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恒吉 : 今年はAVIDからMTRX StudioとCarbonの2製品がミネートされていて、どちらも注目を集めました。
RED先生 : 発売されたばかりのCarbonがノミネートされているのが個人的に嬉しかったです。ネットワークオーディオに舵を切って、技術的に新しいことにチャレンジした意欲的な製品だと思います。
パパ洋介 : Avidの次世代ラインナップが出揃った感じですね。Carbonはクリエイター向けのステレオ特化型ではありますが、商用スタジオで導入されているHDXのパワーが手軽に個人ユーザーが手に入れられるようになった画期的な製品。MTRX Studioも従来のMTRXに比べたら本当にバーゲンプライスで、MTRXをMTRX Studioの仕様にするには150万円くらいかかる所を3分の1くらいの価格に抑えられています。ポスプロはシステム自体がコンパクトになって来たので、MTRX Studioはそのコアになれる意味合いを感じます。特にハリウッドなどの映画音声素材の仕込みにはMTRX Studioが採用されて行くのではないかと思います。セリフや効果音を制作する各システムがダビングステージと同等に、しかもこれまでに比べてかなり低価格で実現するのが大きなメリットになるかと。
RED先生 : フルスペックではないけれど、5.1チャンネルを最低条件としてクリアーというニーズを満たしてくれる。今後は制作会社もMTRX Studioに落ち着く感じですね。
パパ洋介 : SPQも入っているし、ATMOSの仕込みまでできるのは大きいです。ATMOSはスピーカーが12本とか14本になるためモニターセクションを組むのが大変で、それを一括してコントロールできるインターフェース兼モニターコントローラーとしてはブッチギリで安い!
恒吉 : 今年もiZotopeのRXがダントツの得票数を獲得しています。RX 7で既に多くのシェアを持っていたわけですが、RX 8になって更に評価されたポイントは何でしょうか?
スティービー竹本 : Dialogue IsolateやMusic Rebalanceなど既存モジュール精度が大幅に上がっているというのが、ポスプロを始めとしたプロユーザーからも高く評価されています。V8からMusic Rebalanceをポスプロの人たちも多く使い始めて、音声の背景に乗ったノイズを消すのに使われるケースが面白かったです。それとiZotope RXマスクもユーザーの間で大変盛り上がりましたね。
RED先生 : 私の周りではスクロールとか小さい機能のブラッシュアップへの評価が結構聞かれましね。「RX 8にアップグレードしたらRX 7には戻れない!」とか。
パパ洋介 : ユーザーレビューを見ると、今回はポスプロ以外のマーケット、音楽畑のクリエイターから反響が大きかったのも面白かったですね。
恒吉 : RX 8は同種の製品の中でも際立った性能という事ですかね。
パパ洋介 : ダントツだと思います!
RED先生 : 音声データをサーバーにアップロードする必要がなくて、ローカルマシン上で処理できるというのがポスプロ業界に広く受け入れられたきっかけだったと思います。
スティービー竹本 : 2020年夏にRX Championshipというノイズ取り大会を初めて開いたのですが、ソフトの扱い方次第でノイズ除去精度も異なりますし、自然さや後処理を見据えた取りすぎない美学など、奥の深いソフトウェアだと思います。(→RX Championship Final & RX 8日本最速preview)
恒吉 : Apple M1チップが、その登場からわずか2週間程度で大変注目を集めました。Rock oNユーザーは音楽ユーザーがメインになりますが、M1チップへの期待が大きかったのではないかと思います。ソフトがまだこれからですけど、みなさんの周りではどんな反応ですか?
RED先生 : 注目度が高いですね!最近は映像系ユーザーが多くなって来ているので、Protoolsを動かしたらどうなるというよりも、映像クリエイターからの声が多いですね。
PD安田 : 音楽ソフトをMacで使う際の、これまで推奨されてきたCPUとメモリの基準みたいな物が変わっていくと思います。音楽ソフトの場合、DAWの1トラックにつき前後のオーディオ素材の読み込みと、音源ソフトのサンプル読み込みとプリセットとかありますけど、その使用領域がM1のメモリでどう処理されるかですよね。
恒吉 : メモリ8GBでもOKみたいな情報もありましたね。例えばNative Instruments Kompleteを使う時なんかでも、以前必要だったスペックから変わってくる可能性がありますね。そしてFinal CutやDavinch Resolveの話題も結構出ていますが、その辺りの情報はどうですか?
