
「自宅のグランドピアノやアップライトピアノの演奏をマイクで録音してみたい!」と考えてる方は多いと思います。
ハンディレコーダーやスマホで手軽に録音している方も多いかもしれませんが、せっかくの高級感あふれる生ピアノの演奏を、可能な限り臨場感ある音質で録音にするには、どうしたらいいのでしょうか?
毎回Neumann製品の魅力を初心者の方にもわかりやすく伝えようと全力で取り組むこの企画、第2弾として今回は長年レコーディング機器の定番として世界中の方に愛用されているNeumannの誇るコンデンサーマイクで生ピアノ録音に挑戦してみました。
Rock oNではエンジニアの方やアーティストの方(あるいはRock oNスタッフでもレコーディング経験に長けた者)にレコーディングの仕方を実践してもらうことが多いですが、今回は「Neumannのコンデンサーマイクで生ピアノを録音したらどんな音がするのか?」というところの主眼を置いているので、レコーディングの正しいやり方講座というより「専門的な知識や豊富な経験がなくても、Neumannマイクならここまで録音できる!」ということで割とライトな視点で、入門編として読んで頂ければ幸いです。
それでもマイクはNeumannを代表するエントリーモデルからプロのレコーディングで使われる人気のマイクまで幅広くご用意!憧れのモデルを手にレコーディングにチャレンジしてみました!
★前回はこちら

「Neumannをめぐる冒険 -Road Of Neumann-」第1章:KH 80 DSP導入&MA 1挑戦編
●ピアノ奏者プロフィール
小坂友紀子さん(音楽・ピアノ講師)

洗足学園音楽大学卒業。同大学院音楽研究科卒業。大学在学時にローラント・バーポーランド国立クラクフ室内管弦楽団とグリーグの協奏曲を共演。大学卒業時に優秀賞を受賞し、卒業演奏会に出演。
第12回“万里の長城杯”国際音楽コンクール第3位。第15回“長江杯”国際音楽コンクール優秀賞。第30回“アジア国際音楽コンサート“新人賞。
洗足学園音楽大学及び大学院授業、室内楽の伴奏、新高輪プリンスホテルラウンジ演奏、東京バッハ合唱団などの数々の合唱団の伴奏を歴任。
日本リトミック研究センターディプロマ認定講師。ヤマハ「ぷりんと楽譜」アレンジャーを務める。
宝塚歌劇団フェアウェルパーティーBGM奏者や児玉アミ監督短編映画「よーい、スタート」の作曲から演奏を手掛ける。
ピアノを気軽に楽しんでもらいたいという思いから、YouTubeチャンネル「ゆっこすピアノ」を開設。
オフィシャルホームページ:http://ww.yukiko-kosaka.com/
YouTubeチャンネル:https://youtube.com/user/yukkos1128

今回収録した場所は、自宅の地下に設置されたほぼ音楽スタジオのような部屋です。グランドピアノのほかにアップライトピアノや電子ドラムもあり、普段はここでピアノレッスンやバンドのリハなども行われるそうです。

収録は、高級感溢れるYAMAHAの88鍵グランドピアノC3になります。
小坂さん「家で生ピアノを録音できることが普通にできるかもしれないということですごくワクワクしています。今回はピアノ録音のマイク選びの一助になれるよう頑張ります!」
演奏曲「エリーゼのために」(ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン)
事前準備
●生ピアノ録音の方法
「生ピアノの録音はピアノが録れたら一人前」と言われるほど、収録することが難しいものとされています。今回事前にピアノ録音に関する書籍を読んだり、ネットでの情報収集、さらにはレコーディング実務経験があるスタッフに話を聞いたところによると、下記のようなことが録音の際に留意するポイントとなります。
●音が焦点を結ぶところにマイクを置く一つの楽器として響くポイントを探す。
●サウンドホールの辺りを30cmくらいの距離が狙うと良い結果が期待できる(この場合の距離はあくまで目安)。
●必ずしも(マイクを2本立てて)ステレオ録音する必要はなく、ステレオ感が必要とない楽曲ではマイク1本でも十分収録が可能。
→2本用意できたマイク(KM184とMCM)は、モノラルとステレオ。それぞれで収録してみました。
●無指向性を選ぶと部屋の響きも良く捉えることができる。
→今回(単一指向と無指向)指向性が切り替え可能なものは両方収録して、その違いも試してみました。
●使用したNeumannマイクは4種類

