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LUNA SEAなど日本を代表するロックバンドを手がけるコンサートエンジニア小松K.M.D久明氏が主催し、優れた録音の音楽を『良い音』で聴くというコンセプトで開催する定期イベント「OTOwake(オトワケ)」。
昨年11月より月1回のペースで開催されてきましたが、今回は初めてADAM AUDIOとのコラボレーションという形が実現!
ADAM AUDIO国内代理店であるSONIC AGENCYの小山田耕平氏を招き、同社のモニタースピーカーを比較試聴していくというリスニングイベントが新宿SUNFACEにて開催されました。
コンサートサウンド・デザインを通じて音の魅力を探求してきたエンジニア小松氏が、Rock oNでも高い人気を誇るADAM AUDIOのモニタースピーカーをどのように評価するのでしょう。
今回はその模様を取材してきました。
用意されたモニタースピーカーは、価格帯の違う3モデル!
ADAM AudioのT/AX/S各シリーズより、T7V、A7X、S2Vの3製品。
小山田氏「3モデルとも値段が大きく異なりますが、全て7インチウーファーを搭載した2ウェイモニターです。中域〜高域の再生を担うツイーターにはARTツイーターという独自の技術を使っており、原音を的確に再生してくれる解像度の高い音が特徴です。外観的な違いを見てみると、T7Vだけバスレフポートがスピーカーの背面についているリアファイヤリング型になっています。また、A7Xと比べると比較的に新しいモデルとなるS2VとT7Vには、新設計のウェーブガイドも搭載されています。」
同サイズながらもエントリーモデルからフラッグシップモデルまで価格帯が大きく異なる幅広いラインナップ。これをどのような方法で比較していくのでしょうか?
様々タイプの楽曲で、モニタースピーカーを比較試聴!
試聴タイムでは参加者にあえて3機種の価格は教えず、色々なタイプの楽曲でモニタースピーカーを試聴し、配られたアンケート用紙に自分はどのモニタースピーカーが良かったかを記入するという、ユニークな試みが実施されていました。
用意された音源は小松氏セレクションによる様々なタイプの音源が用意。曲の全体感がわかる曲から始まり、男性ボーカルと女性ボーカル、ピアノやアコースティックギターの弾き語り演奏、Rock、JAZZ、カントリー、DTM(テクノ系)、70年代のポップスといった感じで、違うタイプの音源によって3製品の違いを聴き比べようというものでした。選曲の一部を紹介すると、以下の通り。
・全体感のわかる曲:Red Hot Chilli Pepers「Go Robot」
・男性ボーカル:U2「Love Is All We Have Left」
・女性ボーカル:Sarah McLachlan「Angel」
・アコースティック・ギター弾き語り曲:Damien Rice「Older Chests」
・カントリー:Shania Twain「Home Ain’t Where His Heart Is」
・AAD(古い時代の音源):Kate Bush「Moving」
聞いてみた結果は・・・!?
イベントの最後に価格が発表されましたが、価格の違いに驚いた人、自分の結果に納得した人など反応は様々でした。
小山田氏によると、3製品の価格帯の違いは次のようなものでした。
小山田氏「3機種ともすべてドイツ本国で設計されていますが、まず製造工程がそれぞれ異なります。Tシリーズに関しては、ADAMの定評のあるサウンドを如何に低コストで実現するかという目標から開発がスタートした製品なので、生産はすべて中国で行っています。AXシリーズについては、例えばツイーターなどの重要な製品はドイツ本社でのハンドメイド、それ以外の部品は世界中から調達し最終的に中国の工場で組み立てています。最後にSシリーズですが、このシリーズについては通常よりもさらに厳格な品質管理を徹底するため、生産から品質チェックまですべてドイツの本社で行っています。
また、当然ながら使っている部品のグレードにも差があります。ホームスタジオでの使用を想定しているTシリーズは、スタジオのような大音量での使用を想定していないためツイーター・ダイアフラムやマグネットのサイズが若干小さく設計されています。また、使っているアンプのグレードも違います。SとAXの違いで言えば、実は使用しているツイーターはまったく同じものなのですが、Sシリーズに搭載しているS-ARTツイーターはより厳しい公差基準を設けて部品の選別を行っているので、個体のばらつきが徹底的に低減されているのが特徴です。マルチチャンネルのシステムで特性をきっちり追い込みたい方などには、まさにSシリーズはおすすめですね。」
個人的にはピアノ曲やJAZZといった生演奏が多い曲は、S2Vの小さな音や減衰音といった細かいニュアンスの再現性は高いと思いましたが、A7Xも男性ボーカルやロック系の曲は迫力があって良い印象だったので、Rock oNでもA7Xの人気が高いのも納得でした。そして全体感のわかる楽曲や電子音の入ったテクノ系のジャンルとなるとT7Vでも価格帯ほど差を感じなかったので、むしろT7Vの性能の高さ、コストパフォーマンスの高さを強く感じました。
ライブハウスでモニタースピーカーを聞き比べるというイベントは、まさにコロナ禍ならではの新鮮な試みであったように思います。当日は30分に一度休憩をはさんで換気を行い、アルコールの販売も19時まで、店の営業も20時までとルールを遵守したイベントでした。
実際に並べて大きな音量で聴くことで得られることやわかることは意外なほど多く、モニタースピーカーを買う際にも、先入観にとらわれず様々なジャンルの楽曲を聞き比べることで、本当に自分が欲しい製品を選ぶことができるという興味深い体験となりました。
やはり空気の振動を介してモニタースピーカーで音楽を聴くという「体験」は何にも代えがたい発見や感動があり、またADAM AUDIOのモニタースピーカーの性能の凄さというのも改めて実感しました。
『OTOwake』を始めたきっかけ、そして今後は?
