分離自体はサードパーティのプラグインやスタンドアロンのツールで既に一般化している技術であり、Pro Tools内蔵になること自体に技術的な驚きはない。ただ「音楽とポストの両方で使える」と最初から明言している点は面白い。ポスト側で言えば、素材として届いたステレオのM&E無しファイルからセリフを抜き出す、といった作業は日常的に発生しており、DAW内で完結するなら作業フローは確実に短くなる。リリース時期は未定。なお、Avidが事前に予告していた「編集からADR、最終ミックスまでを繋ぐ新統合」の正式名称は会期後も公表されておらず、こちらは続報を待ちたい(MPEG-Hレンダラーは2026.4で提供済み)。

Evertz Studer VistaVUE Touch ── タッチと物理フェーダーで音声・映像・ルーターを一元操作

Evertz(2.A47)はIBC開幕に先立つ9月4日付のプレスリリースで、StuderブランドのVistaVUE Touch(NAB 2026で初披露)の新機能を発表している。タッチディスプレイと物理フェーダーの組み合わせで音声・映像・ルーターを統合操作でき、Spatial IQとの連携、MAGNUM-OS経由での複数オペレーターによる遠隔運用に対応するという。出荷時期は未記載。

Studerというブランドが「音声卓」の枠を超えて、Evertzの映像・ルーティング系と一体化した操作面になっていく、という方向性はここ数年一貫している。放送局のサブで音声と映像の操作を一人で見なければならない場面が増えている現状を考えると、こうした統合操作面の需要は今後も伸びていくだろう。

Glensound Greater Divine Supernal ── ネットワーク8入力のスタジオモニターコントローラー

創業60周年を迎えたGlensound(8.F72)は、新スタジオモニターGreater Divine SupernalをIBCの目玉として展示していた模様(7月に予告、9月のPLASA Showで正式ローンチ)。1GbEのネットワーク経由で8入力を受け、USB-Cとヘッドホン出力、EQを備える。出荷は2026年末とのこと。同社からは、Dante 2in/2out+USB-CのDARK22M(Best of Show受賞)、12ch DanteインカムBeatrice R12 MkIIも案内されている。

Divineシリーズは、Danteネットワーク上のどのストリームでも手元で聴けるモニターとして、放送局のマスターや中継車で重宝されてきた製品だ。それが8入力・ネットワーク直結でさらに大型化した、と理解している。派手さはないが、AoIP化した現場では「まずここから始める」のに丁度いい製品ではないだろうか。

DPA DPK2015 Piano Stereo Kit ── ピアノ収録専用のステレオキット

こちらはIBCの新発表ではなく1月19日発表、NAMM 2026で初披露された製品だが、放送・ライブ収録の現場に向けて改めて紹介しておきたい。DPAのDPK2015 Piano Stereo Kitは、その名の通りピアノ収録に特化したステレオキットである。

構成は、ワイドカーディオイドの2015マイクロフォン×2本、グースネックマウントGM1500×2、XLR付きケーブルDAO2015のペア、軽量ステレオブームSB0400、フォームウィンドスクリーンDUA0020、そして保護ケース。ピアノの蓋を開けた状態でも閉じた状態でも安定してマウントできる設計で、「数分でセットアップでき、プラグアンドプレイのシンプルさと高い音質精度を兼ね備える」と謳っている。想定用途はスタジオ・ライブの双方で、クラシックからポップス、ジャズ、ツアー用途まで幅広く対応するとのこと。

ピアノのマイキングはエンジニアの経験値がもろに出る作業で、時間の限られた放送や中継の現場では悩みの種であった。マイク本体は定評ある2015(ワイドカーディオイドのペンシル型)なので音質面の心配は少なく、マウントとブームを含めて「型」として提供されることで、誰が立ててもある程度の結果が出せる。放送局の音楽番組やホール中継を担当されている方には、一度チェックしていただきたい製品だ。国内価格は代理店の案内を確認いただきたい。

公式サイト

IBC2026

https://show.ibc.org/

記事内に掲載されている価格は 2026年9月24日 時点での価格となります。

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