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先日東京・南青山にて、ゼンハイザージャパン主催で「Neumann」の最新技術を体験できる特別イベント「Immersive Sound Vision 2025 ゲームサウンド制作の最前線 × Neumannモニタリングテクノロジーの活用術」が開催されました。
このイベントでは来日中のNeumann CEOであるYasmine Riechers氏より挨拶とRIMEの製品発表があり、続けて株式会社ノイジークローク所属のレコーディング・ミキシングエンジニア・込山拓哉氏によるゲームサウンド制作におけるDolby Atmosミックスのワークフロー解説がありました。
そして「RIME」の国内初公開として製品の紹介、試聴デモンストレーションも開催されました。
その模様をご紹介します。
Neumann CEO Yasmine Riechers氏より、Neumann初となるDAWプラグイン「RIME」を発表!
イベント冒頭、まずは来日中のNeumann CEOであるYasmine Riechers氏よりスピーチがありました。
Yasmine 氏 : 私達Neumannは1928年に創業以来長い歴史を持っていて、パイオニア精神、精密さ、そして音質への揺るぎないこだわりといったものを礎に音作りをしてきました。世界初の商業用コンデンサーマイクとして「Neumann・ボトル」と呼ばれたCMV 3、さらにはレコードのカッティングマシンなども作ってきました。そうしたものを通じて極めて明瞭かつリアルに音を再現すること、それがNeumannのミッションであり、原点です。今年で創業96年の歴史になりますが、Neumannは「伝説を支える」という明確なミッションを継承し、これまで以上に全力を注いでいます。
しかしNeumannはもはやマイクロフォンだけの会社だけではありません。録音スタジオやプロフェッショナルの方々をトータルでサポートするソリューションプロバイダーとして、マイクロフォンだけでなくオーディオ・インターフェイス、モニタースピーカーなど幅広い製品を揃えています。
ここで少し私達の新製品ポートフォリオについてご紹介させてください。Neumannのマイクは今も業界のリファレンスであり続けていて、例えばU 67やU 87などのマイクロフォンはリイシュー版やオリジナル版を含めて、ここ日本を含めて世界中の数多くのスタジオで使われています。特にU 87は、ここ日本においてもアニメーションのアフレコやゲームの制作といった様々な分野で使われています。私はこの1週間、日本各地のスタジオを訪問し、Neumann製品が日本での音作りにどのように貢献しているのかを目にすることができました。モニタースピーカーKHシリーズも日本市場でも少しずつ着実に浸透していて、その精度と信頼性により高い評価を受けています。
しかしNeumannの進化はこれだけで終わりません。Merging TechnologiesがNeumannの傘下になったことで私達のポートフォリオにPyramixが加わり、先日最新バージョンPyramix 15を発表しました。これはスタジオプロフェッショナルのためにより優れたワークフローを提供するための新たな一歩と考えています。さらにDANTE対応のオーディオインターフェイスが日本に向けても出荷が進んでますので、間もなく皆さんにもご案内できると思います。
そして新製品であるRIMEプラグインについての発表もありました。
Yasmine 氏 : そして今夜、私達はもう一つ画期的な技術を発表させて頂きます。それは小さな一歩ですが、オーディオ業界に向けて重要な一歩となるでしょう。それはイマーシブオーディオでの参入障壁を取り払うことを目的とした革新的なプラグインとなります。よりリアルな自然な音を、絵(映像)と近づける技術となり、それはまさにNeumannが目指したものでもあります。その名を「RIME(ライム)」というプラグインで、NeumannのNDH 20やNDH 30というヘッドホンと一緒に使えるものです。これによってNeumannのモニターシステムが構築されたスタジオだけでなく、外出先でもしっかりとイマーシブサウンドを聴くことができます。
このRIMEをどのように活用できるか、ここで3つの具体的なシナリオをご紹介します。
1 移動中のミキシングスタジオで
Neumannのスピーカーが設置されたスタジオで作業していてその場を離れる必要がある場合、RIMEを使えばスタジオ環境をそのまま持ち運べることができます。外出先でもNDHのヘッドホンを装着することで、MA 1でキャリブレーションしたKHシリーズと同じ周波数特性と空間表現を再現することができます。
2 ツアー中のアーティストのミックス確認として
これまでアーティストがイマーシブミックスを確認するためには実際にスタジオに行かなくてはなりませんでしたが、RIMEを使えばホテルの部屋だろうがツアーの移動中のバスの中、さらにはビーチでもエンジニアの意図した音を確認することができます。
3 スタジオを持たないイマーシブミックスの初心者の方へ
イマーシブミックスに挑戦したいと考えている学生や初心者のエンジニアの中には、イマーシブのセットアップを持っていない場合もあるでしょう。RIMEとNeumannのヘッドホンがあれば実際のマルチスピーカーに移行する前に、正確な音でイマーシブミックスを実現することができます。
Neumannは常にテクノロジーは「創造性の制約」ではなく、むしろ「創造性を解放」するためにあると考えています。最初にマイクを開発した時も、今日私達がこの革新的なプラグインを発表する時もその信念は変わりません。私達の使命はアーティストやエンジニア、クリエイターの皆さんに最高のツールを提供し最も忠実な形で捉えて届ける、そして「皆さんが伝説を作る手助けをする」ということがNeumannのミッションです。今夜はその歩みを共に祝えることをとても嬉しく思います。
