
1980年代、カシオからたくさんのシンセサイザーが発売されていたことをご存知ですか?そのサウンドはとても個性的で、80年代的な明るさと勢いがあります。いまでも日本だけでなく世界中にカシオシンセのファンがいて、私、IBEもその一人です。
これまでにも、世界中のメーカーからカシオシンセを再現したクローンやサンプル音源が数多く登場してきました。そんな中、ついに歴史的な出来事が起こりました。
UVIが、DAW史上初となる「カシオ公認」のお墨付きを取得したのです!
2026年5月に発売された新製品「Vintage CASIO Legacy」をはじめ、これまでにリリースされてきたUVIのカシオ関連製品も、正式にカシオ公認となりました。
下記のUVI製品にはカシオシンセサイザーや、レトロなカシオトーンのサウンドが多数収められています。
【新製品】Vintage CASIO Legacy
CZ、FZ、VZ、HZ、RZのほか、CTK-1000を初収録
CAMEO
CZシンセを収録
Hybrid 6000
SD音源HT-6000を収録
【新製品】Synth Anthology 5
CT S1000V、HT-6000、CZ-1、FZ-1、HZ-600、VZ-1、VZ-8m、CK-500、KX-101、PT-7、SA-2、VL-1 、VL-5 を収録
BeatBox Anthology 2
リズム&サンプルマシンRZ-1を収録
Toy Suite
CK-200、CK-500、KX-101、MT-18、PT-50、PT-7を収録
ということで今回は、Vintage CASIO Legacyのレビューをお届けします。Vintage CASIO Legacy発売にあたり、UVIの創業者であるAlain Etchart(アラン・エシャール)さんからコメントを頂きました!

Vintage CASIO Legacyは、独自の個性を持つシンセサイザー5種類とリズムマシンを収録。
今回の目玉のひとつがCTK-1000の収録で初登場になります。それ以外の機種については、UVIの既存製品にも収録されていたものが含まれています。しかし今回は単なる再収録ではありません。新たな音色の追加や再サンプリングに加え、コーラスエフェクトを含めた状態でサンプリングを行うなど、ライブラリ全体が大幅にブラッシュアップされています。さらに、プリセット音色の制作にはカシオも監修として参加しており、公認製品ならではのこだわりが随所に盛り込まれているのです。
まずはデモトラックを作成!
私が20年前にカシオシンセの実機だけで制作した楽曲を、Vintage CASIO Legacyの音色でリアレンジしてみました。ボコーダー以外のすべてのサウンドを、Vintage CASIO Legacyで鳴らしています。(原曲はこちら)
とてもパワフルな、お気に入りの仕上がりになりました。しかも信じられない短時間で。。。Vintage CASIO Legacyを使って感じたことを次に挙げていきます。
濃密なサウンド

実際に使ってみて最初に感じたのは、音の芯がしっかりしていて、とても密度感のあるサウンドだということです。例えるなら、水彩画ではなく油絵のように、一音一音を厚みのある質感で描いていけます。
Vintage CASIO Legacyは、シンセサイザーをソフトウェアで再現したモデリング音源ではなく、実機のハードウェアシンセサイザーから出力されたオーディオ信号をそのままサンプリングした音源です。そのため、アナログならではの無限ともいえる解像感に加え、回路ノイズや質感までも収録されており、情報量の多い濃密なサウンドが得られます。そのおかげで、リバーブやディレイなどのエフェクトの乗りがとても良いです。
アタックに電気のパッションが!
音の立ち上がりにも、実機ならではの特徴がしっかりとキャプチャされています。モデリングシンセではアタックが「プチプチ」と細く感じられることがありますが、Vintage CASIO Legacyは違います。音が出る瞬間に「バチッ」と、電気が走るような勢いと圧力感があります。特にシンセベースでその威力を実感しました。
実機ならではの位相特性

シンセサウンドを作り込む際、複数の音色をレイヤーして厚みを出すことはよくあります。今回、特に印象的だったのは、音色を何層に重ねても位相の問題をほとんど感じなかったことです。単純に音量だけが大きくなって存在感が増えなかったり、フランジングのようなウネりが生じたり、逆相の影響で音が細くなってしまう、といった問題を感じることはありませんでした。これも、実機の位相特性が忠実に収録されているからこその恩恵なのではないでしょうか。
カシオ3相コーラスが気持ち良い
カシオシンセを語るうえで欠かせないのが、独特の広がりを生み出す「3相コーラス」です。2基のLFOによるこのコーラスは、CZ-3000、CZ-5000、CZ-1に搭載され、HZ-600では3種類のコーラスプリセットとして用意されていました。
Vintage CASIO Legacyでは、この芳醇な3相コーラスサウンドまで含めて丁寧にサンプリングされています。HZ-600はコーラスOFFに加え、3種類のコーラスプリセットそれぞれを個別に収録。さらに、すでに「CAMEO」として発売されていたCZシリーズについても、今回は3相コーラスをかけた状態で改めてサンプリングされています。CZのコーラススライダーの設定に関しては音色ごとに、UVIが最適な値を判断して収録したとのこと。3相コーラスが生み出す広がりと奥行きは格別で、実機の魅力をあらためて実感できました。
PCMによるユニークな彩り

