国内外のあらゆるイベントをいち早くレポート! またブランドや製品誕生の秘話に迫るDEEPなインタビューを掲載!
モノレールが目を引く小田急線小田急多摩センター駅。広大なメインストリートを曲がってすぐ、視界に飛び込 んでくる巨大ビル内に位置する TEAC 本社です。創設時のレコーダー開発からブランド設立のヒストリー、そして最 新レコーダー DA-3000 開発秘話まで、TASCAM ブランドにおける『レコーダー』のポリシーを伺った。
TEAC本社入り口に配置されている製品ヒストリー
インタビュー
R(Rock oN):TEACさんの機材は昔から馴染みがありま すが、最初に少しヒストリー的な質問をさせ てください。まず TASCAMというブランド名 の由来は何から?
加:1960 年代後半にミュージシャン用レコー ディング機器の開発を目的として、TASC が設立されました。TASC 製品のマーケティング や販売を目的としてアメリカで設立されたのが TASCAMです。その後TASCAMはプロ機器のブランド名となりました。
小:AMはAmericaのAM、TEAC Audio System Corporation of AMerica の略称です。
R :へー!これまで聞いたことが無かったので驚きです。当時からそのロゴデザインは変わってないのでしょうか。
加:はい、変わっていません。
R :当時 TEAC 自体は最初から業務用ブランドだったのでしょうかそれともオーディオも ?
加:70年代当初はオーディオブランドでした。東京電気音響から東京テレビ音響に変わってAV 機器を作っていました。その流れでオープンリールを作り、用途としてスタジオもあり得るなと。A3340S というオープンリールデッキにSimul-syncがついて大ヒットし、業務用でもいけるという考えになりTASCAMブランドが生まれました。
R :TASCAMの方向性としては最初から業務用を狙ったブランドだったんですね。当時のマーケットは法人が中心だったのでしょうか。
小:はい、法人がメインでしたね。
遠:業務機器をより安く提 供しようというのがポリシーで始まりました。それを象徴する製品がPORTA STUDIOですね。誰でもマル チでオーケストレーションできて 14 万円程度だったと思います。1978年頃ですね。
R:では逆に完全に業務用で作られていた製品は?
小:DA-88が有名です。
遠:DASHフォーマットも手がけていました。
R:DASHフォーマットやられてましたね! 失礼な言い方かもしれませんが、当時ソニー さんや海外ブランドも強かった印象ですが TASCAM ブランドとしてはどういったスタジ オに入っていたのでしょうか?
遠 : 業務用ブランドではありますが、ややプライベート寄りでしたね。DASHの個人導入はさすがにいませんでした。DA-800/24 というのが DASHフォーマットの代表例で92年頃ですね。
R:その頃ですよね、オーディオがデジタルに変わって。DigiDesignのSound Toolsが生まれてコンシューマーが PC ベースになった瞬 間でしたね。でも業務用はそれに耐えられないからまだテープでした。そう考えるとテープとの歴史はすごく TASCAMにとって大きいのでしょうか?
小 : そうですね、カセットレコーダーの販売はまだ継続していますし、 Twitter のアイコンもオープンリールです。
遠 : お客様のイメージもテープのイメージが強いみたいです。
R:TASCAMブランドとしての共通の目的やミッションなどはあります か?
小:特に明文化したものはないですが、当社の場合『記録』という言葉において、オーディオの記録とドライブなど光学系の記録があります。会社のキャッチフレーズ『感動 創造技術の開拓。感動共有事業の推進。』も双方をカバーするものです。
R:なるほど。では『記録』の一つである『レ コーディング』はコアな魂の部分になりますか?
小:そうですね、ピンポイントだと思います。 基本的には『そのまま録ってそのまま出す』ことだと考えています。TASCAM の機械ってそんなに色付けしてるとは言われないです。他社の卓とかプリアンプは強烈な個性がありますが、 TASCAMの機械はあるものを録り、いつでもそのまま再生するとそのまま聞くことができる。それだけの単純な事だと考えています。
R :ミキサーとかアウトボードも製品化されていますが、その辺りとポリ シーとの関わりは ?
