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「録ろう、配信しよう、つながろう」をテーマにRock oNでは様々なテーマで音楽制作のノウハウをお伝えしていますが、最近DTMを始めたという初心者の方にとっては、まだまだわからないことや解決できないことも多いのではないでしょうか。
「今さらこんなことを人に聞くのは恥ずかしいのでは、、、」案外そういうことも多いかと思います。
そこで今回は音楽制作をしてクリエイターをお招きし、現実的に直面している悩みやさらなるステップアップに向けての課題をぶつけてもらい、率直にお答えしていこうというものです!
MR.スケール(以下スケール)「ではリモートでさっそく悩み相談を始めていきましょう、今回の相談者はこのクリエイターです。
文 愛実(以下ムンさん):はじめまして!文 愛実(むん えしる)と申します。よろしくお願いします。
私に足りない音源って何ですか?
ムンさん:実は私、今楽曲コンペに出したりしているんですが、今ひとつアレンジがしっくりこなくて、曲作りに煮詰まってくると、ネットでソフト音源を試聴していると、なぜか気に入ってすぐにポチッとな!って新しい音源を買ってしまうんです。
スケール:たしかにソフトウェア音源が主流の時代になって単価も安くなって、ハードウェアよりも音源は手軽に揃えるようにはなりましたね。ちなみにどんな音源を持っているんですか?
ムンさん:今持っているのは、
●シンセ系
Omnisphere (spectrasonics)
Avenger (Vengeance Sound)
SynthMaster 2 (KV331)
Serum (Xfer Records)
Xpand! 2 (AIR Music Technology)
Zebra2 (U-he)
●生音系(PCM)
Vienna Special Edition vo.1 (Vienna Instruments)
Chris HEIN HORNS compact (BEST SERVICE)
Toy Suite, Gypsy Jazzy, World Suite,Xtream FX (UVI)
VIRTUAL GUITARIST Iron / SPAKLE, Virtual Drummer PHAT(UJAM)
Addictive Drums 2 (xln Audio)
Addictive Keys (xln Audio)
KIck 2 (Sonic Academy)
MODO BASS (IK Multimedia)
●その他
Komplete 11 Ultimate (Native Instruments)
まだこれだけしかないので、、この他にどんな音源を買えば良いでしょうか?
さぶ:・・十分です!あっしより揃ってるでやんす!
スケール:なかなかいいセレクトしているじゃないですか!特によく使う音源はなんですか?
ムンさん:最近はプリセットが充実しているAvengerとかSerumとか、あとSynthMaster 2が多いですね。使い方はsleepfreaksなどの動画サイトで見て覚えています。
スケール:なるほど、これだけ揃っていてアレンジでしっくりこないことが多いというのは、うまくプリセットがみつけられていないか、音源を十分に使いこなせていない気もします。やみくもに音源を増やすより、一つの音源を掘り下げてどこまで自分のイメージする音をみつけるか、自分で作るかに注力してみてはどうでしょうか。」
ムンさん:たしかに…それは耳が痛いです!
スケール:ちょっと厳しいことを言うと、みんな同じようなツールを使っているなら、買って終わりじゃなくて同じ土俵に立ったそこからがスタートです。その先にメロディやアレンジといった音楽的な技量を楽曲に反映して、楽曲に合わせた音作りやプリセット選びができるかが問われて来ます。
ムンさん:やはりそこに行き着くんですよね。
さぶ:今は最初からFM音源からウェーブテーブルまで全部揃った音源がソフトウェアで買えますからね。便利な反面できることが多すぎたり覚えるのが大変で、ついプリセットを選んで使うパターンになるんでやんすよ。
スケール:そうですね、であればシンプルにSerumとかAvengerとか、まず一つの音源に絞ってそれを深く掘り下げていくのがいいでしょう。新しく買い足すのは今の音源をある程度知り尽くして、それでもなお足りない部分や必要なものがあればおのずとわかってくると思います。
ムンさん:ありがとうございます(ToT)!!
