
IBC2026速報 Index
1. IBC2026 速報①「MXL」が概念から実装へ 〜ソフトウェア定義制作の共通言語を各社が製品搭載へ〜
2. IBC2026 速報②|併走するもう一つの標準化:NMOS BCP-008
3. IBC2026 速報③|Audio新製品まとめ 〜小型一体型のST2110コンソール、Neumann新3ウェイモニター、Pro Toolsのステム分離
4. (本記事)IBC2026 速報④|A業界ニュース : 製品以外で押さえておきたい動き
随時、追加公開予定です。
Audiotonixが Austrian Audio、DPA Microphones、Wisycom の3社買収に合意
今年のオーディオ業界で最も大きなニュースの一つが、2026年2月(現地2月2日付)に発表されたAudiotonixによる3社の買収合意である。Audiotonixは、Austrian Audio(オーストリア)、DPA Microphones(デンマーク)、Wisycom(イタリア)の3社との間で買収合意に至ったことを発表した。Audiotonixは既にAllen & Heath、Solid State Logic、Calrec、DiGiCo、Sound Devices、JH Audio、Slate Digitalなどを傘下に持つプロオーディオの企業グループであり、今回の3社が加わることで、マイクからワイヤレスシステム、コンソールまでの一貫したラインナップが実現することになる。DPAは2025年1月にAustrian Audioの過半数株式を取得しており、今回はその2社にWisycomを加えた形でAudiotonixの傘下に入る、という構図だ。発表時点では規制当局の承認を経て2026年上半期中の完了を見込むとされていたが、完了を告げる公式発表は9月15日時点で確認できていない。
IBC2026の出展者情報を見ると、DPA MicrophonesとWisycomは同じ8.D60のブース番号で案内されており、既に「同じ屋根の下」で展示していた模様である。DPAからはヘッドセットマイクの新製品6388 CORE+(非対称カプセルで装着位置ずれに強い設計、IP58、Best of Show受賞)が、WisycomからはワイドバンドアンテナマトリクスMATF(170〜1,260MHz、8ゾーン入力→4出力)やポータブルRFoFボックスPFL、MPR60の新ファームウェア(8MHzチャンネル内に最大60 IFB)が発表されている。
国内での販売体制がどうなるかは、現時点では公式な情報がない。SSLやCalrecの国内展開も含め、Audiotonixグループ全体としての国内戦略の動向は、今後注意して見ていきたいところだ。
RTW・NUGEN・Steinberg・Telos Allianceが「LEAP Meter Manufacturers Group」を結成、ダイアログ明瞭度の共通指標へ
RTW(8.D44)の今年の実質的な発表は、製品ではなく業界横断の枠組みであった。RTW、NUGEN Audio、Steinberg、Telos Allianceの4社が、Fraunhofer IDMTのLEAP技術に基づく「LEAP Meter Manufacturers Group(LMMG)」を結成し、「Dialog Intelligibility Implementation Agreement」を公表した模様。0〜100のDIU(Dialog Intelligibility Unit)という単位で、セリフの聞き取りやすさを共通のしきい値・色範囲・ダウンミックス規定のもとで測る、という取り決めである。
「セリフが聞こえない」という視聴者からの声は、日本でも海外でも配信・放送の共通課題になっている。ラウドネスがLUFSという共通の物差しで測れるようになったのと同じことを、明瞭度でもやろう、という動きだ。IBC Acceleratorでも Channel 4/BBC/Sky主導の「Crystal Clear」プロジェクトがセリフ明瞭度の客観指標策定に取り組んでおり(NUGENが参加)、明瞭度の数値化は今後数年のトレンドになると見ている。なお、RTWの製品側でDIU対応がいつどのファームウェアで実装されるかは、現時点では明記されていない。
Audinate:DanteとST2110-30の直接ブリッジをDante Controllerから

Audinate(11.C31)のIBCでの訴求は、Dante ControllerからST2110-30フローを有効化し、PTP設定を行うことで、Dante機器がそのままST2110-30のブリッジとして振る舞う、という運用であった模様。新しいDanteバージョンの発表はなく、NAB2026で強化済みのST2110-30/96kHz対応を、対応機器のファームウェアアップデートで広げていく、という段階にあると見られる。専用のブリッジ機器を置かずとも、Dante側の機器がST2110-30を直接喋る。前述のSSL Net I/O Bridgeのような専用機と、Dante機器側のネイティブ対応。この2つの選択肢が並び立つことで、AoIPの移行設計はかなり柔軟になってきた。
