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iZotope日本公式サイトに、iZotope本社Spire Sales & Channel Marketing ManagerのDaniel Pilver氏への
インタビュー記事が公開されました。
ハードウェアとSpire Pro(iOS App)のそれぞれで提供される自動処理の数々、そのテクノロジーの裏側で何が起きているのか、是非ご覧ください。
Intelligent Soundcheckについて
MIスタッフT(以下T):日本でも発売が開始されたSpire Studio Gen 2について、ユーザーからは見えない形でiZotopeの機械学習によるテクノロジーが働いています。
最初にお聞きしたいのは、ユーザーが最も利用する『Sound Check』について、ここでは実際にどのような工程が行われているのでしょうか?
Daniel (以下D):このSoundcheckボタンでは、Neutronのエフェクト(EQ、Compression)を使用しています。
これは内蔵マイク、外部マイク、Line入力に至るまでどんな外部ソースを接続しても同じように動作します、アプリを介さないスタンドアローンモードのハードウェアでも同じです。コンプレッサーのスレッショルドは、入力レベルに応じて自動的に検出・調整され、ピークを適度に抑えることで演奏の音量変化を調整します。
それ以外の設定は、ソースに対してエンジニアが録音機器をキャリブレーションするように、当社のサウンドデザイナーが設定しています。特にSpireが入力ソースをVocalと認識した場合は、Nectarのシグナルチェーンを使って、通常のボーカル用コンプレッサーと同じように、音量を一定に保ち、ピークを抑えることが出来るようにプログラムされています。
T:いわゆるEQやリミッターのような複数のレコーディングアウトボードを組み合わせた働きを『Sound Check』ボタン一つで行っているわけですね。Sound Check後にアプリが楽器の種別を自動で認識しますが、これはどのような情報を解析して判断しているのでしょうか?
D:これはiZotope NEUTRON 3が持つMix Assistantに各トラックを聴かせたときに自動判別するのと同じく、機械学習を利用しています。
T:判別にもNeutronのA.I.が使われているんですね。ソースがVocalだと解析した場合に、Spire Proアプリで自動的に動作する『Pro Mic Clarity』とは一体どのような機能ですか?
D:Spire Pro版の場合に動作する”Pro Mic Clarity “は、OzoneのDynamic EQやMatch EQを利用した独自のプロセスです。Spire Proのボーカル用に少し変更して最適化しています。
iZotopeのEQをこの方法で使用すると、ソースに適したマイクロフォンを選んだかのような周波数補正に加え、ピークの共振や歪みの部分をリミッターとして緩和できるのです。
T:なるほど、Spire Pro利用時入力ソースが”声”の時には特に追加の恩恵が得られるということですね。
★Spire ProでVocal収録された楽曲サンプル
第二世代の目玉であるネットワークを使ったCloud Processing
T:Gen 2での新機能として、多くのユーザーに驚きを持って受け入れられたのがRXによる自動ノイズ除去です。具体的にどのようなクラウド処理が行われているのでしょうか。
D:実際には3つのRXモジュールが動作しています。まず一つ目は特定の閾値を超えた全てのノイズに対してSpectral De-Noiseが動作します。これはバックグラウンドノイズなどを低減させるために有効です。
次にNeutronがサウンドチェックでVocalだと認識したソースにはさらに2つのモジュールが動作します。De-PlosiveとDialogue De-Reverbです。De-Plosiveはマイクの吹かれによるノイズを除去するモジュールで、この機能をSpireではヴァーチャルポップガードとも呼んでいます。
次にDialogue De-Reverbは不要な残響を低減してくれます。一部のユーザーからは除去し過ぎてしまうのでRX機能をオフにしている方もいますね。
※RX 8 Standard以上に搭載のSpectral De-Noise
T:自動処理とはいえRXがモバイル端末で動作するのは驚きです。レコーディングブースの有無など”収録環境”の問題を緩和できる初めてのレコーダーとして、今後のアップデートにも期待しています。
D:そうですね。この機能は端末を含むハードウェアの処理能力に左右されない複雑なプロセスを実現する上で実に画期的なものです。iZotopeが誇るニューラルネットワークの恩恵を使ったサービスが、RXだけでなく様々な形でSpireユーザーへ今後提供できるようになるはずです。
今時点で注意点があるとすれば、Spire Proのwifiネットワークを介した機能を動作させるためには、ユーザーはSpire Studioハードウェアから切り離して、ホームネットワークに接続する必要があります。
T:確かにWIFI接続を変更すると、オーディオ出力先も実機からiOS機器に変わってしまうため、注意が必要ですね。しかし、RXのMusic Rebalanceなどが将来Spire Studioで処理できたらと思っているミュージシャンは多いかもしれません。
Spire Proアプリでのピッチ補正や本体DSPによるEnhanceエフェクトについて
T:Spire Proではミックス時に使用できるEffectの中にピッチ補正機能も追加されています。RobotかNaturalか、1フェーダーでとてもシンプルですね。
D:はい、ボーカルチューニングでは補正の速度と強さを中心に、いくつかのパラメータをマクロで調整しています。またアップデートによりピッチに影響を与えることなくボーカルのフォルマントのみを調整できる「Lo-Shift」「Hi-Shift」機能も追加しました。
基本的にピッチを認識するエンジン、補正のクオリティやエフェクトはNectar 3 Plusが搭載している機能を利用しています。
★Spire Pro搭載の「Lo-Shift」「Hi-Shift」を使ったコーラス作成
★iOS端末付属のボイスメモアプリで収録されたVocalトラック
★Spireアプリ(無償)で収録されたVocalトラック
★Spire ProでVocalエフェクトを加え、リズムトラックとミックスした楽曲
T:iZotopeの代表的なA.I.プラグインの技術が至る所に応用されていますね。ミックスを終えた楽曲出力時に本体DSP経由で使うことが出来るEnhance(エンハンス)機能というのは具体的にどのような処理を行っていますか?