シンセ音源を深く掘り下げるには?
●まずは音の3要素を理解すること!
スケール:いい機会ですので音作りの基本的な流れを理解するために、あらゆるシンセ全体に通じる概念として、アナログシンセの構造について説明しますね。最近の人気ソフトウェアシンセも基本はこの構造を持っています。
シンセサイザーは音の3要素は音程、音色、音量での3つのパートに分かれているのがほとんどです。
1)VCO(Voltage Controlled Oscillator)ここは音程を決めるセクションです。、オシレーターとは「発振器」という意味で、サイン波とか三角波、ノコギリ波といった基本となる波形を選びます。(デジタルシンセになるとさらに複雑な波形になっていきます)。
音の高さを決めたりもしますが、波が繰り返す速さで決まります。1秒間に1回振動する波を周波数1HZの音と呼び、周波数が高くなると音が高くなり、周波数が低くなると音も低くなります。
2)VCF(Voltage Controlled Filter)ここは音色を決めるセクションです。
音の明るさは特定の周波数を強調したり取り除くことで決まります。高い周波数を強調すると明るい音に低い周波数を強調すると暗い音になります、
具体例で説明すると、
LPF(Low Pass Filer):文字通りロー(低域)をパスするので高域部分をカットして音を丸くする(もっとも一般的なフィルター)
HPF(High Pass Filer):逆にハイ(高域)をパスするので低域部分をカット。高域に特徴がある打楽器系の音など。
3)VCA(Voltage Controlled Filter)ここは音量を決めるセクションです。ここはシンプルに値が大きくなるほど音量が大きくなります。
まずはこの3つのセクションを通って音作りするという基本的な流れを理解しておきましょう。
さぶ:いつも話の長い先生にしてはシンプルな解説でやんすね!
スケール:・・・あまり長いとみんな読んでくれませんからね。
ムン:EGやLFOとは何でしょう?
スケール:まさにこれからお伝えするところです!
4)EG
正式名称はEnvelope Generatorで、これは音の時間変化を設定することです。頭文字をとってADSRと呼ばれたりもします。
A・・・Attack:鍵盤を押さえて(キー・オン)から、音量が最大になる時間
D・・・Decay:音量が最大になってからサステインレベルに下がるまでの時間
S・・・Sustain:AttackとDecayタイムを過ぎてから、鍵盤を離す(キー・オフ)までの時間
R・・・Release:鍵盤を離してから音量が最小になるまでの時間
アンプのEGだと音量の時間的変化だからイメージしやすいと思います。
アタックはピアノすぐに最大音量になりますが、バイオリンはゆっくり立ち上がりますよね。リリースもオルガンは鍵盤を離すとすぐ音が止まるけど、パッドや管楽器はフワッとした余韻が残るからリリースは長めに取るなど、音色によって違いますよね。このEnvelopeを使いこなすことで、より表現力豊かな音を作り出すことができます。
VCO、VCFそれぞれにもエンベロープはかかります。具体例で解説すると、
Pitch Envelope:音程の時間的変化を作ります。例えばトランペットなどの管楽器で吹き始めの部分でピッチが微妙にずれることがありますね。そういった再現が可能です。
ムンさん:私!サックスが吹けるのでそれはすごくイメージできます!
さぶ:まさにそれでやんす!ブラス系の音色でちょっとリアルさが欲しい時は、ここのアタックとディケイを短めにして、エンべロープデプス(ピッチにかけるモジュレーションの量)を少し加えたりして調節すると生演奏らしさが増すでやんすよ。」
スケール:Filter envelope:音色の時間的な変化を作ります。例えばピアノなどで音の鳴り始めは明るい音で、音が消えていくにしたがって徐々に丸い(暗い)音になります。
5)LFO
これはLow Frequency OScillatorの略で、直訳すると低い周波数を出すオシレーター(発振器)のこと。これはVCO、VCF、VCAそれぞれにかけることで、それぞれ設定した周期にしたがって振動のような効果を与えることができます。
ムンさん:低周波治療器みたいですね。
スケール:あれと似たイメージです!VCOにLFOをかけると音程が波打つ(ビブラート効果)、VCFにLFOをかけると音色が波打つ(ワウ効果)、VCAにLFOをかけると音量が波打つ(トレモロ効果)ということになります。
●プリセットを把握する!
