NAMM2019開幕が明日に迫る1/24に、モジュラーシンセカルチャーのメッカである名ショップ「ANALOGUE HAVEN」に行ってきました!海沿いの街サンタモニカのブロードウェイ通りにある同店の外観はシックなグレーで統一されており、番地である1311という表示以外何も看板が出ていません。また入口には鉄格子の門があるということもあり、カルチャーの最深部という趣があります。店内は大きく分けて二つのスペースがあり、入口がある方のスペースはカウンターとUSED、そして大きなストックルームになっています。そしてもう一つのスペースがデモルームと呼ばれるスペースで、ここで膨大なモジュールを試すことができます。基本的に接客はスタッフが一対一で行うため、教えて欲しいモジュールがある場合は事前にアポを入れておくと良いでしょう。ちょうどこの日は人気のランダムCV・ゲートジュネレーターのMutable Instruments Marblesのデモが行われていました。さてそれではANALOGUE HAVENスタッフのSkyler Kingさんに色々お話を聞いてみましょう。
Skylerさんのシンセサイザーとの出会いやここで働くことになったきっかけを教えて下さい。
私は子供の頃からギターやドラムを演奏していました。私の家族は音楽一家で、私の父、祖父、そして従兄弟が皆楽器を演奏します。父や父の友人達と共にホームパーティーや野外でのキャンプファイヤーなどいろいろな場所で演奏していました。そして少し大人になってから家にRolandの古いJUNOとJX-3Pがあるのを発見しました。父が使っていたものですが使わなくなったからとその二つを貰うことができました。
これまで演奏していたギターやドラムでは出せないファニーな音やスペーシーな音にすぐに夢中になりました。これが私がエレクトロニックミュージックに向かっていくキッカケとなりました。そこからいろいろな機材を自分で探し始めました。その後おそらく自分の最初のリズムマシンだったと思いますがRoland TR-707を手に入れ、さらにRoland SH-101を買い足し、エレクトロニックなサウンドでひたすら実験を繰り返していました。
そして機材をサーチして行く中でユーロラックの存在を知りました。その頃は予算もなかったのであれこれ躊躇していましたが、21歳で最初にDOEPFERのLOW COST CASEを買いました。それから三ヶ月間は空のケースだけ持っている状態でした(笑)。その後少ない2~3個のモジュールを手に入れて、その次の年にさらにもう2~3個買い足し、その次の月にまたちょっとという形で手に入れる頻度が増えていき、モジュラーミュージックにのめり込んでいくようになりました。
ANALOGUE HAVENにはもともと客として3年間ほど通い詰めていましたが、ある時スタッフをやらないかとオファーをもらいました。初めはミュージックショップで働くことは考えていませんでしたが、今はこの仕事が本当に大好きです。勤めて4年になりますが、システム構築のアドバイスから、デモやレクチャー、コンテンツの作成、そしてイベントなどと幅広く手がけています。お客さんがモジュラーを楽しんでいる様子を見るのが好きなんです。
以前Eric Cheslakという同僚がいて、彼はModuar On The Spotという野外でモジュラーシンセをイベントを企画した人物なんですが、彼と一緒にそこでよく演奏もしました。今日お客さんで来ているPatrickもよく遊びに来ます。モジュラーでの演奏を誰でもフリーでリラックスして見ることができる、コミュニティにとって非常に良いイベントです。日本のアーティストの瀬川英史さんも常連ですよ。そんな感じで日々楽しく仕事をしています。
Skylerさんのオススメのモジュール5個とその理由を教えて下さい。
NO.1:Mutable Instruments Rings
一番は何と言ってもこれです。オールタイムフェイバリットです。私のライブショーでも必ず使っています。ストリングサウンドがとても美しく、アンビエント系のテクスチャーサウンドにパーフェクトです。特に二つ使って生み出されるメロディーやハーモニーの美しさは他のモジュールでは代用できません。私は同じモジュールを二つ買うことは無いのですが、これだけは3個持っています!
