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Neumannというとコンデンサーマイクの印象が強いですが、3ウェイ・パワードニアフィールドモニタースピーカーKH 310が発売されてから、プロフェッショナルのエンジニアを中心にスタジオ業務に愛用するユーザーが増えています。
KH 310よりコンパクトなサイズのモニタースピーカーKH 80 DSPにはその名の通りDSPが内蔵され、自動補正システムMA 1,Neumann.Controlと組み合わせることでフラットな音響特性に補正が可能ということで、スタジオのみならず自宅スタジオでも導入する方が増えています。
そんなKHシリーズを愛用しているという音響ハウスのレコーディングエンジニア・櫻井 繁郎氏に、その魅力について伺いました。
(インタビューにはNeumannをグループ企業に持つSennheiserの日本法人、ゼンハイザージャパン真野 寛太氏にも同席して頂きました)
モニタースピーカーに求める条件とは
Rock oN : 櫻井さんがミックスの際に、モニタースピーカーに求める条件は何ですか?
櫻井 繁郎 氏:バランスと解像度ですね。バランスは左右のバランスとか、高域から低域まできちんと再生できているかがポイントになります。低域はきちんと出つつも高域が出過ぎると仕上がりが大人しくなってしまうので、ちょうどいいバランスで出てくるスピーカーが理想です。
解像度はリファレンス音源を聴いて、空気間の粒立ちやリバーブでの奥行き感まで把握できるスピーカーを選ぶようにしています。
Rock oN : 参考までに、Neumann製品導入以前に使っていたニアフィールドモニタースピーカーは何ですか?
櫻井 繁郎 氏:YAMAHA NS-10MとかDYNAUDIO BM6とかでした。かなり前の機種ですけど、今でもBM6は音響ハウスでも使っています。NS-10Mを多くのエンジニアが使っていたのは、それに耳が慣れていたっていうのもあるんじゃないですかね。最近だとATCのモニタースピーカーが流行っていますね。
KH 310のファーストインプレッション
●ポイントは低音と保護回路
Rock oN : Neumann製品のモニタースピーカーを導入した経緯をお聞かせください。
櫻井 繁郎 氏:きっかけとしてはSennheiserさんからデモ機をお借りしたのが最初ですね。
Sennheiser 真野 氏:実は数年前に、発売したばかりのNeumann KH 80 DSPと共にKH 310のデモ機をお貸ししたのがきっかけです。Neumannというとマイクロフォンの印象が強いのですが、ぜひモニタースピーカーの認知度を上げたいと思い、現役で活躍されているエンジニアの方に試しに使ってみてほしいとお願いした次第です。
櫻井 繁郎 氏:試しに使ってみたら、最初は割と低音が出るスピーカーだなという印象だったのですが(笑)その後背面のディップスウィッチを切り替えることでローを抑えられることを知り、それで徐々にKH 310の良さがわかって、今ではすっかり定着してきた感じです。
真野 氏:セッティングがフラットな状態というのは反射のない無響室の状態での使用を想定していますので、ミキサー卓などで反射が想定されるレコーディングスタジオでは、背面にあるAcoustical ControlsのBASSもしくはLOW-MIDを1か2下げるくらいでちょうどいいバランスになるんです。
Rock oN:なるほど。それで最初のフラットなセッティングでは低音が強く出ていたんですね。
櫻井 繁郎 氏:あとKH 310の良いところは過大入力が大きくても大丈夫なので、レコーディングの際にも大変重宝します。よく録音などでサックスなんかの音が大きくてモニタースピーカーが飛んだりすることがあるんですけど、KH 310は一度も壊れないんですよ。マイクをセッティングしている状態でドアの開閉音とかが原因でモニタースピーカーが飛んだりすることもありますから、丈夫なモニタースピーカーというのは有り難い存在です。
真野 氏:KHシリーズには保護回路が入っていて、入力に一定の音圧があるとスピーカーの前面にあるエンブレムのランプが赤く光るようになっているんです。
Rock oN:それならレコーディングの際も安心ですね。
KHシリーズの魅力とは
●KH 310
Rock oN:それぞれの製品のサウンドの印象をお聞かせください。まずKH 310についてはどうでしょうか?
