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26
Apr.2017
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History of Technologies FOSTEX ~歴史の継承と象徴、プロフェッショナルモニター NF01R

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1949年に3.5インチスピーカーユニットを製造開始してから、世界各国でユニットをODM/OEM供給し、日本を代表するメーカーとなったフォスター電機株式会社。AV用スピーカーや車載用スピーカーから携帯電話などの小型デバイスに至るまで、我々も無意識のうちに生活の中でその技術に触れているはずだ。そしてその自社ブランド部門がFOSTEXとなる。FOSTEXといえば累計15000台の販売実績を記録したニアフィールドモニター、NFシリーズが真っ先に思い浮かべられるだろう。今回はNFシリーズの誕生から、最新作となるNF01Rの開発秘話まで、その核心に迫っていく。

※本記事はProceed Magazine 2017 Spring 号に掲載されたものです。

FOSTEXブランドを生んだ源流を辿る

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フォスター電機株式会社 フォステクスカンパニー
左:技術課 仲前 学 氏
右:営業課 佐藤 昭宏 氏

Rock oN(以下、Rock):まずFOSTEXの成り立ちについて伺えますでしょうか。

佐藤 昭宏 氏(以下、佐藤):はい、FOSTEXはフォスター電機株式会社のブランド部門、いわば事業部というような形をとっています。フォスター電機としてはスピーカーユニットのOEMを中心として事業を展開しており、昨今はヘッドフォンやイヤフォンへも取扱製品を拡張しています。『未来社会に音で貢献する』事を目指している企業で、戦後まもなくSONYのトランジスタラジオTR-55に搭載されたスピーカーユニットG205などを作っていました。当時は三鷹に会社を構えていましたが1960年以降から現在まで昭島市に腰を据えています。

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SONY TR-55
FOSTER

Rock:当時のトランジスタラジオは爆発的なヒットでしたね。なぜ昭島市に工場を移転されたのでしょう。

201703Fostex_5_1佐藤:スピーカーには紙を使いますが、紙は水で漉いたりしますよね。その観点からなるべく水のきれいな場所を探した際に、昭島市が東京近郊で唯一地下水を使っていたことが移転した理由と聞いています。FOSTEXは1973年に設立しまして、FEシリーズなどクラフト用スピーカーで評価をいただいて、その後録音機などの事業を始めていきました。もともとはスピーカーユニットから創業したこともあり、中でも再生の部分を特に強化しています。再生といっても皆様に聴いていただく音楽の元を作っていただくこと、やはり制作側が起点になりますので、そういった方々に使っていただくものとしてその後NFシリーズも始まっていきました。

Rock:最初からスピーカーユニットを始められていたんですね。私もセンターコーンのタイプが記憶にあります。

佐藤:はい、ユニット単体から始めました。FEシリーズの10cmバージョンがスピーカーユニットの源流となっており、マイナーチェンジはしつつも未だに現行商品として支持いただいています。クラフトとしてだけではなく業務設備などでも使っていただいており、年間数万本単位で売れています。当初は先ほどのSONYトランジスタラジオTR-55を起点に成長した訳ですが、以降は音が出るあらゆる製品、たとえば家庭用テレビなどにも入りましたし、現在でも主力製品ですが車載用スピーカーなども生産しています。

Rock:普段から実に様々な場面でFOSTEXのサウンドを耳にしているわけですね。

FOSTEXが継承する「モニター思想」

Rock:ではFOSTEXとして自社ユニットを出した当時の目的はどうだったのでしょう?

201703Fostex_3_1佐藤:やはり当初はOEMをやっており表に出ないことが大前提でした。しかしユニット自体を長く生産してきた自負もあり、自社でブランドを立ち上げることで「見てみていただく機会を増やそう」というのがFOSTEXの起点です。当時の国産メーカーと比べてもシンプルに受け入れやすい音で尖ったサウンドイメージは昔からなく、コストパフォーマンスが高い事が特長でした。

Rock:確かにFOSTEXユニットは買いやすかったですね、当時子供が背伸びして買える値段ギリギリでした。

佐藤:そうですね、自作が必要ですが海外製品に比べるとわずか2、3割の価格で買える。その後、長岡鉄男先生のようなクラフトブームがあり、未だにその箱のシステムを使って入れ替えるユニットが欲しいという方や、これから作りたいという若い方もいます。スピーカーは少し自分で手を加えるだけでも音が変わって楽しめるものだよ、という事は続けて啓蒙したいです。今でも周辺機器となるネットワーク部品はやっていて、総合カタログに数式やノウハウは載っていますよ。

crossover

Rock:昔のままですね!!これらのユニットやネットワーク部品を箱に入れて製品化するのはそれからどれくらいでしょう?

