sonibleは、レコーディングとライブサウンドに長年携わったエンジニアが立ち上げたオーストリアのメーカーで、AI技術を搭載したイコライザー、コンプレッサー、リバーブなどをリリースしています。sonibleのプラグインはA.I.技術以外にも、今までにない着眼点の製品が多く個性的なサウンド制作に役立ち、新たな音表現を求めるクリエイターにお勧めです。今回 SMART:EQ が3にバージョンアップして、複数のトラックと連携したイコライジングが可能になったという事で、その実力を試してみました!
sonibleプラグイン・ラインナップ
SMART:EQ 3
AI(人工知能)によるトラックの自動イコライジング、ミックスのマスキングを低減するインテリジェントEQ
sonible社の独自技術により音声シグナルに対して最適な処理を施す、AI搭載型自動イコライザーです。オーディオ信号に応じてカスタムカーブフィルタを生成し、ナチュラルでバランスの整った音色へと自動調整を行います。AI(人工知能)を用いて音源を分析。不快なレゾナンスやノッチを取り除き、ベストなトーナルバランスを提供。全体的な調整を任せてミックスのスタート地点を作成したり、必要な周波数だけに適用することで耳障りな共振を自動でカットしたり、その楽器の特徴を色濃く反映することさえ可能としています。
インテリジェントEQの核心! スマート:フィルター
SMART:EQ 3は、ワンクリックでオーディオ‧トラックを分析し、余計なレゾナンス(共鳴)や想定外の欠損、不安定なスペクトルといった音響上の問題を修正します。精密なスマート:フィルターは、ユーザーのニーズに応じてクリーンでディテールに富んだサウンドに絞り上げ、そこをスタート地点にクリエイティブなステップに進む土台作りをしてくれます。通常のEQとしては最大24バンドのイコライジングポイントを設定でき、スマート:フィルターと併用しながら自分のイメージする音作りが可能です。
左の動画では、実際にドラム、ベース、ギター音源をAIに学習してもらい、理想的な周波数特性にするためのEQカーブを提案してもらいました。使い方はいたって簡単。音源のプロファイルを選んで学習ボタンを押し、音源を再生すると学習が始まります。学習が完了するとスマート:フィルターが最適な設定を示し、スマート:フィルターの適用範囲や適用量を調整する事ができます。
新機能! ダイナミック‧アダプテーション
ダイナミック‧アダプテーション‧モードは、スマート:フィルターを入力オーディオ信号に動的に適用させます。スマート:フィルターは通常は固定値で問題ない場合が多いのですが、音色は時間と共に絶えず変化しますので、フィルタリングに過不足が生じる事があります。そこでこのダイナミック‧アダプテーションをOnにすると、SMART:EQ 3がオーディオ信号をリアルタイムに分析し、スマート:フィルターを常時更新して補正してくれるのです! バンド数がとても多いダイナミックEQというイメージで、音色の一貫性が最大限に保たれる機能です。この機能で思い出すのが、聴覚知覚モデルを使用したリアルタイムイコライザー GULLFOSSです。気になる方はぜひチェックしてみてください。→人間の聴覚知覚モデルを搭載したSOUNDTHEORY / GULLFOSS が ミックスを瞬時にクリアーに
右の動画では実際にダイナミック‧アダプテーションを試してみました。Dynamicパラメーターを最大に上げると、ライドシンバルの余韻が明瞭に聞こえるようになりました。
新機能!ウェイティングカーブの分割
スマート:フィルターの適用帯域や適用量などを決めるウェイティングカーブは、2つに分割してそれぞれ設定する事が可能です。低域と中高域を別々に処理する事が可能になり、より精細な音作り設定が可能になっています。右の動画では2つのウェイティングカーブを使用し、中高域のカーブをマイナス設定にする事でローファイ感が強くなっています。ダイナミック‧アダプテーションを最大でかけることにより、キックの太さとハイハットの芯が強調されました。M/Sバランスを調整できるのもポイントで、モノ成分が強くなるとドラム全体がパワフルになります。サイド成分だけのパンニングも可能で、ステレオマイクで録音した音源のパンニング修正にも活用できます。
新機能! グルーピング
グループを作成すると、そこに追加されたすべてのトラックのスペクトル情報をもとにマスキングの有無が検証され、ユーザーが設定した3つのレイヤーをもとに、各トラックが適切なミキシングになるように調整されます。最大6つのトラックまで、スペクトル‧バランスの取れたグループを作成することができ、帯域の乱れや衝突を可視化して、クロスチャンネル処理を反映させることができます。
A.I.のアルゴリズムが提供するスペクトル‧ミキシング技術を活用することで、トラックごとの表現スペースを充分に保ちながら、無駄のないミックスに仕上げていくことが可能になるのです。
右の動画では、ドラム、ベース、ギターというシンプルな構成で試しています。レイヤーを変えると結構ボリューム感が変わりますので、トラック間のクロスチャンネル処理だけを行いたい場合は同一レイヤー上に置くと良いでしょう。
複数トラックを同時確認できるアナライザーが便利!
グループ内トラックのスペクトル情報が1画面で見られる機能が便利です。音源の主要帯域をグラフで確認しながら、クロスチャンネル処理を行うスマート:フィルターの適用量を調節したり、自身でEQを追加してトラック間のマスキングを軽減するといった処理が可能です。
今回は3トラックという極めてシンプルな構成ですが、最大6トラックまでグループにできるので、シンセやギターといったコード楽器とボーカルがせめぎ合いになる中低域の処理に重宝します。
SMART:EQ 3 の検証を終えて
記事内に掲載されている価格は 2021年5月31日 時点での価格となります。
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