FOCAL TRIO11 Be 試聴会レポート

究極のオールラウンダー・リファレンスの魅力を味わう!
NAMM 2019で発表され、Focal Professional SMシリーズ中、過去最大の径のリファレンス・スピーカーとして登場したTrio11 Be。全くのゼロから研究開発をスタートし限りなく自然、かつ精密な音声信号の再生を目指す、このTrio11 Beのサウンドを国内で初めて体感できる、プレミアムなイベントがサウンドインスタジオ Aスタジオで行われました。デモンストレーションのプレゼンターには、Focal プロオーディオ・ワールワイド・セールス・マネージャーXavier Metzger氏を、さらにゲスト・スピーカーとして、現在もFocal Professionalモニタースピーカーをスタジオで愛用している「鈴木 Daichi 秀行」氏、「飛澤 正人」氏を招き、Trio11 Beのインプレッション、そしてモニタースピーカーを選定する際のチェックポイント、選定基準などを語って頂きました。
Trio11 BeがニアフィールドモニターとしてSSL XL-9064K上にセッティングされていました。ラージモニターに匹敵する存在感です。
Xavier Metzger氏による Trio11 Be プレゼンテーション
Focal プロ・オーディオ部門のセールス責任者。豊富な製品知識を背景に世界各国のディストリビューター、ディーラーと共同でFocal Professional 製品のデモンストレーション、営業活動を推進、Foal Professional ラインの高い成長の中心人物の一人。Trio 11 Beの特徴を丁寧に説明してくれました。
驚異的な軽さと剛性を兼ね備えるコーン “W” composite sandwich cone
驚異的な軽さと剛性を兼ね備える、硬質プラスチック独立気泡(クローズドセル)発泡体をグラスファイバーで挟んだ独自コーン「“W” composite sandwich cone」。右のグラフは素材毎の剛性を表すグラフで、一番右が “W” composite sandwich cone。ポリグラスの実に10倍の強さです。剛性の高さは、コーンが振動した際に発生する歪みを低減し、音像のにじみを防ぎます。
ダンパーに成形された2つの突起が歪みを低減
スピーカーコーンとスピーカードライバーのエッジはダンパーで接続されていますが、ダンパーに特殊な成形を行う事でダンパー自身の振動を吸収して音の歪みを低減しています。
左が通常のダンパー。右のダンパーには2つの重りがあって、重りの動きがダンパーの余分な振動を打ち消す仕組み。
ドライバーの振動を本体に伝えない構造が歪みを低減
新開発のサイレント・ブロックスは、スピーカードライバー本体の振動がエンクロージャーに伝わるのを防ぎ、音の歪み発生を低減。
希少金属「ベリリウム」がもたらす剛性とフラットな周波数特性
レアメタル「ベリリウム」をツイータに採用。軽く剛性も優れ、反応速度はチタンやアルミニウムの倍以上。アルミ素材のツイーターは周波数特性が右肩上がりになってしまいますが、ベリリウムはほぼフラットです。
ベリリウムのフラットな周波数特性を説明するXavier Metzger氏
左からアルミニウム、チタニウム、ベリリウムの音叉。ベリリウムは倍音の少ない澄み切った音でした。ちなみに、ベリリウムは空港のX線センサーに映らないのだそうです。
ツイーターカバーのグリルは取り外し不可。スピーカーを持ち運ぶ際、ネックレスなどがツイーターのマグネットに引き寄せられてツイーターが破損する事故が多かったのですが、これで防げます。
正確なトランジェントとフラットな周波数特性で原音を忠実に再生します。カバーグリルも含めてチューニングしています。
信頼出来るクリアーなサウンドを実現するため 「細部に渡る歪み排除」 の徹底。それら一つ一つの技術が自社工場内での開発・製造・組み立てと一貫して行われています。
鈴木 Daichi 秀行 氏と 飛澤 正人 氏 によるトークセッション!