終演後、小松氏から「OTOwake」についての話を伺いました。
小松氏「今回初めてのコラボレーションということでしたが、元々『OTOwake』というイベントを始めたきっかけは、ADAM AUDIOのスピーカーとの出会いが関係しているんです。学生時代はスピーカーは自分で秋葉原でスピーカーユニットを買って自作したり、図書館でAからZまで順番にレコードを借りて自宅のスピーカーで聞いていたりして、スピーカーで音楽をリスニングするということに強いこだわりを持っていました。
ADAM AUDIOのモニタースピーカーは、Rock oNのリファレンススタジオでT7Vを聞かせてもらったのがきっかけです。色々聞かせてもらった中で、これは本当にコスパなスピーカーだと思い、即購入したんです。今では部屋で聴く用にT5Vを、さらにトラックダウンのミックスなどでも使えるようにT8Vもあります。
こんないい音を一人で聞いているのは勿体ないと思い、僕が教えている大学でも学生たちにADAMのスピーカーを聞かせるようになりました。自分と同じように若いときにいい環境でいい音楽を聴いてほしいと思って始めたら、今では教え子がみんなT5Vを買って聴くようになりました(笑)。いいものは体験させると若い子でも伝わるんですよね。
こんな感じでもっと多くの人にいい音、いい音楽の普及活動をしていきたいと思っているときに、ちょうど大学の教え子から連絡がありました。ライブハウス(新宿SUNFACE)のエンジニアとブッキングをやっているのですが、コロナウイルスの影響でライブハウスのスケジュールがなかなか埋まらない状況でした。それならちょうどいい、ライブハウスでリスニングイベントをやってみようということで、去年の11月からこの『OTOwake』が始まったんです。
『OTOwake』のタイトルには『みんなで音を分け合いましょう』という理念が込められています。お客さんの数をかなり抑えて限定的に行なっていますが、それでも定期的に来てくれる方も増えてくるようになりました。『OTOwake』も今は制限もあってリスニングのみのイベントですが、将来的は子供にドラムなど楽器をプロフェッショナルの人が来て教えたりとかそういった人との交流や、音楽の楽しさを体験ができるイベントとして広がっていきたいと思っているんです。コロナで音楽や文化が今は止まっていますが、それをまたこのイベントを通じて前に進めて行きたいって思います。」
スピーカーでじっくりと音楽を聴く。それだけのことでも沢山の発見がありました。今回参加した方も新たな音楽の聞き方やスピーカーで音を聴く楽しさを実感できたのではないでしょうか。
音楽が個人的な楽しみとして一人一人が個別にイヤフォンやヘッドホンで聴くのが主流となり、ステイホームで一人で自宅で音楽を聴くことが多くなった今だからこそ、音楽の原点に立ち返ったこのイベントは、とても新鮮に感じたのかもしれません。
様々なジャンルの音楽を探求した小松氏ならではの視点は大変参考になり、今後も音楽の素晴らしさを体験を通じて伝えていきたいと話していました。
良い音を体感したい方、音楽の新しい楽しみ方を模索している方は、ぜひOTOwakeに参加してみてはいかがでしょうか。
ADAM AUDIO:https://www.adam-audio.jp/
OTOwake HP:https://www.otowake.com
Twitter:https://mobile.twitter.com/OTOwakeKMD
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記事内に掲載されている価格は 2021年1月26日 時点での価格となります。
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