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現在、生ドラム音源と言えば、音質のクオリティと豊富なライブラリにより、その地位を不動のものとしたfxpansionの「BFD」。そんなBFDの表現力に共感を受け、設立されたPlatinum Samples社から、また新たな拡張音源集「JOE BARRESI – Evil Drums」が発売となりました。前回はロックドラムの礎を築いたエンジニア、Andy Johns氏の監修による「Andy Johns Classic Drums」で話題を呼んだ同社が放つ第二弾!!そんな同製品を、どれほどのロック具合なのか試してみたいと思います。
【Joe Barresi氏について】
まず、今回の新製品「Joe Barresi Evil Drums」ですが、この主役のJoe Barresi(ジョー・バレッシ)氏は、様々な現代アメリカを象徴するアーティストを、数多く手掛けてきたトップ・エンジニア。クリムゾン並みのテクニカル志向のバンド「TOOL」の”10,000 Days”や、「QUEENS OF THE STONE AGE」の”The Empire Strikes First” 、イースト・ベイ出身のパンクバンド「Rancid」の”Fall Back Down”等々…。私が好きな「SKUNK ANANSIE」のアルバム”Stoosh”も氏の仕事の一つでした(好きなクセにエンジニアまでは知りませんでした…)。これはちょっと楽しみです。
【インストール】
取り敢えず今回試用にあたっての環境は、CPU MacBook(Intel Core 2 Duo 2.16)、メモリは2GB、DAWはPro Tools M-PowerdにFW Audiophileです。本製品をインストールするにあたって、まず苦労したのが空き容量の確保でした(笑)。最低でも25GB以上の空きが必要という文字にビビりながら、なんとかインストールに成功!ちなみにこのシリーズには、ハードディスクの容量に対しての配慮もなされているのがポイント。サンプルのレイヤー数を減らすことにより、Small(約27GB)、Medium(約45GB)、Large(約79GB)、SuperSize(約81GB)の4段階に分けて選択インストールが可能です。私は最初Smallでインストールを行いましたが、確かにオーバーヘッドのみのチャンネルしか再生されません。これでも十分に使える感じがするのですが、せっかくなのでSuperSizeで2〜3キットインストールしてみます。
【特徴、BFDとの比較】
では、実際にそのサウンドを聞いてみることに。全部で6キットあるうちの2キットを選びました。内容としては以下の通りです。ちなみに素材レコーディングの環境は、氏が最もお気に入りの2スタジオのうちの一つで収録され、使用機材はマイクにShure57はもちろんのこと、Sennheiser421やNeumann、AKGなどを使用し、それらの音をNEVE、アウトボード類を経て、Studerの2インチテープレコーダーで録音するといった、気合いの入り様が伺えます。
・KIT-1List BD:Pork Pie Tobacco Satin 22” Snare:Ludwig Black Beauty 14” Hi Tom:Pork Pie Tobacco Satin 10” Mid Tom:Pork Pie Tobacco Satin 12” Floor Tom:Pork Pie Tobacco Satin 16” Crash Cym:Zildjian A Cuntom Crash 18”Zildjian A Cuntom Crash 19” Ride Cym:Zildjian A Series 22” HiHat:Zildjian A Series 14” |
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まず、Pork Pie中心の最近のパンク・オルタナティブ系に適したキット。スネアはラディックの70年ものです。個々のサウンドを聴いた感じだと、なるほど、ロック系に好まれるPork Pieのヤンチャな印象が伺えます。Direct Masterのみで聴いてみても結構使えそうな雰囲気のサウンドですが、Overhead、Room等を混ぜるとさらにヤンチャぶりが倍増します。ですが、どこかまろやかな印象も感じられ、そこはアウトボードやテープなどの、Joe Barresiの技が効いている部分だと思いました。実際に他の楽器とはMixしてみないと混ざり具合は分かりませんが、この音像だとラウド系のインストゥルメンツとMixしても、十分に存在感が得られるサウンドだと思いました。簡単にMIDIパターンを組んでみましたので、試しにお聴き下さい。>>kit_1.mp3 | ![]() |
・Kit-2 List BD:Ludwig Psychedelic Swirl Red 22” Snare:Drum Workshop DW Classic 14” Hi Tom:Ludwig Psychedelic Swirl Red 13” Floor Tom:Ludwig Psychedelic Swirl Red 16” Crash Cym:Zildjian Platinum Rock Crash 18″Zildjian Oriental “Crash Of Doom” 20” Ride Cym:Paiste Cracked 602 26” HiHat:Zildjian Oriental Trash Hats 12” |
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続いて、ラディックの70年代キット。こちらはまずDirect Masterで聴いてみると、Pork Pieとは比べて、音は良いけどちょっと貧弱な感じを受けました。ですが、その他のマイクを加えると、ノーミュートの様な激しいサウンドに急変貌します。そのままではちょっと使いづらいのではないかと心配してしまうくらいの印象ですが、他のインストゥルメンツとの絡み的に、このくらいがちょうど良いのかも知れません。ヴィンテージ特有の、荒々しくもどこか暖かいサウンドでありつつ、攻撃的要素も十分に含んでいるサウンドだと思いました。こちらも同様のMIDIパターンで鳴らしてみました。>>kit_2.mp3 | ![]() |
せっかくなので、BFDのキットとも比較してみました。 ・BFD DW Kit List BD:DW Maple 22” Snare:TAMA Bell Brass 14” Hi Tom:Slingerland 12” Mid Tom:Slingerland 13” Floor Tom:Slingerland 16” Crash Cym:Zildjian 19”Zildjian 16” Ride Cym:Zildjian K-Series 17” HiHat:Slingerland HiHat こちらも同様のMIDIパターンで鳴らしてみました。>>kit_3.mp3 |
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<試用、比較してみて>
BFDのキットを聴いてみると、こちらも非常に音が良いのですが、Joe Barresiと比べた後、何か物足りなさを感じました。パターンで聴いてみたところそれ程の違いは感じられないのですが、個々の単音で聴いてみると、明らかにその違いが分かります。それは、一つ一つの膜鳴楽器としての音の伝わり方がしっかりと再現されているという点です。スティックでヘッドを叩いて、その空気の振動が胴を伝って放出され、聴く人の耳に伝わる過程がリアルに分かります。今まで色々なドラム音源を聴いてきましたが、ここまで胴が鳴っている感触が伝わってくるサウンドは初めてでした。ドラム歴?0年の僕でさえ、これには参りました。問題はこれをどう打ち込むかにかかってきますが、取り敢えず、おなじみの付属のMIDIパターンで大抵はクリアになります(中にはアレ?っというのもありますが…)。もちろん、このJoe Barresiの音源、ロック系音楽だけでなく、工夫次第で様々なジャンルの音楽にもバッチリです。皆さんも、楽器の特性がふんだんに盛り込まれている、荒々しくも美しいこのドラム・サウンドで音楽を作ってみませんか?
記事内に掲載されている価格は 2007年10月16日 時点での価格となります。
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