「鈴木 Daichi 秀行」 氏と 「飛澤 正人」 氏を招いて、両氏が日頃使っているFocalスピーカーの印象について語って頂きました。
鈴木 Daichi 秀行
アレンジャー/コンポーザー/プロデューサー
バンドConeyIslandJellyFishのメンバーとしてデビュー。近年はサウンドプロデューサーとしてバンドからシンガーソングライター、アイドルまで得意な幅広い音楽性を生かし活動する傍ら新たな才能を求め新人発掘、育成などにも力を入れている。

鈴木氏 使用スピーカー
Focal Trio 6 Be、 Focal Solo 6 Be、 Focal Shape 50
アレンジ製作時に Solo6、Shape50 を使用しています。Solo6はレンジが広く、ボーカルの中域をチェックするのにも良いです。アレンジ段階で解像度が高いスピーカーだと音が気になって進まないという理由もありますが、最近の音楽は低音が重要になって来たので、Shape50の低音感が自然でよく使用しています。そしてアレンジが仕上がって来たらTrio6でミックスを行います。
モニタースピーカーを選ぶときのポイントは、作られた低音や高音だと長時間作業すると疲れてしまいますので、Focalのようにナチュラルで耳が疲れないモデルが良いです。ドラムやボーカルレコーディング、ミックスでもバランス良く鳴るというのもポイントです。
これまでのポップスやロックバンドの制作では、中域にガッツの出るスピーカーが心地よかったのですが、最近のロックバンドはハイエンド、ローエンドのレンジ感が重要になってきたので、ミックスしていてバンドメンバーが納得する、説得力ある音の出るスピーカーが必要です。
Trio 11の印象は、中域の再現性が高いという事です。ポップスは音数が多くなりますが、Trio11は自然でレンジが広く、テレビで流れても問題のないミックスが行えます。サウンドは耳に痛くなくて、奥行き感の再現性も高いですね。
飛澤 正人
レコーディング/ミキシング・エンジニア
Dragon Ash や GACKT , HY , SCANDAL , 鬼束ちひろ などを手掛ける。1980年代後半にフリーのレコーディングエンジニアとなって以降、日本の最先端の音楽シーンに関わり作品を作り続けてきた。2017年5月、市ヶ谷から渋谷にスタジオを移転。VRやサラウンドに対応した “PENTANGLE STUDIO” を設立し、これまでの2MIX サウンドでは表現しきれなかった360°定位のバーチャル空間をイメージした3Dミックスを提唱している。

飛澤氏 使用スピーカー
B&W 805 Signature w/ Accuphase E-408
Focal CMS50 x5 (サラウンド対応用に5台使用)
最近のアクティブスピーカーは解像度が上がって来ていますが、パワー感が強い印象です。CMS50はサイズが小さいけれど自然な鳴りで、作業していて悩まなくて済む。とにかく自然な空間を表現できます。
モニタースピーかーを選ぶときのポイントは製作用であれば、音が出た瞬間の楽しさ、心地よさが重要です。CMS50 と B&W 805 を切り替えながら製作していますが、時々どちらのスピーカーを聴いているのか分からなくなる時があります。ミックス終盤で CMS50 と B&W 805 の違いが分からなくなるのは良い現象だと思います。それから 「クライアントを納得させる事の出来るスピーカー」 という重要な要素もあります。クライアントがサウンドチェックした時に納得出来るかどうかが大切ですね。
Trio 11 Be の印象は空間再現能力が優れていて自然に広がる3D感、定位感がくっきりして信頼感があります。
プレゼンテーションを終えて
サウンドインスタジオ内に設置されたFocal Solo6 Be、Twin6 Be、Trio6 Be、Trio11 Be。音響が整った環境のスイートスポットで聴く Trio 11 Be のサウンドに感動しました。Trio6 Be と Trio 11 Beを比較すると、Trio 11 Beにはレンジに余裕感があり、音源のコンプレッサーが外れたような開放感があります。ジャズ音源では各楽器の定位とアタックがはっきり見えて、ボーカル以外はPAを通していないような、自然な音空間が再現されました。サイズが大きくなった分、色付けしていないパッシブスピーカーのような自然なローエンドです。
今まで何気なく聴いていた曲達が、生き生きとして「アーティストが伝えたかった感動はこれか!」 という気持ちになりました。こんな環境とスピーカーがあったら好きな曲を全部聴き返したくなります!
出荷は5月中旬予定、1本45万円(税抜)
Writer SCFED伊部