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スタジオ構築における音響設計ノウハウ、ソリューション構築を、CreatorとDesignerの両視点から毎週お届け。第二回はOMFACTORY Simokitazawa Studio。所有者である大島su-kei氏による手作りながらのこの完成度の高さは大きな驚きです!大島氏がこのスタジオに込めた情熱が感じられる「build up your studio」ストーリーを紹介します。
自分でスタジオ設計・施工を行ったきっかけですが、11年前に一般のリフォーム業者様にプライベートスタジオ施工を頼んだのですが、気に入らず、全部破壊してしまったんです(笑)。数百万円が無駄になりました、、、遮音や防音については完璧なんですが、創作のテンションが上がらないデザインや雰囲気だったのが主な理由です。それまで一切、DIYをやった事がなく、簡単な組み立て家具すら作れない不器用っぷりでしたが、そこから11年間に渡り、趣味でDIYをやり続けた結果、スタジオを作るまでに至りました。
今までに20回以上、大規模なリフォームを自分一人でやってます。賃貸物件なので、2週間もあればで自分できれいに戻せるような作りをしているのが特徴で、これまでに、1円も不動産屋から取られずに退去出来ました。こういったわがままな要望は、専門業者だと対応が難しいだろうなと思います。
元々、DAW専用PCを作り始めたのも同じ理由なんです。有名メーカーのPCを何度買っても不満だったので、一から全部自分で作ろうと思いました。今でも、パーツ選定から実際の組み立て作業まで多くを担当しています。究極的には環境が大事だと信じていますので、そのノウハウを同業のクリエイターに提供したいという思いからスタートしています。ですので、「自分自身の手で納得するまでやらねば」と思っています。
スタジオの音響設計に関しては正直なところ、適当でして(笑)。フィーリングの話になりますが、気持ちよく聞こえるまで、何度も何度もやり直し、調整しました。ただ、他のアーティストさんも長時間滞在されますので、純粋に居心地の良くなる音響バランスを意識してます。
ブースの音響に関しては、かなり手こずりました。賃貸物件なので、綺麗に元に戻せる範囲の施工方法では、壁材の重量に限界があり、単に遮音性の高い建材で壁を厚くするという訳にはいかなかったんです。
一番の問題点は、下北沢の繁華街のど真ん中にあるので、夜中まで酔っぱらいの騒ぎ声が聞こえます(笑)。マイク録音中に入り兼ねないので、相当に遮音・防音・吸音をしないといけませんでした。
具体的には石膏ボード、ベニヤ、空気層、遮音シート、ロックウール、グラスウール、高密度ウレタン、高音を吸うメラミン素材、低音をカットする鋭利な吸音材等を組み合わせ、その調整で実現しています。
トラックを走らせ遠くまで建材を買いに行きましたが、運ぶのが非常に重く本当に苦労しました。一気に8キロほど痩せましたが、DIYダイエットとしては大成功ですね(笑)。一人でひたすら作っているので、密室工事をしている時の孤独感といったら大変なものがありました。
また、普段は大阪に住んでいるので、東京へ仕事で行った時の合間を縫って工事するというスケジュールでしたが、のべ4か月の間、スタジオ作って〜音楽作って〜パソコン作って、という作業をこなし続けました。
寝る所が無かったので、柔らかめのブルーシートを床にひいて寝てました(笑)。肩がこりますのでお勧めしませんが。。。
ITインフラ系の処理ですが、工事の時点で壁にLANを沢山通してます。ネットも音も映像も防犯カメラも全部有線LANを採用してます。オーディオ・インターフェースのDiGiGridもLAN接続なので、PCはどこにでも設置することが可能です。
機材の音に関しては気にならないレベルなので、現時点でマシンルームの必要はなく、全部コントロールルーム内に配置してます。Wi-Fiはレイテンシーの問題があるので、音周りでは使わず、ブラウザやメールといった利用だけにしています。HDMIやCueの返しのクオリティですが、やはり有線LANがベストでした。
基本的には、私が制作担当するアーティストさんのレコーディングとミックスに使用してます。たまに、知り合いのクリエイターさんにも使って頂いてますし、OMFACTORY製PCの最新最高スペックマシンが稼働してますので、希望された方には動作を見に来て頂くというショールーム的な使い方もしています。
スタジオの今後の展開については全く未定です。いつでも直ぐに解体して退去できるので、もし機会があればですが、また、新しいスタジオを一から作りたいと思ってます。
内装デザインですが、色々な場所に間接照明を多く取り入れてます。自分の感覚で作っているので、他のスタジオでは見ないようなデザインになっているかもしれません。
工事期間中に浅草でもんじゃ焼きを食べた影響で、一瞬だけ和風を意識した時期がありました。畳もひいてますし、庭園の白石のような部分もありますよ。日頃から飲食店やショップの内装や建材が気になり、ついつい見てしまうのですが、「こうゆうの、今度作ってみたいな」と感じる事が多いんです。
実際には、一目ぼれした建材を先に買ってから、どう取り付けるかを考えるパターンも多いので、スタジオのデザインは、私が日常受けてる影響や興味の集合体になっていると思います。ただ正直なことを言いますと、もう飽きてきましたので、近々大幅にリフォームしようと思ってますが(笑)
スタジオに入った瞬間に感じる空間への印象が、音に影響してくると信じています。どんな場所、どんな状況下でも同じパフォーマンスを出せるのが真のプロフェッショナルだと思いますが、その先に差が出る要因があるとすれば、やはり「環境」だと思います。
例えば北欧の森林の中と、アフリカの砂漠の中にある町で演奏するとなると、プロの演奏者であっても、何かしらの違いが出てきてしまうのではないでしょうか。
場所の違い、景色の違い、文化の違い、音の響きの違いだけではなく、匂いも温度も湿度も何もかも違うというのは、音楽に必ず影響を与えると思ってます。そいういった観点で、プライベートスタジオは個性豊かなクリエイターの方々にとって、「自由で独創的」な仕上がりにすべきじゃないかと思ってます。
スタジオ作りですが、まだまだ納得いかないことが多く、これから先も、究極のDIYスタジオ作りに精進していきたいです。
自分は設計・施工のプロでなく、好きでやっているアマチュアですが、アマチュアならではの良さというのが必ずあると思いますので、あと10年~20年かけて「まだ見ぬ何か」にゴールできれば幸せですね。
記事内に掲載されている価格は 2016年3月4日 時点での価格となります。
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