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18
Aug.2022
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ヴィム・ヴェンダース ニューマスター Blu-ray BOX III Relase Party レポート 2022年7月25日 at 晴れたら空に豆まいて

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2022年4月26日、ヴィム・ヴェンダース ニューマスター Blu-ray BOX I Relase Party ( レポートを読む>> )、6月29日 BOX II Relase Party ( レポートを読む>> )に続き、いよいよ最終のBOX III リリースパーティーが晴れたら空に豆まいてにて開催されました。BOX IIIの目玉はやはり「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」ということもあり、今回のゲストはライ・クーダーとも親交あるミュージシャン、プロデューサー、録音エンジニアの久保田 麻琴さん( https://www.makotokubota.org/ )です。ミュージシャンならではの感性、視線で作品を紐解くコメント、また、ライ・クーダーのプライベート面のエピソードも披露され、興味深い話が繰り広げられました。

TCエンタテインメント社から、「ヴィム・ヴェンダース ニューマスターBlu-ray BOX I ~BOX II~BOX III」が発売。ヴェンダース監督自身の監修による、最新の4K & 2Kレストア版マスターが使用され、多くの作品が国内初Blue-ray化 & 一部が仕様をアップグレードしての再Blue-ray化という、ファンにとっては待望のパッケージが登場です。

TCエンタテインメント 滝本 龍(以降 TC滝本氏) : 皆さん、本日はお越しいただきましてありがとうございます。ヴィム・ヴェンダースBlu-ray BOXの制作を担当しております、TCエンタテインメントの滝本と申します。いよいよ、発売記念イベントの最終回、ヴィム・ヴェンダース ニューマスターBlu-ray BOX IIIリリースパーティーになります。本日も、BOX IからIIIまで全12作品の音声マスタリングをご担当いただいた、マスタリングエンジニアのオノ セイゲンさんと、オノ セイゲンさんの盟友であり、ヴェンダース作品では欠かせないライ・クーダー氏の盟友でもある、ミュージシャン、プロデューサーの久保田麻琴さんに、後半、ご登壇いただく予定です。本日は、皆さん、ぜひ楽しんでいってください!

時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース! 1993年

TC滝本氏 : では、BOX IIIに収録されています4作品から、まずは「時の翼にのって」の中から印象的なシーンを見て頂こうと思います。BOX IIに収録されている「ベルリン・天使の詩」の続編になる作品です。ベルリンの壁崩壊から4年後のベルリンを描いた作品です。

オノ セイゲン氏 : ベルリンの壁が崩壊したのが1989年ですが、「ベルリン・天使の詩」は、崩壊前の1987年に公開された作品でした。その続編となるこの「時の翼にのって」を、ヴェンダースは壁崩壊のすぐ後に作ったんです。公開は1993年ですね。前回のBOX IIリリースパーティーの時にも言いましたが、僕は80年代当時、ベルリンでレコーディングするという理由をつけて通っていた時期があって、デビッド・ボウイの「ロウ」をはじめとする名作がレコーディングされたハンザトンという有名なスタジオがあります。本当に壁のすぐ横にあった「Hansa by the Wall」は憧れのスタジオでした。すぐそばにチェックポイント・チャーリーという国境検問所があって、そこを通り、東側に渡れたんです。ハンザトンはイギリスのロックミュージシャンに人気があったんです。なぜかと言うと、西側から壁を越えて東側に一日だけ観光、というか探検に行くことができたからで、一旦、東側に渡ると、街には広告看板とか一切ないグレーの世界で、何かあったらもう帰ってこれないというようなスリルもあった。

さて、この作品で注目すべきなのはゴルバチョフさんの出演です。いまだ終わらないウクライナ侵略戦争に対しても反対の声明を出していますが、ご存知の通り、ゴルバチョフさんが、かつて進めたペレストロイカが冷戦終結、ベルリンの壁崩壊へのきっかけを作ったわけです。ヴェンダース監督は「ベルリン・天使の詩」の続編「時の翼にのって」のタイミングでゴルバチョフさんを起用したのはすごいことです。プーチンのウクライナ侵略戦争が継続している「今」に訴えかけてくることが大いにあり冒頭この場面だけで思わず涙が出てしまいました。当時、西ベルリンのクラブには、ロックスターのポスターに混じって、ゴルバチョフさんのポスターも貼ってあったんです。プーチン、スターリンと真逆で、天使のようなゴルバチョフさんの存在は西側にもそういう影響を与えていたんですね。

