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自宅のモニター環境をアップするのは?
皆さんはこんな事を思ったことはありませんか?
「モニタースピーカーで鳴らした音と完成した2ミックス音源のバランスが変わっているように感じる」
「正しいモニタースピーカーの設置方法がわからない」
「どこにどういった吸音をすれば効果的かわからない」
こういったモニター環境の悩みは初歩的なことかもしれませんが、初めのうちは部屋の音響特性の違いやどのようにすれば効果的なのかがわからず、なかなか解決できない悩みでもあります。また長年自宅で音楽制作をされている方でも、モニター環境作りの正確な手順を知らずに来ている方も多いかと思います(かくいう筆者もその一人でした・・・)。
そこで今回はモニタースピーカーの設置手順から、身近にあるものでの吸音方法によってどこまでモニター環境を向上できるのかということを、実際に現役のエンジニアがDTM部屋に訪問し、そのアドバイスを元に実現しようという企画を実施してみました!
この企画に賛同してくださったのは、Rock oNセミナーなどでおなじみ、マスタリングエンジニア森﨑雅人氏です。
DTM部屋は筆者の部屋に来て見て頂き、どうすればモニター環境をアップすることができるのか、その方法をアドバイスしてもらいました。
どのような結果になるのか、ドキドキしながらも、ありのままのDTM部屋のモニター環境をチェックしてもらいました!
診断前
今回はモニター環境をチェックする筆者の部屋は、鉄筋マンションの6畳のワンルームで、防音、吸音対策は特になし。ケーブルや電源なども標準的なものです。
所有機材
○ オーディオインターフェイス UNIVERSAL AUDIO:Apollo Twin DUO / Steinberg UR22mk2
○ モニタースピーカー JBL 305P mk2(スピーカースタンドは、ISO Acoustic ISO-130に設置)
○ ヘッドホン Focal Listening Professional、SONY:CDR-900ST
PCのiMacに、Apollo Twin DuoをThunderbolt接続しています。
モニタースピーカーはApollo Twin Duoのモニターアウトから305P mk2に接続しています。
改造に向けて
ここで森﨑氏にまずいつもスタジオで使っているリファレンス音源を聞いて頂き、モニターの印象や気づいたことを語って頂きました。
「ポイントは大きく3つですね。
1)まずはPCディスプレイの位置ですね。
2本のモニタースピーカーに対してセンターに設置していないため、ボーカルがセンターに定位していません。さらにスピーカーよりPCディスプレイが前にあるため、その背面に音が反射して、音が前に出きってない印象があります。
2)モニタースピーカーの位置がリスニングポイントよりもかなり高いので、ローが足らないですね。
スピーカースタンドは無くても良いかもしれません。
3)部屋の特性は響きが多い印象です。
会話も明るく聞こえますので、全体的にハイが響いているのが分かります。この余計な響きを抑えれば、だいぶモニターの特性が変わると思います。今回は響きを抑えれば良いので、鳴りが地味な部屋より調整はしやすいと思います。
森﨑氏の診断で、色々とモニター環境の問題点が色々と出てきました。ではこれらを実際にどう解決していくのか?次から見ていきましょう。
劇的!お部屋改造の実施
ディスプレイを上の台に乗せ、モニタースピーカーの後ろに来る位置に置く。
まずは先ほど出たポイント1)を解消すべく、PCディスプレイがスピーカーよりも前に出ないようにするために、上の台座へ移動しました。これだけでかなり音がすっきりした印象です。
森﨑 氏「スピーカーの前にPCディスプレイがあると、そこで音が反射して音のフォーカスが狂ってしまいますので。」
ディスプレイがセンターに来るよう、メジャーで左右のスピーカーまでの長さを測る。
ディスプレイとデスクにテープ(養生テープ、マスキングテーマどちらで可)を貼り、左右のスピーカーの等間隔のところにセンターが来るようにする。
そこでディスプレイとデスク両方のセンターを合わせて、マジックで印を入れる。
このセンターの位置はReference 4などのモニター補正ソフトを使う時、センターマイクを立ててキャリブレーションをする時などにも目安にもなります。
森﨑 氏「左右のスピーカーの位置を調整するために、センター出しをすることは、とても大事な作業です。
何かの拍子にディスプレイの位置がずれてしまっても、このセンターのマーキングがあると簡単に元の位置に戻すことができますので。」
スピーカーの高さを調整する。
次にポイント2)について対処すべく、モニタースピーカーの高さを調節します。
森﨑 氏「正しいモニタースピーカーの置き方は、ツイーターを耳の高さに揃えるのが望ましいです。
現状では耳よりも高い位置にあるので、スピーカースタンドが無い方が良いかもしれません。」
試しにスピーカースタンドを外したらデスクが振動してしまったので、スタンドは置くことに決定。
次にこのスピーカースタンドは2つにセパレートできるので上段のみにしてみました。
森﨑 氏「この方が音の立ち上がりも速いし、ローも出て来て全然良いですね。ただキックのピッチが少し高めに聴こえます。」
ここで森﨑氏からの提案でスピーカースタンドを並列にしてスピーカーを横置きに。するとローが急に出て来て安定したキック、ベースが再現された!