佐藤:60年代に平面ツイーターなどが出て来たころ、あくまでクラフトベースにおいて作ることが大変だという声を受けて箱を用意したのが当初はきっかけでした。オーディオメーカーとしての発想で出てきた製品はその後80年代に出たG850でリスニング向けの小型モデルでした。本業でOEM事業をやっていることもあり、邪魔にならずかつFOSTEXの名前の出せるものとして小型の製品からでしたね。ただ、90年代頭になって自社ブランドを育てていこうという考え方に変わっていきました。NFシリーズはその走りであり象徴で、システムとしての考え方を切り替えた最初の製品でした。

弊社の場合だと特徴的なコーン紙を採用していて、リスニング系モデルでは紙だけでなくアルミ合金やマグネシウムも使っています。リスニングは本来楽しむものですが、積極的な加工をするのではなく、モニターの延長線上として「モニター思想」を持ったものとして作っています。聞いていてつまらなくなってはいけないのですが、明らかに素材の音から離れることがないようにモニターライク的で楽しめることが特徴です。

Rock:今のブランドを築いたヒット製品はなんでしょう?

x15佐藤:そうですね、FOSTEXという意味ではスピーカー事業を立ち上げ以降、78年ごろに業務用マイクなどもありました。当初製品はスピーカーのみで録音器としての技術を持ってはいませんでしたが、1983年に4トラックのカセットMTR『X-15』を開発し、これが世界的に爆発的大ヒットを記録しました。数でも売り上げでもいまだにその記録は破られていないほどです。

a8_smRock:A8は歴史的ヒットプロダクトでしたね。

佐藤:そうですね、今でいうDTMラインの源流がそこですね。近年は民生用の商品がラインナップとして増えてきているのですが、そのような中でNF同様にプロフェッショナルなプロダクトイメージがPRする上でも重要である、というところに立ち返り始めています。

NFのサウンドを象る開発ポリシー

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Rock:今回NF01Rが始まる明確なきっかけとはなんだったのでしょう。

佐藤:一つはプロフェッショナルな現場で使われる製品を作るべきだという意思ですね。初期NFシリーズのころは完全にゼロベースから始めまして、当時私もスタジオを毎日回り試聴会を繰り返していました。相手先もFOSTEXの名前は知ってるがPRO用モニターとしての認知はありませんでした。

この話も運命的なタイミングなのですが、当時YAMAHA NS-10Mの生産終了アナウンスが出た時期でもあり、スタジオさんも次のモニターをどうしようという状況で、試聴も無下に断られず受け入れていただけたという経緯はありましたね。もし、NSが生産終了にならず、もしくは10Mのスタイルのまま素直にパワード化していたら状況は変わっていたかもしれません。スタジオ回りを続けておかげさまで評価をいただき、著名スタジオから口コミでコンシューマの方にも使っていただき、最終的にはシリーズ全体で15000台を記録しました。

Rock:素晴らしい地道な努力が実を結んだわけですね。ヒット要因の一つとも言えるNFの特徴的なHP構造を開発したきっかけはなんだったのでしょう?

201703Fostex_9_1佐藤:そうですね、どのメーカーを見ても定番のユニット構造があって、材料や製造工程での改善余地はある。しかし劇的に変えるようなユニットは市場になく、当時研究開発をする中で建築構造を取り入れて形を変えればいいのではないかという発想が起点でした。しかし、この形を作るのは相当大変で、発想ではたどり着いても造形上実現ができません。これだけ凹凸した形状に綺麗に貼り付けてつぶれないようになんて通常はできません。

Rock:確かに、複雑な造形ですよね。なぜFOSTEXは紙にこだわったのでしょう?