「91歳ゴルバチョフ氏「早急な平和交渉を」

https://www.asahi.com/articles/ASQ346679Q33PLZU006.html

TC滝本氏 : さきほど、皆さんに見ていただいた中に、天使がベルリンに降りてきて、いろんな人たちの心の声を聞きながら歩き回るといった詩情あふれるシーンがありましたが、その中にゴルバチョフ書記長も登場してきましたね。

オノ セイゲン : ゴルバチョフさん本人が、壁崩壊後に、こういう形で登場するのは、やっぱりすごいシーンですね。そしてルー・リードが♫Berlin after the wall, it’s very nice. It’s paradise♫と歌う、冷戦終結を象徴する場面としても感動的ですね。プーチンのウクライナ侵略戦争といろいろ思いが重なることがあり、「ベルリン・天使の詩」と「時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!」は今こそ観るべき映画です。

MEMO
1987年「ベルリン・天使の詩」
1980年代後半からペレストロイカ
1990年3月15日 – 1991年12月25日最初で最後のソビエト連邦大統領
ミハイル・ゴルバチョフ
1991年12月26日 ソビエト連邦の崩壊
1989年11月9日 ベルリンの壁崩落
1993年 続編「時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!」
2022年2月24日 プーチンのウクライナ侵略戦争開始。
『ヴィム・ヴェンダース ニューマスターBlu-ray BOX』I~IIIが順次リリース!
1931-2022年8月30日 R.I.P. ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領

夢の涯てまでも 1991年

TC滝本 : 次に見ていただいたのは1991年の「夢の涯てまでも」からの抜粋シーンです。ヴェンダース監督の作品の中で、最も長尺で、20億円近い制作予算がかかった作品です。日本の電通やソニーも提供・協賛し、ハイビジョン撮影が初めて導入された作品なのですが、撮影の時に来日しているヴェンダースにセイゲンさん、お会いされてるそうですね。1991年当時、日本で公開された時は157分の短縮版でしたが、2014年に現在の、287分ある4Kレストア版が完成しました。実は、一番最初に完成した尺は10時間だったそうなんですが、プロデューサーとの取り決めで、ヴェンダースは3時間内に短縮することを余儀なくされてしまい、渋々、157分のバージョンを作ったそうです。

この映画は、世紀末SFロードムービーとも言える内容の作品ですが、劇中、エルヴィス・コステロがカバーしたキンクスの「デイズ」が流れますが、原曲のテンポを落としてカバーされており、このゆったりとした時間の感覚というのが、ヴェンダースそのものであるという風に映画評論家の樋口泰人さんがBOX Iのリリースパーティーで解説されていました。 ※編註:樋口さんは「BOXⅢ」ブックレット所収の解説内で、「映画史上最強の挿入歌ではないか」とも仰られています。

あと、エルヴィス・プレスリーの「Summer Kisses, Winter Tears」のカバーも印象的ですね。

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オノ セイゲン : ヴェンダースの映画はどれも音楽も、音楽以外の音声も素晴らしいんですけど、その音をよりよくするのが僕の仕事です。映画をサブスクで見ることも一般的になりましたが、音声は圧縮されてるので残念なんです。また、映画館で上映しているDCP(デジタルシネマパッケージ)フォーマットも、映像だけがリマスターの4K or 2Kで、音は粗いままだったりするんです。個人的には本当にそれが歯がゆい。僕にとって、映画における音質はすごく大事なんです。フィルムの質も同じで、質感が上がると映像の細かいとこまで見えるのと同じように、音声においても、Blu-rayだとPCM 96kHz/24bitや5.1chでも48kHz/24bitといったスペック的にもCDやレコードより遥かに大きいフォーマットなので、どんな細部までに渡ってもいい音で再生できます。僕がこだわってることは、ヴェンダースが劇中で使うロックの歪んだ音でも家のテレビのスピーカーで聞いても、ちゃんとロックの音が出ているかどうか。あと、クラシックやジャズにしても楽器の質感は、味と同じで、形として見えないんだけど、ダイレクトに脳に届くものなので、すごく大事なんです。「夢の涯てまでも」はSFのロードムービー集大作でヴェネチア、リスボン、パリ、モスクワのホテルウクライナ、北京、東京のカプセルホテル、サンフランシスコ、そしてオーストラリアまで。そしてなんと言ってもこんな豪華なミュージシャンのラインナップないですよね!オープニングのトーキング・ヘッズからU2、ルー・リード、R.E.M.、パティ・スミス、エルヴィス・コステロ、デペッシュ・モードほか長尺の映画ですけど音楽PVなみに楽しめる。晴れ空のMeyer Sound UPA-1Aで聴く「夢の涯てまでも」やヴェンダースの映画体験は特別ですね。

