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ベースが担う低域は、曲全体の“重心”を決める存在です。だからこそ現場では、DIのクリアさとアンプの空気感、その両方をどう扱うかが常にテーマになります。今回取り上げるのは、IK Multimediaの TONEX Pedal Bass Edition。DIとアンプのブレンド感、そして“かけ録り”で音を決めにいけるスピード感まで、ベーシストの実戦に寄り添う方向で設計された一台です。
試奏・検証に参加してくれたのは、ベーシスト/コンポーザーとして数多くの現場を支える 湯浅崇 氏。本人が最初に口にしたのは、「違和感がまったくない」という率直な言葉でした。後から整えるのが当たり前になりがちなベースの録音に対して、このペダルは“弾いた瞬間の感覚”をどこまでスタジオライクに持ち込めるのか。音の馴染み方、位相の不安、レスポンス、そして制作ツールとしての実用性まで、リアルな視点で掘り下げていきます。
Q1. 「Bass Edition」ならではのDIとアンプのブレンド感について
Rock oN : 湯浅さんはレコーディングやライブの現場で、ベーシストとして「低域」を重視されているかと思いますが、実際に弾いてみて、TONEX Pedal Bass Editionの「音の密度・パンチ」について、従来のアンプシミュレーターとの違いは感じられましたか?
湯浅氏 :
正直に言うと、弾いた瞬間の「音の密度・パンチ」を従来のアンプシミュレーターと比較することはベーシストにとっては難しい面があります。というのもベースはギターに比べると“あとから録った音にシミュレーターをかけて調整(後掛け)する”ことが多く、そもそも弾きながら追い込むケースが少ないからです。
ただ、その前提がありつつもTONEX Pedal Bass Editionを使ったときに強く感じたのは「違和感がまったくない」という点でした。DI直のままだと他の楽器の音と合わせたときにしっくり来ないことがあるんですが、このペダルは“アンプを鳴らして録っている感覚”にかなり近くて最初からかけ録りでガンガン使える印象でした。特に気になりやすいDIとのブレンド時の問題(位相が悪くてモワっとする、音が引っ込む等)も、そういった嫌な感じはまったく感じませんでした。結果として「空気感(エア感)や馴染み方」がちゃんと得られてDIっぽさだけが残る感じにならない。そこが大きいですね。

Q2. 収録されている150種の「Signature Bass Collection」の印象と活用法
Rock oN : 本機にはAmpeg、Fenderのビンテージから、Darkglassなどのモダンなドライブサウンドまで、ベース専用に調整された150種のTone Modelが収録されています。 湯浅さんのプレイスタイルにおいて、「即戦力」と感じたモデルや、逆に「新しいインスピレーション」を受けた意外なサウンドはありましたか?
湯浅氏 :
まず最初に試したのは、やっぱり普段から使い慣れているAmpeg系でしたね。いくつか種類が入っているので、それを順番に触りながら「あ、こういう方向性の違いとして作られてるんだな」というのを確認していく感じでした。正直、モデル名までは細かく覚えてないんですけど全体的に自分が持っているイメージから大きく外れることはなくて、ちゃんとそれっぽいな、よくできてるな、という印象でした。
ベースの場合、ギターほど音色を頻繁に切り替える前提がないので150種類全部を使い切るというよりは「基本になる音をいくつか押さえておいて、必要なときに選べる」というのが一番大きい価値かなと思います。Aguilarとか、Orange、Markbassあたりも軽く試しましたけど、それぞれのキャラクターを把握する用途としても面白かったですね。
意外だったのはアンプモデルそのものよりもトレモロなどの効果系エフェクトが付いていることでした。ベーシストがトレモロなどのエフェクトを何種類も所有していることは稀ですし、アンプに標準で付いていることも少ないので気軽に試せるのは純粋に面白いなと。例えば曲のブリッジとか、ちょっと間奏的なパートでロングトーンにトレモロをかけて空間を作るとか、BPMに合わせて揺らすとか、そういう使い方はアイデアが広がりそうだなと感じました。
一方で、歪みに関しては「これが決定打になる」というほどの驚きは正直そこまでなかったです。歪みが必要な場面では、やっぱり専用の外付けエフェクターを使う人が多いんじゃないかな、という感覚もあります。ただ、「こういう音も試せる」「選択肢として入っている」という意味では、触っていて楽しいですし、発想のきっかけになる部分は十分あると思いました。