スケール:シンセ音源を深く掘り下げるには、基本的ですがまずはどのシンセのプリセットがどこにどんな音が入っているか知っておくと良いですよ。どんなジャンルに向いているか、どんな特徴かを掴んでおく、漠然と探すのではなく番号や名前をメモしておけば、それだけで音色探す時間を短縮できます。ハードウェアシンセの時代でも、このシンセの何番のプリセットを使って欲しいとかアーティストから指定があったりもしました。
さぶ:最近はカテゴリー別に音色が分かれているので探しやすいのも多いですしね。フェイバリットということでブックマーク的に印をつけられるのもありますから、積極的に使えそうな音色を日頃からセレクトしておくといいでやんすよ!
スケール:アナログなやり方ですがマニュアルについている音色リストを見ながら、これはこんな感じの音、これはイマイチ、これは使えるとか自分がわかる言葉でも選別しておくのもいいですよね。そうやってプリセットを理解できたら、今度は自分なりに曲に合わせて音色エディットできることがを次のステップアップです。くじけたらそこで、コンペ終了ですよ。
スケール:シンセサイザーの音作りは、こうして基本的な要素だけでも把握しておくと、音の特徴が掴みやすくなると思います。どうしてこんな変わった音が出せるんだろう、ははぁこれはLFOがここにかかっているからか、とか。
ムンさん:はい!今持っている音源を、自分でいじってみて、もう一度色々試してみたくなりました。
スケール:シンセの場合のポイントは、やはり音程(オシレーター)の部分にある波形選びですので、使っているシンセのプリセットにはどんな波形が搭載されているか、理解しておくといいでしょう。
さぶ:最近の流行りのはウェーブテーブルとかFM音源とか、波形がそりゃもう沢山あるでやんすからね。
スケール:OmnisphereやAvenger、Serumだけでも相当プリセットがあるので、かなりのサウンドバリエーションがあるはずです。
さぶ:考えてみれば夢のような話でやんす!
ムンさん:ありがとうございます!頑張ってみます!あと、もう一つ音源でお伺いしたいことが!
さぶ:あっもう時間が!
スケール:この続きはまた次回!
●今回のレコメンド
Avenger (Vengeance Sound)
Avengerは930種類のプリセット、620のマルチサンプルを持つ強力な音源!そのどれもが迫力で即戦力な音源ばかり!
ウェーブテーブル音源が搭載されているのでEDM系のイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、それだけに留まらない幅広いジャンルをカバーできます。パッドやPluck、ドラム音源など音の太さとダンス系なら迷わず使えます。
おすすめは「Sequence」というカテゴリーで、ダブステップ、フューチャーベースなど最近の、一つ鍵盤押すとランニングで音源が鳴ってくれるんです。難しいことはありません、初心者でもいきなりプライス以上の働きをしてくれるでやんす!
Serum (Xfer Records)
SERUMはここ何年もトップに君臨している音源で、これも実に掘り下げ甲斐のあるシンセです。プリセットを459種類収録していてどれも完成度が高く、何よりその音の太さ、存在感が際立っています。
ウェーブテーブルの複雑な波形も、3D表示で位置が変わるのがわかりやすく、今回解説したEGやLFOの動きも時間軸に沿っていく点が動いてことで視覚的に追うことができます。プリセットを使っていっても良いですが、実に触って楽しいシンセサイザーの醍醐味が味わえる製品です。
SERUMは割引セールをやらないので欲しい時が買い時!気になる方はぜひデモ版から使ってみてはいかがでしょうか。
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