KORG NAUTILUS 特集第5回:物理モデル&PCM音源編
過去の記事
第1回:ミュージック・ワークステーションの歴史、NAUTILUS概要、ピアノ音源特集
第2回:アナログモデリング音源
第3回:VPM/FM 音源
第4回:エレピ&オルガン音源
NAUTILUS特集 第5回:物理モデル&PCM音源編
第5回は、NAUTILUSに搭載される物理モデルとPCM音源編をご紹介します
物理モデル音源STR-1 は、コルグが 10 年以上にわたって研究開発してきたフィジカル・モデリング技術を NAUTILUS のために拡張したものです。伝統的な楽器音(アコースティックギター、エレキギター、ベース、 クラビネット、ハープシコード、ハープ、ベル、エレクトリッ ク・ピアノ、エスニック楽器等)から、ユニークで実験的なサウンドまで、さまざまなジャンルの音楽に対応します。
PCM音源HD-1 は、M1以降ずっと積み上げてきた、PCM音源のノウハウを全て注ぎ込んだ最強のPCM音源です。コルグが誇るPCMサウンドは、全て専門の技術者によって丁寧に作られています。このNAUTILUSのために今回新たに、1960年代に発売され欧米のポピュラー音楽に大きな影響を与えたVOXオルガン、耳に馴染みのあるアップライト・ピアノや19世紀前半のフォルテピアノ、またストリングスのベンドアップ/ダウンなどが搭載されています。
物理モデル音源:STR-1
STR-1 は、コルグが長年培ってきたフィジカル・モデリング(物理モデル)技術をベースに最新テクノロジーを導入した打弦/撥弦系の物理モデル音源。アコースティック・ギターやエレキ・ギター、ハープシコードやクラビネット、ハープやベル系、さらにはエスニック楽器など、PCM音源では再現が難しかったタッチによる音色変化を実現するだけにとどまらず、現実にはない音色の自由な合成や変化を可能にしました。シンセサイザー・プログラマーが新しい音を造り上げるための未来の音源です。
STR-1 の主な特長
- ストリングに、ダンピング(弦に伝わる波の高域減衰量)、 ディケイ、ディスパーション(弦の剛性)、ノンリニアリ ティー(ブリッジの不安定さ)、ハーモニクス(倍音)といっ たパラメーターを装備
- さまざまなプラック(弦をはじく)・タイプ、ノイズ・ジェネレーター、膨大な PCMオシレーター使用によるストリング・エキサイテーション(弦への振動)
- デュアル・マルチモード・レゾナント・フィルターと、ストリング・エキサイテーション(弦への振動)用のマルチモード・レゾナント・フィルターを装備
- 外部音声入力によるフィードバックが可能
- ボイスごとに LFO 4 基、リトリガーが可能な EG 5 基、キー・トラッキング・ジェネレーター 2 基、ストリング・トラッキング・ジェネレーター、モジュレーション・ミキサー 4 基を装備
- 最大同時発音数 40
これらのサウンドはサンプリングした素材ではなく、CPUによる物理モデリング計算でリアルタイムに生み出されています!