201703Fostex_24_1仲前 学 氏(以下、仲前):紙はいろいろな材料を混ぜ合わせて、会社独自の振動版や音作りができます。紙より硬い素材、例えばカーボンなどを混ぜることでアレンジが可能です。この振動板を例にすれば、普通のパルプにバナナパルプを混ぜていて、カーボン、アラミド繊維などが入っています。軽くて硬い構造でかつ音の伝搬速度がよく、内部損失が適度にあり剛性があります。紙以外でもFOSTEXはマグネシウムをすごく推していますね。混ぜ物を入れると音が変わってしまうので、純マグネシウムにこだわっています。これがすごく加工のしにくい素材でNFシリーズ後にトライ&エラーしたのですが、形がつくれませんでした。マグネシウム合金で妥協するか悩みましたが、損失度合いや響きがまったく違ったため、開発を重ねて純マグネシウム素材でここまでやれるところまできました。

Rock:当時黄色いウーファーやデザインもセンセーショナルで、YAMAHA NS-10Mと双璧になる規模感でしたね。

佐藤:そうですね、それはとにかく目立たせるためで、バナナパルプなのでと言われますがあくまであの色は着色です。今だとKRKなどありますが当時黄色いコーン紙のスピーカーなんてありませんでした。名前はヒネリなくニアフィールドの略、かつ1番目のモデルだったのでNF-1です。やはり当時のNS-10Mは目標にしていましたね。我々がスタンダードになれるくらいの製品を作れる、ということを世に出したかった。その後アクティブモデルが台頭し、NF-1の次にNF-1Aをリリースしました。アクティブ化については1999年のリリース直後から要望をいただいていた点です。

Rock:もう少しNFについてですが、ツイーター部分はなぜこの形になったのでしょう?

佐藤:そこは単純にウーファーとのバランスです。クラフト用ユニットとして販売していたFT28Dツイーターがベースになっています。NFに合わせてチューニングは変えていますので同じではないですが、各種テストする中で最もマッチしていました。ソフトドームなので音的には穏やかですが、ウーファー自身がスピード感があり固めなので、高音域も固めにしてしまうとかなりピーキーになりますから柔らかめな雰囲気が出せるものを選択しています。つまり聴感上の音色のトーンが理由ですね。

NF-01Rが伝えるメーカーの開発力

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Rock:第1期リリース以降ですが、この間にブランドとしての方向性はどうなっていったのでしょう?

佐藤:はい、2014年まで最後にリリースしたNF-4Aを販売していましたが、2012年の段階で1、1A、01Aという順で生産・販売を終了していきました。実はこれには事情があって、その当時法規制が厳しくなったPSEや環境保全へ対応しようとすると音が変わってしまったんです。メーカーとしての商品の一貫性を考え、これでは品質を担保できないということで、一旦終了せざるを得ませんでした。

Rock:当時リファインしてやり直す状況にはならなかったのでしょうか?

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佐藤:そうですね、実は最後のNF-4Aは今回のNF01Rのように次のステップに行こうとして作られた製品だったんです。NF01Rに採用されているHR振動板ウーファーを弊社で最初に搭載したのがNF-4Aでした。

ツイーターも純マグネシウム素材のハード系に変更し、アンプはツィーターはアナログ、ウーファーはデジタルで駆動するというハイブリッド仕様。ネットワーク部分もDSPで処理すると言う当時かなり先進的なモデルでした。しかし色々な要素を一気に取り入れてしまったために、やや扱うのが難しい製品になってしまいました。そこにさきほどの法規制の問題も重なり、10年以上続けてきたNFシリーズですが、どういった形で発展させて行くのが良いのか一度立ち止まって仕切り直そうということになりました。

その後HR技術自体はリスニング用スピーカーシステム製品へ搭載するようになり、脈々と発展を続けておりました。プロフェッショナル用モニターは一度歩みを止めて、立ち位置を固めてからということで、改めてNF01Rの企画が始まりました。

Rock:なるほど、仕切り直すタイミングだったわけですね。ところでHPからHR形状へと変化するきっかけはなんだったのでしょう?

