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いよいよ最終日です!
Intellijel
まずはモジュラーシンセ界の重鎮、カナダのIntellijelから見ていきましょう。
Quadra
以前からあったQuadra(4系統の独立したLFO/Envelope)がリニューアルされてQuadraxとして登場です。
モジュラーシンセに馴染みがない読者のために説明すると、このEnvelopeとLFOを兼用すると言う考え方はモジュラーシンセでとても一般的何です。例えばトライアング波のLFOが必要ならば、アタックのスロープとディケイのスロープを同じ傾斜にしたEnvelopeを設定して、それをぐるぐるループさせるとLFOになると、そう言う発想ですね。それがこのQuadra&Quadraxは4系統あるので、2つをLFOとし使い二つをエンベロープとして使う、そういう使い方ができるんです。特にケースが小さかったりモジュラーシンセだけでパフォーマンスする際には重宝します。そしてリニューアルされたQuadraxでは外部CVをゲート信号に変換したりRise(AttackではRiseという表記になりました)の値をCVでコントロールしたりできます。
他にもエンベロープのピークをずらしたりと可能性が広がりました。決定的に違うのはCVインプットが4つ付いたことで、1つのLFOとから別のLFOにモジュレーションをかける事ができるようになった事ですね。これでより複雑でなおかつトリガーによって定期的にその複雑なLFOを派生させる事ができるようになったわけです。こちら6月前後のリリース予定で価格も未定なそうです。
Tete
それから物凄く気になるものがありました。Teteという新モジュールです。
このモジュールは写真の右に写っているTetorapadの拡張モジュールで内部バスで接続されます。Tetorapadはタッチ式のフェーダーだと思って良いのですが、そのフェーダーの位置情報をレコーディングしてクオンタイズされたピッチ情報として出力したり、ゲート信号を出力したりとTetorapadの可能性がこれでグンと広がりそうですね。こちらも6月前後のリリース予定で価格も未定だそうです。
もう1つ新しいケースが発表されました。これからモジュラーシンセを始めたいけどケースをどうしようかなと思ってる読者におススメしやすいケースです。
まずバスパワー式のマルチが2つあるのでシグナルをパラって使う事が容易にできます。シーケンサーからのゲート信号をパラってフィルターとエンヴェロープのトリガーインに送ったり、同じくシーケンサーからのピッチCVをパラって2つのVCOに送ったりとモジュラーシンセでパッチを組んでいく上でマルチが幾らあっても困ることはないです。それから一番右に上に見えるクオータージャックは内部の配線を変えるとインプットにもアウトプットにもなるそうです。これって凄い便利ですよ!発売時期、価格供に未定です。
https://intellijel.com/shop/eurorack/
percussa
次は地元LAの一番新しいモジュラーメーカーpercussaのSSPです。
今年別の機会にデモを見せてもらった事があったので、大凡の機能は理解していたのですが、とにかく大きいです!モジュラーシンセって小さいモジュールがたくさんあって、みたいなイメージはだんだん昔のものになりつつありますが、多分現状のユーロラックモジュールの中では一番大きいと思います。モジュラーシンセに触れた事がない読者は何でわざわざユーロラックの規格でリリースするの?と思われるかもしれませんが、CVをあれこれパッチすると本体だけでは成し得ない事が物凄い沢山のできるようになるんですよね。さてこのSSPを一言で説明するのは難しいんですが、192Khz 32bitまでのサンプルを扱えて、16のインプット(オーディオイン、CVイン、Gateインとアサイン次第で何にでもなります)、8つのアプトプットを備え、2つのUSBホストポート、1つのUSBデバイスポート(つまりUSB MIDIキーボードが即使用可能)があります。
サウンド的にはWAVETABLE(基本的なシンセの波形含む)、サンプラー、グラニューラシンセシスを内包していて(それらをどんどんレイヤーする事ができます)、さらに内部のLFO、フィルター、FXを使い合成したサウンドさらにもう一度サンプリングしたりと、まあ〜とにかく内部でかなりの事ができます。LAはご存知のようにハリウッド映画の街そのものなので、サウンドデザインのためにモジュラーシンセを使用しているサウンドデザイナーがものすごく沢山住んでいる街でもあるんですね。なのでSSPもそういうマーケット向けなのかなという印象も受けます。もちろん僕もグラニューラシンセシスを使った特定のシンセ波形をイメージさせない抽象的なサウンドは何より好物ですから、僕のような作曲家にも強くアピールすると思います。
コミュニティーも立ち上がったばかり数は少ないですが、何しろ内部CPUも強力で処理のキャパシティーはまだまだ余裕があるようですから、これからソフトウエアアップデートで機能もどんどん増えると思います。僕も今現在SSPはMIDIをOmini受けに設定されているのですが、レイヤーしているサウンドをそれぞれマルチのMIDIチャンネルで同時に使えるようにとリクエスト出してます(まだ購入を決めたわけでもないんですがw)。既発で2000ドルです。
