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これまで多くのエンジニアやアーティストに、NeumannのモニタースピーカーKHシリーズの使い勝手や音の印象を伺って来ましたが、今回は今年発売されたばかりのKH 150について、ビクタースタジオにて現役で活躍するエンジニア・宮沢竣介氏に、音の印象や使い勝手などのお話を伺いました。
自宅スタジオにてNeumann KHシリーズを使用するという宮沢氏に、6.5インチ・ウーファーを搭載した新型モデルKH 150はどのように映ったのでしょうか。
●エンジニア紹介
エンジニアとして現場をデザインするという意味において、優れたバランス感覚を持つ。音楽を“音が楽しい”と書くように、楽曲制作の過程を全員が楽しめることが重要であるとし、彼の俯瞰的な視点は、クライアントとの関係構築のなかで強くプラスに作用する。これまで、プレイヤーとして音楽にのめり込んだというよりは、一般消費者に近い感覚で音楽との距離を保ってきたからこそ出せる色があり、それが、アーティスティックな世界では、彼の独創性にもなる。
引っかかりを持ちつつ透明感を帯びたサウンドは、楽曲の主役の存在をはっきりと浮き上がらせる。
休日は丁寧にコーヒーを淹れたり、料理をしたりすると、良いリフレッシュになるという。十分な睡眠も、良いパフォーマンスのために欠かせない。
2023年6月よりフリーに転身。
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宮沢氏も参加
Neumannスピーカーを導入したきっかけ
Rock oN : 宮沢さんがモニタースピーカーに求めるものは何ですか?
宮沢氏 : ありきたりですが、やはり余計な味付けがないスピーカーがいいですね。ビクタースタジオでは比較的GENELECを使っているエンジニアが多かったので、僕もそれに倣って1031を使っていました。それに耳が慣れてしまったというのはあります。
Rock oN : Neumannスピーカーを導入したきっかけは何ですか?
宮沢氏 : 1031で最近の音楽を再生した時に、高域のスピード感とか中域の歪みとかちょっと気になり出してきたんです。他のスタジオで聴いた時に部屋ごとに聴こえ方にも差が出て来たので、より自分に合うモニタースピーカーはないかと探していたんです。GENELECのThe Oneシリーズとかをいくつか試してみたんですが、そこで自分は同軸がちょっと苦手なんだということに気づきました。価格帯的にも気合いを入れないと買えない感じだったので(笑)。
そのあとにNeumannのKH 80 DSPとサブウーファーKH 750 DSPを自宅用に導入したんです。導入した理由は出音に味付けが少なくて、モニタースピーカーで自分が求める音がしたという印象があります。それに自分のクライアントのアレンジャーでKH 80 DSPとKH 750 DSPの組み合わせで使っている方が多かったのも理由にありました。KH 750 DSPとセットにしたのは自宅でミックスする時はサブウーファーがないとダメだなと思っていたので、最初からその組み合わせでと考えていて、価格帯的に他のメーカーと比べても手の届くものでした。
KH 150を導入した理由
Rock oN : それからKH 150を導入したきっかけは何でしょうか?
宮沢 氏 : KH 150は自宅でなくスタジオに持ち込んで使用するために導入しました。筐体はそんな重さがないんですがしっかり鳴ってくれて、特にロー感が満足できる音量感で鳴ってくれるのがいいですね、以前、他のスピーカーをスタジオに持ち込んで使ってみた時、ロー感が見えにくくなったり物足りなく感じた時があったんです。それがKH 150に替えてみた時に、きちんとロー感まで把握できるようになったんです。どこに持って行ってもそんなに音の印象が変わりませんし、スタジオごとに補正をしなくても出音が保証されているのが大きいですね。
例えばスタジオでリズム録りとかする時には音量感が大事になってくるのですが、ボリュームに比例してちゃんと聴こえるスピーカーが必要なんです。それがKH 150だと色付けもなく、これ位音量を上げたらこれくらい聴こえてほしいというものになっているので、重宝しますね。
Rock oN : レコーディング時に入力が大きくなってノイマンロゴが赤く着くこととかありますか?
宮沢 氏 : いや、特にないですね。ロー感を突っ込んだEDM系の楽曲とかライブミックスとかでなどでも余裕で鳴ってくれますし、迫力ある感じで再生できています。
Rock oN : KH 150の音についてはどんな印象でしょうか?
