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新進気鋭のトラックメイカーとして様々なアーティストに楽曲提供やプロデュースをしながら、自らもアーティスト・TALKBOXプレイヤーとして多彩に活動するJUVENILE氏。
今回は制作スタジオにお伺いして、JUVENILE氏の音楽的ルーツから使用機材、話題になった楽曲の制作秘話まで幅広く語って頂きました。
DTMを始めたきっかけは
Rock oN : 音楽制作を始めたきっかけは何ですか?
JUVENILE 氏 : 元々小学生の時からずっとピアノを習っていたんです。ちょうどTVで聞いた坂本龍一さんの「Energy Flow」が好きになって、そんなに難しくない曲なので学校の休み時間に弾いていたら、音楽の先生がこれも聞いてみたらってCDを貸してくれたんです。それがYMOで聞いてみたら面白くて、それをきっかけにシンセサイザーの音に興味を惹かれたんですよね。
それから楽器屋さんでQY100(YAMAHA)を買ってもらったんです。シーケンサー内蔵のハードウェア音源だったので、それを使って曲をJ-POPのカバーをしたりして曲を作り始めました。今覚えば大した完成度の曲ではなかったと思うんですが、そこでステップ入力とかクオンタイズとかMIDIの打ち込みについて色々と覚えましたね。
Rock oN : 小学生から打ち込みで曲作りとはすごいですね。
JUVENILE 氏 : それから中学生の頃になると今度はヒップホップが好きになって、そういったヒップホップ系のオリジナルを作り始めました。J-POPと違って好きなコード進行で4小節作ったらループで曲が完成するのが楽しかったんで。レコード買ってきてフレーズをサンプリングして作るっていうより、ドクター・ドレーとかスヌープ・ドギー・ドッグとかの西海岸系の打ち込み系でシンセがブリブリ鳴っている音楽が好きだったんです。MPC1000(AKAI Professional)を手に入れて作り始めたのもその頃ですね。
高校生くらいでまたヒップホップのトレンドが変わってきて、あまり好きじゃない感じになってきたので、その頃からは中田ヤスタカさんのcapsuleとかが好きでよく聞いていました。振り返ってみると特にどのジャンルっていうより、「その時に流行っていたシンセサイザーを使った音楽」に影響を受けてきた感じですね。
Rock oN : そこからDAWに移行してDTMを始めるのはいつ頃ですか?
JUVENILE 氏 : 高校を卒業する頃にようやくSteinberg CUBASEを買いました。それまでは液晶の画面だったので、一気にやれることが増えて楽になった感じです。CUBASEの付属音源を使ったりARTURIAのソフトウェア音源を買ったりして、そこで完全にハードウェアからDAW主体の曲作りに移行した感じです。
Rock oN :EDMが流行するのはその後ですか?
JUVENILE 氏 : ちょうど自分が大学生くらいの2010年前後がEDMが全盛期だったんです。そこでもやはりシンセがフューチャーされてましたから、自分でもNative InstrumentsのKompleteを買って、特にMASSIVEが好きでプリセットパックを色々買ってよく使ってましたね。エフェクト・プラグインはWaves一択っていう時代でした。
名曲「PERFECT HUMAN」誕生秘話
Rock oN : JUVENILEさんというとRADIO FISHの「PERFECT HUMAN」の作曲・編曲を担当したイメージもありますが、どのような経緯で作ることになったんですか?