PCM音源を搭載したCTKが収録されたことで、シンセ波形だけでは表現できない、より幅広いサウンドを使えるようになりました。生楽器やパーカッション、効果音などを楽曲のアクセントとして取り入れられるため、アレンジの自由度が大きく広がります。もちろん、リアルな楽器を追求したPCM音源とは方向性が異なります。しかし、そのどこか懐かしく、カシオらしい独特の質感こそが大きな魅力です。ほかの音源ではなかなか味わえない個性があり、楽曲にユニークな彩りを加えてくれます。
短時間で「音が決まる」
今回のデモ曲は、自分でも驚くほど短時間で完成しました。その理由を振り返ってみると、Vintage CASIO Legacyのサウンドクオリティの高さが大きかったように思います。最終的な構成は、ドラム、ベース、アルペジオ、リード、ボコーダーのわずか5パート。これだけで十分な存在感のあるサウンドに仕上がりました。
音源の音が細いと、パッドを重ねたり、シーケンスやコード刻みを追加したりと、つい音数を増やして厚みを補いたくなるものです。しかしVintage CASIO Legacyは、一音一音にしっかりとした存在感があるため、少ないパート数でもトラックが成立していきます。結果としてアレンジがシンプルになり、各パートの役割も明確になります。これはミックスのしやすさにもつながり、最終的なクオリティアップにも大きく貢献してくれると感じました。

Vintage CASIO Legacyには、収録されたすべての音源を自由に組み合わせられる「マルチモード」が搭載されています。RZドラムエンジンと4つの独立したシンセスロットを統合し、単体の機種では実現できない重厚なレイヤーやグルーブを自在に構築できます。
実際にマルチモードのプリセットを聴いて、真っ先に思い浮かんだのが「これぞ、究極のカシオサウンド!」でした。
80年代のカシオ製シンセサイザーを一堂に集め、もし現代の技術で復刻させたら、きっとこんなサウンドになるのではないでしょうか。当時では夢物語だった組み合わせが、今ではひとつのソフトウェア音源としてパソコンの中で実現している、そんな驚きと感動があります。
今回、その魅力を少しでもお伝えしたくて試聴音源を制作しました。ぜひ、Vintage CASIO Legacyが生み出す"究極のカシオサウンド"を体感してみてください。
2004年、私はカシオのキーボードを夢中になって買い集めていました。気が付けば部屋は機材で埋め尽くされ、機材を収納した衣装ケース20箱の上に布団を敷いて寝る生活。そのほかにも音楽機材が山積みだったため、制作を始める前に毎日のように機材を移動させる必要があり、その負担から足のかかとを痛めてしまいました。それを機に、大切にしていた機材のほとんどを手放すことを決意しました。(かつての私のカシオコレクションはこちらで公開しています)
あれから20年。振り返ってみると、私はずっと「カシオ公認のソフトウェア音源」が登場する日を待ち続けていたのかもしれません。CZ-101はいつかまた手に入れたいシンセサイザーですが、Vintage CASIO Legacyがあれば、カシオシンセへの想いは満たされる。そんな気持ちになりました。

Vintage CASIO Legacyは、カシオシンセファンにとっては間違いなく必携のコレクションといえるでしょう。しかし、その魅力はノスタルジーだけではありません。作曲やアレンジ、ミックスといった現代の音楽制作においても、非常に実用性の高いソフトウェア音源です。
モデリング音源では再現が難しい情報量の多さと、心地よい雑味を含んだサウンドは、音像に明確な定位感をもたらします。その定位感がミックスの土台となり、トラック全体に自然な立体感を与えてくれるのも大きな魅力です。そのため、少ないトラック数で存在感のある楽曲を構築したい方にも、自信を持っておすすめできるソフトウェア音源です。
さらに、マルチモードを演奏しているとかつてのカシオトーンのように、思いがけないメロディやアレンジのアイデアが次々と湧いてきます。音源が演奏者を刺激して新しい楽曲へと導いてくれる、そんな感覚を久しぶりに味わいました。もしかすると、この音源から次世代のSynthwaveサウンドが生まれる日が来るかもしれません。
Vintage CASIO Legacyは、単なる復刻音源ではなく、カシオへの敬意と情熱、そして未来の音楽への可能性が詰まった、シンセサイザー愛あふれるソフトウェア音源でした。
Writer:IBE
こちらの製品にバンドルされています。43製品バンドルで超お買い得です。
記事内に掲載されている価格は 2026年7月7日 時点での価格となります。
最新記事ピックアップ