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Nov.2023
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プロが自宅で使う人気の小型モニタースピーカーをバーチャル試聴しよう!DAWやDTMにおすすめモデルの選び方

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業界の内外で大好評となったバズ記事「モニタースピーカー間違いなしの推薦モデル!DTM初心者にオススメの安くて高音質な選び方」では、モニタースピーカーの必要性や音楽ジャンルに合った選び方などをご紹介しました。今回その続編として、プロが自宅で使っている人気の小型モニタースピーカーの中から、10万円程度で手に入るおすすめの4機種をピックアップ!モニタースピーカーの周波数特性を改善する Sonarworks / SoundID Reference でスピーカーを計測し、モニタースピーカーの特性をグラフ化して補正。そのサウンドをいま流行りのバイノーラルマイク NEUMANN KU100 で実際に録音してみました。モニタースピーカー比較試聴がバーチャル体験できますので、ぜひヘッドホンでお楽しみ下さい!

あなたのモニタースピーカーは正しい音で鳴っていますか?

制作で使われるスピーカーは”リファレンスモニタースピーカー”とも呼ばれます。各楽器の音量、定位、さらにコンプ/EQなどのエフェクト調整は、モニタースピーカーから出た音を基準として判断されますが、もしこの基準が狂っていたとしたらどうでしょうか?

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それはまるで色眼鏡を通して絵を描くような作業となります。ホームスタジオは、音響特性を考えて設計されたプロフェッショナルなスタジオと違い、居住空間と制作空間が混在している環境です。スタジオの定番とされるモニタースピーカーを自宅に導入したのに、低音がブーミーになったり、逆に減って腰高な音になったりと、本来の性能を発揮できないケースが多いのです。

その原因の多くはスピーカーの設置方法によるものですが、定在波(定常波)による干渉もあります。定在波とは反射した音波が重なり合う事で生まれる音のモアレのような現象で、特に並行に向かい合う壁でできた小さな空間、いわゆるホームスタジオや小規模スタジオで発生します。天井コーナー等で発生しやすい比較的高い反射音は吸音材を配置する事で対策もできますが、低い周波数帯域で起こる定在波はモニタースタンドやインシュレータの追加、家具の設置場所の変更などを行っても、部屋そのものが作る音のクセはなかなか解消できないでしょう。モニタリング音をブーミーにするだけでなく、特定の周波数帯域を聴こえにくくさせるなど、正確なモニタリング環境とはほど遠い状態を生み出します。


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そこで今回、モニタースピーカーの音響特性問題を改善する画期的な製品 Sonarworks社の SoundID Reference を使用しました。
SoundID Referenceはモニタースピーカーから再生されるテスト信号を、専用マイクで37箇所にわたって計測。その情報からスピーカーの周波数特性を導き出し、フラットで最適なリファレンス環境へと補正してくれるスピーカー・キャリブレーションソフトです。これまで使っていたスピーカーが全く新しい正確なサウンド生まれ変わり、設置環境による影響の補正だけでなく、スピーカーが本来持っている性能を引き出す魔法のようなツールです。

SoundID Referenceでは左右スピーカーの特性が個別に補正できるので、スピーカーのマッチドペアのように左右スピーカーの特性を揃える事も可能です。アナログアンプ内蔵のモニタースピーカーであればアンプの精度、ボリュームつまみの精度、スイッチの精度など、様々な要素がスピーカーの個体差を招きますが、そういった問題も個別に補正して正確なモニタリングを可能にしてくれるのです。

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壁ギリギリ

50cm
壁から前後左右50センチ

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補正後(目標値)

部屋コーナーの壁ギリギリにスピーカーセッティングした場合、80Hzと150Hzが壁反射で増幅されている事がわかります。そして壁から前後左右50センチ以上離したセッティングでは70Hz付近が大きく落ち込み、こちらも理想的な周波数特性とは言えない結果に。やはりスピーカーセッティングは一筋縄ではいきません。しかし、そんな設置環境でもSoundID Reference を使用すれば理想的な特性へと補正してくれるのです。

お勧めスピーカーをSoundID Referenceで補正 ➡️ NEUMANN KU100 で録音

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お勧めするモニタースピーカーの実際の音をお伝えしたいので NEUMANNのバイノーラルマイク KU100 を使用して録音しました。今回のセッティングは作業机を壁から前後左右50センチ以上離して、卓上スピーカースタンドを約80センチの間隔でセッティング。スピーカーと正三角形になるリスニングポイントから10センチくらい前にKU100の頭をセットしました。部屋残響が少なく、私が実際に聞いている音にかなり近い音で録音できました。