櫻井 繁郎 氏:先ほどの話にも出ましたが、KH 310は大変低音が豊かだということが大きなポイントなんですね。逆に低音が出過ぎないようにうまく調整することで、解像度の高いバランスの取れた再生をしてくれるモニタースピーカーです。
音の解像度が高いことでEQをかけた時にもその効果がわかりやすいですし、マイク位置の位相やミックスの際の定位もわかりやすい。ボーカルの聞こえ方音にしても空気感がわかりやすいので、リバーブ処理の時がとても楽ですね。
●KH 80 DSP
Rock oN : それではKH 80 DSPについてはどうでしょうか?
櫻井 繁郎 氏:KH 80 DSPにはDSPが搭載されていて、スタジオや部屋に合わせて調整して使えるのがいいですね。このサイズにしてはきちんと低音が出るので、歌とのバランスもとりやすいです。この音に慣れると録音だけでなくミックスなどにも幅広く何にでも使える気がします。
●KH 310とKH 80 DSPの性能の違いは
Rock oN : KH 310とKH 80 DSPの性能の違いを感じますか?
櫻井 繁郎 氏:パワー的にはKH 310の方が上なんでしょうけど、正直サウンドの違いはあまり感じません。以前KH 310、KH 120、KH 80 DSPと3機種で聞き比べをしたこともあるんですが、同じNeumann製ということなのか、サウンドの芯は同じという印象ですね。逆にKH 80 DSPはこの大きさでこれだけ低音が出るのかと驚いたくらいです。サブウーファー無しでも全然大丈夫です。
Rock oN :それではKH 310とKH 80 DSP、どんな使い分けをされていますか?
櫻井 繁郎 氏:例えば外部で比較的小さめのスタジオに呼ばれた際に、スペースの都合でKH 310が置けないところには、KH 80 DSPを持っていって使ったりもします。あまり大きな音量が出せない現場でも使えますし、KH 80 DSPも保護回路がついているので録音の際にも安心して使えるということで重宝しています。
Rock oN :KH 310は密閉型、KH 80 DSPはバスレフ型ですけど、その点について何か気になるところはありますか?密閉型だと低音の立ち上がりが気になるという方もいますけど。
櫻井 繁郎 氏:ツイーターとウーファーのバランスがいいのか、そこはあまり気にならないですね。昔バスレフ型で低音が気になった機種もあったんですけど。
おすすめしたいユーザーは
Rock oN :それではこちらのモニタースピーカーは、どんなユーザーにすすめたいですか?
櫻井 繁郎 氏:KH 310については意外と全ジャンルいけるんじゃないかなと思います。ダンスミュージック系など低音のチェックが重要になってくる音楽とかにはもちろんですが、解像度が高いのでオーケストラ録音などをされる方にもおすすめかなと思います。私も実際に劇伴などの大編成録音ではKH 310を使うことが多いです。
Rock oN:KH 80 DSPについてはどういった方におすすめでしょうか?
櫻井 繁郎 氏:小さい音量でもしっかり低音が出ますので、個人の方で自宅スタジオで大きな音で鳴らせない方にはおすすめですね。自動補正システムのMA 1と合わせて使えば、きちんと部屋やスタジオの音響補正もできますし。最近は最後のミックスまで自宅で作らなきゃいけない作家の方も多いですから。
真野 氏:最近ではゲーム系の作曲家の方で導入される方も多いですね。
櫻井 繁郎 氏:ゲーム音楽の方が音の密度が濃いので、分離がわかるモニタースピーカーの方がいいんじゃないですかね。ゲームだと低音が強いSEが入ってくる楽曲があったりもするので、そういう音圧に耐えられる強いモニタースピーカーが適しているかなとも思うので。
メーカーHP
NEUMANN
https://ja-jp.neumann.com/
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