今回使用したNeumannマイクはエントリーモデルからスタジオ定番のマイクロフォンまで4種類です。
・TLM 102(1本):Neumannマイクのエントリーモデルとして、コンパクトながらパワフルな単一指向性コンデンサーマイク
・KM 184(2本):スタジオ業界の標準となった、ペンシル型の小型ダイアフラム・コンデンサー・マイク
・MCM(Miniature Clip Mic System) 114 STEREO SET PIANO(2本):クローズド・マイキングを実現するミニチュアクリップマイクロフォン
・U 87 Ai(1本): 最も有名で最も広く使用される、Neumannスタジオマイクの定番。3種の指向特性切り替えも可能
●使用したオーディオインターフェイスもNeumannで!
今回Neumannマイクの特徴をわかりやすく紹介しようと、オーディオインターフェイスには、マイクと同じNeumannから昨年発売されたMT 48も用意!音質もさることながらタッチパネルによる操作性も抜群で何種類ものマイクを使っての収録にも迅速に対応できました。
レコーディングに際してはプリアンプやコンプレッサーなどを一切使わず、収録しました(24bit/48kHz)
いざレコーディングに挑戦!
1) TLM102で収録

まずはコンパクトながらパワフルな単一指向性コンデンサーマイクとして定評があるNeumannマイクのエントリーモデルTLM 102からスタートです。
エントリーモデルとはいえクリアで焦点の定まったサウンドで声や楽器を捉えることができるということで評価は高く、コスパの高いモデルとして人気がある製品です。

まずは演奏者の横に設置してレコーディング。最初なのであえてピアノから少し距離を置いたところでアンビエンス的に収録してみました。

続いてはよりピアノの側に置いてホールを狙ってのレコーディング。小型なので設置しやすく、ブームスタンドのマイクに立てて角度をつけることも可能という点では、よりサウンドホールの近くにマイクを近づけたりすることも可能です。
★印象
Neumannマイクのエントリーモデルとはいえ、高域から低域までピアノの芯の音まできちんと収録されているのはさすがといった印象です。
小坂さん「音の質感、音圧がしっかりと感じられました、素晴らしかったです。横に置いて録音すると、蓋の中で録るより音がよりクリアになるので、ごまかしが効かず、勉強になると思いました。サウンドホールの近くで録音した方は、響きがプラスされて、より丸みのある音になっていると感じました。」
2) KM 184で収録

続いてはペンシル型のマイクで、単一指向性のKM 184です。1本でのモノラル録音と、2本使ってのステレオ録音を試してみました。

まずはKM 184を1本でモノラル録音。ピアノの側に置いてホールの響きを狙ってのレコーディングです。

続いてもう一本マイクを演奏者の傍に置いて、ステレオ録音による広がりのある音を収録することを狙ってレコーディングを実施。
★印象
単一指向ながらマイク一本のモノラル録音でも部屋の響きまできちんと収録されていて、今度2本のマイクを立ててステレオ収録した場合は、俄然広がりが増している印象です。
小坂さん「弾いた瞬間の立ち上がりの音は一つ一つ綺麗に録れていて、部分的ではなく部屋全体を拾ってくれている感じです。その分音色は実際に部屋で鳴っている音より、ややタイトな感じの音色になっている気がします。」
3) MCMで収録

次は今回使用したマイクで1番新しいそして2022年9月より国内販売が開始された製品MCM(Miniature Clip Mic System) 114 STEREO SET PIANO。
小型ながらその高い性能と豊富なアタッチメントによる設置のしやすさで、Rock oNでも昨年から何度か記事で取り上げてエンジニアを中心に高い評価を受けているマイクです。