小:たとえば会議の中でレコーダーの話をしていても 、「この技 術で違うものが作れるのでは?」といった話になって盛り上がったり(笑) ポリシーもシンプルなものですか ら、色々な派生アイディアが生まれてくるんです。(笑)
R :それは社内でどのようにして生まれるんですか ?
小:色々ですね。社長が発案のギタートレーナー等は典型的な例ですが、色々な人から発案されます。
R:という事は人のつながりがあれば発案できる開かれた環境という事でしょうか。
小:そうですね、基本的に楽器を演奏する人がかなり多いので、プレイヤー目線でアイデ アが降って湧く事は多いですね。
R:降って湧いた後、それを形にするワークフローはどうなっているのでしょう ?
遠:昔は開発でアイデアが出ると社内に提出し、その後アメリカのマーケットの意見を聞 いて、喜んでいただけそうということであれば作る事が多かったですね。
R : その際のチーム編成はどうなっていますか?
小:製品の仕様自体を精査する部署はありますが、アイディア自体はいろいろな場所から出ます。
遠:いい製品であればどこからアイデアが出 てきてもいい、それがお客様に喜んで頂けるものなのか、そのためにはどのような仕様が必要なのかを考えながら完成させて行きます。
R:つまりどなたでもプロダクト開発の可能性 がある、それって凄い事ですよね。完全な業 務機モデルとコンシューマーや個人向けでの 開発チームに切り分けはあるのでしょうか ?
小:特にないですね。
R:そうなんですね ! 外から見ているとHSシリーズとか局向けで、専任の開発スタッフが いるのかと思っていました。
小:業務用の場合は必然的に開発期間が長く、すぐに作れるものではないので実際のところメンバーは似通って来ます。 色々な分野のスペシャリストキャラクターはいて、例えば MTR はこの人、インターフェースはこの人、この内容はこの人に聞けという方はカテゴリー毎にいますね。
R:では誰かがこういうプロダクトが良いのではないかといったら、組み合わせを構成していくイメージなんですね。これだけの会社なので主査やプロデューサーなどを決めたりは しないのでしょうか ?
遠:私の部署でまとめるような動きはします が、精査はそれぞれの開発部署が行っています。
R:自由ですね !
遠:はい、例えば営業の方から『こんなプロダクトできると良いね』というアイデアを開発に投げると『コレを使ってくれればできる』 と返ってきて、それで形になるか、採算が合うのかを見て、いけそうなら GO という事もあります。
R:では例えば iOS 系のマイクなどはどのように生まれたのですか ?
小:あれは僕の『絵』からです。最初の絵は幼稚園児みたいな絵でしたが ( 笑 ) それを渡すと格好いい絵になって返ってくるんです。 それを見て、皆でどれくらい売れるかシミュレーションをして。アイデアがそのままというわけではないですが、形になっていきます。
遠:セールスはセールスなりに販売店の意見 を組み込むなど、セクションごとに違った精 査をしていきます。
小:皆でブラッシュアップして、ある程度まとまったところで本当に価値があるのかを話し て、製品化へとながれていきます。落ちるアイデアは途中で落ちて行きますね。
R:その辺りの過程はこれまでインタビューを してきた企業によって違いますね。組織がカッチリ決まっている会社さんもあって、商品企 画が落としこんで、技術が作りみたいな形の みの会社もありました。そういう意味では凄 い自由だと思います。
遠藤:そうですね、受け口としては柔軟なのかもしれないですね。
続く…
以上、前編はここまで。日本人の私たちにとってはとても身近なTEAC社TASCAMブランドのヒストリーはお楽しみいただけましたでしょうか。
後編お待ちかねDA-3000の開発秘話に迫ります。DA-3000担当の佐藤えり沙 氏も登場し、開発者しか知らないDA-3000が生まれた背景、製品の特徴などをお伝え致します。
★TASCAM DA-3000開発インタビュー 〜時代のニーズを捉える製品開発の秘訣に迫る〜後編はこちら!>
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記事内に掲載されている価格は 2013年12月13日 時点での価格となります。
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