弦をはじく動作:Pluck
Type
ピックで弾く、指で弾くといった異なるタイプの弦を弾く動作を、いくつかのモデルの中から選びます。Pluck(プラック)タイプは、はじかれた弦の基本的なトーンを設定します。同様に、PCM サンプルとノイズ・ジェネレーターを使用して「弦をプラック(はじく)」することもできます。さらに、3種類のエキサイテーションを一緒に使用して、独特なトーンを作り出すことができます。
プラックモデル
Ac Guitar 1
Ac Guitar 2
Dark E. Guitar, Bright E. Guitar, Resonant E. Guitar, Dark Jazz Guitar, Bright Jazz Guitar, Brighter Jazz Guitar
Square Pluck
Midrange Pluck
Smooth Pulse
Resonant Pulse
Dark Clav, Midrange Clav, Bright Clav
Harpsichord
Randomization
ノイズ・ジェネレーターの出力を少量加えることによって、弦をストロークするたびに微妙なバリエーションをつける事が可能。
Width
ピックとストリング(弦)が接触している時間を調整。ピックの大きさと厚さ、ピッキングのスピードによって決まります。このパラメーターにより、弦をはじくアタックのトーンを調整します。値を小さくすると低音域が強調され、大きくすると高音域が強調されます。
弦を「はじく」サウンドに PCM も使用可能:弦を「プラック(はじく)」ために、プラックとノイズ・ジェネ レーターに加えて、PCM サンプルも使用することができます。
String Main
Excitation
Excitation(エキサイテーション)は、弦を振動し始めさせる力です。ギターを演奏するときのピックや指、クラビネットのハ ンマー、ハープシコードのバチ等に相当します。
Position
弦のどの部分を振動させるかを設定し、音色に大きく影響します。0.0 はブリッジ側の端、100.0 はナット側の端、50.0 は弦の中央になり、ここを中心として左右対称にな 値は、同じ音色になります。
Harmonic
ギターでハーモニクス奏法をするときのように、ストリングを 軽く(またはしっかり)に押さえる動作を設定します。
Position
ストリングが押されている位置を設定。実際の弦でハーモニクス奏法をするとき、押さえたポジションに応じてハーモニクスが鳴ります。
Pressure
どのくらいの強さで弦を押さえるかを設定します。
Decay
ストリングの全体のディケイ・タイムを設定します。
Release
ノート・オフ後にストリングの音が消えるまでのリリース・タイムを設定。
Nonlinearity
Amountでブリッジの不安定さを設定します。数値が大きくなるほどブリッジの不安定さが増して、シタールのようなサウンドになります。
Damping/Dispersion
Damping
ストリングの高域周波数のディケイ・タイムを設定します。大きな値にすると、高域のディケイ・タイムが短くなり、アタック音は明るく、持続音は柔らかくなります。小さな値にすると、 明るいストリング・サウンドが長い時間持続します。Dampingは、全体のディケイ・タイムをコントロールする “Decay” と相互に作用し合います。
Dispersion
弦の剛性をモデリングします。この値が大きくなると弦のゲージが太くなり、倍音成分の不協和性が大きくなります(不協和性とは、倍音が基音に対して不協和音であること)。この値を最大値に近づけると、金属棒を叩いたときのベルのような音色になります。
Character
“Dispersion” の値が増加するのに応じて、高次倍音がデチューンされる度合いを選択します。Bellでは Dispersion の値が大きくなるにつれて低次倍音は少しずつ不協和性を増し、高次倍音は急激に不協和性を増します。結果的に発音する音はベルのようなサウンドになります。Stringでは、高次倍音は低次倍音に比べると若干、不協和性が強くはなりますが、Dispersion の値を大きくしてもストリングの特徴は残ります。
Pickups/Feedback
Pickup 1:Position
ピックアップを弦のどのあたりに配置するかを設定。
Feedback
フィードバックは、ストリングを通して NAUTILUS のどこからでもオーディオをルーティングできる機能です。オーディオ入力、オーディオ出力、REC バス、FX コントロール・バス、イン サート・エフェクト出力、マスター・エフェクト出力、トータ ル・エフェクト出力等が使用できます。この機能は、オーバー・ドライブやアンプ・シミュレーターといったインサート・エフェクトをかけて、その音を STR-1 に再度戻して処理をすることで、エレキ・ギターのフィードバック・エフェクトをシミュレートします。
いまこそ物理モデリング!
物理モデリング音源 STR-1 は、生楽器をサンプリングした音源に比べて雑味やノイズといった要素がない分、FM音源のような、音に芯がありピントがクッキリと合って、高域まで綺麗に伸びるサウンドです。特にベロシティに対する追従とサウンドの応答が素晴らしく、ピアニシモからフォルテシモまでの繊細な音楽表現を可能にします。PCM音源が究極の生音を求めてギガバイトクラスに到達した現代、それとは一線を画す物理モデリング音源の個性が相対的に際立って来たと言えるでしょう!