JUVENILE 氏 : 大学では軽音サークルに入ろうかとも思ったんですがやはりバンド系が多かったんで、誰かとやるよりも自分一人で音楽を作れる方がいいなと思ってたんです。そこでたまたまダンスサークルを覗いてみたら、TALKBOXを使ったヒップホップの曲とかで踊ってて、これなら自分のやりたい音楽が作れるかなって思ってそのダンスサークルに入ることにしたんです。そこでは外部からダンサーの先生を呼んでちゃんと活動していて、その先生の一人としてFISHBOYさん(オリエンタルラジオ・中田敦彦さんの実弟)と出会うんです。
Rock oN : 後にRADIO FISHのメンバーに加わるFISHBOYさんと運命的な出会いを果たすわけですね。
JUVENILE 氏 : それからサークルだけでなくFISHBOYさんが踊るための音楽も何曲か作るようになっていったんです。そしてある時にFISHBOYさんから「兄貴(中田敦彦さん)が歌いたいって言ってるんだけど、手伝ってくれる?」っていうお誘いを受けたんです。
Rock oN : それがRADIO FISHの音楽制作の始まりですね。
JUVENILE 氏 : RADIO FISHで何曲か一緒に作らせてもらって、5曲目くらいに作った「PERFECT HUMAN」で、ようやくバズった感じです。それ以前からボーカル担当の藤森慎吾さん(オリエンタルラジオ/RADIO FISH)は声がいいからラップするといいんじゃない?って言う意見が出てたので、その時に初めてラップにトライすることになって。中田さんは非常に分析する方なので、そこで「ラップって何を歌うんだろう?」っていう相談があった際に、僕からは「自分語り」だったり「地元大事・仲間大事」みたいな感覚が歌詞に盛り込まれてたりしますよっていう話をさせてもらったりしました。そんなこともあって出来上がった歌詞に「We Live In Tokyo」とあるのも、どこか地元感というかレペゼン的なヒップホップマインドが入ってるんですよね。ちょうど東京オリンピックが決まった時期だというのもあるんですが。EDMもあればヒップホップマインドも入ってるという意味では、「PERFECT HUMAN」は僕が通ってきたルーツとか好きな音楽の要素が組み込まれている曲なんですよね。
Rock oN : そう言われてみるとこれまで伺った話と繋がっていますね。
JUVENILE 氏 : 「PERFECT HUMAN」ってEDMにしては音数が少ないんですよ、それまでRADIO FISHで作った曲の方が割とアレンジも構成も凝っている曲だったりするんですけど、「PERFECT HUMAN」は相当シンプルだと思います。実はあの曲を作った時ってかなり時間がなくて瞬発力を求められてたので、自分が好きで影響を受けていたドクター・ドレーとかのテイストとかがかなり出たのかなって思います。ドクター・ドレーの曲って音数が割と少ないんで。
Rock oN :「PERFECT HUMAN」が出たのが2016年で、EDMがだいぶ浸透した後でしたよね。
JUVENILE 氏 : 正直当時僕はもうEDMをメインで聞いたり作ったりしている感じではなかったですし、RADIO FISHのダンサー達からも同じような感覚でした。けれどもそこで中田さんから「自分にとってはまだEDMがタイムリーな音楽だし一般にもまだEDMを聞きたいっていう需要があるはずから、そこは信じて作ってほしい」って言われました。それであれだけの結果が出たことで、自分もそれからトレンドの見方が変わりましたね。僕らクリエイターは良い意味でも悪い意味でも先に行きすぎてしまってるんじゃないかなって思いました。当時は音源もSERUMとかNEXUSとかもうあったんですが、「PERFECT HUMAN」ではそれらは使わずに、使い慣れているMASSIVEで作ったんです。それがちょうどリスナーのEDMに対するリテラシーも上がって、うまくタイムリーにハマったのかもしれません。
使用している機材について
Rock oN : ここから音楽制作で使用している機材について伺いたいのですが、DAWはずっとCubaseですか?
JUVENILE 氏 : ずっとCubase Pro(Steinberg)をメインで使ってて、現在はバージョン12です。中田ヤスタカさんに憧れて使い始めたんですが、ただLive(Ableton)とかは気になりますね。たまには違うDAWを使って気分を変えてみたいってのもあるし、クリエイターでもファーストチョイスでLiveを使ってる方も多いですからね。ただ自分は仕事の効率化をすごく重視するタイプなので、ショートカットとかが違うっていうのがすごくストレスで、なかなか簡単にDAWは変えられないですね。
Rock oN :MIDIキーボードは何を使っていますか?