宮沢 氏 :ちょっと失礼なのですが、言葉を選ばずに言うと、つまらないスピーカーだなって(笑)。これはすごくいい意味でなんですけど。僕はヘッドホンもNeumannの開放型のNDH 30を使っているのですが、総じてNuemannの音っていうのが統一されている印象があるんです。それが自分的にはすごくマッチしていると思いますね。解像度がとか、カッコいいとかふくよかな音っていう印象ではないのですが、自分がモニタースピーカーの出音ってこんな感じじゃないかなってイメージ一番しっくり来た音っていう印象です。
音の上がりが良くなるためには、派手に聴こえるスピーカーより正確につまらなく流れてきてくれた方がありがたくて、そこを派手にするか地味にするかは自分で判断できますので。ありのままを再生するスピーカーっていうのを自分は求めていたんです。
Rock oN : NDH 30もお使いとのことですが、選んだ理由は何かありますか?
宮沢 氏 : NDH 30も自分にある、こう聴こえて欲しいというイメージにきちんと収まった感じですね。開放型ヘッドホンを使ったのも初めてだったのですが、開発コンセプトも含めて整合性があるっていうか、ミックスもこのヘッドホンを聴いた状態のイメージで作ればいいんだなっていう安心感があります。
マイクプリのV 402も同じですね。それまではSSLとかが自分的には色付けのないいい音って印象でしたが、中域のもっちりした感じと高域の抜けたNeumannの音の感じが自分的には好みなんだなって思いました。
Neumannは入口から出口までという意味で補償してくれてるような安心感がエンジニアとしてはありますので、音を上げ過ぎたりしても大人な感じで抑えてくれるっていう印象があって、自分的にはいい相棒って感じですね。
MA 1 / KH 750 DSPについて
Rock oN : MA 1の補正についてはどうでしょうか?
宮沢氏 : 僕は補正がないと不安なタイプで、これまで色々と使ってきたのですが、MA 1は補正が効き過ぎている感じもないですよね。自宅は完全防音とかいわゆるスタジオユースのような設備でもないんですが、それでも自分の基準値はクリアした音が出せる感じです。落ち着いたスタンダードな補正のイメージになってきているというか、この部屋だったらこれくらいの補正をして欲しいというちょうどいい感じでした。
Rock oN : サブウーファーKH 750 DSPの印象はどうでしょうか?
宮沢 氏 : これはあるとないとでだいぶ違うというか、自分がKH 80 DSPを使うならロー感を得るにはKH 750 DSPも必要でした。マンションなので音量は出せないんですけど、出せないなりに体で感じられる満足の得られるロー感が出るので。ローが見えにくくなったりすることもないです。どこに持って行ってもそんなに出音の印象が変わりませんし、スタジオごとに補正しなくても使えるというのがいいですね。
こんなユーザーにおすすめ!
Rock oN : 最後にKH 150をどんなユーザーにおすすめしますか?
宮沢氏 : 自宅環境だとKH 80 DSPがいいと思いますが、スタジオユースで持ち歩いて使いたい方にはKH 150は個人的におすすめしたいですね。
自分がKHシリーズを導入した主な理由が3つあるんです。それは価格とDSP補正、それにパワー感です。スタジオで鳴らすためにある程度の音の大きさで、ローエンドの判断とか迫力とかでエンジニアもクライアントを納得させないといけないと思うんですけど、それにもしっかりついて来てくれるボリュームを出してくれるスピーカーです。他のモニタースピーカーでボリューム出そうと思うとウーファーがボヨボヨ鳴ってピークが付いて止まることもあったので、特にロックバンドのバスドラの音とかで。ボリューム上げた分だけ音量が出てくれるし、これだけ出したら大丈夫だろうって。
それとDSP補正は個人的にすごく自分が求めていたもので、別のソフトウェアを試したこともあるのですが、ちょっと手間というかDAWにかませる仕様よりもスピーカーの出口だけで補正してくれた方が安心感があるのにって思っていたんです、DSP補正を使って自宅の部屋で統一感が出せるというのは大きいですね。
価格もモニタースピーカーの中では一般ユーザーにも買える製品だと思うので、予算には限りがあると思うので、モニタースピーカーペアで50万というのはクオリティーと値段ということで言うとすごくコストパフォーマンスが高いスピーカーだと思います。
メーカーHP
NEUMANN
https://www.neumann.com/ja-jp/products/monitors/kh-150/
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記事内に掲載されている価格は 2023年7月26日 時点での価格となります。
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