ファンキー松本 : 映像編集の部分はかなり期待度が高いみたいで、Davinch ResolveはM1マックが出て数日で対応しましたからね。どうしても2019年や2020年のマックブックでは外部のGPUとかを積まないとDavinchのフル性能を発揮できなかったので、M1マックではGPUに現実的なものが載って来て、きちんと動いて書き出しが出来るというのが喜ばれているみたいです。Davinch Resolve17にも票が入っているので、映像系の方もAwardに参加してくれたのが嬉しいですね。
恒吉 : 手のひらサイズのMIDIデバイスORBAは、玩具のようなルックスながらも実は高機能で、初心者からプロユーザーまで注目を集めました。
スティービー竹本 : シンセサイザーとスピーカー、それに加速度計とジャイロスコープを内蔵していて、叩く、押す、傾ける、振る、滑らせる、揺らす、ぶつける、といったユーザーの動きに反応するモーションジェスチャーをリアルタイムにコントロールできるのが新しかったですね。MPE対応のDAW入力やステージパフォーマンスを行うのにも最適で、プロユーザーからの注目も高かった製品です。
恒吉 : 主にハードウェアのシンセサイザーや音源類がメインになるInstruments Hardware部門ですが、得票数を見るとSEQUENTIAL Prophet-5 Rev4がかなり票を集めました。
SCFED IBE : アナログシンセはオシレーターが鳴りっぱなしの状態をVCAで閉じているので、ゲートが開いた瞬間の電流のパッションを感じます。Rev4新搭載のビンテージノブはモワっとしたビンテージの温かさが出て、ピッチだけでなくフィルターも含め全体的にビンテージ感が出ているのが素晴らしかったです。Rev1/Rev2フィルターサウンドには特に感動しました。
恒吉 : 過去製品へのオマージュの風潮についてはどうですかね。
SCFED IBE : Prophet-5 Rev4の人気が証明したのは、みんな当時のままを求めていたという事だと思います。
PD安田 : そのままというのはポイント高いですよね。
ファンキー松本 : NAMM2020に行った時、ARP2600 FSをNAMM会場で見ましたね。
ACID渋谷 : ARP2600 FSもオリジナル復刻が良かったんじゃないですかね。
恒吉 : 世代的な考え方だったりして(笑)若い人はそうでもなかったりして。
SCFED IBE : 実機を知っている人にそれはあると思います(笑) 正直、ソフトで100%同じ音が出てしまったら僕もそっちに行くかも知れませんが、さっきの電気のパッションの話や、回路から発生する雑味成分がハードウェアの方が豊かなのが魅力的で、その辺りが今後のソフトシンセの課題かと思います。
マエストロ佐々木 : 当時のProphet-5ままで、更にプラスアルファされた部分も魅力的ですよね。
SCFED IBE : Prophet-5 Rev4のビンテージノブは特に良かったです。ビンテージシンセは時間が経つとチューニングが狂うのも魅力だったりするんですけど、許容範囲を超えてしまうとチューニングするしかなくて、そのあと少し放置して程よく音が狂うのを待つ必要がありました。ビンテージノブがそれを一瞬で再現できるのは不思議な感覚で、全然わざとらしくないんです。ユニゾンも1ボイスから5ボイスユニゾンまで選べて、グライドもポリフォニック対応でコードメモリー機能搭載。鍵盤もベロシティに対応して強く弾けばフィルターが開いたり音を大きくできる。今では当然すぎる事を伝説のマシンで出来るようになった事への感動は、私たちの世代的な部分ではありますけど。
ACID渋谷 : AKAI MPCシリーズはMPC60から始まって、大型化や小型化、そしてソフトウェア化を経てその都度ビートメイク史にその名を刻んできましたが、MPC LIVE IIは全ての機能や特徴を兼ね揃えた完成系ですね。また一方でNative Instrumensts MASCHINEがMASCHINE+として遂にスタンドアローン起動できるようになって、16パッド界隈は大いに盛り上がりました。ソフトウェアコントロールとスタンドアローンを行き来できるこの両者はコンセプト的には非常に近いですが、細かい違いはいくつかあります。その中でもMPC LIVE IIの利点はオーディオ素材のサブスクリプションプラットフォームSpliceと連携している点。自分のパソコンでSpliceの音をダウンロードしてWi-Fi経由でMPC LIVE IIと素材を同期できるのは本当に画期的です。またMPC LIVE IIがコントローラーモード時にのみサードパーティー製のVSTプラグインを使えるのに対し、MASCHINE+はスタンドアローンでも使えます。ただしモノによってはパラメーターが分かりにくかったり対応していないプラグインがあるなど課題はありますが、スタンドアローンマシンの未来型として大きな可能性を秘めていると思います。あとはMASCHINEの標準サンプラーだけでKONTAKTのようにピッチの変わらない音階演奏に対応するモードがついたら最高です!