森﨑 氏「横置きにしたらかなり低い帯域まで聴こえるようになりましたね。かつ最初の状態のハイのシャリシャリ感も抑えられて、ピラミッド型の良いバランスになりました。
僕のスタジオのモニターのバランスに近づいて来ましたね。」
自分の部屋でこんなにスピーカーが鳴るとは。。。モニタースピーカーの高さと置き方でこんなに変わるのかと、この日1番の衝撃がありました。
モニタースピーカーの間隔、壁からの距離、角度を調整する。
2本のスピーカーとリスニングポイントが正三角形になるようにスピーカーを置く。
ツイーターを耳の高さに揃えて置く。
角度はスピーカーの内側が少し見えるぐらい。
スピーカーと壁からの距離も左右同じに揃える。
今回は2本のスピーカーの間隔は70cmで、上記に従いスピーカーの角度を調整しました。
森﨑 氏「スピーカーの煽りの角度を調節する際、スピーカーの内側が少し見えるぐらいが望ましいです。煽りの角度がきついとリスニングポイントより前に音像が定位してしまいますので。」
ここでもディスプレイのセンターポジションの印がとても役立ちました!
部屋のフラッターエコーを抑える方法
ここから壁からの音の反射を抑える作業です。
森﨑 氏「反射を抑えるには吸音材を使うのが一般的ですが、無い場合には新聞紙で代用出来ます!これは僕が専門学校の時、サウンドレコパルという雑誌のお宅訪問の際に、及川公生氏から教わった秘伝の技(及川式)です。
部屋の中で手を叩いてビンビン、と響いている箇所で余計な反射が生じていますので、その箇所を丹念に探して少しずつ貼っていくのがポイントです。」
まず左側の壁の反射を抑えるために、養生テープで新聞紙を貼りました。すると左右のスピーカーから聞こえる音量差が少なくなったように聴こえました。
森﨑 氏「左側の壁からの反射が少なくなったので、左右の響きの差を少なくすることが出来ました。」
続いて森﨑氏が余計な響きがある箇所さらに探していきます。
リスニングポイントの後ろ側の壁の反射を抑えるためにもう1枚新聞紙を貼りました。
森﨑 氏「だいたい同じような高さに貼っていますが、この高さは決まっているわけではなく、音の反射を抑えるべきポイントの高さがが同じだったということです。」
最後に入り口のドア部分に貼りました。ここでもほぼ同じくらいの高さです。これでだいぶハイの嫌な響きが抑えられました!
森﨑 氏「ドアなど硬い材質の場所は反射しやすいです。大切なことはむやみに新聞紙を貼りすぎないこと。心地よい響きは残しておいた方がスピーカーの鳴りが良くなります。」
診断後
森﨑氏による総評・感想
森﨑 氏「音がしっかり前に来るようになりましたね、改造前と比べて音のクオリティーが300%増しになった印象です。
モニター環境を改善したポイントはいくつかありますが、まずはPCのディスプレイの位置はスピーカーのフロントバッフル(前面)よりも前に出ないことです。
それと今回のケースは特殊でしたが、モニタースピーカーを横置きに設置した効果が大きいです。
縦置きと横置きができる場合には両方の置き方をぜひ試してみてください。
より低音を出したければスピーカーを壁に近づけて、抑えたければ壁から離します。直置きでデスクが振動してしまう場合には、インシュレーターやスピーカースタンドを置くことが望ましいです。
スピーカーの高さを左右で揃えるのはもちろんですが、モニタースピーカーの煽りの角度も左右で揃えることが大事です。他にもスピーカーケーブルやパワードスピーカーの電源ケーブルの長さも左右で揃えることが望ましいです。
新聞紙は貼り過ぎても音が地味になったり躍動感がなくなるので、一度に沢山貼らずに少しずつ貼っていくことをお勧めします。
新聞紙有りと無しで聞き比べながら進めてください。」
Reference4で視覚的に違いをチェック!
参考までにモニタースピーカーの特性を測定すべく、この日のために用意したSonarworksの音響補正ソフトウェアであるReference4で測定してみました。
【改造前】かなり左右でばらつきがある印象です。特にロー部分の誤差が顕著ですね。。。
【改造後】ロー部分を中心に左右の誤差がだいぶ縮まりました!
まとめ
いかがでしたか。お金をかけずともテープやメジャーなどを使ってきちんと計測して、正しい位置に設置することでモニター環境をアップできることがわかったと思います。
さらに新聞紙を部屋の反射が多い適切な場所に貼ることで、それらを十分に抑えられることもわかりました。
ここからスタートして、新聞紙を吸音材に変えれば更なるグレードアップが可能です。
是非皆さんも試してみてはいかがでしょうか。
DTM部屋のモニター環境をきちんと構築することは大変奥が深く一朝一夕では実現するのは難しいですが、一つ一つの積み重ねでより音楽制作しやすい環境を作ることが可能です。
森﨑氏には今回この企画に快諾して頂き、大変有意義なコメントやアドバイスを頂けたことに、深く感謝を申し上げます!
今後も機会があれば今回触れられなかった吸音方法やケーブルや電源によるグレードアップ方法を紹介できればと思います。
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記事内に掲載されている価格は 2021年1月10日 時点での価格となります。
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