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2017年9月27日 渋谷 Galaxy 銀河系にて、2017 Autumn Specialプロモを記念した一夜限りのイベント『The Spectrasonics Day 2017』が開催されました。
この日は個性と実力が際立つプロクリエイター4名によるセミナーを中心に、製品そしてSpectrasonics社のことを深く知ることができる特別な夜となりました。その模様をお伝えします。
4種の神器がALL30%OFF!
イベント冒頭、Roland D-50、JD-800、Alpha Juno など名だたる名機のサウンドデザイナーとしてシンセサイザー史に名を残す 創業者Eric Persing 氏から本イベントへの祝辞ムービーが公開されました。親日家である彼の「いつもSpectrasonicsは日本のユーザーのことを思っています」というメッセージに胸が熱くなりました。
Spectrasonics’ History 1994 – 2017
今年で創立23年となるSpectrasonics社。Eric Persing 氏の経歴は楽器販売店のスタッフから始まりました。その後デジタルシンセの黄金期と呼ばれる時代にチーフ・サウンド・プログラマーとしてRolandでシンセサイザーの開発に携わります。彼の作った有名なサウンドはD-50プリセット1番のFantasiaやAlpha JunoのHoover、そのほか数え切れないほどのプリセットを作りあげました。
その後独立した彼は自宅のキッチンでSpectrasonicsをスタート。創業当時はサンプリングCDなどの開発を行っていましたが Marcus Miller , John Patitucci , Abraham Laboriel という名ベースプレイヤー3名のプレイをリアルにパッケージングしたソフト音源 Bass Legends が「聴ける音源」として世界中で大ヒット。ここから本格的にソフト音源の開発に着手し始めます。ちなみにこの音源のヒットの理由は、Eric Persing 氏が持っている「各ミュージシャンとのつながり」と「彼らのフレーズを音源にするというテクニック」にありました。
2002年から2017年のうちにリリースされた製品はたったの7つ。これらの特徴は長年使える息の長い製品だということでしょう。その理由はアップデートにあります。
このほかにも、Spectrasonicsは「リリースした後でも製品を大切にする」「常にユーザーを大切にする」というコンセプトを持っていることも長く使える製品作りがされている理由の一つでしょう。(Trilianが発売された当時、発売から14年も経っていたTrilogyからたったUS$99でアップグレードができたことも象徴的です)
10年の歳月をかけて生み出された第四の製品、Keyscapeとは
ゲスト:MANABOON氏
いよいよセミナーが始まりました。プロデューサー/コンポーザー/アレンジャーなど多彩に活躍するMANABOON氏によるKeyscapeセミナーです。
3種の神器と呼ばれた Omnisphere,Trilian,Stylus RMXの仲間に加わった最新音源は、あらゆるピアノ/エレピ/キーボードの音源を一つにパッケージ。「必要であれば地球の裏まで」と世界中から最高のキーボードを探しメンテナンスをし丁寧にサンプリングされた自信作です。開発に10年の歳月を費やしたKeyscape。ということは、初代Omnisphereがリリースされたときには開発が始まっていたということですね。
MANABOON氏がキーボード音源で一番こだわるのはプリセット1番に入っているグランドピアノ。Keyscapeの「LA Castom」は最高の状態とされる冷戦時代に製造されたハンマーが取り付けられた最良のピアノがサンプリングされています。
「鍵盤の強弱に追従して変わるリアルな音色が嬉しい。」「ドラムに負けない音色の粒立ち、粒立ちが非常に良い」とのこと。
このほかMANABOON氏は「時間が無い中で耳を使って音色を探さないといけない時、グラフィックで探せることが助かる。こういう音色ですよと連想させるグラフィックなのでほしい音にたどり着きやすい」というプロならではのノウハウも教えてくれました。
エレピの中でお気に入りの音はWurlitzer 140。タッチとで音の優しさが気に入り実機を買ったMANABOON氏は「タッチ込みでインスパイアされる実機は必要だが、音色だけが欲しいのであればKeyscapeでだけいいかな。そうと思わせる音です」と本音を語ってくれました。
Spectrasonics独自のSTEAMエンジンを徹底解剖
ゲスト:篠田 元一氏
KeyscapeとOmnisphere2を両方持っていると「Keyscape Creative」ライブラリとしてKeyscapeの音源をOmnisphere2の強力なシンセエンジンでエディットして使うことができます。その実演を作曲家・編曲家、ピアノ&キーボーディストの篠田 元一氏が行いました。
