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クロック・ジェネレーターとは?
アナログ信号をデジタル信号に変換する際、1秒の長さを44,100回等分スライスして数値化するのが 「サンプリングレート44.1KHz」 で、192,000回等分スライスして数値化するのが 「サンプリングレート192KHz」となります。サンプリングレートを生み出している「クロック」はパソコン自身にも入っていますし、1万円を切るオーディオインターフェースから100万円以上の物までに搭載されていて、この「クロック」が正確でなく揺らいでしまう現象をジッターと呼び、原音と違った数値にデジタル変換されてしまいます。具体的な症状は音の位相のずれや音像のボヤけ、高域が出ない、アタック感がない、ステレオ感がないなど様々で、ハイエンドなオーディオインターフェースでも数十万分の1秒の世界においては時間のズレが出ています。今回取り上げるAntelope Audio 10MXは、約3000年に1秒の誤差という、とてつもない精度を誇っているリファレンス用クロック・ジェネレーターなのです。
10MXの主な特徴
洗練されたルビジウムコアを採用した「Atomic Clock」
Atomic Clockは日本語にすると原子時計です。Antelope Audio の 10MX では研究用途に使われるルビジウムという原子を利用してリファレンス信号を発信しています。このルビジウムオシレーターの精度は 0.05 ppb (parts per billion) 、約3000年に1秒の誤差という、とてつもない精度を誇っているリファレンス用オーディオクロックです。
第4世代 64-bit Acoustically Focused Clocking ジッターマネジメントアルゴリズム
64bit-AFC プロセスでジッターの種類と量を完全にコントロールし、そのコントロールの中でディザー似た考え (クロックの場合は変調) を利用することで原音に忠実に、アナログからデジタル、デジタルからアナログに変換する技術とAntelopeは公式発表しています。精度が良いクロックは世の中に溢れていますが、音質も良い (原音に忠実な) クロックを開発していることが Antelope Audio の特徴です。
オーブンコントロールオシレーター
OCX とは Oven Control Crystal Oscillator の略。一般的なオーディオクロックにはクリスタルオシレーターが採用されていますが、Antelope Audio のクロックはこの OCX が採用されています。この OCX はオーブンで温度を一定に保つことによって、クリスタルオシレーターの振動数を一定に保ち、クロックの信号を発信している技術です。正確なジッターの少ないクロック信号を生成可能です。
Antelope Audio Japan テクニカルサポート スペシャリスト小長谷氏インタビュー!
10MXを導入すると実際にどんなサウンドになるのか具体的にお答え頂きました!
<伊部>:クロック・ジェネレーターを導入して先ず感じるのがハイエンドのクリアーさと伸びだと思います。今までボヤっと見えていたスネアのブラシ音やボーカルトラックの若干の歪みが見えるようになるなど、高域は違いとして分かりやすい部分ですが、低域はどんな変化が見られるのでしょうか?
<小長谷>:現代の音源は低音がエイリアス・ノイズで飽和している物が多いので、そこが改善され聞きやすくりますよ。
<伊部>:エイリアス・ノイズが低音に悪影響を及ぼすプロセスを詳しく教えてください!
<小長谷>:昨今のプラグイン制作環境において、特にアナログシミュレーター系のプラグインは、デジタルハーモニクス2次倍音が加算される事によりアナログらしさが生まれるのですが、過度なコンプレッションで大量に生まれた2次倍音のエイリアス・ノイズが低域に現れます。その低音はトラックが増えると徐々にトータルに影響を与えていることを発見しました。別に悪いことではないのですが、低域の DA 変換が苦手なシステムの場合、結構スピーカーの再生に影響を与えていることを感じました。特に、150Hz で濁る場合もあれば、極低音で濁る場合もあるな、、、という感じです。下の画像のように、1kHz オシレータ信号に 2次倍音を加えるプラグインを使用した場合、20Hz〜40Hz あたりに実際には存在しない低域が現れます。
これは -30dB くらいなので大音量で聞かないと感じ取れないレベルですが、トータルでこの領域に音が溜まると折返しの低域と干渉して音が持ち上がったりします。
面白い事に、3次倍音が出るディストーション系プラグインだと低域にノイズが現れません。音が太くなった印象を与えるオールド系プラグインでは、この低域の音が関係していたのかもしれませんね。
実際には 折返しノイズは音量が小さいのでほとんど現代の楽曲に影響を与えてはいないのですが、この低域だけはマスキングされにくいので、折返しノイズに反応して多少濁りがでてる、という個人的な結論です。
10MXを導入する事によって、そういった低域の濁りがクリアーになり音像が締まります。「Antelopeのクロックは低域が無くなる」とうご意見もありますが、実際は不要なエイリアス・ノイズで溜まった低域の音像が改善された結果です。この変化は高域も含めEQ処理では得られない、原音に近い音なのです。
<伊部>:全帯域で音のピントが合い原音を歪めずに再生できるのですね。音の広がり感ではどうでしょうか?