ノイジークローク込山氏による、Dolby Atmosミックスのワークフロー解説
続いて株式会社ノイジークローク所属のエンジニア・込山氏によるゲームサウンド制作におけるDolby Atmosミックスのワークフロー解説がありました。込山氏が所属するノイジークロークはゲームサウンド制作に特化しており、昨年9月に開設したスタジオはNeumann KHシリーズを用いてDolby Atmosの7.1.4chのシステムを組んだということで、以前Rock oNでも取材させて頂きました。
今回はDolby Atmosのシステムをスタジオに導入した経緯やシステム構成などを中心に紹介。コロナ禍を経て自社スタジオへのニーズが高まった2024年初頭に、今後さらにDolby Atmosの需要の高まりを感じてイマーシブ環境に対応したスタジオを持とうというのが導入のきっかけだそうです。
イマーシブ環境に対応したスタジオを構築する際、Neumann KHシリーズを導入した理由としては「定位がはっきりわかるスピーカーを導入したい」「MA 1によるオートモニターアライメントが実現できる」が大きな決め手になったそうです。これは色々なスタジオを見学した際に出た結論だそうで、イマーシブのシステムでミックスする際は多くのスピーカーを用いるので定位がわかりづらいと音が滲んだり、反射して位相がずれたりすることがないようにしたかったということです。
続いて込山氏が実際にスタジオが出来てから試行錯誤したイマーシブミックスのワークフローをご紹介。一例を紹介すると、
・オーケストラ曲をミックスする際、どうしたら生々しさや臨場感、迫力を出せるのかなどを考えた末、オーケストラの真ん中で聞こえるような定位調整などもしてみた
・音を回したり上下に移動したりといったDolby Atmosならではの表現を試すことで、シンセ音や声などはモノラルの方が効果はわかりやすい
といった具合に、手探りながら独学でトライ&エラーで得たミックスのノウハウが公開。最初はかなり苦労したが配置の仕方や距離の出し方が分かってくると、次第に自分に合ったやり方が見えてきたということでした。
今回発表された「RIME」プラグインについても言及し、「イマーシブでゲームサウンドを制作する機会は増加する可能性があるが、毎回スタジオで確認を実施することコストもかかります。そこでスタジオを持っていない方やクライアント側のディレクターや作曲家などの確認用に、RIMEはかなり有効かもしれない」ということでした。
RIMEプラグインを初公開!
ここで改めてNeumann初となるDAWプラグイン「RIME」の製品仕様についての解説がありました。
・RIMEとは「Reference Immersive Monitoring Environment」の略で、NeumannヘッドホンでイマーシブコンテンツをモニタリングするDAWプラグイン
・DAWのVST3/AU/AAXプラグイン(MacおよびPC)に対応し、Neumann NDH 20および NDH 30ヘッドホン専用のプラグインとして、ステレオ、サラウンド、7.1.4までのイマーシブフォーマットをモニターすることができます
・臨場感を高めるためOSC互換ヘッドトラッキングデバイスをサポートし、頭の動きに反応するリスニング体験を実現。ヘッドホンにありがちな頭内定位無しに、スピーカーのようなリスニング体験を楽しむことが可能
RIMEはドイツのデュッセルドルフにあるZimmerli SoundスタジオにてKHスピーカー/MA 1/MT 48/KU 100などを使用した実測定データを用いて制作(このスタジオが測定に使われた理由としては、ドイツの中でも残響時間特性や周波数特性などが理想的なスタジオということで開発に協力を頂いたそう)測定のセットアップにはバイノーラルダミーヘッドマイクKU 100をオーディオインターフェイスMT 48に接続して収音されたそうです。
フォーマットの選択やサラウンドのコントロール、ヘッドホン選択など、様々な調整をすることが可能。
さらに特徴的なのはリスナーの頭のサイズなどを入力することで、(計測で使われたKU 100のサイズに合わせるのではなく)より個人のサイズに調整した最適なモニタリングが実現できるということです。
RIMEプラグインで視聴体験!
会場で一足早くRIMEプラグインを試聴することができました。来場者はNDH 20とNDH 30とで聴き比べてみたり、頭のサイズをメジャーで測って入力したりと多彩なアプローチでRIMEを体験。その性能に驚嘆している姿が印象的でした。
私もNDH 20/NDH 30と両方でRIMEを試聴することができましたが、本当に(ヘッドホンを装着していることを忘れるほど)耳以外の様々な位置から音が流れ、本当に周囲のスピーカーから聴いているかのような印象を受けました。
個人的にはやはり開放型のNDH 30の方がよりはっきりとした定位で臨場感が感じられたのですが、NDH 20/NDH 30いずれもエンジニアを中心に評価の高いヘッドホンですが、RIME発売後はさらに需要が高まる気がします。
「創造性を解放」することを使命としてマイクロフォンのブランドとして世界中で確固たる地位を築き、モニタースピーカーやオーディオインターフェイスなども革新的な製品を発表し続けているNeumann。今回発表されたRIMEもまた、イマーシブミックスにおける創造性を解放する画期的な製品だと感じました。
RIMEは6月12日(木)発売です。
Writer.サチュレート宮崎
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記事内に掲載されている価格は 2025年6月10日 時点での価格となります。
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