TC滝本 : この作品の主題歌はU2ですね。

オノ セイゲン : そう、U2とのコラボですよね。世界中のロックミュージシャンがヴェンダース映画のファンなので、みんな、ヴェンダースから声をかけられたら断らない。 

TC滝本 : こトーキング・ヘッズをはじめ、20組近いアーティストが出ています。オファーを断ったのは、ボブ・ディランとローリング・ストーンズだけだったそうです。

オノ セイゲン : そうだったんですね(笑)。ここで今日のメインゲストをお呼びしたいと思います。久保田麻琴さんです。

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久保田 麻琴氏 : よろしくお願いします。

オノ セイゲン : 久保田さんとは古い知り合いなんですが、先輩なんだけど友だちのように接してくれて、一番最初に会ったのはいつだったか覚えてないんですけど、、よく覚えてるのは、サンディー&ザ・サンセッツのPAをやったことで、、

久保田 麻琴氏 : そう、インクスティックで。最初、インクスティックのPAをセイゲンがやってるのを聞いて、「いいな、誰これ?」と言って紹介してもらったのが初めての出会いでした。80年代でしたね。インクスティックはそんなに大きな店じゃなかったんだけど、デビッド・ボウイも遊びにくるような店だったんですよ。

オノ セイゲン : インクスティックでのライブが終わると、ミントバーかレッドシューズに行って、朝の8時まで飲んで、店を出ると小学生が通学している時間で、なんか恥ずかしい思いをしたりとか、そういう思い出がたくさんあります(笑)。

久保田 麻琴氏 : レコーディングの仕事もセイゲンにやってもらったことがあって、その頃、ニューヨークのレコーディングスタジオのパワー・ステーションのゲートリバーブを使ったドラムの音がすごく流行っていて、セイゲンに「このドラムの音できる?」って言ったら「できるよ」って軽く言って。

オノ セイゲン : 「できますか?」って聞かれた時に「できます」と言わないと仕事こないから(笑)。例えできなくても(笑)。今、若いインターンに教えていますが、「これできる?」って聞いたら、まずは明るく「できます」という子に任せてみるんです。本当にできなかったら、頼んだ人が間違ってるってこと(笑)。そんな感じで、当時はなんでもトライしてました。

都市とモードのビデオノート 1989年

久保田 麻琴氏 : 話を本筋の映画に戻しましょう(笑)!

オノ セイゲン : 「都市とモードのビデオノート」は1989年の作品で、山本耀司さんのファッションの制作過程を追い掛けたドキュメンタリーですね。

久保田 麻琴氏 : 山本耀司さんは有名なファッションデザイナーだけど、ファッション業界の外から見てると、彼がどういう人か分からないし、ファッションデザイナーってどういう仕事をしてるか全く知らないですよね。でも、音を作ることに結構似てるなと思いました。

オノ セイゲン : ファッションショーの裏側は、僕はコム デ ギャルソンしか見たことがないんだけど、この映画を見て思ったのは、洋服のデザイナーたちは、毎年、春夏/秋冬とシーズンがあるし、さらに女性服と男性服がある。常に、たくさんの新しいものを作り続けなければならないのは、たいへんなプレッシャーだなと思いました。自分の好きな時に作ればいいわけじゃないので、音楽はそういうふうにはできないなって思います。