<小長谷>:ステレオ感が広がり、個別の音源へのフォーカスが合います。スピーカーの更に外側で鳴っている音もよく聞こえて来ますよ。
<伊部>:それは逆相成分がクリアーになるからですかね?音声を圧縮するとまず逆相の音が滅茶苦茶に変化してしまいますが、クロックの精度が上がると逆相も良く聞こえてくるというのは凄い事だと思います!
<小長谷>:先日、クロックを変えて録った音を比較するという機会があったのですが、スネアの音を録音した際に10MXを使用した音源は明らかに音が変わったんです。スネア以外の雑音が減って欲しい音だけ録れた感じです。
<伊部>:それはマイクの感度が変わったというよりも、音のピントが合う事によってド真ん中の音がくっきりして、相対的に反射音が聞こえなくなったのですかね?
<小長谷>:そんな感じです!音のピントが重要だと実感出来る内容でした。
<伊部>:10MXが他社のクロック・ジェネレーターと違う点はどこでしょうか?
<小長谷>:企業秘密な部分もあるのですが、「より原音に忠実な音」を実現するためにクロック内に変調を加えている事です。精度だけでなく「音質」を追求している事が評価を頂いている理由だと思います。
<伊部>:Antelope / Isochrone TrinityをはじめOrion32、Goliathなど10Mクロックを受けられるモデルを使用している方にもオススメですか?
<小長谷>:はい、ルビジウムの威力は音のピントに現れますので大変お勧めです。
<伊部>:10MXは海外のサウンドエンジニアから高く評価されているという話をよく聞きますが、実際はどうなのでしょう?
<小長谷>:アメリカ西海岸、ハリウッド系のスタジオや映像制作会社でほぼ導入頂いています。西海岸のスタンダードといっても過言ではありません。クロック・ジェネレーターを複数用意して、プロジェクトに合った物を使用するという「スタジオの色」としても導入頂いております。
<伊部>:最後に小長谷さんから10MXのアピールポイントをお願いします!
<小長谷>:とにかくルックスが格好良いです!
<伊部>:ですよね!!見た目からして音が研ぎ澄まされそうな機材です。この度はインタビューにお応え頂きましてありがとうございました!
開発者インタビュー、そして西海岸ハリウッドのスタンダードへ
この動画で Igor さんは革新的な発言をしています。64bit-AFC プロセスでジッターの種類と量を完全にコントロールし、そのコントロールの中でディザー似た考え (クロックの場合は変調) を利用することで原音に忠実に、アナログからデジタル、デジタルからアナログに変換できると彼は発言しています。Antelope Audio のクロックは原音に忠実であることを最も大切にしており、それが他社製品と比べ物にならいくらい音質の向上に繋がっています。精度が良いクロックは世の中に溢れていますが、音質も良い (原音に忠実な) クロックを開発していることが Antelope Audio の特徴です。
クロックによる音質向上を疑わしく思っていたLord of the Rings in ConcertのHOFエンジニアPaul Bevan 氏による、10MX初使用の感想を交えたムービーをご紹介します。残響成分が多く低域がブーミーになりやすい会場で繊細なサウンドを客席に届けるために音のパンチ感にこだわるPaul氏の「衝撃を受けました。」の一言にすべてが集約されていますね。
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writer.SCFED IBE
記事内に掲載されている価格は 2019年3月8日 時点での価格となります。
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