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ついに先日各賞決定が発表されたRock oN AWARD 2019!今年もゲストノミネーターにご協力頂き、栄えあるBest Product of the Yearを含む各賞がついに決定しました! 選考会の後に結果を振り返る「Rocko N AWARD 座談会」。Rock oNスタッフが2018年の新製品をあれこれ斬ります。突然の「特別賞」もサプライズ登場!!
Rock oN AWARD 2019 座談会
恒吉 : Rock oN AWARD 2019のベストプロダクトに贈られる「Product Of The Year」はiZotope RX7 Advancedに決定しました!ユーザー投票数の多さ、また、頂いたユーザーレビューでのベタ誉めを見ても、納得の結果だと思います。
パパ洋介:Repair Assist機能を手に入れ、さらに完成度を高めましたね。ノイズリダクションのマスターピースと言える製品で、ポストプロダクションを中心とする現場での評価はかなり高いです。
恒吉 : 特記すべきはiZotopeの技術力の高さ。ゲストノミネーターの作曲家 瀬川 英史さんも「この1年を振り返って頻繁に僕の制作をサポートしてくれたのはやっぱりこの2つのソフトウエアでした。」として、iZotopeのRX7とOzone8をノミネートしてくれてます。2018年10月3日にはiZotope本社からJeff Manchester氏を講師に招き、Rock oN 渋谷店で『iZotope RX7 Master Class』を開催しましたが、予想を超える参加お申し込みがあり、この製品の市場での評価を改めて感じましたね。
パパ洋介:ミックスされた楽曲のボーカルだけを操作できるMusic Rebalance機能は音楽クリエーターも巻き込みましたね。今回のバージョンアップでは、ミュージシャンを巻き込んだ形で、利用ユーザーの裾野を大きく広げることに成功したんじゃないでしょうか。
スティービー竹本:一度完成した音楽(2mix)をエディットすることになるので、もしかしたら賛否があるかもしれません。
恒吉 : 数年後に振り返ってみると、かつて「サンプリング」が登場した時のように、音楽制作の新たなありかたや価値を提案するソフトと言える存在になっているかもしれませんね。
パパ洋介:搭載された19のマイク・カプセルが実現する、Ambisonicsを始めとした3Dオーディオマイクとしての性能はもちろんのこと、さらに素晴らしいのが、一度の録音でマルチパートに分離してレコーディングできる事実。高度なソフトウェア技術を内在したマイクは今までになかった製品で、次世代を感じさせる製品です。
マエストロ佐々木:このマイクの技術力の核心はずばりソフトウェアですね。一度の録音で、オーディを分析を経た後に、各パーツごとにチャンネル分割してトラックを出力するんですが、オンマイクとZM-1を併用したレコーディングスタイルなど、ユーザーは発想を刺激され色々な使い方を編み出すかもしれない。
パパ洋介:アプリケーション「ZYLIA Studio PRO」が持つポテンシャルは、制作現場に多様化したアイデアをもたらす可能性があります。
恒吉 : 他のノミネート製品として、Avid MTRX SPQカード、DAD MOMの名前も挙がっていましたね?
パパ洋介:はい。 MTRX SPQカードはルームチューニングに必要不可欠なEQとDelayをMTRXに搭載。また、DAD MOMは待望のMTRX用のハードウェア・モニターコントローラー。音質の良さでMTRXを導入されていた方には吉報だったはずです。AVID MTRXを補完する製品として、製品単体としては今回の受賞には至らなかったですが、両方ともシステムの中核となる技術力ある製品なのは事実です。
恒吉 : Tech Awardということで技術の革新性を対象にした賞なんですが、引き続き話題に上がることが多いイマーシブオーディオのジャンルで2018年はどんな年だったんでしょうか?
パパ洋介:そうです。イマーシブオーディオのジャンルでは引き続きイノベーションが進行中です。ここで、僕はどうしても、イマーシブオーディオの観点でTech Awardにふさわしい製品に触れたいと思うんでよ。それはD-SPATIAL Reality。イマーシブオーディオの制作に新しい手法と表現を加えるツールで、最大48chのIRによる表現は尋常じゃないんです。ぜひ、特別賞をあげたいんです(笑)!
ACID渋谷 : 今回のバージョンアップも、期待を裏切らない優れた内容でした。質、量ともに圧倒的で、やはりマンモスパッケージ「ULTIMATE Collectors Edition」の存在感! 90,000以上のサウンドバリエーションを手に入れることができ、クリエーター必携製品としての地位をさらに押し上げたんじゃないでしょうか。
恒吉 : ソフトシンセは新しくなったんだっけ?