久保田 麻琴氏 : ポリシーも含めすごく哲学的で、山本耀司はこういう人なんだというのがすごく伝わってくる作品ですね。「俺はモード屋じゃない、仕立屋だ」というのが印象的で、山本耀司さんのお母さんがそういう人だったんですよね。ファッションって、なんとなくふわっとした、ちゃらちゃらしたイメージかなと思ったら、本当に厳しい世界。加えて、ヴェンダースも哲学的な雰囲気がある人だから、切り取り方がすごい面白く、感心して見ましたね。

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ 1999年

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オノ セイゲン : さて、ここまで3作品を、少し駆け足で紹介してきましたが、なんでかと言うと、やはりBOX IIIの目玉である「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」に多く時間を割こうと思っているからなんです。「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」ですが、映画の背景を言うと、まず、ライ・クーダーが1997年にレコードを作ったのが最初で、ワールドツアーが組まれたんです。その後、ヴェンダースがドキュメンタリーを撮りに行きたい、ということになって出来た作品です。

久保田 麻琴氏 : ライ・クーダーが、ヴェンダースに、「来週アムステルダムでライブをやるから撮りに来いよ」とか「カーネギー・ホール決まったから来いよ」と積極的に声をかけて実現したみたいですね。一つ言っとくと、ライ・クーダーは昔から結構無茶振りする人なんですよ(笑)。

オノ セイゲン : 麻琴さん、ライ・クーダーとの最初の出会いはいつなんですか?

久保田 麻琴氏 : 最初会ったのはアルバム「ハワイ チャンプルー」の録音前に、ロサンゼルスでギターを買いたいと思い、ライに連絡したら、古い50年代みたいな車で迎えに来てくれました。それ以来の付き合いなので、もう長いですね。喜納昌吉とチャンプルーズの「BloodLine」というアルバムのレコーディングで、ハワイに来てもらって一緒にセッションしたり、、、ライは沖縄の音楽や日本の音頭も大好きだし。

ところで、ライは無茶振りなところもあるとさっき言いましたが、ある時、僕にeBayの写真を送ってきたんです。それは、パナマハットの写真でした。「これ何?」と思ったんですが、よく見ると「代官山」って書いてあった。ライは「この帽子を見つけてくれ」って言ってきたんです。それで調べたら、とある代官山の帽子屋さんが見つかったんです。お店に電話して「久保田と申しますけど、こんな帽子ありますか?」みたいな感じで聞いたら、店員さんが分からなくて、お店の社長さんに聞いてくれて。そしたらなんとその人は、ライ・クーダーや私の音楽も聞いてくれてる方だったんです。今日、この会場にもお越しいただいてるんですが、HAT MAKER KIJIMA TAKAYUKIのキジマタカユキさんだったんです。

HAT MAKER KIJIMA TAKAYUKI
http://www.kijimatakayuki.com/

キジマタカユキ氏 : 帽子屋のキジマと申します。久保田さんがおっしゃった通り、最初、うちの店員と久保田さんがメールでやりとりをしておりまして、途中から私がCCに入りまして、で、よく見ると久保田麻琴という名前だったので、「あれ?」と思いまして、、「この人、レジェンドのミュージシャンだぞ。おまえ知ってる?」と、店員に言ったんですが、彼は「そうなんすか?」と言う感じで(笑)、、「ちょっと待って。これから、俺がやりとり引き継ぐわ」って言って、それで久保田さんと「初めまして」となり、、

久保田 麻琴氏 : 2年ぐらい前の話ですね。

キジマタカユキ氏 : はい。久保田さんも無茶振りで「よく分からないので、ライのアドレス教えるから直接やって」って感じで(笑)。そんなヒーローと突然、直接やりとりを緊張しながらやることになったんです。でも、ライ・クーダーと久保田さんのファンでもありますし、「喜んで、特別に帽子を作ります。」とメッセージしたんです。そしたらライさんが、「じゃあ僕と、奥さんと、息子と、娘の分含め、全部で5個欲しい」ということになりまして。最近、タジ・マハールとやったアルバム「GET ON BOARD」のジャケットで、ご本人と息子さんが送った帽子をかぶってくれてます。