スティービー竹本 : UJAMは製品リリースタイミングがとても早く、2020年は12製品と驚くべき開発スピードですよね。UJAMでアイディアを形にして、他社製品ですがiZotopeのAIアシスタントを使って簡単に仕上げる、というワークフローも目立ちました。ポスプロで簡単にフレーズだけ作らないといけないような場面でも活躍してくれますね。
ACID渋谷 : UJAMは2020年大ヒットしましたよね、IBEさんが動画記事を毎回作成してTwitterも盛り上がっていました。UJAM初のストリングス音源「Striiiings」はハンス・ジマーに音楽制作を手伝ってもらっているような感覚になりますよね。
SCFED IBE : UJAM製品を使うと、初心者がプロクオリティの曲を作れてしまうというのがとても現代的だと思います。いまは「作る」から「選ぶ」時代に変わりつつあって、誰でもプロデューサーになれる方向に向かっています。その先には必ず人間の創造性力が求められて、楽曲のテーマ、構成、人に何を伝えたいのかが明確になって来ると思います。
ACID渋谷 : Native Instruments KOMPLETE13では、KOMPLETE12に収録されなかったKONTAKT音源が多数収録されたのが個人的には今回一番大きかったと思います。
MYSTERIA、STRAYLIGHT、PHARLIGHT、そしてトラップ系に強いCLOUD SUPPLYなどがかなりの割合でプロの現場で使われていますね。古臭くならないクワイヤ系の面白いレイヤーが簡単にできたりとか、一瞬で映画音楽っぽい音になります。
また今回アップデートされたGUITAR RIG 6 PROは実際に触ると結構面白くて、モジュラーみたいな感じで予想出来ない音が作れます。LFOやシーケンサーも入っていて、これは多分Reactor6のモジュールも搭載されたと思うのですが、そのエフェクトパラメーターを内蔵シーケンサーでコントロールしたりLFOで揺らしたりとか、非常に柔軟なエディットができるようになりました。意外なところではTraktorのビート系のエフェクトも少ない操作でとても効果的な使い方ができます。
COOPER天野 : 僕も新しくなったバージョンが好きですね、GUIの解像度が上がったのも良かったです。
恒吉 : 2020年はステイホーム需要で、オーディオインターフェイスのエントリーモデルが脚光を浴びました。Presonus Audio Interfaceシリーズの記録的な販売数、DTM市場への貢献度の高さからAudio Hardware AWARD受賞となりましたが、2020年のオーディオインターフェイスについて各選考委員のご意見を頂ければ。
ファンキー松本 : 自宅でボーカルやナレーション録音用にマイクプリを1〜2個搭載したエントリーモデルで、audient、Focusrite、Presonus、Steinbergなどに人気が集まって品薄状態にもなりました。マイクとヘッドホンがセットになったパッケージも人気でした。
PD安田 : プロユーザーにはRME Babyface Pro FSが一番人気がありましたね。2011年に登場したRME Babyfaceの登場から約10年もの間、Babyfaceシリーズはクリエイターやエンジニアから高く評価され続けて来て、Rock oN Award 2016でBabyface Proが受賞しています。2020年のBabyface Pro FSの登場で、これはもう揺るぎない評価という事でBabyfaceは殿堂入りしてもいいんじゃないですかね?