本来であれば SoundID Reference補正なしで録音したい所ですが、設置環境がモニタースピーカーに与える影響が非常に大きく、そのまま録音するとスピーカー性能について誤解を与えてしまうため、補正後のサウンドを試聴して頂く事にしました。バイノーラル録音はイヤホンかヘッドホンでお楽しみ頂くと、まるでスピーカーの前で聞いているような臨場感を味わえます。

補正すると、どんなスピーカーも全く同じ音になるの?

スピーカー・キャリブレーションソフトで誰しもが抱く「補正すればどんなスピーカーも全く同じ音になるの?」という疑問ですが、結論から言いますとNOです。各モデルごとに得意な周波数帯域があり、それが個性として現れます。また、スピーカーのボイスコイル、ウーファー、ダンパー、ツイーターの素材といった、音の立ち上がりや音の止まり方に関わる運動は各スピーカー固有の物理的な特性を持つため、補正後も音のピントの合い方や広がりなど、時間軸から見たスピーカーのキャラクターは確実に生かされます。SoundID Reference はスピーカーの矯正ではなく、あくまで補正を行うという事になります。

プロが自宅で使う人気の小型モニタースピーカー4選

Rock oN リファレンスルームで70種類以上のモニタースピーカーを試聴してきたワタクシ SCFED IBE が自信を持ってお勧めする、プロが自宅で使っている人気の小型モニタースピーカー(予算約10万円)はこちらです。


GENELEC 8020DPM


EVE Audio SC205


ADAM AUDIO A5X


FOCAL PROFESSIONAL SHAPE 40

エンジニア志向 or アーティスト志向

スピーカーに限らずオーディオインターフェイスやマイク、プラグインに至るまで、どんな機材でも「エンジニア向け」と「アーティスト向け」という2つの側面から自分に合ったモデルを選ぶ事ができます。サウンドエンジニアとアーティストの大きな違いは、客観性(エンジニア) と 主観性(アーティスト)と定義することができます。

エンジニア向けモニタースピーカー

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音を客観的に判断するためのフラットな特性と高い解像度を持ち、ボーカルや楽器など、音源がどの位置でどのように鳴っているか正確に再現できる性能が求められます。音のパワー感が控えめになってサウンドが地味に聞こえたりしますが、エンジニアはあらゆる再生環境に対応できる音作りを目指し、信頼できるモニタースピーカーを判断基準にする事が大切です。

アーティスト向けモニタースピーカー

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アーティストの主観から生まれる音楽は、無から有を生み出す作業ですので、その時のテンションがヒラメキに多大な影響を与えます。正確なモニタースピーカーを使っていても、アーティストのやる気が出なければ音楽は生まれません。好きなスピーカーで気分が上がって曲がどんどん生まれるのであれば、そのスピーカーは楽器として考えるのが良いでしょう。制作用とミックス用のモニタースピーカーを使い分けているアーティストも多いです。

私がアーティスト志向としてお勧めするモニタースピーカーが、ミックスやマスタリングを行う商業スタジオに導入されている事例も多くあります。定在波を防ぐ空間設計から防音・吸音・整音、そしてあらゆるケーブルにまでこだわり抜いた最高のスタジオ環境であれば、マスタリング用のモニタースピーカーとしての性能を十二分に発揮するのです。

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前述した色眼鏡の話に戻りますが、アーティストは実際にサングラスや色眼鏡を着用しているイメージがあります。自分の世界に没入するという意味で音と光の共通点なのかもしれません。私はアーティスト志向のお客様がスピーカー選びに迷った際は「どのスピーカーが一番テンション上がりますか?」とお聞きして、お客様が一番やる気の出るモデルをオススメしています。

それでは、4つのモデルの特徴と志向に迫りましょう!

