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今年発売され、待望の6.5インチウーファー搭載モデルで、DSPコントロールによる2ウェイパワードモニターとして大いに話題となったNeumann2ウェイパワードモニターKH 150。
多くのエンジニアやアーティストに愛用されているこのモデルを、今回は日本の代表的ゲームメーカーであるカプコンのサウンドプロダクションチームに所属するエンジニアに、音の印象や使い勝手などを伺いました。
世界に誇るゲームサウンドを手掛けるプロダクションチームの方々に、KH 150はどのように感想を持ったのでしょうか。
●エンジニア紹介
ゲーム制作の現場で、求められるスピーカー
Rock oN : こちらではどのような体制で制作をされていますか?
カプコン 岸 氏(以下、岸 氏) : 我々のサウンドプロダクション室は、楽曲から効果音までゲームサウンド全部を作っています。あらゆるゲームプラットフォームに対して、ゲームサウンドは全てそれぞれの端末にふさわしいサウンドプロダクションを手がけています。カプコンで制作している数多くのタイトルに100名を超すサウンドスタッフがそれぞれ参加して開発・制作を行っており、私は主に組織マネジメントを担当しています。
カプコン 武井 氏(以下、武井 氏) : サウンドプロダクション室の中でも私は3人しかいない「ゲームオーディオミキサー」としてゲーム開発に携わっています。ゲーム中のムービーシーンやプロモーションビデオ(以下、PV)のミックスを担当しつつ、現在はゲーム全体のミックスを行っています。
Rock oN : 普段のサウンドプロダクションではどのようなスピーカーをお使いですか?
武井 氏 : 各サウンドクリエイターの自席ではGENELEC(8010+7040)を使用しています。サラウンドでも作業をしているため、他の席との距離も近くてあまり大きな音は鳴らせないんです。そんな理由もあって大きすぎずサイズ感がぴったりで、かつ音もしっかりと鳴ってくれるスピーカーを選びました。
自分が作業するスタジオは3部屋あるのですが、全て違うスピーカーで構成しています。一番大きい「DubbingStage」ではPMC、「DynamicMixingStage-GOLD」ではGENELEC、「DynamicMixingStage-SILVER」ではKS Digitalです。どの部屋でもミックスイメージが変わらないよう設計、調整を行ってもらいました。音色の好みもありますけど、ジャンルや作品によってスタジオを使い分けるようなことはありません。
Rock oN : 制作作業に際して、モニタースピーカーに求めるものは何ですか?
武井 氏 : まず音の微細な変化がわかることや音色的なエラーがわかることが重要と思っています。その上で自分が思い描くミックスイメージ、ダイナミクスが表現できるスピーカーが使いたいなと。さらに言うと、ゲームでは色々なジャンルの音楽や効果音、ダイアログなど多彩な音源を取り扱います。その音源達がプレイ次第で自由に動くので、音源の移動がしっかり見えるスピーカーが良いですね。
KH 150を導入した理由
Rock oN : 今回、Neumann KH 150を導入した経緯はどういったものだったのでしょう?
武井 氏 : まず最初はKH 80 DSPを試して、それからKH 150を聴かせていただきました。初めて聞いた印象としては、どちらもスピーカーとしてのポテンシャルといいますか、性能の高さを感じましたね。何も特別なことはしてないのにしっかり音が出てくるな、という印象でした。
岸 氏:最初、社内の防音ブースのようなあまり音響特性の良くない部屋に置いて色々なジャンルの曲を聴いたんですけど、リスニング用としても普通に音楽を楽しめるスピーカーでしたね。
武井 氏 : そうですね、KH 150は本当にいろんな音楽を幅広く聴いてみたいと思えました。初めはMA 1でアライメントせずに、角度と距離だけを取ったのですが、それでもこんなによく鳴るのか!と驚いたのが率直な感想でした。その後、MA 1を使って調整した後のKH 150を聞いてみたところ、ローエンドもしっかりと鳴ってくれますし、もともと部屋に設置してあるセンタースピーカーから聴こえてるくらい、ファンタムの定位がしっかりと感じられましたね。このスピーカーなら音楽、効果音などジャンルを問わずに使えそう、ということで、現在は弊社の調整部屋である「DynamicMixingRoom-BLACK」にKH 150を設置しています。
Rock oN : ゲームだと効果音が迫力あったりしますけど、大きな音が鳴った時に、Neumannマーク部分に(警告表示として)赤いランプがつくことはありますか?
武井 氏 : 私が作業している限りKH 150ではないですね。85dBSPLで鳴らしているんですが、まだまだ余裕があるなって感じです。
KH 150の音の印象
Rock oN : KH 150の音についてはどんな印象でしょうか?
武井 氏 : MA 1ありとなしで聴き比べたのですが、MA 1を使った方がより部屋に合った音になって、補正前よりも精度の高いサウンドになった印象ですね。
岸 氏 : MA 1の補正を使わなくてもしっかり鳴っていたんですけど、MA 1を使った後だとよりリバーブの精度が高くなった感じです。
Rock oN : サブウーファーを使ってみたいという感じはありませんでしたか?
武井 氏 : ベースマネージメントがあるシステムと聞き比べましたが、無くても申し分ないくらいの低音再生能力を持っている印象ですね。マルチチャンネルの場合は必要になると思いますが、音楽でのステレオミックス作業では無くても問題ないように感じました。低音もしっかり鳴りつつ、それでいてモタつくこともないタイトな低音感で、結構自分好みの音だと思いました。
Rock oN : 他に使ってみて気づいたことはありますか?
武井 氏 : ファンタム定位が良いので、ダイアログをミックスしている時も迷いがなくて使いやすいと感じました。あと、PVなどでテロップが出る時のロー寄りのFXサウンドでも低音のスケール感がわかりますし、低音がタイトに鳴ってくれるおかげで困ることもなかったです。すこし出音が柔らかいかも、と思ったのですが、弊社のゲームサウンドを聴いてみるとKH 150は繊細な音の再現も得意なように感じました。
カプコンのゲームはアクションやホラーが多く、それに合ったアタック感やインパクトが強いサウンドが主体となるため、音の反応が速いスピーカーを選びがちなのですが、KH 150はツイーターとウーファーのバランスが綺麗で音像がしっかりと見える上品なスピーカーだと思います。
岸 氏 : ゲームだとオーケストラとか民族音楽とかを組み合わせて作るような楽曲も多いので、そういうものには最適だと思います。
こんなユーザーにおすすめ!
Rock oN : 最後にKH 150をどんなユーザーにおすすめしますか?
岸 氏 : モニタースピーカー選びは本当に大変で、実際にいろいろと聴き比べて最終的に選ぶと思いますが、その候補リストの中にNeumannのスピーカーを入れておくのは得策だと思います。ぜひ試してみてほしいスピーカーだなって思います。
武井 氏 : ジャンルを問わずに使えるスピーカーだと思いますので、音楽系の方はもちろん、いろんな音源を扱う人や、新しいモニタースピーカーを探している人がいたら、ぜひKH 150を聴いてみてほしいですね。
★メーカーHP
NEUMANN
https://www.neumann.com/ja-jp/products/monitors/kh-150/
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記事内に掲載されている価格は 2023年12月21日 時点での価格となります。
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