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先日、日本工学院専門学校蒲田校にてゼンハイザージャパン主催で、エンジニア古賀健一氏と長谷川巧氏を招いて「Dolby Atmos ワークフローセミナー ~ Netflixコンテンツの制作フローを通じて学ぶ、最新のイマーシブオーディオ技術 ~」と題したセミナーが開催されました。
会場となった場所は日本工学院専門学校内に設立されたNeumannのパートナースタジオで、KHシリーズスピーカーによるDolby Atmosのシステムが構築されたばかりということで、Rock oNの記事でもご紹介させて頂いたところになります。
★参考記事
日本工学院専門学校に、Neumannパートナースタジオ設置!
〜KHシリーズによる、Dolby Atmosシステム導入秘話〜
本セミナーではNetflixシリーズ「Tokyo Override」 の制作フローを題材に、業界トップエンジニアが最新のミキシングワークフローを解説するということで、会場には最先端のイマーシブサウンドの構築メソッドを理解しようと大勢のエンジニアやクリエイター、コンポーザーの方々が詰めかけました。
そのイベントの模様をご紹介します。
「Tokyo Override」 のセッションを題材に、Dolby Atmosミキシングのワークフローを解説
まず今回のスタジオのモニターやルーティングのシステムを紹介。KHシリーズのモニターの7.1.4chシステムで組まれ、NeumannのオーディオインターフェイスMT 48で制御。その上で測定用マイクMA 1で、環境に最適なDSP補正によるモニターアライメントを実施。
「マイクは芸術的表現の一部でクリエイターが音を創造するための一部。それに対してモニタースピーカーは「電気信号の客観的測定値であるべきで、適切なリスニングポジションで正確なサウンドを測定するための道具」というNeumannのポリシーに基づいて作られているということでした。
そして古賀氏と長谷川氏が劇伴音楽と主題歌のDolby AtmosMixを手がけたNetflixのアニメーション作品「Tokyo Override」第1話の冒頭が流れました。100年後の近未来の東京を描いた近未来的な世界観を持つ作品で、3分ほどの間に5、6曲が流れるという豪華な冒頭シーンが迫力あるSEの効果とともに流れると、会場の優れた再生環境と相まって一気に臨場感と緊張感が高まりました。
ここからは会場のスクリーンにProToolsの画面でトラックの構成を見ながらワークフローを解説。
長谷川氏 : 音楽はProtoolsの9.1.6chトラックの固定オブジェクト。最終的に4ステム(64ch)に分けて納品しました。
音は動かしたりもしていますが、オブジェクトは一切動いていないデータです。
古賀氏 : これは最終的に効果(SE)やダイアログ(台詞)などと合わせる映像の方のミキサーさんの作業効率を上げるためにですね。かといってクオリティーが落ちてる訳ではありません。
どちらの音源がブタペストでレコーディング・・?
そして第一部の終わりには2人から簡単なABテストが。
古賀氏 : 今回3話までの弦楽器パートをハンガリーのブタペストでレコーディングされ、残りの4〜6話で使用される足りないパートは日本のアバコスタジオで録音しました。海外レコーディングした演奏をミックスできる貴重な機会に恵まれて、日本でのレコーディングも海外に引けを取らないように工夫しました。映像はOFFにして音だけ流しますので、どちらがブタペストで日本でレコーディングされた演奏でしょうか?
ということで流麗な弦楽器演奏による音源が会場に流れました。(正解は前半が日本で、後半がブタペスト)どちらも素晴らしい演奏とミックスで、参加者も予想しづらくほぼ半々に分かれるという結果に古賀氏も長谷川氏も喜びの様子でした。
Dolby Atmosレコーディング裏話
ここからはアバコスタジオでの「Tokyo Override」Dolby Atmos対応の劇伴レコーディングについての解説が。
古賀氏 : オンマイクは、Neumann U67やU87なんですが、これはお世辞ではなく私はU 89というマイクがすごい好きで、青葉台スタジオには2本あったのでよく使ってました。ラージダイアフラムに見せかけたスモールダイアフラムのマイクで、音が弦に合うので好きなんです。
古賀氏 : (Dolby Atmosシステムのために)レコーディングするときはマイクは本数を(多く)立てておいた方がいいですよね。そしてこれをやる時に1人では無理なんですよ。細かいマイクの位置を監視してレベルを取り、譜面をめくり、進行をアシスタントに指示するというのはかなり大変なので、2人いるとどちらかをカバーできるのですごくいいんですよね。前に360 Reality Audioのレコーディングをやった時は3人でやりましたし、この間もDolby Atmosレコーディング用のマイクを立てるだけにレコーディング現場に行ったりしました。だから今回長谷川さんがいてくれてすごくありがたかったです。
最後の締めの挨拶では、
古賀氏 : すごいいいサウンドチームが今回の『Tokyo Override』ではできたかなと思いますし、音楽エンジニアのコラボができているのも、僕としてもDolby Atmosの新しい可能性の一つかなと感じています。実際こんなに長い時間馴れ馴れしく長谷川さんと喋ってますけど、超先輩ですから(笑)
長谷川氏 : Dolby Atmosは始めてみたら絶対に楽しいし、やりたいことがいっぱいあるので、ぜひ世に広まっていけたらいいと思いますので、今後ともよろしくお願いします!
古賀氏と長谷川氏とのやり取りも軽妙で、現場での経験を踏まえた数々のレコーディングエピソードも面白く、参加者は熱心にお二人の解説を聞き入ってました。
大勢の来場者が、Dolby Atmos試聴体験や懇親会にも参加
当日はメインの会場では入りきらず隣のブースまで入るほど大勢の来場者が集まり、Dolby Atmosミックスの関心の高さを感じました。
セミナー終了後もKHスピーカーによるDolby Atmosシステムで音源を視聴したり、別会場で開催された懇親会で古賀氏や長谷川氏と参加者が交流したりと、終始和やかな雰囲気のセミナーだったのが印象的でした。
今後も日本工学院専門学校のNeumannパートナースタジオでは、様々なイベントの開催が予定されていますので、気になる方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
★Netflixシリーズ「Tokyo Override」独占配信中!
★次回予告
Dolby Atmos 実践で体感!Neumannで学ぶイマーシブMIXスタートアップ講座
Rock oNのイマーシブ講座でおなじみ、バウンス清水が講師を務めたセミナーの模様をお届けします!
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記事内に掲載されている価格は 2025年6月16日 時点での価格となります。
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