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<後半:音質編>
by NOISE IN JAPAN サウンドデザイナー 菅原宏之
前半の使い心地編(https://www.miroc.co.jp/rock-on/pcm-d10_report/) に続き、音質編をレポートします。個人的に所有するいくつかのソニー製マイクやレコーダーと比較しながら、
・マイク録音性能
・ライン録音性能
を検証してみました。
機材は以下の4種類です。
前半:使い心地編はこちらから
A : スタジオ内にてハンドラムを録音
インプレッション
4つの音を聴き比べた場合、PCM-D10はその他の3つと比べ、まろやかな感じに聴こえました。音の後半でPCM-D10以外は時計の秒針の音がかすかに聞こえ、各種画像でも音が認識できるのですが、PCM-D10はほとんど聞こえませんでした。だからと言って音が悪いと感じたわけではありません。ハイがキツくなく、必要な部分はしっかり聞こえ、アナログレコードを聞いているような暖かい感じと言いましょうか、非常に音楽的な録音になっているように感じました。C-100は良くも悪くも素直で、そのままを表現してくれます。PCM-D100の兄と言うか、値段相応の音です。PCM-D100とC-100は音質が似ています。ECM-100Uは、親戚のお姉ちゃんという感じで、細かい部分を補佐してくれるサポーターの様です。
B:屋外のチャイムを録音
インプレッション
PCM-D100はある意味素直と言いますか、聞いていて耳に刺さる音も、PCM-D10はその辺が絶妙によく録音されており、EQなどの編集を持ち帰ってする必要がなく、これも音楽的な録音になっていると感じました。屋内、屋外のどちらでも人間の耳に一番聞こえやすい感じに録音してくれるので、音楽的に音を楽しみたい人や、音楽制作の素材として録音する方には非常に優れたツールです。
C:渓流を録音
インプレッション
一貫して言えるのは、PCM-D100に比べてPCM-D10の音は優しさという指向が感じられます。 特にこの様な川の流れる音や波の音などは、優しい女性の様な感覚があります。決してチープな音ではなく、不要な贅肉は取り払い、ほんの少し香水が香る様ないい音に仕上がってます。比較して、PCM-D100は体臭がするくらい男っぽいというか、素手で音を触っている様などっしりした感じの音になっています。双方を比較して初めて感じたもので、必要な用途に応じて使い分けできる2機種です。
D:付属ウィンドジャマーの性能と比較について
インプレッション
PCM-D10に付属していたものは、スポンジ状のどちらかと言うとブレスガード。 スペクトラムデータを見ると、PCM-D10の方がPCM-D100よりもハイが出ていますが、スポンジ状のものは野外ではほとんど効果がありませんでした。屋内録音する分にはスポンジ状でも問題ないと思いますが、屋外で使用するには多少ハイを犠牲にしても、PCM-D100の様な毛タイプが必要になってきます。
E:ライン入力による録音
インプレッション
サイン波を録音し比較して気になったのが、録音レベルを同じ5に設定し録音したところ、PCM-D10の方がPCM-D100より、5dB大きく録音されるという事です。今までのマイク録音とは逆に、PCM-D10のパワーを感じました。
PCM-D10 音質編:総評
究極のエンターテインメントを作るならPCM-D10、究極のドキュメンタリーを作るならPCM-D100
音質調査を踏まえての総評になります。PCM-D10はその音質特性の観点から捉えると、「荒々しい日本海の波の音」、「台風などの強風」というような素材を対象としたドキュメンタリー作品を作る用途よりも、「楽器レコーディング」や「ライブレコーディング」、「音楽を作るための素材録音」という、繊細なエンターテインメント作品を作る用途にオススメしたい商品です。
PCM-D10はその大きさやポップガード、脚立の取り付け位置などは意図があっての形なのかもしれません。 ドキュメンタリーを作りたい方は、PCM-D100もありでしょう。個人的には、暖かくなるこれからの季節にPCM-D10をリュックに詰め込んで、野鳥や川の流れのような自然の優しい音を録音したくなる一品でした。とても女性的な優しさをこのPCM-D10に感じました。
製品オフィシャルページ
https://www.sony.jp/ic-recorder/products/PCM-D10/
記事内に掲載されている価格は 2019年5月21日 時点での価格となります。
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