プロが自宅で使う人気の小型モニタースピーカーその1:GENELEC 8020DPM

モニタースピーカー

スタジオモニターの世界標準 GENELEC (ジェネレック)

Genelecのモニタースピーカーは数多くのスタジオに導入され、業界標準の一つとしてレコーディング / ミキシングエンジニアから厚い信頼を得ています。Genelecの音には特徴があって、パッと聞いてすぐ感じるのが「音がスピーカーの向こう側で鳴っている」感覚です。2つのスピーカーのフロントバッフル面をつなぐ線、そこよりも向こう側で音の焦点が合って聞こえます。一般的にどんなスピーカーでも、サウンドがフラットでなくなると様々な帯域が自分側に飛び出して来て、それはそれでパワー感があって心地良いサウンドです。しかし真にフラットな特性になると音のデコボコが無くなり、味気なさを感じるのが Genelecサウンドに賛否両論ある理由だと思います。

8020DPMの本体はアルミ・ダイキャストで設計されており、その堅牢で振動を生じさせない構造、独特の丸みを帯びた形状により、高出力時にも回折のないサウンド再生、妥協のないフラットな周波数特性を提供するよう設計されています。各ドライバーに専用のアンプ、設置環境による音響影響を補正する手動のルーム・レスポンス・コントロール、内蔵の過負荷保護機能など、数十年にわたって洗練度を高めてきた Genelec モニタースピーカーは、まさにプロフェッショナル・ツールと言えるでしょう。

ここがポイント!

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MDE ™(Minimum Diffraction Enclosure):エンクロージャーをアルミ製の丸みを帯びたラウンド形状にすることよってエッジ部分で発生する音響回折現象を減少させて周波数特性を改善し、反射によるゴースト音源の発生を食い止めます。

DCW ™(Directivity Control Waveguide):ツイーターマウント部の窪み形状のことで、音響軸外特性の乱れを少なくして部屋の反射音が起こす音質への影響をコントロールします。同時に理想的なリスニングポジションのエリアを広くすることができます。

モニタースピーカー

GENELEC 8020DPM 計測 & 試聴結果

モニタースピーカー

上の計測結果グラフをクリックすると補正後のグラフが表示されます

今回の計測では設置環境の影響を大きく受けて、100Hz付近が減少し150Hz付近が増幅されています。しかし、左右スピーカー共に800Hzから9kHz付近までの極めてフラットな特性は、さすが世界の Genelec。解像度の高さは抜群で、試聴データではシンセとギターが聞き分けられ、ギターの8分音符のアタックも聞き取れます。(解像度が低いと8分音符ではなく全音符に聞こえます)そして女性ボイスの立体感と左右の広がりも感じられます。8020DPMは正確で信頼できるサウンドを求めるエンジニア向けのモニタースピーカーで、音楽制作の経験者だけでなく、初心者には音の基準を自分の中に作るという意味でお勧めします。ただ、どうしても4インチというスピーカーサイズの都合で8020DPMでは低域が不足するので、予算が許せば5インチの 8030CP をお勧めします。さらに正確なサウンドを求める方には『GENELEC Loudspeaker Manager(GLM™ 2.0)』を含む 8330AP GLM Studio を導入するという選択もあります。SoundID Referenceのようなキャリブレーションシステムを Genelec が自社スピーカーのために開発し、音楽スタジオやポストプロダクション、デジタル編集室、ラジオ、テレビ、屋外中継放送に適したモニタリングソリューションを提供します。実はアーティストの中にも Genelec を好むユーザーが多く、作ってよし、混ぜてよしのモニタースピーカーと言えるでしょう。

GENELEC
8020DPM ダークグレー (1ペア)
¥140,800
本体価格:¥128,000
14080ポイント還元

プロが自宅で使う人気の小型モニタースピーカーその2:EVE Audio SC205

モニタースピーカー

圧倒的に原音に忠実な 先進的デジタル・モニタースピーカー

EVE Audioはスピーカーに入力されたオーディオ信号がデジタル変換され、デジタル領域のままクラスDアンプで再生されるという大きな特徴があります。
Burr-Brown製24bit/192kHz ADコンバーターが内蔵され、オーディオ信号はまず高解像度のデジタル信号に変換されます。ツイーターとウーファー再生帯域の分離を行うクロスオーバー回路はDSP処理となり、アナログ回路に比べ急激なフィルターカーブで高精度に分離します。再生帯域のカブりによる位相の狂いが最小限にとどめられたクリーンなサウンドは、デジタル領域のままクラスDアンプへと送られ圧倒的に原音に忠実な再現性を実現。EVE Audioが採用したこの先進的な方式は、音の入り口から出口までの精度が飛躍的に向上し、全てのスピーカーの品質が均一である事を意味しています。さらにDSP Filterを搭載し、ノブの簡単操作でルームサイズや設置場所に最適化させるフィルター設定も可能です。

ここがポイント!

