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Neumann初のオーディオインターフェイスということで、10月の発売以来、話題沸騰中のMT 48。
先月のバウンス清水とのMT 48徹底レビューにて、このMT 48の開発にはSennheiser Group傘下に入りNeumannと提携したMerging Technologiesの技術やノウハウが移植されており、MT 48にはこのMerging TechnologiesのAD/DAインターフェースANUBISに、外観が似ているということも話題になりました。
そこで今回はそのANUBISを愛用し、ゲームサウンド制作を中心に活躍する株式会社ソノロジックデザイン代表でサウンドデザイナーである牛島 正人氏と同社所属のコンポーザー・松岡 啓介氏に、MT 48を実際に使ってみた感想や製品の印象を伺ってみました。
こちらの取材にはNeumann日本代理店であるゼンハイザージャパンの担当者の方にも同席して頂き、MT 48の細かいテクニカルな仕様について解説して頂きました。
★参考記事
Neumann初のオーディオインターフェイスMT 48徹底レビュー!
Rock oNスタッフ・バウンス清水が実機を使ってその魅力をご紹介!
●プロフィール
株式会社ソノロジックデザイン 代表取締役/サウンドデザイナー
Berklee College of Music Music Synthesis学科にて音響/音楽理論を習得。2007年帰国後サウンドデザイナーとしてキャリアをスタート。
WWEシリーズでは約3年間サウンドデザイン/ディレクション/仕様作成/通訳担当。その後2015年フリーランスサウンドデザイナーとして独立。
平行して2017年3月〜2022年3月の間、audiokinetic株式会社プロダクトエキスパートとしてゲームサウンド開発のサポートを担当。
2021年4月に株式会社ソノロジックデザインとして法人化し、ゲーム業界を中心にサウンドデザイン/ディレクション/仕様作成も含めた統合的なサウンド制作業務を提供する。
キャリア通してゲーム、映像、VR、遊技機等これまでにかかわったプロジェクトは大小含め300以上。
MT 48のファーストインプレッションは
Rock oN : これまではどういったオーディオインターフェイスをお使いになりましたか?
牛島 氏 : 私の場合、最初は828 mk2(MOTU)ですね。それからFireface 800(RME)からBabyfaceで落ち着いて、そのあとに自社スタジオを作るにあたってANUBIS(Merging Technologie)を導入したという変遷です。ANUBISがポスプロ向けの製品だとしたら、MT 48は私が見た感じだとステレオに特化していますし、仕様的にも音楽制作に向いてるように感じますね。
Rock oN : では今回ANUBISユーザーである牛島さんに、MT 48を見た第一印象をお伺いしたいのですが。
牛島 氏 : NAMM Show 2023のニュースで見て一番驚きました!機能についてはANUBISを使っていたのである程度は理解していましたし、MT 48は外観のゴールドの色合いも良くて、何よりNeumannのロゴがついているだけで欲しいと思いました。
Rock oN : 実際にMT 48を使ってみた印象はいかがでしたか?
牛島 氏 : ANUBISよりもはるかに操作がわかりやすいなと思いました。液晶タッチスクリーンだけでほぼ操作を完結できますし、ブラウザからリモートで操作するルーティングも難しくなかったです。IPアドレスを打てばブラウザ上で操作できるのも便利ですし、そういった使いやすい部分もANUBISともだいぶ違うかなと思います。
松岡 氏 : 初見でも操作できますし、4系統スピーカーやヘッドホンそれぞれ独立したチャンネルで音量調整したりボーカルに返すためのリバーブも設定したりできるのがいいですね。あと細かいところですけどMT 48本体の裏に穴が空いているので、ボーカルブースなどにスタンドに立てて調整できたりするのが便利ですね。ギタリストとかテーブルではなくスタンドに設置して操作したいと思うので。
牛島 氏 :Macに接続して使う際にドライバーが不要なことも便利だなって思いました。ケーブル接続するだけですぐに使えるし、操作方法はマニュアルを読まなくても必要な機能が画面に出ているので迷わず使えるというのがいいですね。
MT 48の音質について
Rock oN : 音質についてはどういった印象をお持ちですか?
松岡 氏 : Fireface(RME)を使ってるんですけど、個人的には誤差というかニュアンス程度の違いしか感じませんでしたね。
牛島 氏 : 出音に関しては良くも悪くも突出した特徴はないです。クラブ向けのダンスミュージックっぽい特徴が低音にあるようなこともないですし。RedNet(Focusrite)と比べてみたんですけど、Gainも高かったですね。出音もInもOutも色付けが本当になくて、素の音が録音できて素の音がモニターできる、っていう印象です。
ゼンハイザージャパン : 入力についてはAD変換のダイナミックレンジが136 dBと極めて高い解像度となっています。
Neumannのポリシーとして、マイクには真空管だったりデジタルだったり、ラージ、スモールなど色々な機種を選定する段階でクリエイターやエンジニアが色付けを選択できるという感じですが、その先のハードウェアに関しては音をそのまま出す、というふうに考えています。だからマイクプリアンプに関しても色付けをさせず、マイクで勝負させたいという気持ちが強いんです。こうした設計思想があるのでMT 48にも色付けさせない、という意図があります。
ヘッドホンやトークバックで気付いたこと
Rock oN : MT 48で他に何か気に入った機能はありますか?