MIDIキーボードはKX 49(YAMAHA)を10年以上使ってます。昔YAMAHAが出していたMotifに似た感じで鍵盤の弾き心地がいいので好きですね。他にもメロディーやコードを確認するために88鍵盤の電子ピアノがあって、パッと内蔵スピーカーで鳴らせるようにしています。
Rock oN : モニタースピーカーは何をお使いですか?
JUVENILE 氏:Epic 5(reProducer Audio)は僕が仲良くさせてもらっているTeddyLoid君が使っていたのを気に入って購入しました。パキッとしていて音の角がはっきりわかる感じが気に入っています。
次に買うなら最近はやはりDSP補正機能が付いたスピーカーが全盛なので、KH 80 DSP(Neumann)とかKH 750 DSP(Neumann)の組み合わせとかはとても気になりますね。
Rock oN : オーディオインターフェイスは何をお使いですか?
JUVENILE 氏 : Apollo x6 Heritage Edition(Universal Audio)を使ってます。ずっとWindowsだったんですけどMacに変えて、Thunderbolt 3接続で卓上ではなくラックタイプで安定したものが欲しかったというのがあったのでApollo x6にしました。UADプラグインを色々使っていますが、足りなくなることもないですね。
Rock oN : 他にはどんな機材をお使いですか?
JUVENILE 氏 : 歌とかギター、ベースを録音するときに、必ずデスクトップミキサーのSiX(Solid State Logic)を使っています。場合によってはKeyscape(Spectrasonics)をスタンドアローンで立ち上げて、エレピの生演奏をスピーカーからSiX経由で録ったりもしています。DAWでMIDIデータ入力するとどうしてもタイミングとかベロシティを細かく編集したくなるので、DAWでオーディオレコーディングして波形を見ながら編集することで生演奏の雰囲気がうまく残せるんですよね。
Rock oN : このスタジオでボーカルを録るともあるということですが、マイクは何をお使いですか?
JUVENILE 氏 : ボーカルはU87 Ai(Neumann)で録ることが多いです。レコーディングにはボーカルブースというより大きなリフレクションフィルターって感じで吸音効果があるLight ROOMっていうのを設置しています。この中で録ると音がデッドになってローが締まって色々試した中では一番良かったんです。
TALKBOXとの出会い
Rock oN :TALKBOXを始められたのもどういったきっかけですか?
JUVENILE 氏 : 先ほどお話したドクター・ドレーとかスヌープ・ドギー・ドッグとか西海岸系のヒップホップアーティストはザップとかロジャーとかのP-Funk系の影響を受けていて、楽曲にTALKBOXがよく使われていたので、そこで興味を持ったのがきっかけです。
Rock oN :MOOG Voyagerを選んだのはどういう理由からですか?
JUVENILE 氏 : MOOGはやはり音が太いのとTALKBOXの始祖(ロジャー・トラウトマン)が使っていたので選びました。Voyagerにしたのはアナログ回路ですが電子制御なので、やはり古い機種だとプリセットがないので使いづらいかなと。
Rock oN :今TALKBOXは何をお使いですか?
アメリカの製品でTalkStarというのを使っています。このTalkStarはTALKBOXの種類があまりになかったので、Talkboxプレイヤーが自分で作ったという製品なんです。透明で中が見えて音を出すと光るっていうのも、男の子が好きそうな要素が入ってていいですよね。
今TALKBOXをフューチャーしたカバー楽曲の制作をやっていて、今年中にEPを出したいなって思ってます。
最近夢中のエフェクト・プラグインとは
Rock oN : 最近よく使うエフェクト・プラグインは何かありますか?
JUVENILE 氏 : エフェクト・プラグインではWavesとかUniversal Audioも使うんですけど、最近だとPlugin Allianceが多いですね。SSL 9000JとかAMEK EQ 200とかアナログっぽい音にできるものを使っていることが多いです。なるべくツマミが少なくて単純に効果が出せるものが好きですね。
それ以外だとOzone 10(iZotope)はよく使います。曲を作る際にリファレンス楽曲をAudiolensと併用して分析にも使ってみたりとか。パッと聞いた時のEQとかは真似できるんですけど、ダイナミクスとかImagerとかは簡単に真似できないので、そんな時には重宝しています。つい音像を拡げたくなりがちなのですが、この曲に近づけるには狭めた方がいいんだなとか気付かせてくれたりすることもよくありますね。
Rock oN : 先ほどのTALKBOXもそうですがJUVENILEさんにはボーカルトラックに特徴がある楽曲も多いですが、ボーカルによく使うプラグインはありますか?