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DSPが実現した高度な精度と操作性 : デジタル・モニタースピーカーと呼ぶにふさわしい、先進的な方式による正確なサウンド。フロントパネルのシンプルなプッシュ式ノブ一つで、ボリュームの正確なコントロールと複数のフィルター設定が可能で、作業環境に合わせてモニターを気軽にチューニングすることができます。

コンポーネントから独自設計 : 5インチのハニカム構造の素材をグラスファイバーでコーティングしたダイアフラム「シルバーコーン」ウーファーが、非常にダイナミックで正確なサウンドを実現。AMT(Air Motion Transformer)リボンツイーターは正確で解像度の高い高周波数帯域を提供します。リボンツイーターは次に紹介するADAM Audio A5Xでも採用されていて、そちらで詳しく取り上げます。Eve Audioは ADAM Audio の元CEOを務めた技術者 Roland Stenz氏が立ち上げたベルリン発のスピーカーメーカーで、アダムとイブ、神話でおなじみの名前でも有名です。

モニタースピーカー


EVE Audio SC205 計測 & 試聴結果

モニタースピーカー

上の計測結果グラフをクリックすると EVE Audio SC205 と GENELEC 8020DPM 計測グラフを比較できます

SC205計測結果は2kHzから6kHzにかけてバラつきがあるものの 8020DPMにカーブが近く、さらに70Hz付近がフラットに近づいています。解像度に関しては Genelec に軍配が上がるものの、4インチモデルの 8020DPM で不足していた低音が5インチスピーカーの SC205ではしっかりと補われた特性になっており、8020DPMの一つ上のモデルGENELEC 8030CP に比肩する周波数特性をSC205が実現していると言えます。SC205のローエンドまで伸びる豊かな低域と、10kHzから上に伸びるリボンツイーターのきめ細やかな高域は、ニアフィールドモニターに求められる原音に忠実な再生能力を徹底的に追求した、エンジニア向けモニタースピーカーと言えるでしょう。

SC205の録音データを聞くとキックのリリースがローエンドまでしっかりと聞こえ、耳につく高域もなく全体的なフラット感は群を抜いています。長時間の作業でも耳が疲れにくく、幅広い音楽ジャンルに対応できるサウンドエンジニア志向の優れたモニタースピーカーです。約10万円という予算で、ローエンドからハイエンドまでしっかり出てフラットなモニタースピーカーをお探しの方であれば、私は迷わずSC205をお勧めします。

EVE AUDIO
SC205 (1Pair) ★4/30まで!制作環境アップグレードSALEファイナル!
¥128,000
本体価格:¥116,364
0ポイント還元

プロが自宅で使う人気の小型モニタースピーカーその3:ADAM AUDIO A5X(生産完了)

モニタースピーカー

ガツンとくる低域がアーティストをその気にさせる大ヒットロングセラーモデル

ADAM Audioの定番モデル AXシリーズにラインナップされる A5X は2010年の発売から10年以上のロングセラーを続け、今なお売れ続けている大ヒットモニタースピーカーです。その開放的でパワフルなサウンドは世界中のスタジオにも数多く導入されており、ホームレコーディングでの使用にも最適です。AXシリーズには、折り畳まれた薄いアルミ泊状のフィルムが蛇腹のように振動して高音を再生する、リボンツイーター「X-ARTツイーター」が搭載されています。正確なトランジェントと50KHzまでの再生能力を持ち、高解像度かつ明瞭度の高いサウンドを生み出します。ウーファーはサンドイッチ構造となったガラス繊維/カーボンファイバーと、合成材料ロハセルの組み合わせを採用。物理的な密度が異なる3種類の素材を組み合わせて使用する事により、超軽量かつ非常に頑丈な素材でトランジェント性能の高い中低域サウンドを生み出します。

ここがポイント!