NO.2:Mutable Instruments Marbles
これは比較的最近発売されたモジュールですが、前述のRingsとのコンボは正に最高です。Marblesはランダムジェネレーターですが、ランダムCVを指定したスケール内で出力できるので音楽的なフレーズを沢山生み出すことができます。X1とX2を二つのRingsに送って演奏するのが非常に楽しいですよ。
NO.3:Zetaohm FLXS1
これはサンフランシスコのメーカーです。4トラック×64ステップのシーケンサーです。これもライブの時に必ず使います。全てのトラックがそれぞれモジュレーションを掛け合うことができます。ステップ毎にLFO、ランダムソース、エンベロープを設定できます。またアルペジエイターも個別に設定でき例えば、スピード、方向性(ディレクション)、オクターブ、スケールなどなど自在に設定可能で、もちろんこれらの設定を保存する事もできます。またプレビューモードも備わっているので、それぞれの設定も事前に確認出来るのも便利です。
NO.4:Make Noise Morphagene
これも絶対使います。テクスチャーサウンド作りにもってこいのテープループのエミュレーションモジュールです。2分半をレコードして使うもよし、もうちょっと短めのセクションにして、トリガーするもよし。
モーフノブを使って、サンプルを互いに重ねて演奏するグラニュラーサンプラー的な使い方や、特にスプライスを使ったポリフォニックなコードエクスプレッションが秀逸です。たとえばパソコンからSDカードw使ってコードのプログレッションをここのモジュールに入れて、スプライスモードに。これはテープを物理的にぶった切って、それぞれのコードが細切れになっているが、スプライスされた物をシークエンスにかける事が出来ます。
NO.5:Steady State Fate GateStorm
ゲートシーケンサーです。CVによるモジュレーションのフレキシビリティが群を抜いており、レングス、ステップ、ダイレクション、アウトプットのローテーションなどあらゆる個別のパラーメータをCVでコントロールすることが出来ます。またロジックも優れていて、パターン同士の掛け合わせで新しい複雑なパターンを生成することが出来ます。大きなディスプレイが付いているモジュールを難しそうだと敬遠する人が多いですが、大きくて表示する情報が多いのが全て見れるので使いやすいですよ。
Skylerさんが次に欲しいモジュールを教えて下さい。
そうですね、Strymon MAGNETOを手に入れたばかりですが、今欲しいのはEndorphin Shuttle Systemです。今はMIDI-CVコンバータのShuttle Controlだけ持っているんですが、本当に素晴らしいです。コンパクトなシステムが欲しいとずっと考えていてShuttle Systemは完璧です。
西海岸シンセカルチャーの面白い点を教えて下さい。
関わっている人たちは皆飲みにいくような友達です。そこに初めての人がどんどん入って来てコミュニティが形成されていくのが面白いです。私たちはModular On The Spotに新しい人がどんどん参加してプレイして欲しいと思っています。私を含めてシャイな人が多いと思いますが、Modular On The Spotでは誰かが誰かのプレイをジャッジするなんてことはありません。ただ楽しんで聴くだけです。失敗を恐れず是非チャレンジして欲しいですね。
日本でモジュラーシンセを始めようとしている人にメッセージをください。
私も初めは怖かったですね。どうやって使うか分からなかったし。何事にも言えることですがとにかく練習あるのみだと思います。そしてそれを実行する上で重要なのがオープンマインドでいることです。モジュラーシンセには正解も間違いもありません。ルールが無いんです。面白いサウンドは全て実験から生まれます。オシレーターからフィルター、VCAと繋ぐ必要はないんです。オシレーターから他のオシレーターに繋いでも良いんです。これをしなきゃいけないというルールに従って作ったサウンドはあなたが求めていたサウンドではないでしょう。普通のやり方では面白い音は出ないんです。ということで私からのメッセージは「ルールに従うな」ですね。
非常に素晴らしいカルチャーに寄り添ったANALOGUE HAVEN、サンタモニカにお立ち寄りの際は是非一度足を運んで見てください。素晴らしいモジュールと出会えることでしょう。
Skyler KingさんのInstagramもナイスです!是非チェックを!
Instagram – kitty spit
ベニスビーチも素敵でした。
Writer:Shibuya
記事内に掲載されている価格は 2019年1月24日 時点での価格となります。
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