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佐藤:HPの形状でもある程度理想点に行けました。しかし本当に行きたい理想にたどり着けてはいなかったんです。HPではコーン紙の凹凸の稜線が直線的だったのですが、HRでは捻りを加えて曲線的になっています。曲線になる事で強度が上がるだけでなく、不要な振動のばらつきがよりうまく分散されるのです。はじめはPC上でシミュレーションしますが、実際は実機でのトライ&エラーです。ただし試作するにも型が必要なので、いくつも作れませんから、設計開発者のノウハウで成り立っていますね。

Rock:周波数が下がると平面振動板の方がいいとよく言われますがどうなのでしょうか。

仲前:長距離ではそうかもしれませんが、リスニング距離が近い分には空気を一気に押し出しているので、同時に出ている以上遅れはないと考えられます。振動板をフラットにしてしまうと弱い部分が顕著に出て音が消えています、平面駆動は相当パワーをかけないと押す力が弱くなりますからね。平面駆動が良いとされる方もいますが、FOSTEXはこの形を前面に押してやっていますね。

Rock:まさに今回NF-01R登場の理由は原点回帰、メーカーとしての実力を伝えるという点ですね

佐藤:そうですね、昔のイメージを引きずるのではなく、我々がやってきたことの再スタートを切りたいという意味でデザインを引き継いでる部分がありますね、01Rでご挨拶をして新しいFOSTEXを打ち出していこうと考えています。

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Rock:最後に佐藤さん、今回の01Rはユーザーにどう受け入れられると思いますか?

佐藤:従来からNFを使っているユーザー様にとってはブラッシュアップされたリプレイス品として。またおかげさまでセールス的に成功したモデルなのも再登場の理由の一つですから、当時手に入れられなかったお客様にも手にしていただきたいです。そしてプロフェッショナルな市場にFOSTEXが製品を打ち出せるということを見ていただきたい、知っていただきたいというのがもう一つですね。

Rock:では仲前さん、開発担当としてのポイントはどうでしょう?

仲前:今回は低域を出してやりたいというのがもう単純な回答ですね。同じサイズで同じ構成で作るという前提で、どういじれば変わるかを考えました。磁気回路を1ランク上のマグネットで駆動力をあげ、キャビネットの中の内部構造も変えて低域を出しています。昔使っていた方が1サイズ大きなシステムで鳴らしてるかのように鳴ってくれるように作りました。仕様の再生周波数帯域が変わっていますが、あれは平均音圧が変わるとバランスが変わるのでスペックが変わります。同じ環境で01Aと01Rの測定結果を載せた方が良くて、低音を変えた部分がSPECだけでははっきり見えないので、量感を出す上での工夫を強く打ち出したいですね。

佐藤:01Aの時は40kHzまで伸びてると書いていますが、今回25kHzまでとしています。実は同じくらいの結果が出てるのですが、SPECの測定方法を厳しくした結果こうなっています。

仲前:はい、ツイーターはまったく変わってないですからね。数字だけ追われてしまうと特性が落ちてるように錯覚してしまうと思いますが、実際はそんなことはありません。重量が下がっているのは当時のユニットが防磁タイプのものだったためです。アウターヨークというものですが、それを取っ払った都合上、全く同じ部品が使えなかった分重量が軽くなっています。その分できた余分でマグネットは大きくなっていて、磁石はフェライトマグネットで1ランク上のものに変えています。こういったブラッシュアップのポイントも実際にRock oN店頭また弊社ショールームで体感いただきたいですね。

NF-01Rであらたなブランディングを開始したFOSTEX。実績あるNFシリーズを再びゼロベースから開発するということは、従来のユーザーに対しても、また自身に対しても大きな挑戦となる出来事と言える。OEMというスタイルで確固たるポジションを得ていた同社が自社ブランドをスタートさせる際にも、そこにあったのは同様のチャレンジであったのではないだろうか。技術と革新を繰り返すのはメーカーの宿命とも言えるが、その継承されてきた技術を生まれ変わらせ、ユーザーに向けて明らかな発信をしたのが今回のNF-01Rと言える。YAMAHA NS-10Mに起源を持つ小型プロフェッショナルモニターとしてFOSTEXの象徴となるモデルが誕生した、すぐそこにあるその未来を体感してほしい。

FOSTEX
http://www.fostex.jp/

※本記事はProceed Magazine 2017 Spring 号に掲載されたものです。

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