牛島 氏 : ヘッドホンが2つ接続できるというのは大きいですよね。Babyface(RME)使っていたのもそれが理由です。例えばラインでベースレコーディングしたいという時みたいに、制作する時に横並びで作業したいという時にとても重宝します。
松岡 氏 : ヘッドホンの1系統を2つに分岐してるんじゃなくて2系統それぞれ好きなバランスやリバーブのセンド量も変えられるので、宅録する時にはとても便利だと思いますよ。
牛島 氏 : 細かいところですがトークバックに切替えモードがあって、トークバックを教えている時にファンを回さないっていうこともできるんですよ。
松岡 氏 : トークバック用のマイクが内蔵されてるんですが、それが結構センシティブでファンの音を拾ってしまうので、それを防げるようになっているのが地味に便利です。
牛島 氏 : MT 48本体のボタンの触り心地も良くて、カチカチ音がしないのがいいですね。トークバックの際にも押した音が入らないように設計されているのが工夫されてると思いました。
Rock oN : なるほど!押した時の音がトークバックのマイクで拾わないように、ボタンにもその辺も配慮されてるんですね。
牛島 氏 : 単純にミックスをするだけとか、そういう方よりはボーカルやギターをレコーディングしたいという人には必要な機能は全部入っていて、全部解決してくれる製品だと思いますね。トークバックやリバーブの返し、モニターコントロールなんかも入っているし。個人的に試してみたいなって思ったのは、これを2台で使うやり方ですね。コントロールルームで1台、ブース側で一台というふうに。
ゼンハイザージャパン : ちなみにMT 48にはピアリングというメニューがあり、複数台のMT 48や、Merging Technologies製品のIn/OutパッチもMT 48上で簡単にアサイン可能です。
ヘッドホンが苦手な方にも画期的なクロスフィード機能!
Rock oN : まだ紹介していないMT 48の特徴的な機能はありますか?
ゼンハイザージャパン: MT 48で意外と好評な機能が、ヘッドホンのクロスフィード機能なんです。スピーカーのLRから音が出ている時、Lからの音は右耳にも入るし、Rからの音は左耳にも入りますよね、それを再現する機能があるんです。また、ヘッドホン出力のインピーダンスは35ミリオームなので、どんなヘッドホンでも十分に性能を発揮して出力することができます。
牛島 氏 : その機能は知らなかった!それは面白いですね。ぜひ聞いてみたい。他のオーディオインターフェイスでもあまりないですよね。個人的にバイノーラルって位相をいじっているのであまり好きでないのですが、これはヘッドホンの良さを残しつつ、電気信号の混ぜ具合を変えてクロストークを再現しているので、これは画期的ですよね。
ゼンハイザージャパン : 0%は通常のステレオで100%はモノラルになる機能です。ちなみにANUBISにも付いている機能ではあります。
牛島 氏 :それは知らなかったです。ヘッドホンが嫌いな方って、音が左右に分離しすぎていたり、耳に張り付いている感じがするためにミックスしにくいというのが理由としてあると思うんです。それを是正する機能としてこれは大きいですよ。
(ここでMT 48のクロスフィード機能をヘッドホンで試してみて)40から50%くらいにするとちょうどいいですね!音像が前にくる感じです。
松岡 氏 : DAWとかプラグインなどで位相をいじったりするようなものではなく、ミックスデータを変えずにオーディオインターフェイス側でクロスフィードさせているのはすごいですね。印象としてはオープン型ヘッドホンに近くなる感じです。
牛島 氏 : 通常ミックスでヘッドホンを使う時ってEQの確認とかノイズチェックとかだと思うんですけど、それ以外にもパンニングや空間の把握の広がりをどう作るのかっていうところだと思うので、それを緩和できるというのはとてもいいと思います。パンニングの確認も広げすぎたり迷うことも少なくなりそうです。ハードウェアにこの機能が付いたというのが今までにない画期的な点かなと思いました。
松岡 氏 : これを使うとヘッドホンで聴くということの概念が変わる感じですね。ヘッドホンをしていても耳に張り付いた感じが軽減できるのは大きいです。
こんな方におすすめ!
Rock oN : 最後にMT 48をどんなユーザーにおすすめしたいですか?
ゼンハイザージャパン : クオリティの高い入出力を必要とするコンポーザー・音楽制作を行う人や、今使用しているオーディオインターフェイスの音質をグレードアップさせたい人におすすめします。
牛島 氏 : 宅録しているコンポーザーやクリエイターだけでなく、小規模のスタジオレコーディングなんかでボーカル録りする方にはおすすめです。トークバックやキューボックスの製品も他にいいのが少ないので、それだけでもすすめたいですね。細かいところですがコミュニケーションのシステムはレコーディングでも本当に大事だし、コストがかかる部分なので。
★ただいまRock oN渋谷店に、MT 48展示中!
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記事内に掲載されている価格は 2023年12月4日 時点での価格となります。
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