まずはMCMをピアノホール内の中央部分に一本設置して、ホールの響きを狙ってモノラル録音。

そしてこちらもMCMを2本設置してステレオ録音を実施。
★印象
コンパクトながらきちんと収録されているのが驚きで、ステレオになるとより臨場感が増すという印象でした。こちらのMCMはアタッチメントのクリップエンドにマグネットがついているので倒れにくく、設置しやすいのがポイントです。マイクスタンドなしでもいいというのは便利ですね。。
小坂さん「小型のマイクとは思えないほど、音の立ち上がりも綺麗でニュアンスまできちんと録れていますね!2本ステレオで立てるとよりクリアになって部屋の響きまで拾われていて、音が左右の耳の近くで鳴っている印象を受けました。」
4) U 87 Aiで収録

最後はNeumannの定番コンデンサーマイクU 87 Aiを試してみました。誰もが一度は憧れるであろうこのマイクロフォン。実機は店頭やスタジオで何度も見ていますが、実際手に取って設置をしたのは今回が初めてでした。このU 87 Aiを使ってグランドピアノの録音にチャレンジしてみます。

まずは単一指向でホールの側からレコーディング。重さがあるので角度をつけるのが難しかったです。
続いて全指向に切り替えます。このマイク一本でどこまで広がりのある音が録れるのか・・・?!

★印象
U 87 Aiはさすが定番コンデンサーマイクといった感じで、音の硬さが少なく温かみというかふくよかさがある印象という感じでした。全指向になるとさらに部屋の響きが加わって臨場感やライブ感が増している印象です。
小坂さん「このマイクはホールで収録したみたいに音の響きまで精密に録音できてますね。だからと言って弾いてる音がぼやける感じがなく心地よさが増す感じがします。単一指向は演奏した音がそのまま録音されている感じで、全指向はよりホールで弾いたように部屋の空気まで収録できているように感じました。個人的には演奏している感じがそのまま再現できている単一指向の方が好みでした。
このマイクがあれば部屋で録音して演奏の微細なところや自分の技術の差まで収録できるのがいいですよね。そういう細かいところまで自分の演奏と向き合えるという意味では、このマイクであれば演奏技術の向上になりますね。」
収録を終えてみて

Rock oN:レコーディングしてみてどうでしたか?
「今日は色々なマイクを試させてもらって、私の部屋でここまでの音が録れるんだ!という驚きがありました。ピアノ演奏をホールを借りてレコーディングすることもあるんですが、このクオリティーのマイクが部屋で録れるのであればその必要もなくなりますね。近さゆえに演奏の繊細な部分まで収録されるので、その分自分の音に対する感度も上げていかないとなって思いましたが、その分勉強にもなるのでホームレコーディングが以前より身近になっている昨今、こういうのがこれから普及していくのではないかと思います。」
Rock oN:今回試してみて、1番お気に入りのマイクはどれですか?
小坂さん「やはりU 87 Aiですね。誕生日プレゼントに欲しいくらいです(笑)」

いかがだったでしょうか?中には結果を聴いて「もっといい音で録れるはずだ!」「Neumannのマイクをなんだと思ってるんだ!」なんて思った方もいたかもしれません。今回はNeumannマイクをもっと身近に感じてもらい、専門的なレコーディング経験がない者でもどこまで生ピアノを録れるか、また生ピアノをコンデンサーマイクで録音することの面白さが伝えられたら…という気持ちで挑戦した企画で、私個人も今回の経験を通じて、Neumannマイクの素晴らしさと同時に奥深さを痛感しました。
今回この記事が自宅にグランドピアノやアップライトピアノがある方にとって、より良い音で自分の演奏を録音してみたいという方の参考になれたら嬉しく思います。次の企画ではまた違うNeumannマイクでアコースティックギターやアップライトピアノ、さらにはボーカルのレコーディングなど、新たなチャレンジをしてみたいと思っています。
●製品情報
・TLM 102
コンパクトながらパワフルな単一指向性コンデンサーマイク
• ノイマンラージダイヤフラムカプセルを搭載したコンパクトマイク
• 歪みが少なく高いSPLを実現するトランスレス回路
• 均一なカーディオイド指向特性
• 非常に高い最大音圧レベル
• 一体型ポップスクリーン
TLM 102は、他の高価なノイマンのマイクと比較するとサイズと機能が縮小されていますが、手頃な価格にもかかわらず、TLM 102はクラシックなテーパーヘッドグリルと有名なノイマンのダイヤモンドの間にクロームのリングを配した、非常に魅力的な外観をしています。
TLM 102のサウンドは見た目と同じくらいスマートです。新開発のラージダイアフラム・コンデンサー・カプセルは、世界中のレコーディング・スタジオでノイマン・マイクロフォンが最初に選ばれた理由である、クリアで焦点の定まった素晴らしいサウンドを実現するためのすべての品質を備えています。

