そろそろ夜は半袖だと肌寒くなってきました。気を緩めると渋谷で最後の半袖マンになってしまいそうで毎日の気温と服装には気を遣っておりますVツイン多田でございます。今日は半袖です。
6月から始まっております個性(派)店長リレーもPD安田からバトンを貰い多田になりました。
マイクを識別するための数字 〜カプセルの型番〜
今回ご用意させて頂いたマイクたちは、そのマイクをカテゴライズする時に12、47、67と言う数字のどれかが使われる製品です。
これらは『カプセル』と言う、音を電気信号に変換する丸い部品のことを指します。
近年多くのクローン製品がリリースされていますが、数年で姿を消すブランド、または見た目と価格で勝負しているものも多く、込められた数字の真の意味を知る事が出来ない製品も多く世に出回っています。
本当ならビンテージマイクを色々揃えて聴き比べてみたい所ですが、今回はハンズオン展示。どなたでもお試し出来る様に!というコンセプトですので、現行入手が可能な製品で固めてみました。
1176とか1073とかも、4桁の数字ではなく何か意味がある数字であるのはみなさまご存知の通り。
そんな感じの”マイクの数字”を若番から並べましたので、12から順にご紹介します。
12= CK12カプセル
1947年にAKGのC-12で採用された事で歴史が始まり、現在でもAKG / C414やAustrian Audio / OCシリーズなど多くのマイクで使用されている由緒あるカプセルです。
由緒あるカプセルであるが故そのバリエーションも多くあり、リングがブラスのバージョンやプラスチックのバージョンとバリエーションが存在し、またその構造上リングに電極が取り付けられるので他のカプセルと比べてサウンド、特に指向性制御の正確さでも違いがあります。
CK12についてかなり詳しく勉強したい!と言う方はAustrian Audioがカプセルを分解して、部品一つ一つの機能や動作の解説をしているこちらのコラムをどうぞ。
今回展示しているマイクでは、Manley / Gold microphoneがこのカプセルを使用したものです。
また常設展示ではAKG / C414XLII、Austrian Audio / OC818、真空管マイクのTelefunken / TF51がございます。
とにかく明瞭なアタックと豊かな倍音はトップエンドを抜け良くし、華やかで鮮やかな音が得意な製品が多いです。アコースティックギターでCK12タイプは定番ですね。
各社似た製品をリリースする中、しっかりと作り込まれた製品ではキンキンとうるさい音にならずシルキーさを持たせたものが多くあり、小顔効果もバッチリ。
首から下はシュッとした(関西弁)中低域に始まり、先細る事なくローエンドは非常にどっしりとしています。
デティールがもうセクシーでファビュラスですね。これらの前知識を入れた上で、ぜひ音を聞いてみて下さい。
47= K47カプセルとM7カプセル
K47はNeumann / u47に採用されたカプセルで、その後K67、 K87と進化を遂げてゆくノイマンの歴史がTelefunkenを介して世界に羽ばたくスタート地点となるカプセルです。
また、最初期のu47はCMVシリーズを引き継ぐ形でM7カプセルを採用していました。
M7カプセルは素材が1950年代当時のPVC(ポリ塩化ビニール)で、製造工程に有毒な工程があった為現在では当時の製法で完全再現が出来なくなった幻のカプセルです。
幻と言いつつ、実はドイツのMicrotech Gefellは今でも現代のPVC製法を用いたM7カプセルを製造しており、CMV563も入手可能です。
そして後発のK47のベース素材は、今では多くのカプセルでスタンダードになったMyler®️(ポリエチレンテフタレートを主成分とした商標名)で、M7の進化版という位置付けです。
今回この47部門でご用意したのはK47カプセル、、ではなく、なんとM7カプセルを採用したMyburgh / M1。
このM1に乗っているM7カプセルは上記で色々書いてきたPVCベースではなく、MylerベースのM7カプセルという新しいカプセルになります。そうかその手があったか!
そしてK47カプセルを搭載したマイクの展示は、店頭常設のManleyのReference CardioidとTelefunken / TF47。
ブライトなCK12カプセルに対してK47, M7どちらもカプセルそのものはフラットな特性ですがそれを強調する様にダークに調整されたマイクが多く、演者が出したい感情をより正確に、明確にキャッチします。
悲しい歌を歌っても明るく元気にキャプチャーしてしまうマイクがありますが、47はその懐がとっても深いんです。47系マイクに落ち着いた青系のボディが多いのはこの為でしょうか?
またカプセルの構造上CK12よりも甘い指向性を持ち、空間のキャプチャーにも適しています。アンビエントとして天井高のあるスタジオに立てたり、普段より距離が取れる環境では遠目に入力する事でお部屋の鳴りを含んだリアルな音を録る事も出来ます。
逆に狭いブースに設置した47はその部屋の狭さも露わにする、部屋の防音や響きをも録り切ってしまうので、テストの際は敢えてアウトした所から入力してみるのも面白いかもしれません。
67=K67カプセル
u47が使用する真空管(VF14、1958年製造終了)の供給問題からu47が1965年に生産終了、1960年に高価だったu47と併売しつつ代わりに現れたのがu67と、このK67カプセルです。
1968年に登場する初代u87に搭載されるK87カプセルにも与えられるモダンNeumannサウンド、いわゆる”10kHz付近の意図的なピーク”がK67で現れます。
カプセルの段階で明るめの調整が加えられたこの特性は、Neumannならずu67の出現以降世界に現れるほぼ全てのマイクが採用する黄金の特性となるのでした。
またK47/M7カプセルは単一指向性と全指向性の2パターンでしたが、ここに双指向性が加わった3パターンを採用。あれ?これも最近のマイクの標準装備だったような?u67ってもしかして世界変えちゃった??
今回展示するのは本家Neumann / u67とUniversal Audio / UA Bock167。
近年2度目の復刻を果たしたNeumann自身によるセカンドリイシューは、世のメーカーがなんだかんだ67クローンをあんまり作ってこなかった、いや”作れなかった”理由をNeumann自ら説いて来る恐ろしい製品。
”来ないのならこっちから往くぞ”って強キャラのセリフが聞こえそうです。
Neumannは現在ゼンハイザー傘下の巨大グローバル企業ですが、その中でもu67リイシューを製造できる技術者はたった3名との事で、もはやマスタービルダーと呼べる方々が作っています。サインとか欲しいですね。
対してDavid Bock氏監修、Universal Audioが送り出すUA Bock167はその型番こそ67の数字を冠しますが、K67スタイルのカプセルを採用しつつも真空管の決定やトランス、更にはバリエーションをもたらす追加機能などが織り込まれたu67の再構築アプローチ。
同時期に登場したBockの名を冠したマイクも含めて、業界のニュースタンダードとなり得るのか!?この先は君の目で確かめてくれ!
おまけ
今回取り上げたマイクたちは現在のレコーディングで主流となるコンデンサーマイクとなります。
プロのエンジニアや第一線で活躍する方々がキーワードにする要素を、カプセルの数字という観点から音で体験いただければ幸いでございます。
店頭では他にもダイナミックマイク、リボンマイクと色々取り揃えておりますので、どの数字もイマイチしっくり来なかったなぁという方はこの辺りもお試しください。
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