PCM音源:HD-1
HD-1の「HD」は「High Definition(高解像度)」の略です。これは、コルグ独自の低エイリアシング・サンプル・プレイバック・オシレーター、マルチモード・レゾナント・フィルター、超高速かつスムーズなエンベロープやLFOなどから構成される、これまでにない高品位なサウンドづくりを楽しめるシンセサイザーという意味を込めて付けた名前です。オーケストラ・サウンドからクラシック・ロックや最新の音楽まで、あらゆるサウンドを細部まで余すところなく鮮明に表現します。
主な特徴
- コルグ独自のこれまでにない高品位サンプル補間技術による、低エイリアシング性能と高音域までクリアな特性を実現した、スムーズでリッチ、細部まで鮮明なサウンド
- 大容量ROMおよびEXsサンプル・ライブラリー
- ユーザー・サンプル・バンク機能によるギガバイト・サイズの大容量オリジナル・サンプルが作成可能
- レイヤーやスプリットも完全独立のデュアル・オシレーター構成
- 1 オシレーターで最大 8 段階のベロシティ・スプリットやクロスフェード(2ウェイ・レイヤーを含む)が可能
- リズム・パターンのようなサウンドや、刻々と変化する複雑なサウンドを作り出せるウェーブ・シーケンス
- サウンドの太さや歪みを調整できる“Drive”、“Low Boost”パラメーターをボイスごとに装備
- 1 オシレーターにつき 3 基のエンベロープ、2 基の LFO、2 基のAMSミキサーを搭載。加えて、コモンLFO、X-Yエンベロー プ、シーン設定(アルペジエーター、ドラムトラック/ス テップ・シーケンサー)をプログラムごとに使用可能
- 音域により複雑な変化を作り出せるキー・トラッキング・ジェネレーターを1オシレーターごとに2基搭載。さらにプログラム単位で別の2基を使用可能
- 非常に豊富なリアルタイム・モジュレーション機能を装備
KORGのPCMサウンドは昔からロックやエレクトリックミュージックとの相性が良いだけでなく、シネマティックサウンドも秀逸です。一音鳴らしただけで映画のワンシーンのようなストーリーが描写され、その世界に引き込む説得力を持っています。M1ピアノやM1クワイヤなど、テクノロジーの限界でリアルになれなかった事が逆に個性となった、レガシーサウンドをはじめ、NAUTILUSにはリアルなバンド楽器やオーケストラ楽器、クワイヤ系、そして電子音楽でよく使われるサウンドなどが網羅されています。
KORG 伝家の宝刀:ウェーブ・シーケンスとは
KORGが1990年に発売した伝説のシンセ WAVESTATION で実現した革新的な機能です。最大64個のサンプルを時間軸上に並べ、リズムのようなサウンドや、切れ目なくスムーズに音色が切り替わるような複雑なサウンドを作成することができます。
リズミック・ウェーブ・シーケンス
短いクロスフェードを設定することよって、マルチサンプルのア タック感を強くして、これを次々に切り替えていくことによって、 リズム感のあるフレーズを得ます。
クロスフェード・ウェーブ・シーケンス
デュレーション(継続時間)とクロスフェード・タイムを長く設 定することによって、ウェーブ・シーケンスが複雑に展開してい くサウンドを得ます。
ベロシティ・スイッチ・ウェーブ・シーケンス
各ステップのデュレーションをGATEにして、ベロシティで“Start Step”を変化させると、最高64のベロシティ・スイッチで切り替わ るサウンドが得られます。例えば、多数の異なるサウンドを弾く たびに切り替えることも可能です。
ウェーブ・シーケンスはWavetableのようなモーフィングサウンドを生み出せるほか、1音ごとに波形を変えてリズミックな展開を生み出す事も可能です。1波形ごとに音価を設定できるので フレーズ・アルペジエイター的にも活用できます。
音楽のパーツが詰まった宝箱
HD-1はハイクオリティで汎用的なサウンドを提供してくれ、音楽イメージを形にしたい時に役立つ音源です。アンサンブルの中でそのリアリティを発揮してくれる音も多く、楽曲の中で足りない周波数レンジを埋めてくれる存在にもなります。ウェーブ・シーケンスは波形フェードで幻想的な空間を生み出したり、不思議なリズムを生み出せるユニークな機能で、楽曲の中での画期的な活用方法がまだまだありそうです。リズム音色に関しては後日特集してご紹介したいと考えつつ、今回で9つの音源紹介を完結しました!次回からは応用編です! (SCFED IBE)
KORG NAUTILUS 61鍵、73鍵、88鍵 ラインナップ