D:Enhance機能は楽曲の “明瞭さ “、全体のミックスのバランスをとるためにOzoneとNeutron双方のDynamic EQ技術を使っています。厚みのある8トラックを重ねても、最終的な2mixが破綻しないように働きます。そしてOzoneのマキシマイザー技術同様に最終的なラウドネスをブーストしてくれます。
T:ミュージシャンが直感でトラックを重ねていっても、最終的に破綻しないようコントロールしてくれるわけですね。Gen 1からある機能ですが、これの有無で聞き映えが全く変わりますね。
Gen 2でのハードウェア改善点について
T:Gen 2ではハードウェア面は見た目もLED以外ほとんど同じで改善点がわからないという声があります。今回アップデートされた点を教えていただけますか?
D:まずはストレージの改善です。Gen 1の2倍となり実に8時間以上の録音時間を想定しています。1つのプロジェクトやトラックですべてを実行しても問題はありません。ポッドキャストで何時間も使用されている方もいらっしゃいますので、問題はないと思います。
次にBluetoothの件ですが、これは少し前の状況を説明します。前世代のSpire Studioでは、ハードウェアが生成するWifiに手動で接続する必要がありました。その際、アプリに促され設定に移動し、ペアリングした後にアプリを開いて戻る必要がありました。新バージョンでは、Bluetoothを使用して自動的にWifi接続を行うことができます。
T:そんな進化があったんですね。Bluetoothは今後どのような発展を予定していますか。
D:Bluetoothを使ってできることはたくさんありますし、Spire Studio Gen 2のハードウェアにどのように組み込むのがベストか、現在検討中です。
T:他にはマイクプリのWIFIノイズ耐性が向上していますが、旧モデルでWIFIノイズが課題になっていたケースはあったのでしょうか?
D:課題というわけではありませんでしたが、非常に静かな状況で時折、Gen 1では低レベルのノイズが発生していました。気づいている人は少ないと思いますが、その点が改善されています。さらにGen 2のマイクロフォンとマイクプリアンプは新設計となっています。今回のインタビュー用にI/O部分の簡単なスペックも公開しておきたいと思います。
現状の課題とアップデートについて
T:アプリでは収録した波形の移動や、複数のオーディオトラック取り込みなど、基本的な機能に対する改善要望も多く寄せられています。今後、それらを改善する可能性はありますか?
D:はい、あります。そして、現在、近いうちに改善するように取り組んでいます。
そしてクラウドプロセッシングの際に申し上げた通り、現在のワークフローがすべてのケースにおいて理想的ではないことを理解しています。現在、統合に向けて取り組んでいますが、接続を切らずにシームレスに処理できるようになるには、まだ時間がかかるかもしれません。クラウドベースのDSPをハードウェアの内蔵DSP上で動作させることはまだできませんので、これは最終的な解決策となるまでの回避策となります。
またワークフロープロセスを改善するための段階的なアップデートは定期的に行われますので、現在購入されているユーザーは、ファームウェアのアップデートによって製品が継続的に改善されることになります。
T:実際にSpire Proでは2週間に1回くらいのペースでアップデートがされていますね。期待しています。それでは最後に、Spire Studio Gen 2の(インタビュー時点で)発売を待っている日本の多くのユーザーにメッセージをお願いします。
D:お待たせしました。私たちは、日本のお客様から寄せられる、素晴らしく、ユニークで、クリエイティブなコンテンツを楽しみにしています。#madewithspireのハッシュタグでシェアされる最も素晴らしいトラックのいくつかは日本からのもので、私たちはそれらのすべてを見て、可能な限り再シェアしています。
T:私たちもSpireのコンテンツが日々発信されるような企画やイベントを形にしていきたいと思います。今日はありがとうございました。
(iZotope日本公式サイトより転載)
https://www.izotope.jp/news/behindthetech/
NeutronやRXなどのiZotopeのプラグイン技術がふんだんに盛り込まれ、さらにアップデートを続けている革新的なレコーダーSpire Studio Gen 2。ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
★関連動画
iZotope Spire Studio Gen 2で手軽にレコーディングを行う方法 解説: 青木征洋氏(Godspeed)
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記事内に掲載されている価格は 2021年6月4日 時点での価格となります。
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