久保田 麻琴氏 : あと、ライの無茶振りエピソード第2弾をしますね。ライが福島原発のところに連れて行けと言うんです。彼は社会派だからね。そのテーマで音頭をやろうって言うわけなんです。「正直、それは難しいな」と思い、「ちょっと待ってて」とずっと返事を引き伸ばしてたら、「もう来月行くから、なんとかしろ」とのことで、ライと奥さんのスーザンが来日して、二人を車に乗せて福島に連れて行ったんです。幸運にも、すごく寛大なとあるリンゴ農園の方が僕らを受け入れてくださり、そこでご飯食べながら、色々お話を聞かせてくれたんですが、ちょうど、その家にブエナ・ビスタの大きなポスターが、たまたま貼ってあったんです。あのポスターの印象的な写真は、実はスーザンが撮った写真なんですよ。彼女はクラプトンやジェームステイラーを始め、数々の大物を手がけた音楽プロデューサーのラス・タイトルマンの妹さんなんですが、すごくアーティスティックな写真を撮る人で、今では「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」を象徴する写真になってますよね。面白い話があって、キューバのナット・キング・コールとも称されるイブライム・フェレールですが、本人に会うまで、本当に、彼が存在してるか確証がなかったそうなんです。「宝くじを売ってるらしい」とか「靴磨きしてる」とか、はたまた「本当にいるのか?」。「明日セッションをやるから、スタジオに来てください」と間接的に知らせていたそうで、当日、スーザンはスタジオのドアのところでずっと待ってた。やがてそこに登場してきたイブライムを撮った奇跡的な1枚があの写真なんですが、スーザンはその時の様子を、嬉しそうに話してくれました。

オノ セイゲン : 「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」はキューバ音楽ですが、久保田さんは、沖縄や宮古島をはじめ、日本の、その土地の音楽に取り組まれていますよね? そのきっかけは何だったんですか?

久保田 麻琴氏 : ある時、紀伊半島の熊野に行ったことがあって、何か感じるものがあったんです。熊野の土地から受けるインスピレーションをきっかけに、日本のルーツに対する乾きみたいなものを覚えるようになった。それで、日本の土着の音楽を録ってみたいな、と思うようになり、宮古島へは2007年ぐらいから、もう2、30回と行っています。フィールドワークでいろんな不思議な歌を録るんですが、僕らが知ってる三線泡盛みたいな音楽ともちょっと違う。もうちょっとスピリチュアルっていうか、ワークソングだったりとか。結構古い歌が多くて、もしかしたら、平家の時代までいくかもしれない。色んな音源を発表してきたんですが、二つの耳だけでそれらを捉えるのは無理かなと思って、「やっぱり映画かな」と思うようになりました。2009年の7月18日、19日に草月会館ホールで開催された(東京の夏)音楽祭2009で、古謡をライブで披露したんです。宮古島の80、90歳の年寄りたちが大挙して30人近くやってきたんですが、大西功一という映画監督に相談して、「スケッチ・オブ・ミャーク( http://sketchesofmyahk.com/ )」という映画作品として完成させました。本当に「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」と同じで、先にレコードやコンサートがあって、遅れて映画が出来た。真似してるわけじゃないんですけどね。ライにも映画のコメントを書いてもらいました。ライは、ルーツはアメリカのブルースだけじゃなくて、バハマ系のゴスペルだったりもする。だからキューバ革命前のSP盤とかも聞いてたと思います。また、彼が育ったロサンゼルスにはメキシコ人も多く住んでるので、メキシコ音楽にも思入れがある。彼は、アメリカの白人としてのルーツ以外のところにも目を向ける人ですよね。そういった行動パターンを、私は影響受けてるんじゃないかな。

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会場にキューバにお詳しい、フォト・ジャーナリスト、カーニバル評論家の白根全さんとアオラ・コーポレーション(https://www.ahora-tyo.com/)代表 高橋 政資さんがお越しでしたので、客席から、トークにご参加いただきました。

久保田 麻琴氏 : 映画「ゴッドファーザー PART II」の中で、キューバで好き放題やっていたマフィアたちが、キューバ革命が起こり、命からがら逃げてく時のあの場所がまさしく「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」でイブラハムたちが歌ってたようなキャバレーだったように思いますがどうなんでしょうか?