ファンキー松本 : 個人的にはApogee Symphony Desktopの登場が嬉しかったです。マイクプリ2機搭載で内蔵DSPのビンテージマイクプリエミュレーションが使えるのも魅力的です。何よりApogeeのフラッグシップサウンドがデスクトップサイズに納まって、お値段がSymphony I/Oラックの約半分で手に入ってしまうという、これはApogeeファンには見逃せないオーディオインターフェイスですよ。Symphony I/Oラックのユーザーが外出レコーディング用に導入するケースもありますし、音質にこだわるプロユーザーがホームレコーディングに導入するのに迷わずお勧めできる製品です。
ACID渋谷 : Universal Audio apollo solo USBは、WindowsユーザーがUAD-2プラグインを気軽に導入できるモデルとして歓迎されました。またAntelope AudioのFPGA FX勢力もSynergy Coreシリーズで大健闘しました。Synergy CoreはDSPエフェクトと混同されがちですが、FPGA FXは通常のCPUベースのプラグインとは異なり、デバイス(オーディオI/O本体)上で立ち上がって動作するため、PCとは完全に処理構造が独立しています。つまりPCの処理能力に依存しないハードウェアエフェクトと考えるべきなんです。そのFPGAの処理をDSPでサポートするのがSynergy Coreです。Antelope Audioは2020年、MacユーザーはもちろんWindowsユーザーにもDiscrete Synergy Coreシリーズを通じてハイエンド・オーディオインターフェイスを供給するブランドとしての地位を確立したと思います。
スティービー竹本 : iZotope Neoverbは原音を解析してリバーブ成分が滲まないように自動で調節してくれるUnmask機能が画期的ですね。
お馴染みのMasking Meterで他のiZotopeプラグイン(Neutron 3、Nectar 3、VocalSynth 2)と通信して、リバーブが他のトラックをマスキングしている帯域を視覚的に確認できるのは勿論、おにぎり形のGUIやA.I.アシスタントで直感的に操作できることもあり、初心者から玄人まで高い評価を頂いています。
パパ洋介 : NuGen Audio Paragonは今までになかった新しいインパルスレスポンス(IR)リバーブで、Dolby Atmosフォーマットまで対応していて、サラウンドでありながら音の定位をしっかり残したまま響かせてくれるのがす凄く衝撃的でした。今までどうしてもサラウンドのリバーブは音の方向、例えば右チャンネルから鳴らしているのに残響が全体に満遍なく広がってしまうみたいなイメージが強かったんですけど、Paragonは右から鳴っているような響きをちゃんと付けてくれる。技術的には部屋の響きを録音した結構な種類のIRが搭載されているんですけど、このIRデータをParagon上で加工できるんですね。リバーブのテールだったりEQだったり、その加工したIRを使ってリバーブを鳴らす事ができる。IRリバーブに新しい可能性を持ち込んだ面白い製品です。
RED先生 : それだけの機能が10万円を切ってお値段以上という感じです(税込約8万円)。それとUniversal Audio Apolloユーザーが無償で使えるDAWのLUNAは、クリエイターやエンジニアさんに録音を依頼する時にLUNAを使って頂いた機会がけっこうありました。録音音質がApolloクオリティという安心感もありますし。(LUNAはMacOS、Thunderbolt接続のみ対応)
ACID渋谷 : DAWを振り返るとAbleton Live11とSteinberg Cubase11、Nuendo11が登場しましたね。Ableton Live11は要望が多かったコンピングや、ハードウェアシーケンサーでは一種のトレンドである偶然性を曲作りに生かすプロパビリティなど、痒いところに手が届く進化があった一方、新しいデバイスがかなり増えて、特にableton創設者のRobert Henke氏によるPitchLoop89はすごく話題になっています。Steinberg Cubase11はオーディオ分離エンジンのSpectraLayers One搭載のほかサンプラートラック機能が強化されて、これまでHalionやGroove Agentを使わないと出来なかった事がトラック自体で簡単に出来るようになりました。また書き出し機能も大幅に改善され、複数ジョブの一括書き出しやファイル形式のプリセット保存ができるようになりました。実はこれが一番ユーザーに喜ばれていると思います。
パパ洋介 : Avid Protools 20.11のGUIが変わったのは本当に久々だったなと思います。バージョン8から変わっていなかったはずなので、地味ながらもインパクトありましたね。そしてHit’n’Mix Infinityも、オーディオを分解していリミックスできる面白い製品だなと思いました。
パパ洋介 : スピーカーではADAM AUDIO T7Vがコストパフォーマンスの高さに反響がありましたよね。
COOPER天野 : 店頭でもかなり試聴された方が多いです。15万円するADAM A7Xに対してADAM T7Vは5万円、A7Xの方が確かに解像度は高いですが、T7Vのコスパには一聴の価値があります。
SCFED IBE : YAMAHA NS-10M StudioのクローンとなるAVANTONE CLA-10A、アンプ搭載モデルも話題になりました。世界にはYAMAHA NS-10M Studioの根強いファンが多い事を裏付けていますね。NS-10M Studioと比べてですが、CLA-10Aはクリアーな現代風のサウンドに感じました。
マエストロ佐々木 : reProducer Audio Epic 55は Epic 5からの進化モデルなんですけど、あのMTMタイプのルックスは結構インパクトがありますよね。Epic 5は低音再生能力が高いとクリエイターの人気が高くて、Epic 55が登場した時は「格好良い!」とツイッターで話題になりました。
SCFED IBE : AWARDを受賞した Steven Slate Audio VSXは、スピーカー感覚で使えるヘッドホンとして技術的に面白いと思います。
PD安田 : プラグインソフトを使ってスタジオやカーステレオとか色々なリスニング環境をシミュレートできるヘッドホンですよね?