ACID渋谷 : MASSIVE X リニューアルを筆頭にいくつかあるんですが、喜ばしいのは音源の中核をなすKONTAKTがバージョン6になったことです。モジュレーション、ウェーブテーブル、エンベロープ、エフェクトなどが搭載されたんですが、注目すべきなのは開発参入の門戸をサードパーティーに開いたこと。サードパーティーの違ったカラーが入ってくることで、サウンドのさらなる多様化を期待したいですね。
ファンキー松本 : 多様化といった意味では、拡張音源パッケージのExpansions。50種類あるんですが、音楽の細分化されたジャンルまでもフォローしていてKOMPLETEに収録されているサウンドが、ダンスミュージックにおける最新トレンドを形作る一端を担っているのも事実です。USチャートに入るようなEDMトラックでKOMPLETEを使ってない曲を探すのが難しい、かどうかまではわかりませんが(笑)、それくらいトラックメーカーにとっては常備品といえる製品です。
恒吉 : 他のノミネートとしてPREMIER SOUND FACTORY 箏姫かぐや、Shakuhachi Premier Gの名前も挙がってますね。
マエストロ佐々木:和モノ音源のニーズは昔から一定数あるんですが、この2製品のサウンドのクオリティは最高ですよ。ユーザ目線で作られたインターフェースには、是非基準にして欲しいアイデアが詰まっています。日本の音楽を勉強したり、またアイデアを新しくする意味合いでも、おすすめ音源です。
スティービー竹本:UVI Meteorはアタックとリリースへのシンプルなアプローチをベースに無数のインパクトを生み出す、まさに「効果音生成」プラグインでした。
恒吉 : Product Of The Yearに続き、こちらもiZotopeが受賞ですね。Nectar 3の革新的な部分というと?
スティービー竹本:Vocal Assistant機能ですね。まさに時代を先導するテクノロジーである”AI”をクリエイティブ作業に展開した最も優れた一例かもしれないです。単なるプラグインチェーンではなく、EQ処理までもが自動で動いていく様はこれまでありえなかった光景で驚愕するばかり。
ファンキー松本 : Neutron 2 Advanced、Relayと連携し、ボーカルを最前面へと誘導するVocal Assistant: Unmask機能は、「複数のプラグイン間を相互にコミュニケーションさせ1つの成果を目指す」という動作形式がユニークなんですが、優れたiZotope社ならでは。総合力の高さを示していますね。
恒吉 : 次のバージョンで期待するのは?
スティービー竹本:やはりピッチ補正の自動化じゃないですか! もし実現すれば、Auto-TuneやMelodyneといったメジャーピッチ補正ソフトを脅かす存在になること必至ですね。
マエストロ佐々木:この賞の対象にはDAWも含まれるんですが、Cubase 10、Nuendo 8.3、Live 10、Pro Tools 2018 Ultimateがバージョンアップを経て、新たしい機能を装備したことも、ユーザー目線で言ったら嬉しいところですね。でも、DAWの進歩に関しては、頭打ち感があり、この状況を一変するような革新がそろそろ起きて欲しい。2019年に期待ですね。
パパ洋介:SSLからの久々のアウトボード製品ですね。SSLのアウトボードというと、コンソールモジュールからの発展系製品という感じだったんですが、今回は「Fusion=融合」という名が示す通り、これまでの歴史あるSSLテイストに新たなアプローチを融合させようとする意欲作だと思います。最終的調整を行うマスタリングツールというよりも、サウンドへの積極的カラーリングを意図した製品で、そういった製品がSSLから出たという事実が面白いですね。
マエストロ佐々木:各ツマミなんですが、Vintage Drive、The Violet EQ、HF Compressor、Stereo Imageといった現代的なテイストですね。復刻系が多く見られる最近のアウトボード新製品の中で、新たな基軸を提示したんじゃないでしょうか?
パパ洋介:この賞にはオーディオI/Fも対象になっており、今回受賞しませんでしたが、私はDirectOut Technologies Prodigy.MCを推したいです。ここまでの柔軟性を持ったI/Fはなかったと思います。全てがモジュール化されており、I/OスロットにはAES67,Dante,SoundGrid,MAD,Analog,AESをはじめとする各種フォーマットに対応した13種類のカードを組み合わせることができます。カードを差し替えるだけで、対応規格を変更できるのはとても便利で効率的。マルチフォマットコンバーターとしても出番が多そうで、本当に、次世代への1台だと思います。
スティービー竹本:iZotope Spire Studioもユーザー投票数が集まりましたね。2018年に発売された製品で忘れてはいけない製品です。ハードウェアを対象にした賞にノミネートしていますが、この製品の中では、隠れてNeutron、Ozoneの一部の技術が働いており、もし今後アップデートでRXなどの技術まで搭載されると史上最強のポータブルレコーダーに化ける可能性がありますね。
ACID渋谷 : OP-Zですが、16トラックのステップシーケンサーが秀逸なんです! メロディーを解析しノート情報をスケール内でランダマイズすることもでき、音楽的知識がなくても遊び感覚でいろんなパターンを生み出せたりと、クリエーターに多大なインスピレーションを与える素晴らしい製品ですね。トラックを作るクルエーターに、ある意味、立ち止まることを許さない。触ってると、次々に創造性を刺激してくれるんです。
マエストロ佐々木:この小ささで拡張性にも優れていて、照明の通信プロトコル「DMX 512」にも対応するなど、音楽だけでなく、ステージの中核を担うマスターコントローラーとして、この小さなサイズに集約されているのは驚異的ですね。
ACID渋谷 : いろんなカートリッジが出て、拡張性のさらなる拡大に期待したいですね!