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X-ARTツイーター : リボンツイーターを実際に触ってみると、驚くほど柔らかくてしなやか!高域を再生するのに素材を「硬くする」方向から真逆に向かった1970年代の発明に脱帽です。高域を少し抑えたい、又は出したい時にはスピーカー本体背面のトリムでツイーターレベルを+-4dbで調整可能です。

フロントバスレフポート : バスレフポートが前面にある事もパワー感にプラスして、濃密な低域を体感出来ます。バスレフポートから来る低音の「風」を感じたい、そんなクラブミュージック系のクリエイターにも愛用されるモデルです。そして壁際にセッティングする際も安心です。

モニタースピーカー

ADAM AUDIO A5X 計測 & 試聴結果

モニタースピーカー

上の計測結果グラフをクリックすると ADAM AUDIO A5X と EVE Audio SC205 計測グラフを比較できます

今回計測を行った4つのモデルの中で唯一 100Hzが落ち込まず150Hzに10db近くのピーク、そして10kHz以上が減衰していません。これはA5Xの超濃密な中低域とX-ARTツイーターの実力を反映しています。ドンシャリと評される事もある ADAM AX シリーズですが、今回のセッティングで高域は痛くなくシルキーな心地良いサウンドです。A5X と SC205 のグラフを比較すると、ADAM で築き上げたノウハウを元に正確な音を更に追求したのがEVE Audioで、アダムがアーティスト志向、イブがエンジニア志向と解釈する事もできます。アダムとイブの両方を導入してモニターコントローラーで使い分けるのが理想とも言えますが、ADAM A5X と SoundID Referenceの補正を使い分けるのがベストアンサーではないでしょうか。

試聴データでは楽曲の肝心カナメとなるベースが前に出てフレーズが分かりやすくなり、ドラムとベースが骨太に聞こえます。ハイハットの芯がしっかりして前に出るのもA5Xの特徴です。サウンドエンジニアリングにおける低音は他の帯域をマスキングする悪者になってしまいがちですが、制作時からスッキリした低音で熱量のあるトラックを作るのは難しいのではないでしょうか。低音は人を踊らせる重要な帯域なので、むしろガッツリ出した方がどんどんアイディアが湧いてくる事かと思います。アーティスト志向のモニタースピーカーには SoundID Referenceを導入して、トラック制作時は補正OFF、ミックス時は補正ON、それが今どきな制作スタイルと言えるでしょう。

ADAM AUDIO
A5X (1Pair)
¥102,190
本体価格:¥92,900
5110ポイント還元

プロが自宅で使う人気の小型モニタースピーカーその4:FOCAL PROFESSIONAL SHAPE 40

モニタースピーカー

オシャレなデザインに詰め込まれた独自の技術が輝く、4インチ密閉型の大傑作

SHAPE 40 のデザインにはフランスらしい上品な華やかさがあり、ホームスタジオをリッチに演出してユーザーの制作意欲を高めてくれる事でしょう。本体側面に取り付けられたダブル・パッシブ・ラジエーターもデザインに一役買っていますが、左右対称に設置することで本体の振動を打ち消し合い、4インチとは思えない優れた低音再生能力を実現しています。ウーファーは高品質な亜麻繊維コアを二つのグラスファイバー・レイヤーで挟む複合素材でできており、優れた弯曲剛性と内部ダンピング特性で限りなくニュートラルな中低域を再生します。そしてMシェイプ/リバースドーム・ツイーターは、指向性が緩やかで高解像度な高域を、より柔軟なリスニング・ポジションに届ける事が可能です。

本体の底面にはスピーカーの角度を微調整する角度調整用のスパイクを搭載しているのも嬉しいですね。このスパイクはスピーカー設置角度の調整だけでなく、スピーカーが接するスタンドやデスクへの振動を削減する役割も果たします。SHAPE 40 はクラスを超えた躍動感と低域再現性を持ちながら Focal 譲りのバランスの良さを失っておらず、この価格帯においては驚異的な高水準モニタースピーカーと言えるでしょう。

ここがポイント!