SCFED IBE : そうです、通常ヘッドホンは耳にぺったり貼りついて頭の内側で音が鳴っているイメージですが、VSXはプラグインをONにすると頭の外に音が飛び出して、イマーシブサウンドでいう「頭内定位」から「頭外定位」になります。左右スピーカーのクロストークも再現されていて、音源のパンポットを片チャンネルに振り切っても、もう一方のチャンネルにちゃんと音が漏れます。そしてVSXプラグインでは頭部伝達関数は固定ながらも「耳の大きさ」のプロファイルが2種類から選べて、iPhoneのイヤホンが自分の耳にゆるい人の場合はプロファイル1、きつい人はプロファイル2と選べるのも面白いです。VSXプラグインを使う時は、まるでVRゴーグルをかける時のように意識を切り替えるのが良いと思いました。VSXの世界に入れば有意義で楽しいミックス環境が手に入ります。
PD安田 : 没入型ヘッドホンというわけですね。
PD安田 : これまでホームレコーディング用の小型ブースといえばVery-Qの一択でしたが、突然のステイホーム需要にISOVOX2が応えてくれて大ヒットしましたね。
RED先生 : ステイホームで言えばGiG Gear Cam-A-LotがWeb会議用途での注目度が高かったです。カメラ撮影のレフ板の技術が応用された製品で、本体を8の字にひねって折り畳めるというのが撮影グッズっぽいです。企業がWeb会議をするスタッフに支給するケースも多かったらしくて、2020年を印象付ける製品になりました。
PD安田 : ホームレコーディング関連製品ではデスクやスピーカースタンドを導入される方も多かったですね。スピーカースタンドのエントリーユーザー向けモデルでは、KIKUTANI MO-SPSの上位モデルMOS-5がリリースされて、角度と高さ調節が出来るのでスピーカーレイアウトの幅が広がりました。それとコロナ対策グッズとしてBUBBLEBEE INDUSTRIES The Visor Capが非常にシンプルで分かりやすかったです。フェイスシールドを外せば普通の帽子になるし、洗って清潔に保てるというのも考えられていますよ。
マエストロ佐々木 : MIDIデバイスをBluetooth接続することが可能になるCME WIDI Masterは最近発売された割に得票数が高かったですね。Bluetooth Midiでケーブルが不要になるのと、自動でペアリングしてくれるのが便利です。
恒吉 : 配信需要が一気に高まった2020年でしたが、配信に関して皆さんの周りで何か変化はありましたか?