Q3. プレイヤーのタッチに対するレスポンスと表現力
Rock oN : TONEX Pedalは123dBの超低ノイズと広い周波数レスポンスを謳っていますが、指弾きの際の細かなニュアンスやダイナミクスは、デジタルの違和感なく追従してくれましたか? 弾き心地の「リアルさ」について感想をお聞かせください。
湯浅氏 :
ノイズに関しては、体感的にはもう「ほぼ無い」と言っていいレベルでしたね。そこは素直にすごいなと思いましたしレスポンスやニュアンスの追従も含めてデジタルっぽい違和感はまったく感じなかったです。
指弾きしたときの反応も特に引っかかるところはなくて「あれ?」って思う瞬間はなかったですね。普通にアンプを鳴らしている感覚に近いというか、そのまま弾ける感じでした。ただ、ダイナミクスがどこまで出ているか、という部分に関しては今回はヘッドホンでのチェックだったので正直そこまでは断言できないかなと思います。もう少し大きい音量で鳴らしたり実際の現場に近い環境で試さないと細かいところまでは分からない部分もあるので。
とはいえ、自宅作業の範囲で使っている限りでは弾き心地のリアルさに違和感はまったくなかったですし、これをそのままライブの足元に置いても感覚的には問題なく使えるだろうなという印象を持ちました。

Q4. コンポーザー・プロデューサー視点での「制作ツール」としての実用性
Rock oN : 湯浅さんはご自身で作曲やプロデュースも行われています。本機はUSBオーディオ・インターフェイスとしても機能し、付属ソフトウェアとの連携も強力です。 自宅スタジオなどでのレコーディング機材としての使い勝手や、DAWプラグインとしてのTONEXとの連携ワークフローについて、プロデューサーの視点からメリットを感じる部分はありましたか?
湯浅氏 :
USBオーディオインターフェイスとして、これをメインで使うかと言われると、正直あまり現実的ではないかなとは思います。ただ、パソコンを持って現場のスタジオに行ったときとか、急に「今ちょっとベース入れてほしい」みたいな状況になった場合には、かなり“早い”ツールだなとは感じました。アンプが無い環境でも、その場ですぐ録れるというのは実用的ですよね。
制作の視点で大きいのは、プラグインで後から音を作るというよりも、エフェクターとして捉えて「音を作った状態で弾いて、そのまま録る」ことができる点だと思います。演奏しているときと、後でエディットしているときって、どうしてもマインドが変わってしまうじゃないですか。最初から音が決まっている状態で弾けると、プレイ自体も変わってくるし、その瞬間に出てきたアイデアをそのまま形にできる。例えばトレモロみたいな効果も、後からプラグインでかけるのと、最初から揺れを感じながら弾くのとでは、演奏のニュアンスが全然違ってくると思うんですよね。そういう意味で、プレイヤーとしての感覚と制作作業を同じマインドでつなげられる、という点は、この製品ならではの制作ツールとしての面白さだと感じました。

Q5. 使ってみて感じた感想
湯浅氏 :
率直に言うと「1個あったら便利で楽しい」というのが第一印象です。値段が高すぎるとは思わない一方で、同じような金額を出すならDIやプリアンプを買うという選択をする 人も多い気はします。なので「くれるなら欲しい」みたいな感覚は正直あります(笑)。でも、持ってるだけで使わない製品ではなく、想像次第でちゃんと出番がある。特に、自宅でアンプを鳴らせないベーシストにとっては面白い選択肢だと思いますし、スタジオに行っても置いてあるアンプが限られる中で、事前にいろんな方向性を試せるのもメリットです。
ライブ用途で言うと、セットリストが固定されているバンドのライブなどにおいて「この曲はこの音、このパートはブースト」といった形で細かくプログラムして、会場が変わったとしてもサウンドを再現するのにかなり有効に使えるイメージがあります。自分自身そういった現場はあまり多くないので想像の範囲ではありますが、サポートではなく“バンド1本”のような人には刺さるかもしれません。キャビON/OFFなどの機能も含めてライブでの使い方の選択肢は広いですし可能性を感じました。
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記事内に掲載されている価格は 2026年2月5日 時点での価格となります。
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