Fraunhofer IIS:MPEG-Hがブラジルで商用化、韓国に続く2か国目
Fraunhofer IIS(8.B80)は、ブラジルの次世代地上放送DTV+(TV 3.0)におけるMPEG-H Audioの商用開始を大きく打ち出していた模様だ。Fraunhoferの公式情報では2026年6月(同社ブログでは6月15日)に商用サービスが始まったとされており、筆者の理解では、韓国のATSC 3.0に続くMPEG-Hの本格的な商用展開として世界で2か国目ということになる。GloboによるDTV+の商用ローンチは、今年のIBC Innovation Awards Content Everywhere部門も受賞している。ブースでは、AWS・Techex・Jünger Audio・MainConceptと組んだクラウドネイティブの制作〜送出チェーンが展示されていた模様だ。
MPEG-Hについては、Pro Tools 2026.4でのレンダラー対応もあり、「規格は知っているが実際に運用している国はどこか」という問いに、韓国とブラジルという2つの答えが揃ったことになる。国内での採用予定は現時点でないものの、次世代音声フォーマットの選択肢として動向は追っておきたい。
DirectOut「Sync To Stream」 ── GPS・PTP基準が取れない現場で、受信ストリームから同期を取る

DirectOut(8.C77)からは、IBCに合わせた9月8日付のリリースで新機能Sync To Streamが発表された。RAV.IOおよびRAV.SRC.IOモジュールを搭載したPRODIGYシリーズ/MAVEN.Aで、RAVENNA/AES67ネットワーク上の受信ストリームからタイミングを導出し、そのストリームに直接同期できるという機能である。ライセンスオプションとして提供される模様。
これは要するに、GPSもなく、ネットワーク上のPTPグランドマスターも参照できないような場所でも、送られてきたストリームそのものを基準にして機器を同期させる、という話だ。同社CTOのClaudio Becker-Foss氏は「リモートプロダクションは現代の放送において重要性を増しているテーマであり、GPS同期が取れない場合にSync To Streamが助けになる」とコメントしている。仕組みとしては受信ストリームからクロックを再生成し、必要に応じて同社のSRC技術で安定化させるものと理解しており、リクロック的なアプローチと言えそうだ。分散制作や、仮設のリモート拠点でPTPの基準を用意しづらいケースは実際に多く、地味だが現場を助ける機能ではないだろうか。
同社からはこの他、PRODIGY/MAVENの処理能力をコンパクトにまとめたACE、MADIシステムとコンピューターを直結するUSB.MADI、そしてPRODIGY/MAVEN.AのST2110環境におけるレシーバー状態監視をNMOS BCP-008で行う機能(既存OOBライセンスの一部として提供)も案内されている。DirectOutはEBUブースのBCP-008マルチベンダーデモにも参加企業として名を連ねている。
まとめ
今年のIBCのオーディオを一言でまとめるなら、「AoIPの移行が設計論から選定論に移った年」だと感じている。ST2110ネイティブの小型卓(Calrec Type RT)、1UでAoIPを集線するI/O(Apex M6)、ST2110とDanteのブリッジ(SSL Net I/O、Dante側のネイティブ対応)、そして基準クロックがない場所での同期(DirectOut Sync To Stream)。それぞれが「どうやってIPに移行するか」ではなく、「どの製品で移行するか」という問いに応える製品になっている。
一方でNeumannの新モニター、DPAのピアノキット、Pro Toolsのステム分離のように、IPとは関係なく音の現場そのものを良くする製品も着実に出てきている。そしてAudiotonixによる3社買収は、こうした製品群がどのブランドの傘の下で提供されていくのか、という業界地図そのものを変える動きである。ROCK ON PROとしても、各社の国内展開の続報を追いながら、皆さんの現場に合った構成をご提案していきたい。
出典・参考リンク
公式サイト
IBC2026
記事内に掲載されている価格は 2026年9月25日 時点での価格となります。
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