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オノ セイゲン氏がホストを務めるDSD試聴&トーク・イベント「オノ セイゲン&晴豆 presents 11MHz DSD/Nu 1 全曲試聴体験会」。第6弾となる今回は、Buffalo Daughterのお二人をゲストに迎え2023年4月5日に開催されました。1998年に発売されたBuffalo Daughterのアルバム『New Rock』と、2001年に発売されたアルバム『I』をオノ セイゲン氏がリマスタリング。アナログ盤リマスターの発売に伴い開催された本イベントでは、会場である東京代官山の晴れたら空に豆まいてに設置されたメインスピーカー Meyer Sound Ultra series UPA-1Aで大音量再生しながら、メンバーである大野由美子氏、suGar氏を迎えし、リマスタリングされたサウンドの印象やリリース当時のエピソードなど、貴重なトークが繰り広げられました。また、アルバムのハイレゾ・バージョンの制作に際して、サウンド面の大きなカギを握るコルグ社製の1bit USB-DAC / ADC「Nu 1」にもクローズアップ。製品、そしてDSDの魅力に関しても紹介されました。
日時 : 2023年4月5日(水)
会場 : 晴れたら空に豆まいて
出演 : オノ セイゲン・大野由美子・suGar
オノ セイゲン氏 : 皆さん、お越しくださりありがとうございます。 今日は、Buffalo Daughterの『New Rock』と『I』のアナログ盤カッティング用のEQマスターの、その大元のマスターとなるDSD 11MHz音源を大音量で再生します。まるで、ライブの音と勘違いするようなクオリティになるので楽しみにしてください。かなりの大音量なので、うるさすぎたら耳栓でもしてくださいね(笑)。ぼくはBuffalo Daughterのライブの時は10dB以上落とす耳栓は必須です。Buffalo Daughterだけでなく日本ではこの20年はPA使ったほとんどのライブで耳栓必須です。音量だけでかすぎて音色が聴こえない、分かりますか?言ってる意味。
よくオーディオファンが、皆異口同音に音の良さ~まるで目の前で演奏がなされているような再生音が聞ける~スピーカーが消えて(歌手なりミュージシャンが)まるで目の前に居るようです!とか語りますが、それスピーカーからの音ですから。逆に、この20年はライブハウスで手が届きそうな目の前で演奏してるのにドラムもギターもPAスピーカーからしか音が聞こえてこない。ライブエイドの時のクイーンなら話は別ですよ。狭いステージ上のミュージシャンも転がしモニターがないと演奏できない、とか。軍事と商業主義の競争がないと技術は発展しないのはわかってますが、扱ってるのは音楽なんだから、大イベント払い下げの機材の大音量競争じやなくて、音色とかミックスバランスで勝負して欲しいよね。話は最初から横道にそれましたが、DSDマスターは、簡単に言うとPCMよりおおよそ6dB低く録音します。つまり同じ音楽のDSD版を再生する場合には、いちいちボリュームを6dB上げてちょうどいいのです。リマスターアナログ盤のマスター音源を、このKORGのNu 1という機器で再生するんですが、まずは、 KORG 開発部レコーダー開発担当マネージャー 永木道子さんと、ハイレゾ音源配信サイト「e-onkyo music」のディレクター 祐成秀信さんに登壇していただき、簡単に、DSDとは何かということをお話ししてもらいます。
オノ セイゲン氏 : では、Buffalo Daughter 大野由美子さんとsuGarさんをを呼びましょう!
オノ セイゲン氏 : まず『New Rock』ですが、録音されたのはいつですか?
suGar氏 : 98年リリースだから97年に録ってます。
オノ セイゲン氏 : ProToolsが出始めた頃ですね。
suGar氏 : 『New Rock』はADATで録ったと思います。『I』のほうは2001年発売なんですけど、『New Rock』から3年の間隔がありますが、この頃私たちは海外も含めコンスタントにツアーをやってました。『I』はロサンゼルスのG-son studio (Grand Royal所有のビースティーボーイズのスタジオ) でベーシックを録って、ダビングは東京に戻ってやりました。この時、ProToolsを使い出しました。
オノ セイゲン氏 : 今日、「アナログだ」とか「DSDだ」と言ってま すが、実は、今回のリマスタリングの依頼に提供された音源は、市販されてるCDなんです!つまり16bit/44.1Hzフ ォーマット。アメリカ盤と日本盤の2種類のCDを預かり、曲ごとに 細かく比較をしてどちらかを選びました。CDでも音が違うんです。まずはソニーや他のアプリも使ってアップコンバートほか最新のテクノロジーを駆使してリマスタ ーしたわけです。「CDの音がこんなになるの?」といった音になっ ていると思います。たとえ古いCD音源であっても、最新技術こう いう風になるわけなんです。じゃあ『New Rock』を聞きましょう。大音量ですのでお気を付けください!
オノ セイゲン氏 : かっこいいアルバムですよね! サウンドは、今の時代のほうが合ってるかもしれない。お二人の聞いた印象はどうでしたか?