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ダブル・パッシブ・ラジエーター:現在モニタースピーカーのほとんどが採用しているバス・レフレックス(バスレフ)方式とは違い、密閉型となるSHAPE 40 の低域は正確に音が止まる高い解像度を持ちます。60cmという極めて近距離でのリスニングでも驚くほど伸び伸びとした低域特性、クラスを超えた躍動感を持ち、スピーカーの背後や左右にスペースを確保できない設置でも、高い解像度を保った低域を再生します。

本体背面に3つのEQノブを搭載:80Hz以上ハイパスフィルタースイッチのほか、3つの無段階EQノブを搭載。250Hz以下シェルビング(±6dB)、160Hzピーク(±3dB)、4.5kHz以上シェルビング(±3dB)でスピーカー設置環境による影響を改善したり、自分好みの音色にカスタマイズする事が可能です。

モニタースピーカー

モニタースピーカー

FOCAL PROFESSIONAL SHAPE 40 計測 & 試聴結果

同じ4インチサイズの GENELEC 8020DPM と比較すると SHAPE 40 の方が70Hz付近が出ており、ダブル・パッシブ・ラジエーターが良い仕事をしています。5kHzから上の帯域がシェルビング状に約3db落ちているのが「ナチュラルで優しい」と評される SHAPE 40 のキャラクターを作っており、試聴データでもギターサウンドのピーク感がナチュラルに和らいでいます。密閉型のタイトな低音と、パッシブ・スピーカーのような「自然で無理をしていないサウンド」が人気で、どんなジャンルでも心地良く聴かせてくれます。特に生楽器においてはダイナミックかつ繊細に、目の前で演奏しているかのような感動的なサウンドが描写されます。パッシブ・ラジエーターが本体側面にある事も影響してサウンドに立体感が増すため「楽曲が良く聞こえすぎる」という一面もありますが、リスニングはもちろん映画を観たりゲームをしたり、楽曲制作以外でも音楽を楽しめる最高のスピーカーです。2017年の発売直後から大人気となり生産が追いつかず、2020年のステイホーム需要で再び品薄状態となった、4インチ密閉型スピーカーの大傑作です。

SHAPE 40 が覚醒する裏技

エンジニア志向のモニタースピーカーと SHAPE 40 を併用しているプロフェッショナルが多いのも頷けますが、今回は SHAPE 40 から新しい顔を引き出す実験を行いました。本体背面にあるEQノブを全てMAXにすると、キャラクターがパワードスピーカーらしいパワフルなサウンドに激変するのです。
( 上の計測結果グラフをクリックするとEQをブーストした計測グラフが表示されます )
200Hz付近からローエンドまでガッツリと出て、6kHzから上がシェルビング状にブーストされ、まるで獣が目を覚ましたかのように強力なサウンドになりました。このフルブースト状態のまま SoundID Reference で再度測定を行い補正をかけると、再生レンジが広ったパキッとしたサウンドとなり、エンジニア志向のポテンシャルを発揮するのです。下の試聴データは低域、高域ともに一皮むけた、覚醒後の SHAPE 40 のサウンドです。

SHAPE 40はナチュラルな、楽しく音楽を制作するアーティスト志向のモニタースピーカーでありながら、広いレンジと高い解像度を生かしたエンジニア志向の使い方も可能です。特に EQブースト + SoundID Reference の裏技は楽曲制作に必要な “気分転換” にとても役立つ事でしょう。サイズ感、デザイン、性能、10万円を切る価格、全てがホームスタジオにマッチした最高のモニタースピーカーです。

Focal
SHAPE 40 (1 pair) ★4/30まで!制作環境アップグレードSALEファイナル!
¥112,800
本体価格:¥102,545
0ポイント還元

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4つのモデルをバイノーラル録音で徹底試聴

色の付いた再生ボタンを次々に押すと自動で音が切り替わります。バイノーラル録音ですのでヘッドホンでお楽しみ下さい。ヘッドホンにも固有の周波数特性がありますので、できれば SoundID Reference のヘッドホン版 SoundID Reference for Headphones の使用をお勧めします。マイクによる計測は不要で、自分が使っているヘッドホンのプリセットを選ぶだけで正確なサウンドに補正されます。


楽曲の聞き所はココ!

ハイハットの質感
女性ボイスの立体感
シンセとギターの分離感
ギターサウンドのピーク感
ギター8分音符のアタック感
ベースのフレーズと量感
キックのローエンド

mr_scale-eye記事内で使用した各スピーカー特性グラフは、私の個人的な制作環境で計測した限定的なデータです。全ての環境でこの特性になる事はありませんので、あくまで参考データとしてご活用ください。この記事であなたにピッタリのモニタースピーカーが見つかりましたら幸いです!
Writer:SCFED IBE

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記事内に掲載されている価格は 2023年11月14日 時点での価格となります。

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