中音域全体にわたって非常にリニアなレスポンスを実現しているため、あらゆる声や楽器の真の個性を捉えることができ、10kHz付近でわずかに上昇してシルキーな高音域を実現します。TLM 102は、大型振動板カーディオイド・カプセルの制御された近接効果(プロキシミティ効果)によって豊かになったゴージャスなボトムエンドも持っています。すべてのシンガーにとって喜びでしょう。
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Neumann TLM 102、TLM 103、TLM 107聴き比べ&インプレッション

Neumann TLM 102のファーストインプレッション by ZOMBIE-CHANG
NEUMANNTLM102 BK(ブラック)
¥88,000
・KM 184
短期間で世界のスタジオ業界の標準となった、小型ダイアフラム・コンデンサー・マイク
• 軸外着色のない均一なカーディオイドパターン
• 非常に低い自己雑音
• コンパクトなサイズで見た目にも邪魔にならない
KM184マイクロフォンは、70年代以来世界的に使用された実績のあるKM84の後継者です。KM84と比較すると、固有ノイズレベルをわずか22dB (CCIR) まで削減したことと、138dBまで音圧の処理能力を上昇させたことで、KM184のダイナミックレンジは24dB増加しています。クラシック・ピアノからヘビーメタル・ドラムまで、多くのアプリケーションの世界的なステージやスタジオのスタンダードとなっています。
またKM 184はスタジオやステージでの使用に適したユニバーサルマイクです。透明感のあるサウンドは、ピアノ、パーカッション、ドラム、アコースティックギター、アップライトベース、バイオリン、チェロ、木管楽器、金管楽器などのアコースティック楽器のための優れたマイクとなっています。小型のため、KM 184は視覚的に目立たず、テレビやラジオのアプリケーションに適しています。
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NEUMANN創立90周年特別企画: 25 Microphone Review with Onkio Haus .Inc
90周年を迎えたNEUMANNマイクロフォン現行主要機種を社音響ハウスのエンジニアが各機種の特徴と活用方法をレビュー!
永久保存版NEUMANNライブラリーです。
・MCM 114 STEREO SET PIANO
クローズド・マイキングの新しい基準

• エレクトレットカプセルの水準を高めたミニチュアクリップマイクロフォンMCMシステム
• NEUMANN Miniature Clip Mic Systemのコンプリートセット ピアノ用
• 必要なコンポーネントがすべて入ったソフトケース入り
ピアノやグランドピアノでミニチュアクリップマイクシステムを使用するための完全なステレオセットです。ノイマンらしくライブで使用されるあらゆるアコースティック楽器からノイマンサウンドでピックアップします。自然なサウンド、実用性、信頼性の高いマウント、そして長寿命という基準を再定義します。
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NEUMANNMCM 114 STEREO SET PIANO
¥172,854
・U 87 Ai
ノイマン・クラシックのコンデンサーマイク

• ラージ デュアル ダイヤフラム
• 3種の指向特性
• 最も有名で、最も広く使用されるNeumannスタジオマイク
U 87 Aiは温かみがあって、バランスのとれた音質でよく知られており、どんなタイプの音楽であっても、スピーチの用途であっても、ボーカルマイクとして最高の選択となりうる製品です。またオーケストラレコーディングのメインマイクとして、単一楽器のスポットマイクとしても使われるこのマイクは、スタジオで、放送や映画、テレビの現場でもっとも多用途に使われるマイクとなっています。
3種あるマイク指向性はグリル下部のスイッチで選択ができます(無指向性、単一指向性、双指向性)。背面には10dBのアッテネーションスイッチがあり、そのおかげで127dBまでの音圧を歪みなしに扱うことができるマイクになっています。さらに近接効果を補うべく、低域の周波数特性が抑えられるマイクです。
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