Black Corporation
製造を日本でしているMade in Japanの刻印が誇らしい、Black CorporationのKIJIMIが発表になっていました。前作deckard’s dreamはアメリカでも凄い人気があったようです。僕も実際喉から手が出るほど欲しいんですけどね、、、
KIJIMIは展示してあり音が出るようにはなっていたのですが、スタッフがSynthPlexには来ていなかったようで、詳しい説明は受けられませんでした。
左側のマトリックススイッチが特徴的ですが、前回のdeckard’s dreamが比較的純然たるヤマハ社の名器CS-80のストレートなリスペクトサウンドを目指していたのに比べて、KIJIMIはエンヴェロープやLFOをマトリクスであちこちに自由に内部パッチできるようになっています。かなり昔ですが、オーバーハイム社のExpanderという同じくマトリクスを使ってサウンドメイキングしていくシンセを使っていたのですが、一旦なれると本当に便利なんです。
VCOに対してアタック部分だけ少しピッチが揺れるようなサウンドにしたいなと思えばエンヴェロープをそういうカーブにしてVCOにマトリクスでアサインするだけ。そんな感じで思いつきをすぐに具現化できる良さがマトリクスにはありますね。とりあえずパッチをいくつか聴いた限りではWAVETABLE系とアナログ系をサミングして使えるようなシンセだと思います。これだけトップパネルにツマミがレイアウトされてるので、プリセットを選んでエディットという操作に関しては最初から何の疑問もなくパンパン進める事ができました。オシレーター周りに関してはどうなっているのかもう少し調べて見たいですね。
https://www.deckardsdream.com/
sensel
もう1つ、日本ではあまり認知されてないであろうsenselも紹介しますね。NAMMショーでもみかけた記憶があるんですが(失礼!)、今回興味半分でブースにお邪魔して一通り触って見たら意外とイケてるんですよね、これが。
皆さんも写真に見覚えがあるかもしれませんが、morphというシリーズを展開しています。MPC系の16パッド+コントローラー、キーボード、ドラムパッドの3種類がセットになったバンドルがとりあえずの入門セットなんでしょうね。(279ドル)
以前触った時に少しレイテンシーがあるかなと思ったんですが、今回演奏してみてレイテンシーも気にならないしPADのバリエーションが増えていたのでかなり好印象でした。基本的には目的に応じていくつかのPADを置き換えて使うわけですが、現在Innovator’s Overlay(既発で35ドル)という自分でレイアウトしたものをプログラミングして、自宅でプリントアウトした紙を使ってmorph本体の上に置いて使う新商品が既にリリースされているんですね。今までiPad上にtouchOSC等で自分用にアサインしたコントローラーを使ってきましたが、morphはさらに「叩く」とか「押し込む」という動作をCCに変換できるので、単純にCCメッセージのバリューの送り出し意外の用途にも使えるわけですね。
https://sensel.com/pages/the-sensel-morph
https://sensel.com/collections/all/products/the-sensel-morph-bundle
以上、全てのブースは廻りきれませんでしたがアメリカのシンセ業界はとても元気がありますね。
個人的なSynthPlex2019の総括として、YouTubeがある時代でも実際の操作感が自分にフィットするのかどうかはやっぱり実機に触れないと分からないものって結構ありますね。僕的にはなんでもネット上で判断できるよりもそういう部分があった方がやっぱり楽しいと思います。
それからアメリカ国内で80年代に生産されたシンセからRolandやYamahaのビンテージシンセまでメンテナンスのサービスが受けられる文化はやはり素晴らしいと思いました。チケットはソールドアウトでコンベンション的に大成功だったそうです。来年も必ず開催すると主催のマイケルさんが最終日に宣言してましたから、
また来年のSynthPlex2020に期待しましょう!
瀬川英史氏 プロフィール
岩手県盛岡市生まれ。 1986年CM音楽の作曲家として活動開始、現在までに2500本以上のCM音楽を手掛ける。アメリカ、フランス、イギリス、インド、ブルガリア等海外録音の経験も多数。サウンド&レコーディングマガジン誌に「CM音楽の作り方」(現在終了)という連載や、「コンポーザーが教える作曲テクニック99」等の執筆活動にも積極的に取り組む。近年は劇伴作曲家としての活動の場を広げている。2012年、サウンドトラックを担当したフランス短編映画「Le Dernier Jour de l’Hiver」がフランス国立映画祭イエール·レ·パルミエで最高音楽賞受賞。
www.eishisegawa.com
Synthplex 2019
https://www.synthplex.com/
記事内に掲載されている価格は 2019年4月2日 時点での価格となります。
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