JUVENILE 氏 : ボーカルにはVocal Synth 2(iZotope)とかが好きでよく使います。ボーカルはエフェクトがかかっていてデジタルっぽいですが、リズムトラックやピアノ系にはアナログ感が加わっているような組み合わせも多いです。
他にEQだとGULLFOSS(SOUNDTHEORY)をよく使ってます。最近のプラグインの傾向として、ずっと同じかかり方じゃなくて時間軸で動いてくれるのがいいですね。コンプは最近はMu(Pulsar Audio)が多いです。
リアルなハードウェアの卓やアウトボードを使ってきたわけではないので無茶な設定をしているのかもしれないんですけど、だからこそこういうプラグインで思い切った使い方をすることで振り切った音楽が作れるような気もしますね。
最近注目している音楽は・・・
Rock oN :最近では「ヒプノシスマイク」などのアニメ系の音楽も担当されてますよね?
JUVENILE 氏 : そうです。「ヒプノシスマイク」では舞台の音楽を作らせてもらってるんですが、2015年から二人組でエレクトロユニットOOPARTZ(オーパーツ)も活動しているんですが、所属事務所の海外戦略の一環として日本が強いアニメのポップカルチャーを手掛けようということで始まった感じです。偶然ですが音楽がヒップホップでストリートダンサーがいてっていう感じなので、そこでも自分が積んできたキャリアの延長線で関わらせてもらってますね。
Rock oN :今注目しているジャンルはありますか?
JUVENILE 氏 : 今だとやはりK-POPです。若くて実力のあるダンスボーカルグループが次から次へと男女を問わず出てくるので、だいぶ先に行っている感じで圧倒的に先進国だなって思います。楽曲もどういう風にそのサウンドを作ってるのかなっていう興味もあって、機会があれば韓国に留学してみたいって思うくらいです。日本は日本で歌ものとかバンド系とか素晴らしい音楽が多いですけど、ダンスボーカルっていうとK-POPは刺激を受けることが多いので色々とチェックしてますね。
Rock oN :振り返ってみるとJUVENILEさんの音楽活動は、常にダンスミュージックに関わっているんですね。
JUVENILE 氏 : そうですね、最近ダンスのプロリーグD.LEAGUEの音楽も担当していますし、自分の音楽はその時々でダンサーの方が気に入っていってくれたから作ってこれたっていう感覚が強いですね。ダンスカルチャーには本当にお世話になっていて、とても恩義を感じていますから、これからもダンサーに気に入ってもらえるダンスミュージックを作っていきたいなって思っています。
テクノからヒップホップ、EDMと目まぐるしく変化していくダンスミュージックのシーンにおいて、ダンサー達をはじめとする様々な人達の出会いが自らの音楽キャリアを作り上げてきたJUVENILE氏。
そこには常にどんな要求にも応えようとする飽くなき音楽的探究心と、従来の発想にとらわれず自らも貪欲に進化していこうとする類まれな情熱が感じられました。
これからもダンスミュージックを中心に、国内だけでなくグローバルな視点で活動をしていくJUVENILE氏の動向に、目が離せません。
Writer.Miyazaki
関連製品:記事の中で話題に出た製品はこちら!
★Cubase Pro 12(Steinberg)
★Epic 5(reProducer Audio)
★Apollo x6 Heritage Edition(Universal Audio)
★SiX(Solid State Logic)
★U87 Ai(Neumann)
★Ozone 10 Advanced(iZotope)
★Vocal Synth 2(iZotope)
★Brainworx bx_console SSL 9000 J(Plugin Alliance)
★AMEK EQ 200(Plugin Alliance)
記事内に掲載されている価格は 2023年3月27日 時点での価格となります。
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