白根 全氏 : そう、革命前、キャバレーはアメリカのマフィアが牛耳ってました。アメリカから追放されたイタリア系のルチアーノやユダヤ系のランスキーが有名ですね。

高橋 政資氏 : 1946年にキューバにアメリカのマフィアが一堂に集まったハバナ会議が有名ですね。

白根 全氏 : 音楽とマフィアの関係は古く、1920年から1933年までアメリカで施行された禁酒法の時代からですね。

高橋 政資氏 : その時代から、要するにキューバではアメリカではご法度とされている酒造、バクチ、売春、麻薬などの悪事は全部キューバに揃ってたんですよ。アメリカのマイアミからハバナに飛ぶ飛行機の中に、スロットマシーンがずらっと並んでたという話です。

白根 全氏 : 今、麻薬というとメキシコ。その前はコロンビアですけど、革命前はキューバでした。そこで、やっぱりミュージシャンはどうしてもマフィアと密接になりますよね。

高橋 政資氏 : 白根 全氏 : まさに「ゴッドファーザー PART II」で描かれていた世界そのままですね。カストロの革命は、当時のバチスタ政権との戦いなんですが、言い換えれば政権の背後にいるマフィアとの戦いなんですよ。

久保田 麻琴氏 : キャバレーはヤクザの巣窟だったわけですね。そんな危ない世界のバックグラウンドで、こんな麗しい音楽が流れてたということなんですね(笑)

久保田 麻琴氏 : ところで、「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」はスタジオセッションのシーンから始まり、ライブシーンに変わり、またスタジオに戻る。ヘッドホンで聞いて、すごく素晴らしい音だったんですが、音をまとめるのは大変だったでしょ?

オノ セイゲン : 「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の場合、元の音素材はちゃんとしてたんですが、最高の音楽なんで、さらにもっとよくなるように作業しました。ライブの部分は、オーディエンスだけおそらく24トラックのマルチから抜いたのがサラウンドSL/SRに使用されてて、フロントL/Rのリミックスまではされてませんでした。ところで、久保田さんは、実家が映画館だったんですよね?

久保田 麻琴氏 : そうなんです。おじいさんが富山で映画館を始めて、その後、石川の小松に移ったんですが、おやじが継いだので、もし私が継いでたら3代目でした。自分は映画館で育ったので、映画の音が体に染みついてるんですよ。映写室からいつも覗いてた。そこで思うのは、映画における音の役目は「スクリーンとお客さんの関係をどう縮めるか」ということなんですよ。

オノ セイゲン : いいことおっしゃいますね! さすが映画館の家系。

久保田 麻琴氏 : でも、実は、映画館の子どもは、大きくなるとあまり映画を見ない。僕の場合、家の商売に反発するようなとこがあって、だんだん見なくなったんです。でも、「スケッチ・オブ・ミャーク」を作るにあたって、一応、映画の音や整音の技術を研究しなきゃいけないなと思って、色んな作品をチェックしたんですが、やはり、一番参考になったのが「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」だったんです。色んな作品の音をチェックしたけど、60年代の大映のモノクロ映画の音もすごかった。特に若尾文子がね、下の倍音が付いていて、声がぶっといんですよ。多分、機材の関係もあると思うけど。とにかく、「映画は音と共にある」っていうことを、日本の映画界はもうちょっと思い出したらいいと思います。映画は、音が出るからムービーなんですよね。そうじゃなきゃ、サイレント時代に戻りますよね。音がいいと、映画がより感覚に刺さる。言葉もイントネーションがあって、いろんな子音があったりするわけで、やっぱり音楽の一つだから音として感覚に入ると、より映像がクリアになるはずですよね。なので、今回のセイゲンのこの動きは素晴らしいと思います!

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7/19 イベントに先立ち、他の3本も観ておきたいということで、久保田麻琴さん初来社@Saidera Mastering

Eclipse TD 9.1.4イマーシ・モニターやAmphion Two18(stereo main with TD-725SWMK2 x 2 ), スイッチひとつでスタジオからコンサートホールに代えられる立体的に反射音を付加するシステムの体験など、トークの打ち合わせより、バンドやろうぜ!的な

Saidera Mastering
https://saidera.co.jp/eq.html

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