suGar氏 : 大幅に音が良くなって「え?」みたいな感じでしたが、加えて、CDから取ってきてるっていうことが「え?」ですよ(笑)。古い話だし、私たちも音源の管理が悪いもんだから、、、(笑)
大野由美子氏 : 2ミックスマスターはDATで残ってるんですが、ファイル化しておけば良いのにきちんとやっていないから再生不可能になってしまって。
オノ セイゲン氏 : そういうことが、今、毎日のように起こってます。古いマスターが再生できない、とか商品のCDしか残っていない、そもそもカセット音源しか録ってなかった、とかね。今のうちにリマスターしてアーカイブ化しておく意義があるんで す。
suGar氏 : それにしても、音、すごかったですね。特にドラムがすごいなと思った。当時、オノヨーコさんに聞かせたら「ドラムの音が素晴らしいわね」って、まず、そこ(ドラム)を誉められたんです(笑)。
大野由美子氏 : 3人ドラマーがいたんですが、それぞれ3人の個性が出てますね。聞いてて思い出したんですが、録音は三軒茶屋にあった小さなスタジオでやってたんです。先日、坂本龍一さんが、残念ながらお亡くなりになられましたが、当時、Buffalo Daughterのことを気に入っていただいてて、私たちが録音してる時にお邪魔したい、という連絡を頂いたんです。
suGar氏 : もう無くなっちゃったスタジオだから言うんですけど、ゲームセンターの隣にあるみたいな本当に小さなスタジオで。
大野由美子氏 : すごく狭いし、そんなとこにいらっしゃるのはちょっと気が引けて。
オノ セイゲン氏 : で、いらした?
大野由美子氏 : お断りしたの(笑)。
オノ セイゲン氏 : なんだ、絶対来たかっただろうな。
大野由美子氏 : 今日、会場のどこかで聞いてらっしゃるといいですね。
オノ セイゲン氏 :うん。きっと会話が聞こえて、そこらへんで聞いてらっしゃいますよ。次に『I』のほうを聞きましょう。
オノ セイゲン氏 : レコードには入らない音がいっぱいあるんです。 例えばクラブ系の「ボワン」という重低音の部分や、子音の「シー シー」みたいな硬い音は歪みになるので、カッティングエンジニア の人からしたら「こんな音入らないよ」って、僕は昔から(カッティングエンジニアから)よく怒られてたんです。へんなミックスばっかりしてたから(笑)針飛びの原因や歪みになるので、そういった禁則がいっぱいある。かっこいい音の良さを残したままレコードにしやすい音に直すのがレコード用のマスタリングの妙技なんですが、僕が今まで行っ たレコードマスタリングの中で一番の成果がこの『New Rock』と 『I』です!こういう仕上がりはすごく嬉しい! 一年半かかったけどね(笑)。
suGar氏 : ありがとうございます! 今日聞いているDSD音源は、さっきのレコードのような「この中に納めなくちゃいけない」みたいな制限がない訳ですよね。ダイナミクスをフル出しするとこういう音になる、ということを皆さんに体験していただいた感じ。そもそもですが、通常のマスタリングというのは、1枚のアルバムの中でも低音が多い曲、高音が多い曲、ボーカルが中心の曲とか、いろんなタイプの楽曲が混在するんですが、そういうサウンドを揃える作業なんですよね ?
オノ セイゲン氏 : そう。アルバム全体での曲ごとのバランスとか粒立ちを揃えるというか、例えるな ら料理の盛り付けみたいな感じ。レシピはもう出来上がってるんだ けど、皿に盛り付けた時に、豪華に盛るのか食堂風に盛るのかとい った感じ。
suGar氏 : マスタリングスタジオでどんどん盛り付けがきれいになってく様を見てると、「うわ、きれい。美味しそう」ってなりますよね。『New Rock』と『I』は何風に盛ったんですか?
オノ セイゲン氏 : そりゃぁもうゴージャスに一番豪華な感じで!
大野由美子氏 : 当時、『I』のマスタリングはテッド・ジャンセンだったんですが、彼のスタジオに行って大音量で聞いて、「すごーい」と感動したのを思い出しました。それがCDの製品になって販売されるんですが「あれ、CDの音はちょっと違うな」と思ったんですよね。
オノ セイゲン氏 : テッド・ジャンセンはぼくのメンターのひとりです。グレッグ・カルビと2人で同じ日にぼくのアルバムのマスタリングやってもらった。『Bar del Mattstoio / Seigen Ono』(Greg Calbi)と『Montreux 93/94 Seigen Ono Enssmble』(Ted Jensen)
suGar氏 : テッドのところでもらったCDはすごくいいい音だったんだけど、それがコピーされてると違うんですよね。加えて、日本盤とアメリカ盤でまた違うんです。
オノ セイゲン氏 : そうなんだよ。CDでデジタルデータなのに日本盤とアメリカ盤で音が違う。もっと言うと工場のラインでも微妙に違う。この10年高音質CDなんて出てきたが、普通のCDの製造も進化してきたので、もはやその差はない。問題はみんながCDプレーヤー持ってないこと。
大野由美子氏 : それにしても今日の音は、テッドのスタジオで聞いた感動を思いだすくらい感激する音でした。
オノ セイゲン氏 : ありがとうございます。今日は会場でレコードを販売してますが、サイン会してくれるんですよね?
大野由美子氏 : しますよ! 今年、Buffalo Daughterは30周年記念なんです。
suGar氏 : 記念して今年はライブをいっぱいやっていく予定なんですが、第一弾は2月9日にここ「晴れたら空に豆まいて」ででやったんですが、第二弾が今日のこのイベント。そして、第三弾を6月25日(日)に、表参道のWALL&WALLで開催します。
suGar氏 : 大野さんが大好きなLAUSBUB( https://linktr.ee/officialausbub )っていう北海道のバンドがゲストで出演するんですが、私たちと歳の差、30歳ぐらいの感じなのかな。
大野由美子氏 : 子ども世代(笑)。是非そちらも皆さんいらしてください。
suGar氏 : 5月24日からニューヨークをスタートに海外ツアーを挟むんですが、6月25日は海外から戻ってきてテンションが高いライブになるはずなので、是非来てください。第四弾以降も考えてるので、決まり次第、アナウンスする予定です。
オノ セイゲン氏 : では、楽しみが続きますね。今日はありがとうございました!
suGar氏 : ありがとうございました。
大野由美子氏 : ありがとうございました。
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記事内に掲載されている価格は 2023年5月29日 時点での価格となります。
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