篠田 氏はKeyscapeを「簡単に使えるが、とても深いところまでエディットできる。プリセットが膨大。」と絶賛。Rolandとの関係の中でEric Persing 氏と親交があるということで、非常に気に入っている音源だということです。
そして「音が少し綺麗すぎるところもあるので、バンドでの中で使う時は汚すこともする」などノウハウも披露してくれました。
「Keyscape Creative」ライブラリは単なるレイヤーではなく、Keyscapeのリアルな音を複雑なクロスモジュレーションで加工することで、簡単に抽象的で有機的な音に仕上がります。ローズピアノにグラニュラーをかけたり、ユニゾン機能を強力にかけたピアノがシンセリードのように変わっていく様が披露されました。
ソフトウェア音源は次のレベルへ。アイデアを形にする方法
ゲスト:野崎 良太氏(Jazztronik)
カラフルな作風で多彩な作品を生み出す野崎 良太氏が登場。
Rhodes pianoの実機を所有している野崎氏は「エレピは生き物。スタジオにって弾いたとしてもダメなときがある。そういうことを考えるといつでも最良のサウンドが使えるKeyscapeは嬉しい。」とやはりKeyscapeがお気に入り。
このセミナーは、代理店Media Integrationの畑澤氏がStylus RMXとTrilianを使ってその場でリズムを組み、そこに野崎氏が即興で音を重ねトラックを組むというスリリングな内容。
ハウシーな4つ打ちトラックに野崎氏がKeyscapeのWurlitzerを重ねムーディーな空間を作り上げていきます。そしてそこへOmnisphere 2のカリンバを使い、個性的な野崎氏らしい曲に仕上がりました。
「Spectrasonics製品は使う人によって表情を変える。」とは畑澤氏の言葉。ソフト音源でありながら人によって違う音が出るというまるで楽器のように使えるとはSpectrasonicsならではの評価でしょう。
その言葉に反応したように野崎氏は「Omnisphere 2には驚きました。僕はソフトシンセの音ってチープに感じてしまってあまり使わないのですが、Omnisphere 2は使うんです。まるでハードウェアシンセのような音だと思います。このクオリティを持ったソフトで出てきたとき、ほかのハードウェアシンセがどう競合してくるのか。興味が沸きました。」と熱く語っていました。
Spectrasonicsがアレンジ上で即戦力である理由
ゲスト:鈴木daichi秀行氏
Spectrasonics製品はサンプリングCD時代から使っていたという鈴木氏。今はもちろん現行4製品全てを使っているということ。その中でも最も長く使っているStylus RMXに関しては「10年間とても多用しました。あらゆる音を使ったので、今は隠し味として使っている。」と思い出を込めて語ってくれました。
このセミナーでは鈴木氏が実際に仕事で使ったセッションファイルを持ちこんで、それを見ながらSpectrasonics製品をどう使っているのかが披露されました。プロクリエイターのセッションファイルの中身となるとそう簡単には見ることができないお宝。その貴重な体験に参加者は目と耳が釘付けになっていました。
つい先日レコーディングが終わったばかりだというセッションファイル。赤く色がついたトラックがSpectrasonics製品が使われているところ。鈴木氏にとっては欠かせない音源だということがお分かりでしょう。
「モダンなバンド物だとピアノ1本では抜けてこない。そこでOmnisphere2のJDピアノを重ねる」
「Spectrasonics製品はキラキラ感が良いのでポップスには向いている。」
「今はアニソンも音が派手な傾向なのでシンセもそれに負けないパワフルさが必要である」
など音源の使いこなしから仕事の現場感がこもった音源の選び方など数多くのノウハウが公開されていきます。
ほかのソフト音源とSpectrasonics製品の違いについて「ソフトシンセでいうと、単体で聴くとかっこよく聴こえてもオケに入れると使いにくいものが多い。でもSpectrasonics製品は音がハードシンセに近く、オケに入れると馴染みよく綺麗に使える。」と語ってくれました。
この後、Spectrasonics製品が当たるジャンケン大会(!)や、アルコールと軽食を楽しみながらの懇談会なども用意され、今宵はSpectrasonicsプロダクトを中心に、ユーザーとクリエイターが一つになったイベントとなりました。
制作現場の必携音源と言われるSpectrasonics製品。ぜひあなたも作品の中で使ってみてください。
記事内に掲載されている価格は 2017年9月29日 時点での価格となります。
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