パパ洋介 : 私の周りでは配信にトライしたエンジニアさんが多くて、みなさんカメラに詳しくなっていて驚きました。
マエストロ佐々木 : 動画配信のサウンドクオリティを上げたいという需要が増えて、カメラ内蔵マイクではなくてUSBマイクを導入したいという問い合わせが結構ありました。ApogeeのHypeMiCやMiC Plus、MackieのEM-USBが人気ありましたよ。
マエストロ佐々木 : そして動画ライブ配信といえばBlackmagic Design ATEM miniシリーズがかなり定番になったと思います。
RED先生 : Blackmagic Design製品が目立ちましたよね。夏くらいに品薄になって、そのときRock oNに在庫があったというのが映像系ユーザーから評価されたのかなと思います。Blackmagic Designはソフトもハードも時代に求められた感があって、多数得票しているのも肯けます。
恒吉 : Blackmagic Designは映像編集ソフトのDaVinci Resolve通常盤が無料じゃないですか、それが最初は信じられなかったですよ。
ファンキー松本 : DaVinci Resolve17は映像もオーディオの部分も進化していて22.2チャンネルまで対応出来るようになりました。
パパ洋介 : DaVinciは新しいフォーマットへの対応が早くて、いま一番対応しているフォーマットが多いソフトだと思います。HDRも全てのフォーマットに対応しているし、Atmos Rendererも先日チェックしたら繋がりましたよ。ADMが読めるし書き出せる。リクエストしたら1年以内に搭載されているタイム感です。
ファンキー松本 : Rock oNウェビナーではRoland V-1HD+も大活躍しました。映像と音をバランスよく扱える映像スイッチャーで、非常に使いやすくて何でも繋げられる安心感がありました。
パパ洋介 : Blackmagic Design Atem miniの音声入力が3.5ミリジャックなのに対してRoland V1HD+は音声入力もちゃんとフォローできているのが良かったですね。価格はATEM miniシリーズより高いですけど、オーディオインターフェイスの部分の価値も高いのかと。
SCFED IBE : Rock oNウェビナーでWaves eMotion LV1 Live Mixerも活躍してくれましたね。Wavesプラグインをマイク入力にリアルタイムでかけられて、コンプやEQ処理、ノイズ除去したサウンドで配信できました。LV1専用フィジカルコントローラーFIT Controllerの登場で、ライブ演奏や動画配信の現場にLV1がかなり導入され始めました。ライブ現場ではボタンの押し間違いとかうっかりミスが命取りですからね、専用フィジカルコントローラーの安心感は絶大です。DAWで使用するようなWavesプラグインがライブで使えるなんて、次世代PAオペレーションの幕開けを実感しました。
恒吉 : Rock oN Award2021で用意されたカテゴリーでは受賞に至らなかったものの、とても優れた機能で話題となったPositive Grid Sparkに特別賞が贈られる事となりました。
パパ洋介 : 製品としての発想がまず面白かったです。巣篭もりで自宅練習するのに向いている製品でしたね。
COOPER天野 : 見た目は小さめのボックスなんですけど、フルレンジスピーカーが搭載されていて音もとても良いです。アプリと連携して練習がとてもはかどる機能が用意されているのと、単純にYouTubeを流しながらセッションできるというのが、練習の体験として楽しく仕上がっています。かつてない練習環境を与えてくれる製品でありながらも、驚くべき低価格がギターリストの心を掴みました。リフとかを弾くと良い感じにバッキングを作ってくれて、アンプシミュレーターだけでなく普通にギターアンプとして使えるのが良いなと思いました。個人練習用かレコーディング用かは聞かなかったんですけど、店頭でエンジニアの方が購入されて行ったのも印象的でした。ラインアウトもPositive Grid BIASのクオリティで録音できるので、アンプやエフェクターが何も無いという人にはうってつけの製品だと思います!
ご存知の通り、昨年、音楽の現場は状況が一変しました。ライブやイベントの自粛に伴い、アーティストはもちろんのこと、ライブハウススタッフ、PAエンジニアのみなさんが「配信」や「リモートレコーディング」といった新たな手段を模索され、それに伴い、改めて注目を集めた製品がマーケット需要に急浮上しました。
この流れを汲み、今回のRock oN AWARDでは「Streaming AWARD」を新設。見事受賞したBlackmagic Design ATEM mini SERIESは、本来、私たちロックオンが得意とする音楽制作機器とは少し離れた製品ではありますが、たくさんのお客様からご相談を受けた製品でした。もしかしたら、オーディオインターフェースやマイク、スピーカーと同じくらい、アーティストの表現をサポートする意味で重要性を持った製品だったのかもしれません。また、Presonus Audio InterfaceシリーズやISOVOX2の受賞も、ステイホーム需要を反映した製品だと言えます。
ただし、従来と少し違った視点が入った2020年だったとしても、Rock oN AWARD選考の本筋は、製品の持つ開発発想の独自性や技術革新のポテンシャルに向けられています。Product of the Yearに輝いたAVID ProTools|Carbonをはじめとして、全ての受賞製品が、それにふさわしい優れた製品ばかりです。あらためて、こちらのページ( https://www.miroc.co.jp/antenna/award2021-announcement/ )で受賞理由をご確認いただけると幸いです。
この度の審査にあたり、投票やレビューで参加してくださったユーザーの皆さまと、ゲストノミネーターのクリエイターの皆さま。そのほか関係者の皆さまへ感謝の言葉を述べ、Rock oN AWARD 2021 座談会を終了いたします。ありがとうございました。
記事内に掲載されている価格は 2021年1月20日 時点での価格となります。
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