恒吉 : 2018年はハードウェアシンセはどうでしたか?
ACID渋谷 : 注目なのはBEHRINGER MODEL Dですね。サウンド自体に評価が高く注目が集まっています。ベースシンセとしての音の太さ、ラダーフィルターのねちっこさといったMinimoogが持つ良さを、いい感じにフォローしてます。ソフトシンセしか使っていない若い世代にも、価格の安さが大きなアドバンテージになっていると思います。
ACID渋谷 : その他のノミネートとしては、操作性を簡単にし、FMシンセの音作りの楽しさにアプローチしたELEKTRON Digitone、コンパクトながらもアルペジエイターが充実するIK Multimedia UNO Synthが印象に残っていますね。
マエストロ佐々木:プロ用音響機器から撤退していたSONYがこの分野で復活し、音楽制作に寄り添った事業を展開するニュースは大変喜ばしいニュースでした! このC-100は、2ウェイカプセル構造によるサイドアドレス型や、ハイレゾを視野に入れた20-50kHzの広帯域収音といったSONYらしい高い技術力を集約させていますね。そして価格ですが、一般ユーザーでも購入しやすい価格帯で登場させた大手としての実力を感じさせます。
スティービー竹本:C-100の工場である大分県日出町のソニー・太陽株式会社を取材したんですが、整備された開発インフラ、熟練スタッフによるハンドメイド等々、C-100が生み出された背景を知ることで、「日本が誇るべき技術」を改めて認識しました。
パパ洋介:その他、マイクのノミネートだとNeumann U67の復刻が印象的ですね。かなり精密な復刻だと思いました。Rock oNでは音響ハウスさんにご協力いただき、試聴会も開催しましたが、音響ハウスでメンテナンスを担当されている技術開発室 須田 淳也さんも高評価のコメントをされていました。
マエストロ佐々木:スピーカーのノミネートだと、PHONON MUSICLIFE ML-1が面白いです。見た目では特殊な音がしそうなんですが、全く逆で、10年以上掛けて納得行くまで追求したということでレンジが広く、ミックスのサブチェックにも適したスピーカーです。Bluetoothにも対応するので使いやすさも優れていますね。
マエストロ佐々木:Focal Shape Twinは価格的にもインパクトがあり、人気でした。2018年はPMC・ATC国内復活の年でもありましたし、あとはJBLかな。。。
パパ洋介:そうですね。JBL 305P Professional Mk2は、ペア3万円台で安いんですが、しっかりした音が出ます。クセがないというか無理にローが出ている感じもないし、昔のJBL的なプッシュ感のある高域も楽しめます。最近のこの価格帯のおすすめだと、この製品になりますね。この上のクラスの7シリーズですが、もともとパッシブが発売されていたんですが、2018年にアクティブタイプが発売されました。ものすごくバランスが良い音がして、こちらもおすすめですね。
スティービー竹本:バーを踏むとその瞬間の音が持続するという、本来ならリアルタイムで実現できないサウンド、そしてピアノのサステインペダルから着想されたと思われる構造。それを組み合わせた着想が素晴らしいですね。
恒吉 : 操作性はコンパクトエフェクターの延長線にあるので、ギタリストであれば、少し触ればすぐに慣れるでしょうね。一部のFreeze系ペダルの弱点だったループポイントで起こる不自然な音切れやノイズも、波形ループポイント自動解析で克服してますね。その技術力も評価が高いです。
パパ洋介:今後も新しい基軸で、ユニークな製品を出してくれたらいいなって思います。
マエストロ佐々木:他のノミネートとしてZOOM H3-VRがありますが、単体レコーダーとしても使用可能なので、様々な場面で手軽にVRレコーディングが可能にしました。Joué Pack Joué Essentialは、着せ替えるMIDIコントローラー。新感覚のワークフローはライブパフォーマンスにも使えるでしょうね。
記事内に掲載されている価格は 2019年1月23日 時点での価格となります。
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